森辺一樹(以下、森辺):皆さん、森辺一樹です。今日も引き続き、伝統小売と近代小売のお話をしていきたいなと、前回の続きのお話をしていきたいなというふうに思います。「両輪で攻める」と前回言ったのかな。 「輸出の場合と現産現販の場合で、ASEANもVIPとSMTで分けてくださいね」という話を前回したと。「特にSMTに関しては輸出で十分ビジネスが成り立つけども、近代小売だけででもですね、VIPに関しては伝統小売をやらないと無理よ」というお話をしました。
この日本企業が課題感をやっぱり最も持っているというのは、ベトナムとインドネシアとフィリピンのこのVIPと言われる約々8割以上が伝統小売で構成されている、この市場の攻略に課題感があって、なかなかブレークスルーできている企業が限られるというのが今の現状かなと。これってそもそも近代小売と伝統小売の両輪を攻めていかなきゃいけなくて。なぜ両方なのかと言うと、そもそも近代小売だけでは数が足りないですよというのがこのベトナムとインドネシアとフィリピンなんですよね。前回も言いましたけど、近代小売の数だけで言うと、ベトナムで4,000店舗ですよね、主要どころは、フィリピンで6,000~7,000で、インドネシアで4万店ぐらいですけど、うち3万5,000店はアルファマートとインドマレットということを考えると、2つのコンビニと考えると、5,000店なので、基本的にはこの数であれば、日本のコンビニなんてセブンイレブン1社で2万店とかという話なわけですから、週販どれだけ売ってもあまり儲からないよねと。一方で、「じゃあ、伝統小売ってどれぐらいあるの?」と言ったときに、ベトナムで50万店以上あるし、フィリピンで80万店以上あるし、インドネシアも300万店以上あるわけですよね。この伝統小売がどんどん近代化していくんじゃないかという議論は、もう10年15年ぐらい前から結構されてきましたけども、ここに来て「あれ?」と、「思った以上に減ってないよね」と、「むしろ伝統小売が近代化しているよね。デジタル武装で近代化していっている」と。そうすると、本当にスーパーマイクロデジタライズド伝統小売みたいなものが出来上がっていて、「実は伝統小売はなくならないんじゃないの?」みたいな議論もされてきているわけですよね。
そんな中でこの伝統小売もやっぱり同時に攻略をしていかないといけなくて。この難しさというのが何かと言うと、どういうケイパビリティが必要なのかというのは、近代小売をやるときのケイパビリティと、伝統小売をやるときのケイパビリティというのがまったく異なるわけなんですよね。もっと言うとチャネルが違うと。もっともっと言うとディストリビューターが違うと。近代小売に得意なディストリビューターと伝統小売に得意なディストリビューターってまったく違うので。そうすると、やっぱりディストリビューション・チャネルそのものをつくり上げていかないといけない。両輪で回るようなディストリビューション・チャネルをつくっていかないといけない。近代小売というのはもうマストなんですよ。なぜならば、伝統小売のオーナーは、あの狭い小売の面積に売れ筋のものしか置きたくないと。埃が被るものは置きたくないと。そう考えると、近代小売でどれだけプレゼンスを発揮しているかというところが非常に重要ですと。もちろんね、昭和の親父みたいな人とか昭和のおばちゃんみたいな人が伝統小売のオーナーですから、「お願い、頼むよ、おじちゃん」「頼むよおばちゃん」でモノは置いてくれますよ、1回2回ぐらいね。なんですけど、結局売れなかったら敗者復活戦はほぼないので。そうすると、やっぱり近代小売で売れていくということはすごく重要で、そのためには近代小売でプレゼンスを発揮しないといけない。
ただ、近代小売で売れても、どれだけ売れても、やっぱりそもそもの近代小売の母数が少ないので、伝統小売もやらないとだめだよねというところが、この新興国、ASEANに限らず新興国の難しさで、これを両輪で片付けていかないといけない。そうすると、結局、伝統小売…。実はね、伝統小売って別に安くする必要はなくて。グラム数とか入数を変えることによって、言ったら消費者が持ち出すキャッシュが安くなるということが伝統小売の最大の特徴で。伝統小売って決して安く売っているんじゃないんですよね。むしろ10%ぐらい高いんですよ。なぜならば、10個入りで100円で売っているもの、近代小売で、それをバラ売りにして、1個12円とかで売っているわけですよね。そうすると、10個だったら120円になるわけだから、20%高いわけですよね。それでも消費者にとっては、いわゆる個人のキャッシュフローがいいわけですよ。新興国の人にとっての最大のメリットというのは、例えば頭痛薬でも、今、頭が痛いのを直したいから1錠の頭痛薬が欲しいというだけの話で、日本みたいにいつ頭痛になるか分からないのに24錠買うみたいな、そういう発想がないわけですよね。なので、そこが伝統小売の利便性の1番のポイントで。別に伝統小売で売るから安いイメージがつくとか、そういうことはまったくなくて、いかにそこを現地化するかということはすごく重要なので。もちろんね、オーバースペックなものをつくって市場に出しても、近代小売でもそれは認められないので、いわゆる近代小売を選ばなきゃいけなくなってくるので、そこは考えていく必要はあるけど。別に安くするつもりはないと。1円でも高く売れるなら高く売ったほうがいいし、マーケティングというのはそもそも安くすることではなくて、高く売ることなので、そこははき違えないようにしないといけないと。
今日もまた時間が来ちゃったのでこれぐらいにしておきますけども、重要なことなのでまたちょっと次回引き続きお話をしていきたいと思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。