東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、前回は内山さんを迎えて、今回も内山社長なのですけど。
森辺:内山さん、前回の最後のワンフレーズ。今の東南アジアへの取り組みは中国からの逃げなのではないかと。もちろんそうではない、東南アジアを中国と別途でセネクティに進めている会社さんもあるけれども、あれだけ中国と言っていたのにそこからいきなり東南アジアに逃げるのではないのかみたいなフレーズがあったと思うのですけど、あれが非常に印象に残っていまして、あの辺からもう1回ちょっと振り返れたらなと思うのですけど。
内山:それは、内山は中国詳しいし、中国向けの売国奴だから中国を推しているのではないかと、そういうふうにご批判を受ける方もあるのですけど、別にそういう意味はなくて。市場があるところに出て行って勝負をする。要は、それはビジネスマンとして当たり前のことで。それをやらないのはおかしなことというか、チャンスを失っているということなのですけど。要は、辞めた方が良いのは、右向け右は辞めた方がいいのではないかと思うわけなのです。みんなミャンマー行っているわ。安部さんも行ったからミャンマーに行って何かやろうと。これありません、森辺さん。良く言うと。タイに行って何かやろうと。
森辺:あります。とにかくすごいのだと。ミャンマーすごいのだ、タイすごいのだと、インドネシアすごいのだと。新興国行けばみんなすごいのです。活気ありますよという話ですから。そういうのを魚群進出と私は呼んでいるのですけど、魚群のように右にばっばっばっと。結局私も顧問先の会社さんに一番最初に言うのは、鼻から行く国を決めている会社があるのです。でたらめ行くのです。なぜですか?すごいから。活気があるから。あそこで何かできるからというのですけど、それが相対比較になっていないのです。結局マーケットとして本当にベトナムが、プライオリティーが高いのか低いのかというのを相対的に比較しないといけないので、市場環境を見るということをまずやらないとダメですよ。次にやるのが競争環境。結局市場が大きくてもそこに敵がいっぱいいたらこれは大変なわけです。かといって市場が小さくて敵がいなかったら良いかというと別問題なので、どこを取るかという話なのです。そうすると市場環境をみて、競争環境を見ます。でも、多くの会社さんは自社の環境しか見ていないので、自社はすごいのです、品質が良いのです、これを持っていたら絶対売れるのですと。根拠が全然ない。そうではなくて、自社の方は分かった、あなたたちは素晴らしい。ただ、市場環境と競争環境をやはり見て行こうねと。もう1つが流通環境なのです。流通環境というのはどういう流通構造になっているのか、アジア独特の、中国独特の流通構造があるわけではないですか。それが入って行って、本当に参入でき得るのかどうかというのを見て判断していかないといけない。これを僕は4Cというふうに呼んでいて、世の中で言われているマーケティングの世の4Cとは全く違う概念なのですけど。そういうことをやはりやっていかないといけないので、今内山さんがおっしゃったことは非常に理解できます。
内山:要は簡単に言うとあれです。自社の製品がそこで売れるのかまず考えろということだと思うのです。それが勢いだとか、行ってみたいからとか、その気持ちで行くとやはり失敗してしまう。何をやろうかを探しに行く旅は辞めた方がよくて。
森辺:それはとにかく法人を建ててから駐在を送り込んでから考えようという話ですよね。
内山:それが一番まずいパターンではないですか。
森辺:それをやり続けてこの10年、建てた会社があるのかというとないですよね。
内山:ないです。だったら今は本当にグローバル環境が整っているから、いろいろな調査ネットワークを使ってここで自社製品の競争優位性、市場で受け入れられるのか、市場のユーザビリティー的にそれが本当に利用できるものなのか、抗争的にあっているのか。そこはすぐに調査ができると思うので、まずはそこをピックアップして見ると。これはなかなか行けそうだなと。この段階で100%はもちろんなくて、僕のイメージでは50%可能性があるのではないかなと思うのであれば、現地の調査に入って回ってみて市場を見て、自分で見て歩いてちょこちょこやってみると。その必要があるかなと思うのです。
森辺:1つの仮説を立てて、それを検証していくことを繰り返しして、ある一定のところで出ようとか出ないとかを決めていくわけではないですか。そこの仮説検証のステージが非常に甘いまま、何とかだろうとこうポーンと出ちゃう企業さんが特に規模が中堅中小になればなるほど多いですよと。大企業でも、上場企業でも、こんな言い方するとあれですけど、ピンからキリまであるではないですか。そうなってくると、やはり海外に進出しましたとズドーンとIRでリリースを出すのですけど、上場企業のホームページを見ているとさりげなく「何々国の法人を閉鎖いたしました、以上」みたいなことを書いている企業さんもたくさんいらっしゃるので、やはり事前の準備が本当に非常に重要ですよと。
内山:そうです。事前の準備は結局何をしないといけないのとなると、それは専門家に、本当に公的なところとかは専門家のアドバイスを受けるべきだと思うのですけど、僕はまずそこにトップが行けと思うのです。トップが行って、その人たちが現地の人たちと触れ合って物を食べて、まず一般的な市民の文化を知るというのが必要だと思うのです。特にASEANを攻めるときというのも、それが重要になってくるのではないかと思っていて、中国の場合は本当に人口が多い。よく思い返して見ると、世界の7人に1人ぐらいが中国人なわけです。そうすると、お金持ち層を見てもそこに攻めると言っているのですけど、僕は、それ自体は、あとで言うかもしれないですけど間違っていると思っているので。いわゆるターゲット層です。ターゲット層が1つ1つとったとしてもデカイわけなのです。ですけれども、今度ASEANに移って物を考えてみると、人口はそこまで多くない。ASEANを見ればたくさんいるかもしれない。1つの国として見たときには、やはり人口が変わってくると。中国と同じような形で統一された貨幣でもないし、軍価もある程度統一されているものではないというケースがあるから、ASEANとひとくくりに言えないと僕は思っているのです。タイを攻めるならタイのやり方、インドネシアだったらインドネシアのやり方、ミャンマーだったらミャンマーのやり方。そこをやはり構築してやっていかないといけない。それに基づいて、どれだけ明確な事業計画があるのと。どこまで投資してもいいよという許容範囲を置いておくのと。その辺を決めてやっているかという話なのです。
森辺:ほとんどの会社はやっていないですね。やはり荒いですよね。
内山:本社からしてみると、おいおいすぐにこんな活性化させているのだから、すぐに黒字化しろと。無理でしょという話になるわけです。ちゃんとした事業計画。1年目、2年目は赤字なのかもしれないと。3年目は黒字にすると。というものがあったとしたら、それに伴って何が必要なのかというのをちゃんとバックアップして考えて行くと。人材に関しても予想以上に人がやめるし、作業コストはめちゃめちゃ高いし。というのも、それも考えて。今度は人事マネジメントも、では日本人を向こうに送る、送ったらコスト高いなとなるわけです。だからそれを見るときに、どういう形で本社を管理するし、現地も管理するというのをよく考えると。失敗しないのではないですか。
森辺:トップがいくということはすごく重要ですね、まず。これも僕もその通りだと思う。一方でトップが肌で感じるものがあるではないですか。これプラス、もっと広く数字で見ないといけないところもあって、肌で感じる部分は本当に気ではないですか。一部分です。行ける箇所というのは。見られるものは限界があるので。たまに自分が見てきて、ワーっと盛り上がって社長1人で突っ走っちゃうみたいなケースが結構あると思うのですけど、社長が行って自分で感じるということもそうなのですけど、それを数字的にどうなのだと。相対比較して数字を見たときにどうなのだということも、両方必要、両輪で行かないといけない。
内山:もちろんです。それは絶対必要なのです。だから社長がそれを見て可能性を感じて、理解をしてあげる必要がある。だけれども、実際に実行・運営するのは現地に任せるというのも、ある程度やるべきなのです。というのは、では日本から何も分からないような方が中国に行って、上海に行って、上海で楽しんでこいと行っていきなりトップにつれて。その人がハンドリングできるかというとなかなかできない。それよりも、本気でやるのであれば現地で、現地人で、日本の文化をよく知りつつも中国のマーケティング戦略もよく分かっていたりとかする人を、現地登用化。現地化ですね。トップにしていく。さらには、中国で長い経験を持っている日本人。自分たちは中国においては結構それなりのルートも、言葉ももちろん持っているのに、日本から来た出向者よりも給料が安いし、変なふうに扱われているなみたいな。それがまたジョブホッピングにつながっていくわけです。本当に欧米のスタイルではないかもしれないですけど、ちゃんと成果に対して報酬を出して、マネジメントもちゃんと対応としてしっかりやっていくと。そういうのをやらないと、外国人採用を進めていく企業は最近非常に増えていますけど、彼らがやめるネックは本当に年功序列制のところにうんざりして辞めていくわけです。自分の上司は自分のこと分かってくれないとか。給料も反映されないと。
森辺:お前はどうせ外国人枠だからと。何となくあれがありますものね。
内山:そこら辺の意識改革は、つまり僕らは今日本でビジネスをしていないということをちゃんと気付くべきなのです。海外の皆様方のところに行って、お金を稼がせていただくと。稼がせていただくという気持ちでいくのであれば、もっと真摯になれるし、上から目線でとりあえず金突っ込んでおくからやっておけと。そういうのではなくなると思います。物を売るときもそう。
森辺:そういったことを、気を付けながらやっていくときに、事業計画を立てるではないですか。この間、ちょうどヤフーの方をお招きしてリーンスタートアップという概念のお話をしたのですけど、そのときにあったのが、海外で事業をする、物を売って行くというのは新しい会社を創業するのにすごく近い。そういうイメージがあるのです。そうすると、あ今まであった既存の事業の来期、再来期、もしくは5カ年、10カ年とその事業計画で数字をいじって作ることを全く未知の市場でそれを作って行くのはものすごく難しいではないですか。そこで結構安易な事業計画を立てられて、いかれる会社さんがすごく私は多い気がするのです。お見受けするのです。そこはどう思います?
内山:企業の大きさ、母体の大きさによってそれも全然変わってくると思うのです。本当にデータとしての収集というところを目的とした形の会社設立もあれば、そこはコスト部隊になるわけですし、または逆に今度は販売とか製品開発という話になってくると、それはまた全然趣向が変わってくる話だと思うのです。だからこそ、何を明確にやるのかというところ自体を目的として定めるというのが必要だと思うのです。よくこういう話が、中国展開、海外展開のお手伝いをさせていただいているとあるのは、現地の企業を攻めたい。そのために、要はBtoBとBtoCという話はまた変わってくるのですけど、まずBtoCはすごくでかい話になってくるので、BtoBのサービスとして提供するために、現地の企業に物を売って行きたいという話になると、やはりなかなか日本企業は難しいところがあると思うのです。IT製品にしてもいろいろな製品にしてもあると思うのですが。でもそこにこだわりすぎてやっていくと自社のキャッシュフローが傷むのです。だから、逆に僕は中堅中小企業ぐらいの会社さんたちが向こうに出てやるときにやはり意識すべきなのは、どんなに大変だとしてもキャッシュフローを作るというところだと思うので、現地に攻めたくてもたとえばまず日系企業の中からサービスを提供して、上海だったら日系企業が数千社あると。その中で10万以上の日本人がいると。いわゆる海外においても日本のようなところがある中で、プライドにこだわり過ぎずに、まずは慣れるために日系企業さんとしっかりとお付き合いをしてキャッシュフローを作ると。そのキャッシュフローを使ってちゃんと別のところに投資をして現地化を進めて行くと。プロダクトの変更も絶対に必要になってくるので、いきなり向こうにでて合わないからキャッシュフローを作るということを意識するというのが非常に重要かなと。あともうちょっと大きくなっていきたいだとか、投資部隊としてビジネスを立ち上げると、いろいろ考えてやれと。そういう話になってくるとまた全然変わってくるので。
森辺:そうですよね。順を追ってやっていくというのが1つ重要なことですよね。
内山:そうです。あとは案外最近空中戦でも行けるというところがあるので、中国だったら会社すぐ作ってみたいな。中国政府の口車にのったように資本を落していくわけです。それは海外からの外資が欲しいので、どんどん会社を作ってください、作りやすいですよと言うけれども、抜けるとき、撤退するときは大変だし、企業マネジメントをするのも大変。だからまず、出ている会社はたくさんあるから自社製品が本当に行けるのかどうか。空中戦で勝負する。要は、販売してくれるところにちょっと頼んで売ってもらう。またはBtoC展開をするのだったら、現地に作るのではなくて、今タオパオとかいろいろそういうPCサイトは発展しているので、そこに一旦のせて効果を見てみるというのも展開としてはあると思うのです。
森辺:出たらお金はやはりかかりますからね。やはり事前に数千万単位の準備、いわゆる下調べ、仮説・検証のところで投資ができないとなかなか難しいですよね。
内山:難しい。特にこれからもっと難しくなるというのも。為替の変動も今あるので、目安ですから。ちょっとやはり無理していますよね。新興国ビジネスは実は物価が安いから安く済むのではないかと思うけど、すごくお金がかかる。そこを誤解しているのです、みなさん。そこはちょっと考えた方がいい。1,000万持っていてビジネスをしようとその考えは辞めた方がいいと僕は思っていて。
森辺:日本人がいる限り、われわれの生活水準は変わらないですからね。どこの国に行っても。
内山:逆に高いし、上海なんて本当に。僕この前上海に行きまして、最近上海のぐるなびで1番になった日本食のお店があるのです。刺身、マグロの。1枚幾らだと思います?上に乗っているのは5枚です。5枚乗っているのです、トロが。金箔も乗っていました。
森辺:350円。
内山:それでも高いですよね。900元。すごいでしょ。1枚何ぼよという話ですよね。1枚3,000円から4,000円。
森辺:それは美味しかったのですか?
内山:和の心がおいしいのですよ。ただトロをめちゃくちゃでかく切っているので。
森辺:ほどほどのネタの大きさにしてくれないとシャリより大分はみ出したのはあまりと言ったら全然関係ないですけど。すみません。そんなことを言っていると。
内山:これ実はちょっとマーケティングも関係があって。要は高くないとお金を払わないという文化があるのです。これも実際安すぎるのではなくて、付加価値の高いというふうにやるのであれば、あえて価格をすごく高くして展開してしまうと。
森辺:そうなのですよね。だからそういうところを狙っていくというのも1つですし、いかんせん全ては戦略だと思うのです。その何か難しいことを言っているのではなくて、ある程度ビジネスをする上で、誰でもそれを紙ペースに落しているか落していないか別にして戦略をもって日本でビジネスをしているわけではないですか。それと同じものを中国市場であってもアジア市場であっても持ちましょうよと。ただ戦略というのはマーケットのこと、前回お話しした市場環境と競争環境、流通環境を知らないと立たないから、それだけは最低限やるべきだろうななんていうふうには思ったりしますね。
内山:そして戦術。
森辺:それが1番難しいですからね。
内山:やくをうって術をなす。要は、戦える能力、パートナー、仲間。考えているだけではなくて実行に移せる。本当の戦術をそこで試せる。それも仲間を作るというのに非常に重要です。
森辺:なるほど。ありがとうございます。今日、お時間になりましたのでこの辺で終わりにしたいと思いますが、また次回よろしくお願いします。
内山:よろしくお願いします。