森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日で3回目ですかね、「基準値」を持つことの重要性ということでずっとお話をしてきましたが、「基準値」は本当に重要です。自分たちの競争力というのは一体どれぐらいなのかという基準値をしっかりつかめれば、短・中・長で何をやるべきかということが明確になるので、そうすれば、対前年比+15%、115%やりましょう、120%チャレンジですみたいな、木を見て森を見ずの戦いをしなくて済む、本当の意味でシェア争いにしっかりと参戦できると。結局シェアを獲れなければいつか必ず淘汰されていくので、一刻も早くシェアの戦いに参戦をする必要があるわけですよね。そのために「基準値」を持つ。敵の基準値を100とした場合に、自分たちが一体どれぐらいなのかと。そして、その差異を埋めていくということが非常に重要ですよと。
シェアの低い企業を見ていると特徴があって、やっぱり目的がなかなか明確でないんですよね。自分たちはこの国にして何を達成しようとしているのかという目的が明確になっていないので、その目的を達成するための指標がなかなか特定できていない。例えば、いつも例に出すような消費財のインダストリーで言うと、目的はマーケットシェアを獲るという目的があったとすると、その目的を達成するための指標というのが必ずなければいけない。目的は「マーケットシェア獲ります」と。マーケットシェアを獲るために目標があって、それは目標というのは数字で表すべきで、じゃあ、「2割のマーケットシェアを獲りましょう」という目標があると。その目的・目標を達成するために必要な指標があるわけなんですよね。どういう指標が勝つために必要なのか。FMCG、B2Cの場合は、いかにたくさんの店に並べるかというストアカバレッジ、どれだけたくさんの間口を獲るかということと、どれだけたくさんの商品を1間口で売り上げるかということが非常に重要なわけですよね。この2つが指標になってくる。店頭販売数。今までいろんな言い方をしましたけどもね、最近、僕はストアカバレッジか、セールスパーストアと英語では言っていて、日本語では間口数か、店頭販売数というふうに言い直している。昔はね、インストアマーケットシェアとか、なかなかこれも言葉の意味をね、インストアシェアと誤解されたりするので、言い方を変えて、間口数か店頭販売数、シンプルにね。間口数というのはストアカバレッジだし、店頭販売数というのはセールスパーストアのことを言っていると。その2つを達成して初めて売上というものが上がっていくのでシェアが獲れていくということなわけなんだけども。
「この指標を追う上で最善の選択って何ですか」と言ったときに、ディストリビューション・チャネルであったり、商品だったり、いろんな選択があるわけなんですよね。だから、重要なのっていうのは、目的がまず明確になれば、その目的を達成するための指標が明確になって、その指標を達成するための最善の選択というのが何なのかというものができてくるわけなんですけど、これがなかなかやっぱりぼやっとしてしまっているという、シェアが高くない企業というのはぼやっとしてしまっているというのが非常に多いのかなという印象を受けます。
シェアの高い企業というのは、やっぱり最初にビッグピクチャーを描く力に非常に長けていて、自分たちがどうなりたいのか、どうなるべきなのかみたいなものを先に最初に描くんですよね。そこに最短に行くための方法を探っていくから、基本的には逆算思考で非常に合理的というのを僕はいっぱい見てきました。一方で、じゃあ、シェアの低い企業ってどうなの?と言うと、最初にビッグピクチャーを描く力が非常に弱くて、だから、積み上げ思考で俗人的なんですよね。常に希望的観測的な側面があって、シェアよりも前年比を重視するみたいな、そんな企業がやっぱり多いのかなと。これは積み上げか逆算かという話なんですけど、絶対に逆算なんですよね。自分たちの到達したいゴールというものを最初に設定して、そこに行くための方法を最短で逆算で合理的に探るというほうが早いですよね。そのゴールが途中で変われば、別に変わることはまったく問題ないので、また逆算をすればいい。
なんだけども、シェアの低い企業、特にこれは日本的な、日本人的な発想なのかもしれないんだけど、大きなことは偉くなってから考えろみたいな、わけの分からない考え方が非常に大きく影響していて、一歩一歩だと、階段を一歩一歩上がっていくんだと。そうすると、その先には必ず素晴らしい世界が待っているからということで積み上げで一歩一歩上がるんだけども。昔はね、それでよかったんですよ、昭和の時代はね。昭和の時代は一歩一歩階段を上がっていったら、その上には必ず素晴らしい世界が待っていたし。「石の上にも三年」なんて僕も親に言われて、母親に言われて、「最初に就職した会社、3年は辞めちゃだめよ」と言われたので、それだけは守ったんですけどね。3年働いて辞めたんですけどね。今、3年同じ会社に座っていたら、もう時代が変わっちゃいますからね。「石の上にも三年」という言葉はなかなかすべてにおいて当てはまらなくはなってきている。ころころ、ころころするのも良くないと思いますけど。なので、日本人的な発想って、なかなか今のグローバル競争とかグローバル・マーケティングの発想とはちょっと遠のいているところがあって、でも、僕は日本人的な発想は好きだし大切にはしたいんだけども、それをビジネスにおいてはなかなか出さないほうが成功しやすいですよと。積み上げというのはやっぱり逆算思考には勝てないし、俗人的というものは合理的なものにはなかなか勝ててこない、仕組みをつくっていくものには勝てないので、そこはしっかりと考えを正す必要があるのかなというふうに思います。
今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。