森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も前回に引き続き、「強固な販売チャネル構築に必要な3つのこと」ということでお話をしていきたいなというふうに思います。
「その3つはディストリビューターの発掘選定と、契約交渉と、管理育成ですよ」というお話をして、第1章の成功の確率を握るディストリビューター、成功の確率の5割を握るのはディストリビューターの選定ですよと、ディストリビューターの選定を間違えたらもう5割を失うわけですから、言ったら成功しないということですよね。非常に重要な、言ったら成功の半分を握っているのがディストリビューターの選定で、「誰と」やるかということは非常に重要だからという話をしたと、前回。
ただ、「誰と」やるかということは非常に重要なんだけども、その前に強固な販売チャネルをつくる上で重要なことというのは何かと言うと、「誰と」売るかよりも「誰に」売るかということが非常に重要で。シェアの高い企業というのは、もう明確に「誰と」売るかということが非常に明確になっていて、それがぶれていないと。1社の例外もなく、ぶれていないですよと。なぜならば、「誰に」売るかということが決まっていると、その人に売れる人と売るべきなわけですよね、「誰と」売るかというのはね。「誰に」売るかということが明確にあって、この人に売れるという人と一緒に売らないと意味がなくて、消費財の場合は、最終的に重要なのは消費者そのものなんだけども、その手前の、特にFMCGの業界で言うと、その手前の小売というものが非常に重要なわけで、そこに売れなければ駄目なわけですよね。特にVIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンなんかは伝統小売、近代小売だけじゃなくて伝統小売もあるわけだから、その両方の小売流通を考えて、そこに流せるディストリビューターがどういう人たちなのかということを考えないといけない。規模が大きければ流せる可能性はもちろん高くなると。高くなるんだけども、じゃあ、自分たちにそれだけの経営資源をあてがってくれるんですかと。20%ネスレをやっている、20%フェレルをやっている、20%マースをやっていると、欧米のメーカーをいっぱい取り扱っていて、確かに実力はあるし、近代小売にも交渉力は高い交渉力を持っていますと。ただ、これから始める、広告予算、プロモーション予算も大して出さないような日本企業のためにどれだけ尽力してくれるのかということを考えると、必ずしも大手がいいとは限らないケースだってあるわけですよね。
この話の想定が新興国で特にベトナム、インドネシア、フィリピンなんかを想定して、私はこうして話していますけども、ベトナムだったら66万店だし、インドネシアだったら447万店、フィリピンだったら80万店の伝統小売があって、本当にそれを、例えば10万店獲れるところってどこなの?と、10万店と言わずとも5万店に配荷できるところはどこなんですかと。そもそもその前に近代小売を獲らないといけない。ベトナムだったらウィンマート、コープマート、こんなところは絶対押さえないといけないわけですよね。そこを本当に獲れるんですかと。インドネシアだったらトランスマート、ハイパーマート、この辺を獲らないといけないわけですよね。本当に獲れるんですかと。コンビニだったらインドマレット、アルファマート、本当にできるんですかと。そういうことを考えてディストリビューターを選んでいかないといけない。フィリピンだったらピュアゴールド、SM、ロビンソンズ、ガイサノ、コンビニはセブンイレブン、アルファマートも今インドネシアから来ていますからアルファマート、こんなところを本当にどうやって近代小売を獲っていくんですかということと、別途、ベトナムの66万店、インドネシアの447万店、フィリピンの80万店の伝統小売を考えていかないといけない。
そう考えていくと、FMCGのディストリビューターなんて各国数十ですよ、いいところは数十しかないので、全部をロングリストとして縦に並べてしまう。そこから絶対評価と相対評価で絞り込んでいくんですけど、絶対評価ってどういうことかと言うと、「誰に」売りたいのかということが決まっていれば、どの小売に売りたいのかということが決まっていたら、その小売に売れないディストリビューターというのは全部消去していくわけです。これが絶対的な評価で消去していくと。あと、自分たちが10億やりたいのに、今現状、売上が10億しかないディストリビューターとやったって、これは10億いかないですよね。だって、キャッシュが回らないですから。もう10億パンパンに回しているわけですから。そうすると、このディストリビューターの売上規模みたいなものも絶対評価基準になって、消去法でどんどん消していくと。ミドル、ショートとリストをどんどん、どんどん、絞り込んでいって、最終的にショートになったリスト、5社とか3社とかになっていくので、そこを相対評価していくわけですよね。相対評価、お互いに比べてどこがいいんですかということを見ていかないといけない。
これは手間がかかるけども、結局根拠が明確に絞り込めるので、「なぜここを選んだんですか」と言ったときに、「いや、いいから」とか、「強いから」「大手だから」という、いわゆる絶対的な評価軸だけじゃなくて、相対的な評価軸を持てるということは、根拠があるということですよね。理にかなっていると。ここをA社じゃなくてB社を選んだ。C社じゃなくてB社を選んだというのは、相対的な根拠がそこにあるという、これが非常に重要で、「絶対的にここがいい」みたいな話って、いや、もっといいところは別にあるかもしれないし、同じぐらいいいところもあるかもしれない。でも、確率論的にこのB社のほうが、A社よりもC社よりもD社よりもE社よりもいいんだということをね、確率論を高めるということはすごく重要で。結局、確率なんですよ、絶対なんていうのはないので。そうすると、その確率を高めるというところに努力を持っていかないといけない。
あと、ディストリビューターの機能というものもしっかり考えていかないといけなくて。普通、ディストリビューターと言うと、セールスやってデリバリーしてみたいなところがたぶん非常に重要な機能になってくるわけですよね。輸出でやるような場合はインポート機能、いわゆる輸入ライセンスをしっかり持っているかと。いや、輸入できないというディストリビューターもいますからね。そういうのを見ていかないといけないし。あと、マーチャンダイジングもどこまで必要とするのか。プロモーションもやれるとかっていうところはありますけど、プロモーションはこっちでメーカーが巻き取らないといけないので、基本的にはセールスとデリバリー機能がどうなのと。ベトナムみたいな国は、セールス機能を持っているディストリビューターは本当に限られてくるわけですよね。そんな中で、どこまでの機能を自分たちで必要としているのか、そこの機能の切り分けというのも、これは絶対的な評価の中で見ていく必要がありますよね。
こんなことをやって絞り込んでいくと、結局のところ、優秀なところというのはもう取られちゃっているんですよね。やっぱり後発というか、先進的な企業というのは良いところを押さえているので、良いところが余っているなんていうのは物理的にないんですよ、良いところは取られているので。そうすると、妥協しないといけないんだけども、じゃあ、どっちの方向に妥協しますかという話で。例えばFMCGの業界で言うと、食品か、フードかノンフードかみたいなね、ディストリビューターも食品系が強いところと日用品系が強いところ、例えば自分たちは食品を売りたいのに、日用品系のディストリビューターにお願いしても、これはなかなか成功しない。成功しているのを僕は見たことがない。日用品系のディストリビューターのオーナー社長が、「いやいや、これから食品系のディストリビューションにも力を入れていくんだということで投資をするんです」みたいなお話があれば、またこれはちょっと見当の余地がありますけども、基本的には日用品系のところに食品をやらせたり、食品系のところに日用品をやらせても、これは無理なので。基本は同じインダストリーで選んでいくということになってくる。そうすると、規模がでかいか小さいかという話になるんですけど、あまりにもやっぱり規模が小さ過ぎると、これはお話にならないので、ある程度中堅のところから選んでいく。この中堅であれば自分たちが売りたいターゲットに対してリーチはできると。リーチはできるし、あと、一方で規模が大き過ぎるとアンコントローラブル、自分たちの言うことを聞かないわけですよね。けど、中堅規模だったらまだ言うことを聞かせることができるみたいなところのバランスも見ていくと、必ずしも大手がいいというふうにはならないので、これってやっぱり売り手側、メーカー側によってどういうところがいいのかなというのはやっぱりあるんですよね。どの辺の規模がいいのかというのは、しっかり判断をしていかないといけないですよと。
あと、最終的には「スキルセットよりもマインドセットで決める」ということがすごく重要で。スキルセットって何かと言うと、僕は提案力・配荷力・資金力の3つで定義をしています。ディストリビューターのスキルセットの話をしているんですけど。小売への提案力がどれぐらいあるのか、伝統小売を含めて配荷力はどうなんですかということと、あと、ディストリビューターというのはキャッシュを回す仕事なので、資金力はどれぐらいありますか、これが絶対評価で判断をしていく。こういう提案力と配荷力と資金力がないと、基本的に僕がやりたいことはできないので、もう消去法で絶対評価で切っていきますよというのがスキルセットで。
でも、最終的に相対評価をするところはやっぱりマインドセットで、オーナー社長の人柄・思想・熱量みたいなところは、僕はもう非常に重要視をする。結局、オーナー社長が自分たちの商品のディストリビューションにどれだけの熱量をかけてくれるのかということが、彼らのいわゆる経営資源の投資につながっていくわけなんですよね。そこを見極めるということがものすごく重要で。オーナー社長と会わずにディストリビューターを決めるなんていうのはまず論外で、結局、ASEANのディストリビューターの規模なんて高々数百億ですよ。数百億の会社のオーナー社長に会えないなんていうことはないので、しっかり会ってコミュニケーションを取って彼らの熱量を測るということはすごく重要で。建前の熱量と本音の熱量とあるわけなので。
一方で、彼らの熱量をただ待っていたって、そんなものは勝手に発火なんかしてくれないので、自分たちでどうやってオーナー社長の心に火を点けるかということをやっぱりやっていかないといけないんですよね。「自分たちは良いものをつくっています。スペックは変えません。値段もこれです。はい、どうぞ、売ってください。売りたいでしょう? 売れるでしょう?」ってこんなのじゃ全然相手にされなくて。プロモーション費用も売れたら掛けるけど、売れるまでは掛けませんみたいな。いやいや、誰も知らないでしょうと。そこの最初のスタンス、こちらがその国で何を達成したくて、これをやることによってディストリビューターにはどういうメリット、世界が待っているのかということをしっかりと戦略として語らないと、向こうの熱量なんて上がってこないので、それを語った上での熱量の話をしていて。ただ普通に行って、勝手に発火してくれる熱量のことじゃないんですよね。こっちから熱量を上げていくという努力をしないで、向こうの熱量を期待するというのはそもそも間違っているので、そこもしっかりやっていかないといけない。
こういうことをして、最適なディストリビューターをしっかり選定していく。結局、間違ったディストリビューターを選定してもね、これは切り替えるのに3年4年5年とかかるんですよね。外資みたいにドラスティックにパンパンパンとやればいいですけど、何がどうなったらディストリビューターを切り替えるなんていう基準もそもそも持ち合わせていない日本企業が、1回決めたディストリビューターとお別れするのと言ったら本当に大変な労力と。じゃあ、変えようと思ったときには、駐在していた担当者は帰任しちゃって、次の人が新たに来ますと。一応、引き継ぎはしているんだけども、前任者に比べるとディストリビューターを変えなきゃいけないという危機感も薄まっているわけですよね。そんな中でなかなか進まないので、この「決める」という、「最初に決める」というところが本当に僕は重要だと思うので、話が長くなりましたけど、もう終わりますけども、まず「誰に」売るのかということを明確にしましょう。「誰に」売るのかということが決まれば、「誰と」売るのか、「誰と」売るべきなのかということが決まるので、まず概念論的にはそこですよと、ここを間違えないでくださいねと。「誰と」売るかが先じゃなくて、「誰に」売るかが先ですよと。それが決まったら、今日お話した手順で絞り込んでいくというお話でございます。
この件に関しては資料があるので、またうちのセミナー、今年はセミナーをちょっとやっていこうかなと思いますので、どこかね、会場を借りて、アメリカンクラブかどこかでやると思いますので。またホームページでも案内します。メルマガでも案内しますので、ぜひ資料ベースで聞いてもらったらより分かりやすいんじゃないかなというふうに思います。
では今日はこれぐらいにしたいと思います。また皆さん次回お会いいたしましょう。