森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、「「思考」が戦略に与える影響」ということでお話をしていきたいなというふうに思います。
「「思考」が戦略に与える影響」なんて言うと、ちょっと小難しい話をするのかなというふうに思われるかもしれないんですが、そんな話ではなくて。海外展開に失敗する企業というのを今までたくさん見てきた中で、失敗する企業というのはやっぱり3つぐらいの思考パターンにだいたいとらわれていて、その思考パターンのリーダーなりが中心になって戦略をつくっていくわけなので、もしくはその思考パターンのリーダーの影響を受けて、下の人間がある意味忖度をして戦略をつくっていくので、戦略がその思考パターンに引っ張られていくわけなんですね。日本人って戦略づくりが下手とか苦手とかではなくて、実はそもそもその前提にある思考のパターンが間違っているから戦略を間違えてしまうと、ことアジア新興国展開に関しては。なので、この思考パターンって非常に重要だなというふうに思っていて、そのことについて今日はちょっとお話をしたいなというふうに思います。
3つの思考パターンがあるんですけどね。この番組5分以内にと、4分以内だったかな、ということなので、たぶん今日はその1つしか説明ができないと思うんですけど。1つがね、プロダクトなんですよね。結論を先に言うとね、3つの思考パターンというのは、プロダクト、パートナー、パーソンの3つのPなんですけど、今日解説するのはプロダクトになります。
このプロダクトというのは何かと言うと、戦略の中心にプロダクトが置かれているので、基本的にモノが良ければすべて良しであると、極端に言うとですね。この良いというのも、価値提供の良いじゃないんですよね。価値提供というのは、顧客にとっての価値提供ではなくて、どちらかと言うと、機能だとか、品質だとか、つくり手側のこだわりが良ければ良いので、あとは大丈夫と。
なので、ターゲティングとか4Pの話になると、基本的にはターゲットに対して4Pを打っていくわけですよね。ターゲットがあって、そこに4Pを打つというようなのが戦略なわけですけども。その4Pがありきでターゲットが決まってしまっているので、ここの順序がそもそも逆なんですよね。ターゲットファーストで4Pがそのターゲットに対してセカンドであるべきではなくて、もう4Pがありきでターゲットを決めていると。だから、どういう4Pかと言うと、日本で実績の商品を、できればさほど変えずに、少しは安くするけど日本と同じぐらいの価格で売りたいよと、プライスに関しては。プロダクトは日本で実績のある商品を、できればさほど変えずに、プライスに関しては少し安くするけど日本と同じぐらいの価格でと。プレイスに関しては、基本的には日本で売ってきた販売方法を倣って売っていきたいと。そして、プロモーションというのはできれば実績が出るまであまり投資はしたくないよねということになるわけなんですよね。だから、ある意味1P戦略ですよね。プロダクトのPだけで、ほかのプライスとかプレイスとかプロモーションというのは、もう、いわゆる日本の実績がベースになっているという話、ほとんど加味されないということなので。そうなってくると、必然的に牌が上振れしていくわけですよね。例えば、消費財だったら中間層には絶対届かないし、B2Bでもやっぱりローカル企業よりかは日系企業寄りのターゲットになってしまうと。
本来は、ターゲットが、まずターゲティングが絶対に先なんですよね。ターゲティングがあって、4Pなんですけど、もっと言うと、この4Pじゃなくて、4Cの考え方で設定をしていくと、たぶん日本企業の場合は非常によく分かるんだと思うんですけど。プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションではなくて、4Cの考え方だとカスタマーバリュー。プロダクトというのはカスタマーバリュー、顧客価値。顧客が求める商品は一体何なんですかと。価値は一体何なんですかと。プライスは顧客にとってはコストなので、顧客の費用。顧客が賄える価格って一体いくらなんですかということを考えないといけない。賄えるということは非常にポイントなんですね。プレイスというのは、逆に顧客側から見ると顧客利便性、コンビニエンスですよね。顧客が買いやすい方法とか場所。そして、最後のプロモーションというのは、コミュニケーションに置き換わって顧客コミュニケーションと。顧客が選びたくなるような仕掛けをしないといけない。棚に並べても、それを選ばれなかったら何の意味もないので。棚に並べることと、棚に並んだものが選ばれることというのは、また次元の違う話なので、やっぱりこのコミュニケーションというのは非常に重要で、カスタマーバリュー、コスト、コンビニエンス、コミュニケーションと、この4つのCが大変重要になってくると。これというのはもう絶対的にターゲットがあって、そこに対して4Cをあてると。
だいたい日本の問題は、なぜうまくいかないのかと、御社のターゲットと4Pを教えてくださいと言ってこう見たら、だいたいどこに問題があるのかというのはすぐ分かるので、この最初のプロダクトというところが非常に重要になってくると。これが思考が与えているわけですよね。モノが良ければ、品質が良ければ、機能が高ければ、大丈夫なんだと。メイドインジャパンなんだと。いつの時代の話ですかと。80年代90年代の話でしょと。もう今は戦い方が違うんですと。2020年代ですと、30年経っていますということをしっかりと認識をしていかないといけなくて。もう、良い、品質が良いとか機能が高いなんていうのは当たり前で、もう中国製で十分良いわけなので。どうやって価値提供をするかということになってくるわけですよね。なので、この「思考」、プロダクト、ここはやっぱり1つ変えていかないと、これは本当に根深い思考パターンとしてまだまだ日本人の50代以上の人たち、いわゆる組織のリーダーの人たちの頭の中には根強く残っていると思いますので、ここをしっかりと変えていく必要があるのかなというふうに思います。
今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。