第477回 【本の解説】必ず「戦略」を作成し語る
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。今日はね、195ページの「必ず「戦略」を作成し語る」ということでお話をしていきたいと思います。ここね、この章タイトル、あまり良くないね。ちょっと次の重版のときに変えようと思いますけど。「会社概要ではなく戦略を語れ」とかね、そういうタイトルにすべきだったなと、今、反省をしております。早速お話をしていきたいと思うんですが…。
どういうシーンを想定してこれはお話をしているかと言うと、日本の製造業がアジア新興国市場に行って、ディストリビューターとファーストアプローチから入って、ディストリビューション契約に向けて話をしていくと。こっちも向こうを見極めているし、向こうもこっちを見極めている中で、日本企業はなかなか戦略を契約前にしっかり語るということをやらなくて、実績を語るというケースが非常に多くて、何を自分たちはどういう会社でどんな良い製品を持っていて、日本でどんな実績があるかみたいな、そこがやっぱり話の中心になってしまう。一方で、ディストリビューターが聞きたいのは戦略で、どういう戦略で何を目的にこの市場に入ってきて、どういう世界観を描きたいのみたいなところを聞きたくて。そのために自分たちはどういう役割で何をしてほしいのというところを具体的に話したい、聞きたい。それが合えば契約という話になるんですけど、そこのギャップがやっぱり非常にあって。過去何百社という企業をディストリビューターに、新興国市場のディストリビューターに連れて行きましたけども、かなりやっぱりそこが前置きが長いというか、日本企業らしいなというところがあったので、そのことについて今日はちょっとお話をしていきたいなと思うんですが…。
ちょっとスライドを見てもらったほうが早いですかね。スライドをちょっと見てもらって。ディストリビューターとお話をしていくときに、契約までにどれだけのことを握れるかということがすごく重要で、戦略を握るということは重要なんですね。KPIを握る、そして目標値を握る、コミットメントを握るという、契約してからいろんな戦略をつくるのではなくて、契約前にどれだけ戦略を握れるかということがすごく重要なんですけど、日本企業の場合はとにかく契約、契約ありきなんですよね。契約して、そのあといろんな戦略を考えていきましょうということがベースになっていて。契約前に話すことって、弊社の製品は高品質で日本では売れているとかね、日本での実績とか、弊社の売上は何千億ありますよと、100年の歴史があるとか、日本で上場しています、業界何位ですと、何万人の従業員がいますと、世界中に拠点を持っていますみたいな、こういう会社概要的な情報が多くて、戦略に関するお話がやっぱり弱いというか、少ないというか。契約前に本来は戦略を握らないといけないということに対する認識が低いと言ったほうがいいのかもしれない。
ディストリビューターは何を求めているかと言うと、彼らが知りたいのは理念と戦略と書いていますけど、いわゆるフィロソフィー的な、どういうビジョン、ビジョンといったほうがいいのかな、ビジョンで何の目的に対してどういう戦略でこの市場に入ってきているの?この国でどんな戦略で何を一緒に実現したいの?ということをやっぱり明確にする必要があって。皆さんの会社が大手で実績が国内ではあるということは、もう向こうはよくよく知っていてというか調べていて、それよりもこの国でどんな戦略で何を実現したいの?その先には何が待っているの?ということが知りたいわけですよね。だから、われわれのビジョンとかフィロソフィーというのはこういうもので、それを実現するための戦略はこう考えていて、貴社にはこういう役割を担ってほしい。われわれはこういうことを実現するためにこの国に参入したいんだ。われわれの戦略の実現性はこうなんだよ。これを実行すると貴社にこんなメリットがあるんだよみたいなことを深く話す必要があって、むしろ向こうもそれを待っているわけですよね。なんですけど、どちらかと言うとそういう話っていうのは走りながら、契約してから、とにかく契約しましょうと、契約書自体も当たり障りのない契約なので、とにかく契約ありきというところが前に行ってしまうんですけど。でも、実はここのところがうまくかみ合わなければ、そのディストリビューターと組むべきでないわけですよね。自分たちのやりたいこと、実現しようとしている方法論、向こうにやってもらいたいこと、ここが合わなければ契約をそもそもしちゃいけない話なので、やっぱりその辺の前提が契約ありきで契約後に戦略をつくるのか、契約前に戦略を握るのかという、この違いがやっぱり非常に大きいので、そこをしっかりと注意して取り組まないといけないという、そういうお話でございます。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。