東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、実は今回で50回なのです。どうですか、50回目を迎えて。早いですよね。
森辺:早いですよね。月に8本出して。
東:6ヶ月、半年をちょうど終わった。
森辺:ですね。おかげさまで、まだ放送していないやつも含めて、収録しているゲストの出演ももう10人以上超えていますし。アクセス数も非常に好調で、5万ダウンロード、2ヶ月くらい前には超えているはずなので。今は7、8万ぐらい…
東:7、8万ぐらいですかね。
森辺:ダウンロードされていて。ダウンロードされないで聞いている方もいらっしゃるのかもしれないので、そうするとかなりの方に聞いていただいていて、非常にやりがいがあるなと思っていて。50回なので、500回ぐらいいけるように頑張ってやっていきたいなと思います。
東:言っちゃいましたね。前回ものづくりよりチャネルづくりということなので、このチャネルづくりというところをもう少し。せっかく50回記念なので振り返っていきたいなと思っているのですけど。
森辺:弊社のホームページの、僕のCEOメッセージなんかでも、ものづくりからチャネルづくりへとメッセージを出しているのです。そもそもこのスパイダーという会社、スパイダーイニシアティブという会社は海外派の構築のアウトソーシングを主としている会社なわけなのです。結局日本の会社はものづくりが十分に出来るという僕は認識を持っていて、これは世界一です。なんですけど、そのものづくりというものを、ことづくりに変えていくという、これ前回もお話しましたけど。テレビというものに対する価値はもう大きくて、画素数、画質のいいものではなくて、中で配信するコンテンツであるという。そうするとものづくりではなくてことづくりになっていくわけです。それがドリームプロダクトであるというものがあるので。従来のものづくりでは十分できているので、ものづくりをことづくりに変えていきましょうというのが1つです。もう一方でものづくりからチャネルづくりの投資に一方で変えていかないといけないと。結局日本企業でしか作れなければ世界中でチャネルなんて作らなくても買いにくるわけですよ。だって、そこでしか買えないわけだから。
東:そもそもチャネルというところをもう少し、片仮名なので分かりにくいかもしれないですけど。
森辺:販路のことを言っているのです。その販路を世界に作っていくということに日本の企業はもっともっと投資をしていかないといけないし、商品開発、製品開発に莫大な投資をするのに、なぜチャネル開発に投資をしないのかというところがすごく僕は残念だなと思っているのです。
東:日本に住んでいると、あまりイメージがないと思うのですけど。例えばセブンイレブンとかイオンとか、イトーヨーカドーに日本製品がバッと並んでいるではないですか。一方で、それがアジアに行くとどう変化するのかというのが、イメージがつかない方もいらっしゃると思うので。
森辺:イオンさんは今アジアに積極的に力を入れていますけれども。では、小売の世界トップ10を上から並べてみたときに、イオンさんはトップにいるかというといないわけで。そうなってくるとアジアはアジアの地元の小売店もあれば、欧米のウォルマートとかカルフールみたいな小売店があって。そこに並んでいる商品というのが、多くが海外の商品なわけですよ。そこに並べるためのチャネルを、日用消費財(FMCG)だったらそういったことを作っていかないといけないし、BtoBでもやはり販路を作る、代理店網を作るということをやっていかないといけなくて、そのチャネルづくりに投資をしていかないと、世界で物は売れませんよと。そういうことです。だから一昔前みたいに日本企業しか作れなかったから、どこの国に行っても日本製。たとえば1980年代、僕はアジアに住んでいたのですけど。そのときは日本製が溢れていた。家電も何もかも全て日本製みたいな。非常に日本人として誇らしい時代でしたけど、でも今はそうなくなっているわけです。多分海外旅行しても空港の大きな航空看板を見てみたらわかると思うのですけど、日本の企業の広告なんか出ていないのですよ。
東:そうですね、少ないですね。
森辺:アジアのは中国の広告ばかりが埋まっていっていて。あれがまさにマーケットのシェアをそのまま協調しているのではないかと思いますけど。
東:そうすると現地のスーパーとかコンビニとかに行くとやはりまだまだというか、海外のものが多くて、日本のものが一部というような状態が現実であると。
森辺:そうです。それは、日本の商品でもマンダムとか味の素さんとか、キッコーマンさんとか、子供の哺乳瓶なんかのピジョンさんとか、サロンパスとか、ビゲンとか、ヤクルトとか、ああいう企業さんは比較的いろいろなアジア新興国に行っても商品が並んでいて、うれしいなと思うのですけど、一方でやはりユニリーバとかジョンソン・エンド・ジョンソンとか、P&Gとか、ケロッグとか、こういうところの商品がたくさん占めているし。それは今日本にある食料品、日用品のメーカーはいっぱいあるじゃないですか。めちゃめちゃ便利なもの。ああいうものが席巻できているかというと、なかなか厳しいですよね。
東:そこがやはりチャネルづくりが弱いというのが、まずは1つの大きな要因であると。
森辺:支援していても、やはり一部上場の大手の会社では弱いです。やり方がすごく弱いし遅いので、それがアジアの経済成長平均が7%とか8%で成長していくような市場で、いかにその流通を押さえるか、チャネルを押さえるかということをやっていかないと、ただでさえもうFMCGの市場で言うとジョンソン・エンド・ジョンソンとかユニリーバとかP&Gに比べたら、10年、15年遅れているわけですよ。チャネルへの投資が。だから、全てが後発になる中で、どうやってそれをひっくり返していくのかということを考えていかないといけないので、やはりそこはもっと投資をしないといけないと思います。
東:今言ったチャネルというのは、前回も近代的小売とか伝統的小売という言葉が出てきたのですけど、イメージとして2種類あるということだと思うのですけど、それを具体的にどういうイメージなのか。昔の日本を思い出してもらえると分かるのかなと思うのですけど。その辺森辺さん的に。
森辺:FMCGの業界でいうと必ず近代的小売と伝統的小売というのは出てくるのです。モダントレードとトラディショントレードという。モダンというのは、デパートとか、ハイパーとか、スーパーとか、コンビニとか、百貨店もそうですし、近代的な小売の店舗のことを言うのです。結局FMCG日用品、食品というのは、小売で買っていくわけではないですか。イメージつきますよね。日本でもたくさんありますと。一方でアジアの方に行くと、伝統的小売という昔ながらのパファーマーショップがあるわけです。汚い路面店みたいなのが。
東:駄菓子屋とかそういうイメージですかね。
森辺:駄菓子屋とかいっぱいそういうイメージです。それがたとえばインドネシアでもインドでも、フィピンでも。フィリピンなんかだと「サリサリ」とかというお店です。インドネシアとかインドとかだったら、ワルンとかいろいろ呼び名があるのですけど、そういういわゆるパパママショップが何万店と存在するわけで、そこに欧米メジャーは商品が行き届いているのです。そんなところにも。結局そのディストリビューション、チャネルをしっかりと押さえているわけですから、近代はもちろんなのですけど、伝統も押さえていて。結局その比率がどれくらいなのかと言うと、中国だともう6割ぐらい近代なのですよ。
東:スーパーとか、コンビニとか、そういった日本にあるようなものが6割近いと。
森辺:そうです。一方で伝統というのはまだ4割あったりするのです。インドはどうだといったときに、インドの近代なんて高々2%なのです。2、3%。そうしたら、97、8%は伝統小売なわけで。あの広大な市場を押さえていこうと思うと、これはどんどん国が近代化していけば近代小売に変わっていくのですけど、やはりこの伝統小売を抑えないと。
東:ボリュームはとれない。
森辺:ボリュームはとれないし、インドネシアですら今は15、6%。
東:20%行かないのですね。
森辺:行かないです。フィリピンで23%ぐらいですかね。タイに行くと40%ちょっと超えるぐらいまで来ていますけど、マレーシアなんかはすごく近代化しているので50%ぐらい今いっていますけど。そうすると、近代小売と伝統小売に向けてのチャネル戦略を考えていかないといけなくて、日本企業は、近代小売は弱いのですけど、伝統に比べたらそこそこやると。ただ伝統は全く投資を呼んでいないし、近代小売に関してもやはり欧米メディアにはなかなか手の届かないところに今いるという、そんな感じですかね。
東:伝統小売が弱い理由というのは、森辺さんなりにはどう考えられますか?
森辺:基本的には伝統小売というものに対するハードルの高さ。チャネルを作るのはやはりすごくしんどいのです、伝統小売は。だって1小売何万もある伝統小売を束ねているディストリビューター、エリア・ディストリビューターみたいなのがいて、その人たちと相談をしていくわけなのですけど、それを束ねていくのも難しいし。伝統小売は売れるものと売れないものがあるし。売れるものでも、伝統小売の売り方を間違えると売れないです。例えば有名な話ですけど、味の素なんかは小袋に入れておく。薬でもアジア新興国に行くと1錠から売っているわけですよ。24錠で2000円も出して頭痛薬を買うなんていうのは日本人だけ。キャッシュリッチだから、買いだめ全然OKなのですけど。結局アジア新興国だと所得が低いわけですから、将来使う薬を今買ってしまうと、個人のキャッシュフローが悪くなるので、1錠。今頭痛いからそれを抑えるために1錠飲むというそういう世界なのです。
東:こないだインドだと水の回し飲みを。
森辺:そうです。インドだと水の回しのみと言って、伝統小売の店舗のところに水がポンと置いてあって、それを口付けずに飲むわけ。
東:ペットボトルの水が置いてあると。
森辺:ペットボトルの水が置いてあるのです。そこに1ルピーか何か払って回し飲みしていくわけなのですけど。日本だと考えられないと思うのです。結局まだそういう世界なのです。では、そんな市場は儲からないのではないかと言ってやらないのも手だし。けど日用消費財のマーケットでいうと、欧米はやっていますよ。いかに先にそこに投資をして、そこが近代化したときにマーケットの大半をとるかという。それが彼らの中長期の戦略なので。そういったところに全然投資が出来ていないというのが今の現状だと思うのです。
東:なるほど。そうするとチャネルづくりとか、グローバル市場を獲得する上でまず日本企業がやらなければいけないことというのは、具体的にどういうこと。
森辺:これBtoBもBtoCも同じことなのですけど、日本の企業さんの大半は自社の都合、自社の分析。その自社都合のことだけで全てが進んでいくのです。重要なのは自社の環境と、市場の環境と、競合の環境と、流通の環境と4つ見ていく。僕は必ずこの4つから見ていくのですけど。これは4Cとかってマーケティング用語で言われるのです。結局自分たちの商品は性能が良いのだと、品質が良いのだと。だから行けるのだというのが10年ぐらい前。けど行けなかったと気付いて、今は自分たちの商品は良過ぎるから、アジアでも富裕層しか駄目なのだ。といってひたすら富裕層を狙っていったりするわけです。間違っているとは言わないですけど、富裕層の数で言ったらG7のほうが、2025年になったって数としては多いので、G7も徹底的にフォーカスしたほうが良いのではないですかという話になります。その市場環境がどういう変化を迎えていて、そこに競争がどういうふうに起きているのか、なおかつ流通の特製は何なのだということを、4つを見ていく中で戦略を組み立てていかないといけないです。ここを可視化していく、見ていく、ファクトを集めるということをいきなり深くやる必要はないのですけど、いかに浅く広く集めて検証して、それを繰り返して、戦略を練っていくかみたいな。そこへの投資がやはり出来ていないです。そこにやはり数千万単位でダーンと投資をしないと、なかなか難しいです。BtoB、BtoC問わず、自分たちは作る人ですと。売るのは売る人に任せます。売る人にお願いしますという話なのですけど、その売る人がちゃんとしていないわけですよ、アジアなんか行くと。ちゃんとしていないとすみません、アジアの売る人に申し訳ないのですけど。
東:日本だと販売代理店とか、代理店みたいな感覚でしょうね。直販ではなくて、誰かに任せて売ってもらうというような多分感覚だと思うのですけど。日本だと代理店と契約を結んだら、代理店が勝手に売ってくれるものみたいなイメージがあったりするではないですか。そういう企業だけではないと思うのですけど。そういうイメージがついていると。アジアでそれをやると。
森辺:うまくいかない。
東:難しいと。
森辺:代理店に適度なルート営業をしたら、商品が全然流れていくかといったらそうではなくて。いかに代理店を管理、コントロール、マネージメントしていて。欧米はチャネルの介在度合いがものすごく高いのです。ディストリビューターと契約をした後に、ディストリビューターの会社の中に部屋まで作って、自分たちの。毎日管理、教育をやって商品をディストリビューションしていくということを徹底しているから売れるわけです。FMCGを問わず、エレクトロニクスの業界もそうだし、BtoBだってそうなわけです。チャネルを成長させる、その中でチャネルを統廃合させていかに自分たちにとって有益なチャネルだけを残して、もしくは育てていくかということはやはりものすごく重要です。
東:海外に行くと、契約だけではなくて売るところまで関わって、ディストリビューターを教育していくみたいな感じなのですかね。
森辺:そこまでやらないと、絶対アジア新興国では売れないし、よくある、良いパートナーと言って同業種と組んで、なかなか同業種合弁会社なんて成功していないではないですか。今50年蓋を開いてみて。だって理解がコンフリクトを起こすわけですから、難しいわけです。向こうが欲しいのは技術力だし、こっちが欲しいのは販売力だし。けれど同じ製造業同士が合弁を作ったって、最後はやられて終わるというのがここ10年間のアジアの購買の歴史だし。
東:単純に考えたら、アジア企業からしたら技術力が欲しいだけで自社の製品を持っているから、もう日本の企業の製品を販売するより自社製品を販売したほうが特だという話ですよね。
森辺:だから合弁とかではなくて、買収をするのだったらいいです。たとえばソフトバンクの買収なんかは素晴らしいではないですか。キャリアとして、キャリアを完全買収していくわけですよ。ですから、キャリアとしての規模感というのはどんどん大きくなっていきますよと。それと最近、日経新聞を騒がせましたけど、ブライトスターという会社を買収しました。このブライトスターは、こないだのうちのスパイダーセミナーで清水さんが話してくれましたけど、いわゆるスマートフォンもディストリビューターなわけですよ。十数台に1台はブライトスターを通してスマートフォンが世界に売られていて、結局その異業種、チャネルを買いにいったという。非常にスマートでクレバーな買収なわけなのです。やるのだったらこういう方向ですよ。だから日本のFMCGなんかはチャネルを買いに行くとかというのは1つの手かもしれないです。
東:このチャネル戦略というのが、イコールまず第一歩のグローバル戦略になると。
森辺:もう絶対そうです。何よりもチャネルです。だって売り上げ上げるの、利益上げるの、全てチャネルですから。だと思います。
東:そんな日本企業に、具体的に次の一手、チャネル戦略を考えるときに森辺さんが重要だと思われることというのは、最後に1つ教えていただけると。
森辺:さっきの4Cの分析をまず徹底的にやるということです。チャネルづくりは、チャネルをつくるということと、作ったチャネルをどう活性化させるかというこの2つなのです。ノウハウを伝授したから、すぐ出来るかというとなかなかそうではないですよ。メーカーの人たちは基本的にはチャネルをつくる専門家ではないので。それが出来るかというと、なかなか僕は厳しいと思うのですけど、まずは4Cをしっかりやるというところからではないですかね。
東:分かりました。今日はそろそろお時間なので、今日はありがとうございました。
森辺:こちらこそ、ありがとうございました。