森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も前回に引き続き、「近代小売(MT)との有利な交渉の進め方 その3」ということでお話をしていきたいと思うんですが…。
前回はどういう話したっけな。そうそう、売れる型を手に入れるまでは風呂敷を広げない、小さく始めて仮説検証を繰り返してくださいと。そして、勝ちパターン、売れるパターンが分かったときに初めて広げてくださいねと、なぜならば、近代小売にはお金が掛かりますよと、ASEANは、というお話をして。
じゃあ、「具体的にそれはどういうふうにやるんですか」ということなんですけどね。まずね、業態を選ぶということ、業態の選択ということをまずやる。自分たちの商品が、スーパーマーケットに最も適しているのか、要はコンビニに適しているのか、もしくはドラッグストア系のいわゆる小売に適しているのか、どういう形態の、ハイパーでも何でもいいんですけども、どういう形態の近代小売に適しているのかということをまず1つ特定するというか、考えて。これはたぶん回答を皆さん持っていると思うので、「いやいや、もう日本と同じコンビニです」とか、「スーパーです」とかってことがあると思うので、その業態をまず特定したら、業態を選ぶと。
「じゃあ、コンビニだ」ということになったら、もうスーパーとドラッグは取りあえず後回し。いや、ふんだんに導入費を掛けられるんだったら同時にやったらよろしいと思いますけども、まずは売れる型をということであれば、「まず、コンビニに、じゃあ、フォーカスしましょう」と。コンビニにフォーカスする場合も、コンビニもASEANもセブンもあれば、ローソンもあるし、ファミリーマートもあると。ミニストップもあると。あと何があったかな…。いろいろ各社ありますと。そんな中で、ローカル系もあるよね。インドネシアへ行ったらアルファマートもあるし、インドマレットもあるし、いろいろありますよと。そんな中で、「どのコンビニとやりますか」ということをやっぱり決める。最初の1年、そのコンビニで独占先行販売みたいなことをするということがすごく重要で。コンビニのどの業態がいいのかを選んで、どの小売が最も適しているかと、この小売というのはいわゆるブランドですね。どの小売ブランドが最も適しているのかと。セブンだったら、もうセブンとだけやると。今度、セブンでもね、例えばタイは1万店何千店あると。日本が2万店で、タイは1万何千店あると。じゃあ、アルファマートも、あそこも今、1万5,000店舗ぐらいあると思うんですね。インドマレットもたぶんそれぐらいあるんですよね。2社で3万店ぐらいあるので。もっとあるのかな。3万数千店舗あるので。基本的にはその全部の店舗をやっていたら、それだけやっぱりリスティングフィーが掛かってくるわけなので、それもやっぱり風呂敷を広げ過ぎで。
もう、例えばセブンで、タイだったらバンコクのこの何百店舗とかね、500店舗、1,000店舗って決めて、そこでまずもう集中的にドミナントでやるということがすごく重要で。ここである程度回転、実績ができたときに初めてほかに店舗を広げていくということをやると。そうすると、セブンの500店舗での成功が他の店舗への波及につながって、「ぜひうちの店舗でもやりたい」ということになっていくわけなので、これでセブンのレピュテーションが非常にいいわけですよね。「どうやらあの商品、セブンで売れているな」となってくると、今度はほかのコンビニやスーパーが声を掛けてくるわけですよ。そうすると、小売との交渉力がメーカーアドバンテージで進めることができるので、非常に楽なわけですよね。これを最初からやると、交渉も言ったら小売が優位になるし、失敗したときのリスクも多いし、まったくもって良い事がないわけですよね。確実に売れるんだと。いや、売り切るんですと。もうプロモーションも広告も、もう湯水のようにばらまくんですということでね、欧米のメジャーみたいにもう爆撃するんですということであれば一気にやったらいいと思うんですけど、多くの日本企業はやっぱりそこまで息が続かないので、そういうビジネスのやり方はあんまり日本企業は好まないはずなので。そうすると、やっぱりいかにミニママイズするかということはすごく重要で。
結局、「7年経ってもまだ黒字化できていません」みたいな大手のメーカーさんは結構いっぱいあるわけですよ。だとすると、最初から大風呂敷を広げて「3年で黒字化するんです」みたいな計画を立てたって絶対にうまくいかないから、1~2年は商談さながらのテストマーケティングぐらいのスタンスで本気の商談をそれぞれするんですけど。とにかくその商談相手、やる相手をもう固定して、ミニママイズして風呂敷を小さく小さくして、勝ちパターン、型を得たら、型が手に入る、自分たちの販売チャネルの型、プロモーションの型、営業の型、組織の型、販売の型、マーケティングの型、この型を全部手に入れてから風呂敷をバーンと大きくするということが非常に重要で。
これが小売のレピュテーションを上げることにもつながるんですよね。あそこは非常に戦略的に、段階的にやっていると、もう業界筒抜けでツーツーですから、どこかで失敗したら、もう絶対に次の日にはほかのところに全部情報が流れているので、やっぱりこけると、そのあと立ち上がってまた進むのが非常に大変です。1回棚落ちした商品の敗者復活戦はなかなかできないということを考えると、ぜひ小さくやっていくということが大変重要です。
以上でございます。今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。