森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も前回に引き続き、中小企業の海外展開みたいなところのお話をしていきたいなというふうに思います。久しくね、この中小企業の海外展開の話はしてこなかったので、いい機会なので、やっていきたいなというふうに思います。
今日のお話は、海外展開、失敗に陥るパターンの中小企業ってどういうパターンなんですかというところをお話していきたいなというふうに思っていて、3つぐらいのパターンがあって。うちの会社、SPYDER INITIATIVEは、今、8割が大企業で、2割が中小企業なんですけど、実は中小企業の支援というのは積極的にやっていて。2000年ぐらいからずっと積極的にやっていて、行政機関とか金融機関の中小企業支援みたいな、そういうセミナーには呼ばれれば積極的に参加をしているし、われわれなりにできることはやってきたという、そんな背景があって、いろんな中小企業の社長にも会っているし、中小企業を見てきていますと。
その中でやっぱりわれわれがご支援している2割の中小企業って相当に吟味をしていて、失敗に陥るパターンの中小企業は、ご支援してもやっぱりお互いに不幸になるので、どれだけそういう中小企業を避けていけるかと、そうではない、成功するパターンの中小企業とお仕事をご一緒できるかということは、やっぱり支援する側も選択をしていかないといけない。そんな中で選んだ中小企業が2割なんですけど。実際にやっぱり当初は苦労もしたし、今となっては億単位の成果が出ていて、皆さんにご満足いただいているという状況の中で、私なりに「こういう会社はやっぱり失敗してしまうよね」「こういう会社は成功するよね」という中で、今日は失敗パターン、3つの失敗パターンに陥る中小企業をご紹介したいなというふうに思っています。
まず1つ目が、突進パターンというふうに僕は呼んでいるんですけど、いわゆる海外展開をする際に、もう社長がワンマン、「俺、全部分かっているから。何でも分かっている。ここまでやってきたし、国内でも全部分かっているんだ。海外も何回も行ったことあるし、もう全然いけちゃうから」というね、「いや、そういうレベルではないんですよ、社長」と言っても、もう思い込んでいますから、できるというふうにね。なので、リスクとか難題、課題の想定がそもそもできていないんですよね。むしろ本人はできているつもりなので、社長がそういうケースであるということもあるし、会社全体としてそうだと。そもそもどういう課題がそこにはあって、どんな難題があるかということが想像すらできないですから、1回転んでもらわないと、転んで擦り傷でもしてもらわないと分からないですよね。こういうケースの会社は結構たくさん会いました。だいたい中小企業の場合は、社長が勢いある社長で、国内でも成果を出してきていて、ドーンともう行くと。話は基本的には聞かない。転んで擦り傷を負って「いやー、言ってた通りだったと」と言ってきてくれるか、擦り傷を負ったんだけども「くそー!」と言ってまた行くかみたいな、また人の話聞かずに行くかみたいな、2パターンぐらいあって。ある意味この突進力というのはすごく重要なんですけど、緻密な突進力みたいなのがすごく必要で、やたらめったらうわーっと突進ではなくて、やっぱりどこに地雷があってどこに敵がいてみたいなことは全部分かった上で突進をしていくということはすごく重要で。突進しまくるという、そういうのはやっぱり多かったかなというふうに思います。
2つ目は、他人事パターンみたいな会社も結構多くて。「うちの商品はすごくいいんです。海外でもきっと売れるはずです。ぜひ売ってください。お金は払えないんです。でも、売れたら払います」みたいな、そんなの誰がやるんですかみたいな、そういう会社が結構多かったですね。自分でリスク取れないのに、誰があなたの会社の商品を海外でわざわざ広めるんですかと。そのためにどれだけのお金と労力と時間がかかると思っているんですかみたいな、そういうケースは結構あって。とにかく誰かが自分たちの商品を取り扱ってうまくいってくれるんじゃないかみたいなね。こういうのって、経済産業省とか東京都が中小企業支援みたいので予算組んでお金付けてやるんですけど、そういうところに参加してきても、「自分たちは中小企業なんだから行政機関が支援してくれて当たり前」みたいなね、そういうスタンスの会社は結構ありましたけども。「何を言っているの?税金使ってなぜあなたたちを支援しなきゃいけないのよ」というふうに何度も思ったことがありましたけどもね。経済産業省の人も東京都の人も辛抱強く、そんなことは一切言わずあれしてましたけど。僕は講師で呼ばれて、そういう「中小企業なんだから支援されて当たり前」的発言をされてた企業も結構いて、そういう企業はだいたいこの20年見てきましたけども消えていきましたよね。難しかったでしょうね。やっぱり今海外展開なんかできていないですから。せいぜい生産工場つくって、でも、それもなかなか意味がなくなって撤退して終わったみたいな、そういうケースが多くて、海外市場に、アジア市場に販売するみたいなところはやっぱり皆無な状態になっているので。他人事ではなくて自分事でどれだけできるかみたいな話なので、全部自分で考えてという。そこが自分1人で足りないところを外部に補ってもらうということはすごく重要なので、他人事パターンの会社はだいたい難しかったなという。支援会社もやっぱり近寄らないですよね、そういう会社にはね。「お金はないけどやってください。やったら何か出しますから」みたいな。「いや、だったらOEMで自分たちがメーカーになって売るわい」というね、そういう話になってしまうので。そういうのは駄目でした。でも、実際こういう会社はいっぱいいるので、そういうのも駄目と。
あと、性善説のパターンというのも1つ失敗のパターンで。いわゆる戦略ロジックよりも、出会いと直観と感覚で全部決めていくみたいな。なので、例えばディストリビューターさんを決めるときも、どこかに紹介されて、そこの社長が日本通で、日本にも何回か来たことがあって日本語がちょっとできるなんて言ったらもう意気投合、「あなたしかいません!」みたいな。これって出会いとか直観、感性みたいなものも本当にこれは重要なんだけども、やっぱりそれって確率論で言うと万に1つなんですよね。ほとんども場合、やっぱりもっといい相手が別にいたりとかっていうことがあるので。ビジネスって確率をどれだけ高められるかということが僕はすごく重要だなと思っていて。日本だとそんなことしないわけですよね。仮に確率でやっても、まあまあこの出会いってある程度確率の高いところの出会いだよねということがなんとなく分かっているから、あとは感性でやってしまってもね、直観でやってしまってもよかったりするケースがあるんだけども。アジア新興国市場に行くとまったくその辺の状況が分からないまま、100%直観ですみたいなところって、これは当たらないですよね。やっぱり確率が高まらないですよね。だから、日本の直観とアジアというまったく知らない市場に出たときの直観って、実は同じ直観なんだけども、確率的には圧倒的にアジアの直観のほうが低いということになるので。やっぱりある程度ロジックを固めて戦略的にある程度のところまで持っていった上で最後は直観と、これはもう全然いいと思うんですけど、最初からすべて直観ですみたいな、そういうのはやっぱり失敗してきているなというふうに思います。
これは3つのパターンを紹介しましたけども、どれか3つのうちの1つというよりかは、だいたいミックスされているんですよね。どれもに当てはまってしまっているというケースがあるので、やっぱりなかなかそれではうまくいかないなというふうに思います。
だいぶ時間がね、長引いてしまったので、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回ね、中小企業のお話をしたいと思いますので、よろしくお願いします。それではまた皆さん、次回お会いいたしましょう。