森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、過去にもこの番組でお話したことがあったと思うんですけど、あったと思うというか話しているんですけど、いつ話したか覚えていないんですけども、ASEANの伝統小売のことについてお話をしたいなと思っています。
ASEANの伝統小売が今後どうなっていくんだろうということなんですけど、うちも2020年1月のミャンマーを最後に僕もしばらく海外には行っていなくて、去年から海外へ行くようになって、もう今年は平時というような感じに戻っていますと。行けない間はうちの現地のスタッフがみんな頑張ってくれて、現地のスタッフの成長にもつながったんで非常によかった3年間だったんですけど。
こうして戻って動いていって、蓋を開けてみて、コロナ後の伝統小売の状況を蓋を開けてみると、いろんなことが大きく変わっている感じなんですよね。もう少ししないとちょっと明確な感じは見えてこないですけど。1つが、今までの議論では、伝統小売は淘汰されていきますと、近代化していきますと。それがコンビニが取って代わると、伝統小売はコンビニに駆逐されてしまうという、そういういわゆる前提があったんですよね。ここ、たぶん10年20年、そういう前提で来ていて、実際に、例えばインドネシアの伝統小売、今は447万点あるんですけど、数万店ぐらいのペースで減っているんですね。減っていますと。ただ、「じゃあ、数万店のペースで減っているから、全部アルファマート、インドマレットに変わるの?」と、2つのローカル系のコンビニですけど、2つ合わせて3万5,000店舗ぐらいある、セブンイレブンが追い出されちゃったぐらいですから、非常に強いインドネシアのコンビニエンスストアですよね。ミニマートの形態とかもありますけど。「そういうところに取って代わるの?」と言うと、やっぱり447万店ももうすでに存在してしまっていて、そこでお父ちゃんお母ちゃんがそれを運営していて、そこには家族がぶらさがっている。こういう構造を考えたら、政治的にはつぶせないんですよね。だから、フィリピンもそうです。80万店あって。今回のコロナの間、じゃあ、フィリピンとかインドネシアの伝統小売って、政府の支援、特にフィリピンなんかは政府の支援が出続けているんですよね。いわゆる小規模事業者を支援する。日本でもありましたよね、中小企業の支援策って。日本ほどぜいたくな支援は受けていないものの、やっぱり伝統小売のオーナーさんを中心に支援を受け続けていて。地元の政治家だったらやっぱりつぶさないですよね。だって、票の数にそのまま直結しますからね。なので、非常に政治的にもつぶしにくい。だから、外資規制だけじゃなくて、小売規制みたいなものを敷いて、この地区では伝統小売を保護しましょうとかね、守りましょうみたいな、そういう、いわゆる政治的な背景から守られている存在であるということが新たに明確になったというのが1つですよね。伝統小売は守られていると、これからも守られていくと、それは政治的なポイント・オブ・ビューで見てもそうだよねと。
もう1つは、伝統小売のデジタル武装なんですけど。基本的に伝統小売よりもコンビニのほうがきれいで便利だよねということだったんですけどもね、だから、コンビニにどんどん変わっていくんじゃないかということなんですけど。結局、日本の駄菓子屋だったんじゃないかと、伝統小売というのはね。日本の駄菓子屋がコンビニに代わっていったように駄菓子屋は淘汰されるんじゃないかと、そういう仮説で来ているわけですよね。なんですけど、あの時代はデジタルはないんですよ。インターネットはないんですよ。だから、淘汰されたかもしれない。けど、今の時代って、デジタル、インターネットがあるんですよね。そうすると、伝統小売そのものがデジタル化して、インターネットとつながって、例えば仕入れも全部スマホで注文できる、支払いも全部スマホでできる。これがメーカーにとって、問屋にとって、どれだけ楽なことか。だって、特にメーカーにとっては、今は紙伝票で汚いお金をね、現金を回収して、モノを渡してみたいなことをやっているのが、そうじゃなくて済むわけですよ。お金は全部オンラインでピッとデジタル決済、集金しに行かなくていい。だったら、5%負けますよとなっているわけですよね。データも全部取れる。何がどこでどう売れているかという、一番のデータですよね。メーカーが欲しいデータが全部取れる。配送は、言ったら今まで通り配るだけという話で。
こういういわゆるデジタルサービスがインターネット系の事業者が中心となって、どんどん、どんどん、サービスが展開されている、スタートアップがそういうサービスを展開してきていて、何万店単位で導入が進んでいるんですよね。そうなったときに、コンビニよりも、数百メーターおきにあるコンビニよりも数十メーターおきにある伝統小売のほうが圧倒的に便利ですよね。コンビニみたいに中央集中、中央政権というか、いわゆる中央が全部決めたことをやるのでどこへ行っても同じみたいなものよりも、むしろ分散型でそれぞれが、もちろん売れ筋は決まっているのでそうなんだけども、もっと味がある、コンビニ以上に味があるもののほうが、何となくこの一コンビニブームが数十年続いたあとの世界を考えたときにね、そっちのほうが市場としていいのではないかなと。今までって大きい組織に属して「みんなで同じ看板を掲げてやっていきましょう」みたいのが80年代90年代2000年代、ずっと主流になってきたわけですけども、「いや、そうじゃなくて、それぞれが独立してやっていきましょうよ」という生き方にどんどん変わってきているわけですよね。働き方改革なんかまさにそうで。そういうことを背景を考えると、伝統小売がデジタル武装して、物理的な不都合は対コンビニに対して無くなるわけですよね。なおかつ、いわゆる人々の幸せを考えたときに、コンビニで何かフランチャイズオーナーになるとかね、コンビニで従業員として働くとかっていうことよりも、もしかすると伝統小売の、小さい店かもしれないけど、自分で一国一城の主になってみたいなほうが幸せかもしれないということを考えたときにね、クオリティ・オブ・ライフみたいなことを考えたときに、「そっちのほうがいいんじゃないの?」ということとかも考えると、「本当に伝統小売って無くなるんだっけ?」みたいなことを考えてしまっているんですよね。
さっき言ったインドネシアの47万店の伝統小売、仮に今、毎年減っていっています。減っていっていますよ、1万店2万店のペースで減っていっています。じゃあ、ただ、これが3倍ぐらいのペースで減っていったとしたって、全部の伝統小売が無くなるのに90年以上かかるわけですよ。90年ですよ、90年、もう100年弱かかるわけですよ。そしたら、デジタル化なんて、今、想像がつかないぐらいの世界がそこに待っているわけです、100年後にね。そうすると、「本当に伝統小売って無くなるんだっけ?」と、「全部大きい店舗に行って、そこでみんな同じように買う世界が一番いいんだっけ?」と、「いや、そうじゃないよね」と。たぶん人間はないものねだりだから、いろんなものがいろんなふうに複合的にあったらよくて、それをデジタルとかインターネットが一気通貫でつないでいる、モノとお金と情報のやり取りがつながっているという、そういう世界なわけですよね。そうすると、「伝統小売って無くならないのではないの?だから、やっぱり伝統小売の攻略って本当に重要だよね」みたいなことを最近すごく考えていて。
もうちょっとこのことについて話したいんだけど、ちょっと今日はもう10分ぐらい話してしまっているので、今日はこれぐらいにしますけども、また次回ちょっとこのネタお話させてください。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。