東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、今日は素敵なゲストをお迎えしているのですけど。
森辺:今日は、ヤフー株式会社CMO室の河合太郎さんをお招きしております。河合さん、どうぞよろしくお願いします。
河合:よろしくお願いします。
森辺:4回続けて来ていただけるということで、今回第1回目になるのですけど、河合さんの自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。
河合:はじめまして、ヤフー株式会社CMO室の河合太郎と申します。自己紹介というか、ルーツみたいな感じですか?
森辺:そうです。ヤフーのことは多分皆さん、多くの方が存じ上げていて、河合さんもいろいろなところで講演しているので、知っている方もいらっしゃると思うのですけど、河合太郎さんがいったいどんな人間なのかというところを、簡単なご紹介をいただければ。
河合:今でこそヤフー株式会社と呼ぶのですが、もともとアルプス社という名古屋の会社で、プロアトラースという地図のソフトを昔発売しておりました。地図ソフトの中だと多分かなりたくさん使われていたと思うので、Windowsで90年代に地図ということだとご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、それもプログラムであるとか設計デザインであるとかいったところをやっておりました。そこからパソコンのソフトからインターネットへ移り変わるところで、地図のウェブサービスをいろいろ試してみようということで、アルプス社がアルプスラボという実験的なサービスを始めて、そこのところで実験的というのは聞こえが良いですけど、面白いものとか変なものとかいろいろなサービスを作っては出してということをしておりました。例えば、今でこそ普通になりましたけど写真に対して写真をどこで撮ったのかという位置の情報を出して地図の上に写真をマッピングすると。今はもうiPhoneやスマートフォンで撮れば写真には位置情報がついて、標準でどこに居たかというのが共有されるのですけど、当時は本当に位置情報をつけるすべがなかなかなかったので、フリッカーという写真のサイトにアップされたものに対して、この位置だよと。自分の地図の位置を書いて公開するということをやったり、大分初期の段階にやったりという感じで、一応地図会社だったので地図に関係するインターネットサービスをいろいろやっていたのです。その過程で、アルプス社がヤフーに買収されまして、そのままヤフーの中でもアルプスラボからラットロングラボと名前を変えて、同じように位置情報のサービス、いろいろ実験的な試みを続けていました。ちなみに、ラットロングというのは緯度・経度がアチチュードロングというので。その略称でラットロングラボなのです。全然、位置情報界隈以外の人には、何のことか伝わらない。何ですかとよく聞かれました。
森辺:そうなのです。確かに位置情報というか地図情報みたいなのは、ここ何年か普通に使っていますけど、その前は全然なかったですものね。自分と地図をリンクさせるということはできなかったですものね。
河合:そういう手段がなかったですし、そもそも地図サービスですら、スクロール地図が動くようになったのが、多分マピオンさんが初だと思うのですけど、Googleマップさん、ここ数年ぐらいの話なのです。インターネット上で地図サービスが動くようになったというのが。
森辺:その会社にいらっしゃって、ヤフーがその会社を買収されて今はヤフーになっていますということで、以前いらっしゃった会社と今のヤフーは買収された後と前では多分大分変わったのかなという印象を受けるのですけど、内部から見たヤフーという会社は我々一般消費者から見るとヤフーというと十分リスナーの皆さんもよく理解をされていると思うのですけど、いかがですかね?内部からみたヤフーというのは。
河合:やはりヤフーという会社が手がけている範囲がものすごく広いもので、それぞれのサービスがとても大規模なものもあれば、とても小規模のものもあるのです。それとそれの集合体という形で、そういう意味では小さい部署にいると自分の部署だけ見ていると、実はそんな大会社という感じはありませんし、大規模なトラフィックをさばいているところから見ると、本当に大きな会社でしょうし。
森辺:一般的な大企業も、ヤフーも大企業なわけなのですけど、一般的な大企業と比べてもやはり属しているところで結構受ける印象が違う。
河合:違うと思います。
森辺:河合さんが所属しているのはCMO室というところで、私最初チーフマーケティングオフィサー室なのかなと思ったのですけど、これはチーフモバイルオフィサー室ということなのですけど、ここはどんな機能を持っている部門なのですか。
河合:チーフモバイルオフィサーは村上が、手元の部隊として作った組織でして、一応建前というかそういう何をやっているかというと、開発技術についてのエバンジェリストです。内外のさまざまな開発技術をキャッチアップして、なおかつそれを実際に実践したりプロタイピングしたり、また社内に伝播させていく。そういったところになっているのですが、プロタイピングなどをしないといけないという性質上、ハッカーと呼ばれるたぐいの人間が集まる部署です。
森辺:すごいですね。なかなか私なんかの業界だと結構かけ離れているのでイメージが分けにくいのですけど、ハッカー集団みたいなそんな部門なのですかね。
河合:そうです。村上が別のところのインタビューで言ったのが、CMOはどんな存在ですかと言われて、羊飼いのリーダーみたいなことを言っていたのですけど、どちらかというとそのまま放っておくと何をやるか分からない奴らを集めて飼っているというのに近いのかもしれませんね。
森辺:何かイノベーションが起きそうな部門ですね。
河合:確かにそこに期待されている部分がとても大きいと思っていますし、そこの自負はあります。
東:CMO室を設定したというのはヤフーがやはりモバイルに力を入れていくという意思表示の1つでもあるのですか。
河合:これは別に、それこそハッカーチームでも実態としては何でもよかったと思うのですが、そうやって積極的に1番動いて行くところのトップを、チーフモバイルオフィサーと定義してその部門という意味で、モバイル部門専門にやるというよりは、そういう意味では象徴的な意味合いの名称ということが強いです。ですので、もちろんモバイルにフォーム化していくのですが、モバイルだけをというよりは最先端でそこをやるところなのでそこをやっていると。そこは当然移り変わって行くので、そこのところに常にキャッチアップしていくというものだと理解しております。
森辺:確かにスピードが非常に速い業界なので、移り変わりを常にキャッチアップして新たなサービスなんかを出していく、創造していくというそんなイメージなのですかね。
河合:そうですね。
森辺:具体的にCMO室のメンバーが取り組んでいるようなサービスなり活動とか、何かご紹介いただけるようなものはあるのですか?
河合:CMO室のメンバーは数人いるのですが、例えばメンバーの瀬山という人間はソフトバンクさんと協同で電子母子手帳の家族というものをマネジリングして、そちらの立ち上げを行っていという形で。それも社内の企画だけではなく、そういうふうに協業のものに対しても、社外とも積極的にコラボレーションして、社外といってもグループ企業ではありますが。といった形で、社内外で面白いとか、これはやるべきだ、最先端だというところがあればどんどん積極的にという形で今日もこうやって伺っているのです。
森辺:電子母子手帳ですか。今まで紙で、小さいパスポートみたいな母子手帳があるのですけど、あれをモバイルの中に組み込んでいる…。
河合:そうです。どちらかというと子供のライフローミングという形に近いかもしれませんね。ロギングを行っていくと。
森辺:では以前講演会でご紹介させていた、俺の来た道でしたっけ?
河合:僕の来た道。
森辺:僕の来た道にも近しいあれですかね。
河合:結果的にコンセプトは確かに似ているかもしれませんね。ライフログというワードは確かに今、裏から1つビックデータというところもまたバザードとしてはいくのですが、個人のデータを蓄積する。ビックデータは人間のデータを集積してそれでの傾向をとるのですが、ライフログは個人のデータをできるだけ蓄積するということなので、縦軸と横軸という感じです。大きいテーマの1つだと思います。
森辺:この僕と来た道は非常に面白くて、リスナーの皆さんもiTunesなんかでダウンロードできるのですかね。
河合:AppStoreからダウンロードしていただけます。
森辺:去年の夏休み何をしたとか、1週間前の月曜日に何を食べたかと人間はほとんど忘れてしまっているものを全部ログで記憶するので、僕はよく人に食わず嫌いだと言われているのです。お前と飯行くと、同じ物ばかり食べると。自分はそんな認識ないのですけど、ちょっとこう自分の食べた物を、2週間くらい記録をしていくとものすごく肉食なのです。麺がすごく多くて、サラダを食べていないなというのが分かって、客観的に自分を見られているつもりが実は見られていなかったりみたいなのもあるので、そういう使い方もできるなと思いながら、最近食べているものとか行った場所とか記録を付けるようにはしていて、こういうアプリがあるとさらに便利は便利ですよね。
河合:そこは面白いことをみんな分かっているのだけれど、やはり面倒くさいからやらないというところが課題解決の意味だと、それが課題で、何もしなくても勝手に記録されている、ではどうなるかというところで出てきたアプリケーションということです。
森辺:習慣とかは客観視ができないという気がすごくしていて、でもそれを大きく変えないと人は変わってこないではないですか。だから、こういうアプリがどんどんはやると便利だなというイメージがすごく受けたのです。
東:自分の活動範囲も分かりますよね。
河合:意外と人間は分かっているようで、可視化してはじめて気付くことが多いのです。可視化すること自体が楽しみにもなったりするので。
森辺:分かっているようで分かっていないですものね。自分のこと。自分のことは自分が一番よく分かっていると思いつつも、人から言われてそうか、確かに俺は食わず嫌いだなとか、麺が多いなとか、いつもランチはラーメンで大盛りだとか思います。なるほど。ではそんなことをCMO室ではやられているというイメージなのですよね。そうすると、新しいサービスを生み出していく、モバイルサービスを生み出すみたいな、そんなお仕事なのですかね。
河合:結果的にそういう形になることは多いです。特に今は、私はCMO室の中でラボというところを担当していまして、ラボはまさに新しいサービス、あるいはサービス以前の試みが世に求められているか、必要だったかどうかというのをどんどん試して行こうという形でどんどん外に出していこうという、そういう部門です。昨年末には、ちょうど12月の初めぐらいに「2ちゃんねる」だったかな。面白いアプリを考えたと投稿がありまして、スマートフォンの揺れるロウソクに向かって女の子が息を吹き消してとやったら、「そこで吹き消したところで写真を撮ったらキス顔が撮れるんじゃね?」という投稿があって、それがものすごくバズっていて、まとめサイトを経てかなりはやっていて。それを実際作ってみましたときたので、よし、では出しましょうということで、なんとかクリスマス手前にそのアプリを投入して。
森辺:確かにそうですね。キスのときの顔になりますものね。
河合:なりますね。まあプロタイプを作って、実際女性に試してもらったら「絶対こんなの許さない」とか言われましたけどね。
森辺:会食というのか、合コンというのか、それのネタになりそうな。
河合:そういう場で面白おかしく使っていただかないと本気で撮りに行かれるのはご自身の責任問題でお願いしますという形になりますけど、そんな感じでこれも長々と企画会議をしてというよりは、まずは出してあれしてみようという形でだいたい2週間もかからず出した形になりますね。
森辺:何か面白そうな会社、部門なのだなと。リスナーの皆さんは見えないので、ご説明しますけど、スーツでネクタイをしている堅苦しい私に相反して、非常にカジュアルでかっこ良い服装をしている河合さんなのですけど。なんでヤフーの河合さんを今回お招きしたかというのをお話すると、次回2回目以降、またゆっくりお話をしていこうと思うのですが、ヤフーが展開しているリーンスタートアップという考え方が非常にグローバル展開をする日本企業にとって非常に重要な要素となると思っておりまして、そんなリーンスタートアップのお話から次回、2回目、3回目、4回目とグローバルビジネスとリンクをさせながらお話を聞いて行ければなというふうに思っております。河合さん、どうも今日はありがとうございました。
河合:ありがとうございます。