森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、中小企業の海外展開みたいなところのお話をしていきたいなというふうに思います。
今日は、中小企業の海外展開に対する基本的な概念というか、考え方みたいなところのお話をしていきたいなというふうに思うのですが。多くの中小企業が海外展開に対する基本的な考え方を少し忘れてしまっている気がしていて、中小企業なのに海外に拠点を持っている会社って少なくないんですよね。でも、その財務内容とかを開いて見ていると、これだけの売上のためにこの海外拠点を維持している、何のための海外拠点なんだろうとか、何のための海外の生産拠点なんだろうというケースは結構あって。かつて猫も杓子も海外展開みたいな時代がさんざんあって、支援機関も金融機関も国も行政もみんなあおってあおって海外展開みたいなのが結構あったんですよね。とにかく海外展開=出ること、進出することみたいな、そういう時代が結構あって、それに乗って中小企業も出て行ったと。大企業の系列というか、下請けの下請けみたいになっているような中小企業なんかも一緒に出て行って、実際に大企業が現地で現地調達、部品の現地調達を始めたら、なかなか自分たちの工場を使ってもらえなくなって、かといって中小企業は自分たちで、「出てこい」と言われたので、取引先に、出て行ったんだけども、実際にその取引先が現地調達、部材の現地調達比率を高めるなんていう方針になったときに、自分たちもやっぱりじゃあ、「出てこい」と言われていたお客さん以外のお客さんに商品を納めたらいいんだけども、やっぱり中小企業なので、「出てこい」と言われて出ていった国の企業誘致に従って工場はつくれたけども、じゃあ、その市場で顧客を開拓できるかと言うと、これはまったく話が別なので、難易度とか必要なスキルセットとかも全然別なわけで、そこにはなかなか至れず撤退なんていうケースも多いわけですよね。
でも、基本的な考え方として、中小企業は何のために海外展開するんだということなんですけど、市場を求めに行くわけですよね。より多くの売上であったりシェアを求めていくんだと。そう考えた場合に、本当に国内でやり残したことはないんですかということをまず考えるということはすごく重要で。国内がシュリンクするから海外に行かなきゃ、アジアに行かなきゃって、これも1つ大切な概念なんだけども、シュリンクしようがしまいが、まだまだそこまでのマーケットシェアに国内で至っているんですか、本当にと、至れてないですよねというケースも結構あるんですよね。だから、確かに相対的には国内のマーケットはシュリンクしているんだけども、そのシュリンクの影響をそんなに受けないレベルのシェアしかまだないというケースだってあるので。もしくは、そうは言ってもシュリンクして国内の競合が淘汰されていく中、自分たちがそっちに経営資源をフォーカスしたほうが生き残る可能性が高いんじゃないの?というケースだってあるわけですよね。だから、本当に国内はもうやり尽くしたことがあるの?と、経営資源ばらけて大丈夫?ということは1つ考えないといけないし。
一方で、海外に出るなと言っているのではなくてね。海外をやるときに、戦い方がやっぱり大企業と全然違う、変えないといけないということはやっぱり念頭に置く必要があって、「いくらやりたいんですか」ということをまず考える必要があって。もっと言うと、「何年でいくらやりたいのか」ということはすごく重要で。例えば大企業、5年で100億やりたいですとか、そういう場合、現地に出るというよりか、もうM&Aしかないよねみたいな、戦略のやり方が変わってくるわけですよね。でも、一方で、じゃあ、中小企業どうですかと、5年でとにかく数億円までやりたいと、将来的には数十億円になったらいいなというレベルなのであれば、これは現地に会社をつくっては駄目ですよね、現地で人を雇用しては駄目ですよねということになるので。数億円、数十億円だったら全然輸出でできますと。もちろん外資規制のないエリアを選ぶ必要はありますけどね。なので、輸入規制がないようなエリアを選ぶ必要はありますけど。そうすると、現地に法人を出すということは、出した瞬間から出血するんですよね。イニシャルコストが掛かりますから、固定費が掛かりますから、その固定費を上回るだけの売上、利益を出さないといけないと。売上ではないです。利益を出さないといけない。それだけ大変であると。なので、現法を出すなんていうのは、ある程度事業が拡大してから出すのか、もしくは相当な経営資源があって先行投資として出していくという、こういうパターンで。中小企業が数億、しいては数十億みたいなレベルの中で現地に法人を出すなんていうのはまずもって不要で、基本的には輸出で十分賄えると。輸出でどうやって輸出する先の地域を選ぶかということと、ディストリビューターを選ぶかということと、ユーザー、インダストリーを決めるかという、この辺のことをしっかりやれば十分輸出で戦えるので、戦い方をやっぱり変えていかないといけない。
こう考えると、大企業よりも中小企業のほうがまず判断、ジャッジメントをするときに、社長の一声で全てが右と言えば右になるわけで、そうするともう圧倒的にスピード判断やりやすいと。なので、むしろ大企業よりも中小企業のほうが向いている可能性すらあるというふうに僕は思っていて、大企業でも海外展開して成功しているのってやっぱり一族系の企業のところは強いですよね。右と言ったら右にピッと組織が行くようになっているので。そういうところがより戦略的にリサーチに基づくデータを使ってより戦略的に物事を判断していったときがやっぱり最強で、全てがロジカルだし、判断も速い。なので、それの小さい版に中小企業はなれるわけですよね。なので、自分たちが求めている金額に対して最善の戦略をつくるということがすごく重要で、出ない戦略というふうに僕は呼んでいるんですけど、中小企業の場合は出ない戦略でどこまでやれるのかということをまず考えるということがすごく重要なので。進出ありきのかつての海外展開とは、アジア展開とは、全然今は時代が変わってきていると思うので、まずは進出ありきで考えない、出ない戦略でどう組み立てられるかということを最初に考えるのが重要かなというふうに思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。