東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、実はPodcastを、この番組が1月末をもって10万ダウンロード記録することができました。
森辺:聞きました。初めて7ヶ月ですよね。月8本出して、今ちょうど。
東:68回が配信されたところです。
森辺:いろいろなゲストの方にも快く来ていただいて、はや7ヶ月で10万ダウンロード突破するというのは大変嬉しい思いでこれもひとえにこうして聞いてくださっているリスナーの皆さんのおかげだと思うので、この場をおかりして皆さんにお礼を申し上げたいと思います。皆さんありがとうございます。
東:皆さん、ありがとうございます。今日は『フジサンケイビジネスアイ』という日刊紙があって、フジサンケイグループの。その中でイノベーションズアイという企業情報サイトがオンライン版であるのですけど、その中のグローバル欄で前回大石先生、明治大学の大石教授と対談されたと思うのですけど、まだまだ見ていない方もいらっしゃると思うので、1つはぜひ見ていただきたいのと、ここで話している内容が意外と皆さん面白いと言われるのですけど、まだ見られていない方も多いと思うので、具体的にどういう対談をされたのかというのが。
森辺:フジサンケイのイノベーションズアイのサイトで、「グローバルの流儀」という、私とどなたかと対談をさせていただく枠をいただいていて、第1回目のゲストで明治大学の経営学部の大石教授をお招きして大石先生と対談をしたのですけど、大石先生というのはグローバルマーケティングの研究をされていて、私は大石先生が第一人者だといつも申しているのですけど、日本企業の海外展開とか、海外マーケティングみたいなところに詳しい先生なのです。その先生と日本企業にとってのグローバルマーケティングの課題は何なのだろうということを、お話をずっとさせていただいていて、簡単にまとめると日本企業というのは営業力が非常に強いよねと。一方でマーケティング力が弱いと。コトラーはマーケティングとは営業をなくすことだと言っていると。マーケティングとはいわゆる市場のニーズに答えて利益を上げること、ビジネスそのものなわけです。そのマーケティングの中で代表される4Pとかマーケティングミクスという言葉があると思うのですけど、プライス、プロダクト、プレイス、ごめんなさい。プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションと。4つのPです。この中で日本企業はどうしてもプロダクトが先行してしまうと。物ありきでグローバル展開をしてしまうと。でも、実際アジア新興国なんかだとプレイス、つまりチャネルです。ここから始まっていく話しであって、そのチャネルを作るということをもっとプライオリティを上げていかないともっともっと言うと、プロダクトより前に置いていかないとなかなかマーケットが取れないですよというお話をさせていただいたと。
東:グローバルマーケティングの4Pはプレイスから始まるということを大石先生がおっしゃっていたということが書いてあるのですが、そういう理解でよろしいのですか?
森辺:そうです。
東:国内の場合は、4Pは普通の場合だとプロダクトから始まるけれども、それが海外マーケティングとかグローバルマーケティングとなってくると4Pの最初のPというのがプレイスになってくると。
森辺:プレイスを重要視すべきですよねと。日本企業はプロダクトが十分できているのだからそこは良いと。最終的に海外に物を売って困るのと言ったら高いと言われるのと、売ってくれる人がいないという、流通させられないというその2点ではないですか。プロモーションのP、最後のPというのは流通が通れば、チャネルに商品が流れるストラクチャーができてしまえば、プロモーションを打っても響くわけです。けどチャネルがないのにプロモーションを打ったって全然響かないので、やはりチャネルですよねというお話で対談をしていたという話ですね。
東:なるほど。もう少し細かく話すと、具体的にグローバルマーケティングのチャネルを構築するさいとか、そういったところで大事なところはどういったところだということをこの対談の中では。
森辺:この対談の中では外資なんかと、外資系企業のほうが消費材、日用品とか食品なんかというと先行しているわけです。その海外なりし、アジア新興国のマーケットは。結局そこの要因のチャネルにありますよと。チャネル構築の3つのポイントとして大石先生がいいパートナーということと、営業チャネルの違いを理解する。営業とチャネルの違いを理解するということと、資金回収の仕組みづくりみたいなお話をされていて、良いパートナーはみんな欲しいではないですか。いいパートナーをいかにして見つけるのかと、非常に大変なのです。ですけど、そのいいパートナーがチャネルだったりするわけで、それをしっかりとやっていかないといけないので、何かこう良いパートナーに突然出会ったら良いなとか、そういう出会いみたいなことではないよねというお話が1つと、あと営業というものとチャネルというものは全然違いますよと。日本で我々がやっているのは営業なのです。チャネルづくりなんてやっていないのです。だってもうチャネルがあるから。けど、海外に出るとチャネルをゼロから作っていくわけなので、そこが全く違いますよと。死ぬ気で頑張れと駐在員を送ったって、そんなスキルセットは持ち合わせていないでしょと、そういう話しです。特に日本企業というのは営業とチャネルを混同してしまいますよと、そんなお話をしていたと。
東:結構ここは意外と盲点だと思っていない。大石先生自身もおっしゃっていたと思うのですけど、日本企業が営業とチャネルを混同してしまうというのは、未だにBtoBの企業が特にそういうことが起こりがちだと思うのですけど、それは森辺さんの肌感覚だとどう思われますか?
森辺:そのとおりです。根性論の営業、全く通用しないです。結局大石先生も言っていましたけど、頑張れとか物を売るより人を売れみたいなそういうことを言うわけではないですか。人なんて言ったって外人は買ってくれないですから。そういう話ではなくて、チャネルをやはり作るということと営業をするということは別問題。チャネルを作ったあとに営業力というのは上乗せされる、かさましされる領域であって。そうではないよねと。
東:ここの4P、マーケティングで言う4Pというのはプレイスであってチャネルづくりであると。いい表というのはこの4Pの中で言うとどこに当たるのですか?プロモーションに当たる?
森辺:プロモーションに当たるのでしょうね。
東:プロモーションに当たるという認識がそもそも、どちらかというとプレイスに営業が当てはまるのではないかみたいな考え方をすると思うのですけど。
森辺:日本だと、どうしてもプロモーションというと宣伝、広告、PRみたいな認識が。
東:テレビCMとか。
森辺:そうです。強いですけど、そうではないよと。営業はそっちだよと。だから先にチャネルを作らないといけないし、大石先生ももう1つ言っていたのがチャネルづくりでアーキテクチャーなわけです。だから、芸術作品と言ったらおかしいかもしれないですけど、いかに自社の商品を流通させるためのアーキテクチャーをつくるという話しで。
東:構造をつくって。
森辺:構造をつくっていくという。その構造ができていないのに、いくら営業したって意味がないという話で。欧米外資はそこが非常にしっかりしていますよと、そんなお話です。
東:なるほど。そうすると欧米外資というと前回、結構前にグローバルトップテンのFMCGカンパニーみたいな話があったと思うのですけど、世界的なランキングで見ると小売なんかベストテンにはもう日本企業は全然入っていないよと。特にFMCGは外資のトップテンが、ここで世界の人々が生活できてしまうぐらいみたいな感覚までいっていると思うのですけど、FMCGというのはそもそもどういったことを言って、そのトップテン企業はどういったところなのかというところを教えていただきたいのですけど。
森辺:FMCGというのは略称なのですけど、「Fast Moving Consumer Goods」の略称でFMCGという。どういうグループなのというと、日用品とか食品とか雑貨とかそういうものをイメージしてもらったらいいと思うのですけど、世界のトップテンのFMCGカンパニーはどういうところなのだろうと言うと、例えばコカコーラ、ペプシコ、クラフト、ネスレ、P&G、ジョンソンアンドジョンソン、ユニリーバ、ケロッグ、マースとかああいうところを言うのです。こういうところが世界のトップテンで、世界人口70億の内の大半の人たちがこの今申し上げた会社の商品を食べたり、使ったりして、いわゆる一般的な生活が済んでしまっているのです。一方で日本にも非常に力のあるFMCGのメーカーさんはたくさんいるわけなのですが、当然日本は少子高齢化で高齢化してきたら1人当たりの胃袋の量も減るし、食事の回数も減るし。当然国外に利益を求めないといけないわけです。その中で1番成長が著しいアジア新興国という風になるわけなのですけど、なかなかチャネルづくりに難しさを感じうまくいけていないという、そういう現状があるわけです。僕自身このFMCGというのは非常に興味深い分野だと思っていて、弊社でも非常に力を入れている分野ではあるのです。ここで優秀な日本企業が世界を設計していくという世界観を僕はまだ作れると思っていて、ただやはり欧米企業から20年ぐらい遅れているのです。そこをこの20年の時間をどうやって埋めるかというと、かなり血の出るような努力をしないとなかなか埋まらないでしょうというのが今の現状です。
東:少し時代の流れを振り返らせていただくと、結構日本企業は1970年で早ければ60年代くらいから海外に出ていったと思うのですけど、それでもそのチャネルづくりというところで限定してしまうと、今の森辺さんが言う15年とか20年の遅れが発生しているというのは、どういう構造になっているのですか?
森辺:全体的な流れを言うと、60年代、70年代に出て行っている会社さんというのは確実に生産拠点の移転で出て行っているのです。日本で作って日本で消費している食品だったり、日用品をより安く作るために中国で餃子を作ったりとか。一時期話題になっていましたよね。東南アジアでせっけんの材料を作ったりとか、タイでおむつを作ったりとか。そうやって移転をさせていっているわけです。
東:それはもう家電も車も一緒だと。
森辺:家電も車も全部一緒です。その中で移転をさせることによって安い労働コストで作るわけではないですか。けどそこで作るということは、そこの国で生産をして出荷をされて、そこの国の人を雇用しますからその国が豊かになっていくわけです。豊かになってきたら今度はそこに作ったところが消費マーケットになってしまうのです。そこを消費マーケットとして捉えて活動した時期がさっき言った欧米10社に比べて日本企業は20年も遅れてしまっているという、そういう話なわけです。
東:何で20年遅れているというのを感じるのですか?
森辺:先行投資をしないといけないわけです。例えば、20年前とか15年前にユニリーバとかP&Gがアジア新興国でやっていたことは石鹸で手を洗うという習慣のない人たちにいかに手を洗わない、洗っていない手で食べ物を食べることが体にとってばい菌とか病気になりやすいかという教育をまず始めるわけです。そこから殺菌効果の10倍のせっけんをものすごく小さい、安い形で配って手を洗う習慣をしてみたいな、教育からはじめていくわけです。
東:なるほど。ない習慣を身につけるようにP&Gとかユニリーバとかジョンソンアンドジョンソンは教育をしていくと。
森辺:そうです。そういうことをずっと投資をし続けてくるわけです。これは別に今言った3社だけではなくて、他のところだってそうです。食品にしたって何にしたって、チョコレートはこんなにおいしいのだと。食べたことがない人たちの口にチョコレートを入れていくわけではないですか。結局もうからないわけです。あまり買わないから。例えばシャンプーとかもボトルでは売れなかったわけです。昔ホテルであったような1回使い切りの。
東:ビニールの小袋ありましたね。
森辺:あれをパパママショップでいっぱい並べるわけです。1カ月に1回しか頭を洗わなかった人たちが2週間に1回洗うようになって、1週間に1回洗うようになって、どんどん裕福になってくると毎日洗うようになってくる。日本人みたいに毎日お風呂入って体こすってシャンプーをしてリンスをしてなんていうのは、ないわけです。でもいつかそうなると。先進国並みになると。そのときに、あのときP&G、ずっとあのときから使っているからP&Gのボトルで買おうと。
東:そうすると結構戦略的に、例えば今を見て20年前に投資をしているというような感じなのですかね。
森辺:そう。めちゃめちゃ戦略的に中長期で投資をしていって。BOPビジネスというのです。Base of Pyramidのビジネスで。いわゆる所得をピラミッドにしたときに一番ボトムの層です。貧困層という人たちに対して手を洗う習慣、シャンプーをする習慣。例えば分からないですけど食べる習慣みたいなことをずっとやり続けていくといつかその人たちが裕福になって中間層になってくると。中間層の上位中間層になったぐらいから消費が拡大するので、その時期を見定めて先行投資をするわけです。
東:なるほど。その辺が長期的な視野で見て戦略が構築されているのがやはり欧米企業だと。分かりました。今日はもうそろそろお時間なので、続きは次回ここから始めたいと思うのですけど。今日は森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。