東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続き、森辺さん。富岡さんをお迎えしているのですけれども、今回はどういう話を。
森辺:今日も引き続きSansanの富岡取締役をゲストにお招きしておりますが、今回は第3回目ということでグローバルなお話に入っていけたらなと思います。富岡さん、どうぞよろしくお願いいたします。
富岡:よろしくお願いします。
森辺:御社のホームページに非常に興味深い文章が載っておりまして、「世界を変える新たな価値を生み出す」ということで、あのときSansanがいたからこのイノベーションが生まれたという文章からガーッと続くのですが、この辺りの理念になるのですかね。御社の考え方というか、価値観のところがすでにグローバル仕様になっている気がすごくするので、この辺からお話をいただけるとありがたいのですが。
富岡:私たちの会社のビジョンというのは、「世界を変える新たな価値を生み出す」というものです。これは、会社を創業する前からきちっと。後付けではなくて、ちゃんと何を目指すかということを決めようということで、創業メンバー5人で話しをして決めたものです。どうせやるなら、世界にインパクトを与えたいなと思っていまして。世の中見てみると、世の中ビジネスでもそうですけど流れを追いかけていくというパターンが1つ。もう1つは自ら流れを起こそうとする、風を起こそうとするとも言えるかなと思うのですけど、こういった2つのタイプの会社なり人がいると思うですが、どうせやるなら後者。自分たち自ら、大変かもしれないけれども流れを起こしていこうと、風を起こしていこうということをやろうと。そのために会社をやろうということを決めまして、今もそれを掲げて追い続けているということでございます。
森辺:これは非常にいい言葉ですね。世の中の流れを追いかける側と自ら流れを起こす側、2つが存在すると。そして御社は後者になっていこうということで、Sansan並びに「Eight」というサービスを展開していると。このSansanは世界初の法人向けクラウド名刺管理サービスとして誕生していて、今後のグローバル展開というか、そんなところのお話をお聞かせいただければと思いますが、何か名刺が年間100億枚流通しているとかというお話を以前富岡さんに聞いたことがあったのですが、その辺も含めてお話をお聞かせいただけると。
富岡:先ほど「世界から新たな価値を生み出す」と言って、「それが名刺なの?」と思う方もいらっしゃるかと思います。僕らは名刺というものにすごく可能性を感じていて、その1つがこの100億枚。年間100億枚、世界で交換されていることが根拠になっています。100億枚年間に交換されているということは、少なくとも名刺というのは、1対1で仮に交換するとしたら50億回の出会いなわけです。これが紙で行われていて、紙のまま多分99%、紙のまま捨てられてしまっているのではないかなと思います。ビジネスの世界は人のつながりだよと多くの人が言いますけれども、そのつながりの象徴でもある名刺交換とか名刺というものが99%、せっかく交換しているのにほとんど意味をなしていないと。ほぼ死んでしまっているというのはもったいないなと思っていて。僕らはそれをきちっと資産として活用してもらえるようなサービスを提供していきたいと思っていまして。それは日本だけではなく、名刺交換は世界でされているので、日本でここのビジネスをきちっとやって世界に広げていきたいなという風に考えております。
森辺:これ今世界で100億枚流通ということですけど、アジアの経済成長の著しい今の状況を見ていると、今まで名刺を持っていなかった人たちが名刺を持ち始める。要は日本だと名刺を持っていた人たちが減り続けるという、これが日本の市場ですよね。少子高齢化ですから。定年退職をしたら名刺は無くなっていって。前回お話をしましたけれども、私の母親みたいに勝手に自分で、個人で名刺を作るという人たちは「Eight」を使うという、そういうのがあるかもしれないですけど、基本的には名刺は減ると。一方で著しい東南アジアや中国、それからインド、中東、南米、ロシアと。それからもっと言ったらアフリカこういう市場はどんどん名刺が増えていきますから、この100億枚というのが200億枚、300億枚、強いては1000億枚という数字になっていくという。そんなイメージなのですかね。
富岡:そうです。非常に面白いのが、名刺は紙の媒体で。世の中どんどんデジタル化しているわけですよね。にもかかわらず、今名刺の流通量はまさに増えていて。特にさっきおっしゃったアジアを含めて新興国が伸びている国々はどんどんビジネスパーソン、ホワイトカラーの方々が増えてきていて、そういう人たちにとって名刺は1つの社会的なステータスを表すものでもあるので、みんな名刺を持ちたがると。そしてビジネスシーンで交換したがると。どんどん紙なのですけど、実は拡大、世界的に見るとどんどん拡大しているというのが非常に面白いマーケットかなという風に考えています。
森辺:なるほど。そうすると、今後具体的に「Eight」と法人向けのSansanでグローバル展開をしていく。そんな感じなのですかね。
富岡:そうです。まず、法人向けのSansanに関しては今最初のターゲットとしてアメリカ市場をターゲティングして、今商品開発を進めているところです。
森辺:これは競合とかというと、どんなイメージになるのですか?
富岡:グローバルでみると、特にSansan、法人向けの競合というのは全くないというのが現状です。何でアメリカをやろうと思ったかというと、まさにそこに該当するようなサービスが全くないと。かつニーズがなければ意味がないのですけれども、ニーズは十分あるなと。アメリカは個人主義だと言われますけれども、それではやはり企業が一番強いのはアメリカですので、きちっと組織で行動するとか、管理をするという考え方は非常に浸透していますので、個人と法人をつなぐという意味でまさに私たちの法人向けのSansanサービスというのはそこにマッチするのではないかという風に考えていて。市場ももちろん、経済規模も一番大きいのでこのSansanという法人向けサービスは海外のマーケットとしては最初にアメリカに投入しようということを考えています。
森辺:それは非常にすごくいいポイントで、今世の中が何でもかんでもアジアみたいな、そういう雰囲気があるではないですか。ちょっと前までは中国だったし、例の一連の問題があってから全て東南アジアにシフトしていて、企業が魚群のように中国にワーッと集まって、中国がワーっと騒がしくなったら今度はまた魚群のように東南アジアに行って。そこに本当に進出戦略があるのかなとすごく思うのです。なぜ東南アジアなのか、そこに理由が、戦略の理由がないと駄目ではないですか。けど、そんな中で欧米というマーケットが大きくて、そこを最初にやるのだ、そこが私たちのプライオリティなのだということを裏付けられているのは、非常に素晴らしいことだなと、今聞いていて思ったのですけど。すごくいいなと思いました。まずはSansanの投入を米国にやっていくと。一方で「Eight」の方は、これはどんな感じでグローバル展開は考えられているのですか?
富岡:「Eight」は最初にアジアを責めたいなと思っていまして、具体的にはシンガポールを今攻めていこうということでマーケティングを開始したところです。大きくグローバルのエリアでいうと、アメリカかヨーロッパかアジアかという、ざっくりですがあるかなと思っているのです。先ほど言ったような理由でアメリカという1番経済的に大きいところを法人向けで攻めて、そうは言ってもアジアは人口も増えていて、先ほどの話しの通り名刺を持つ人が非常に増えていると。かつ、人のつながりを非常に大切にするというので、そういった意味では「Eight」という、名刺からつながるようなサービスというニーズが非常にあるのではないかなと。逆にアメリカよりアジアの方が「Eight」のニーズはあるのではないかということで。
森辺:すごくリサーチされていますね。アメリカ人はすごく人と会ったときの、最初のインパクトがめちゃめちゃ重要で、インパクトが全てみたいな印象を僕は持っているのです。いかにファーストインプレッションを与えられるかで、その人が自分を覚えるか覚えないかが結構決まってきますと、個人でですよ。一方で企業にとっては当然どの国の、どの世界の経営者も共通だと思うのですけど、社員が集めてきた名刺というのは企業のすごく重要な財産だと思うので、これは収集したいと思う。だから法人向けのSansanがアメリカですよと。一方アジアの人たちというのは企業に属していながらも個人の人脈と。いつか自分も「人肌上げてやるぜ。」みたいな思いがどうしてもあるではないですか。
富岡:ありますね。
森辺:本当にそうすると、個人の人脈はすごく重要視をされるイメージがあるので、「Eight」を先に投入すると。一方これ法人と言ってもなかなか法人がそういうサービスを中堅中小企業含めて入っていくイメージが、僕もまだアジアは早いのではないかなと、もうあと5年10年待ってからではないかなとイメージを受けていたので、相当マーケットリサーチをやられているのだなとイメージがあったのですけど、すごくやはりやられてきたのですよね、きっと。富岡さん自身もシンガポールにしばらく入り浸っていたとかというのを聞いたのですけど。
富岡:アジア展開をしようと思っていて、去年から何度か行って、今年は最初の3ヶ月はほとんどシンガポールにいて、どう展開できるかなと。まずは実はSansanという法人向けを展開しようと考えて行っていたのですが、先ほどのような理由でむしろ「Eight」の方がこのマーケット、アジアのマーケットにはニーズがありそうだなと、現段階でですね。というふうに考えて「Eight」はアジアがいいのではないかと。一方でアメリカはなかなか、特にITの業界でいうとなかなかハードルが高いというか、本当に本丸というか。日本からアメリカへ向けて成功したITのサービスというのは今までにないので。なかなかハードルが高いですし、名刺の価値が日本と比べると明らかに低そうなイメージがありますし、どうかなと思っていたのですが、シンガポールはそのような形になって。世界を変えるためにどうしたらよいかなと言ったときに、アメリカをやらないわけにはいかないかもなということで、まずもうちょっと見てみようということで今年の7月に半月ぐらいアメリカをまわって。そうしたら意外とみんな名刺を持っているなということに気付いて。日本でアメリカ人とかに聞いていたときには、「いやいや、名刺とかあまり交換しないよ。」と言っていたのですが、行ってみるとみんな意外と持っていて。ただもちろん名刺の価値は日本に比べると低いというか、扱いが雑だったりとか、お財布に入っていたり、くしゃくしゃだったり、投げたりとかするのですけど。でもみなさん持っているのですよ。交換もしますし。なので、やはりこれは十分マーケットはあるなというふうに感じて、そこから今アメリカ向けの商品をつくり始めたところです。
森辺:そうですよね。管理が汚いのがね、ポケットにグシャっと入っていたりとか、名刺ケースに入っていなかったりとかするわけですから、「俺はこういう者だよ。」みたいなね。それは確かにありますね。なるほど。そうですか。では、日本のこういう、ITというかそういう業界で、世界で本当に大成功している会社はすごく少ないではないですか。だから私自身もすごく楽しみで、少しかぶるのですけど、LINEってみなさん使っていると思うのですけどあれも今世界中で伸びていて、日本企業だと思ったら実はもともとは韓国発の企業で。でも僕この「Eight」の企業とかぶるのですよ。LINEというのはどちらかというと電話番号をベースに同じ電話番号を持っている人は個人同士でつながっていくと。ただ、それはあくまでもパーソナルな関係を超越しないというか、超えないみたいなそんなイメージがあるのですけど。この「Eight」というのはそれに名刺の情報が加わるので、さらに個人のネットワークからビジネスまで越えていく。そんなイメージがあるのですけど、「Eight」というのはそんなイメージなのですかね?
富岡:まさにそういったイメージです。コミュニケーション、日本だと意外とビジネスとプライベートが一緒になっていたりするのですけど、日本を一歩出るとみんな綺麗にビジネスコミュニケーションとプライベートコミュニケーションは分けているのです。Facebookはあれだけ流行っていますけど、あれをビジネスで使うのは日本ぐらいで、他はビジネスで会った人にFacebookのアカウントを教えてと海外の人に言うと「えっ!」とかってビックリされてしまうわけですよ。彼らはFacebookもプライベートなものだと思っている。というのと同じ、LINEはプライベート、友達同士のネットワークで、海外でも広がっていますけど。ビジネスコミュニケーションという意味では、結構スペースはあるのではないかなと思っていて、「Eight」はまさにそこに入っていけるポジショニングができるかなと考えています。
森辺:めちゃめちゃ楽しみですね。そうですか。そうしたら、そろそろお時間も来てしまったので、またいろいろ聞きたいのですけど。次も第4回最後になりますが、富岡さんまたお招きしたいと思いますので、ぜひ引き継ぎSansanのグローバル展開のお話をお聞かせいただければと思います。富岡さん、どうもありがとうございました。
富岡:ありがとうございました。