東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、前回コストコのフィリピン版ということでS&Rというスーパーマーケット、会員制スーパーマーケットをご紹介したのですけど、一方でこうやってモダントレードの中でも本当に富裕層が買うスーパーマーケットだと思うのですけど、一般的に貧困層。まだまだフィリピンも富裕層よりも圧倒的にボトムの貧困層だったり中間層のちょっと下ぐらいの人たちが多いと思うのですけど、そういう人たちはどこで買っているのですか?物を。
森辺:前回少しお話をしたかもしれないですけど、近代小売りと伝統小売りにフィリピンを分けたときに、まだ15%から20%ぐらいと言われているのです。大半がやはり8割ぐらいがまだ伝統小売りなのですけど、インドネシアでもインドでも一緒で呼び方が違うのですけど、こっちではサリサリストアと言われるSSSとか言われるのですけど。
東:インドネシアだとワルンと言われていましたね。
森辺:そうです。
東:では、フィリピンだとサリサリ。サリサリはどういう意味なのですか?
森辺:「いろいろ」という意味で、サリサリと。いろいろ置いてあるのですけど、写真か何か見たら良いと思うのですけど、イメージ的には昔の駄菓子屋みたいな。駄菓子屋なのですけど、アメリカの銀行みたいに柵がガーンと付いているみたいな。
東:鉄格子みたいな。
森辺:鉄格子がバーンと付いていて、その鉄格子の下に小さな窓が空いているわけです。鉄格子の外からあれくれ、それくれ、よれくれと言って下からお金を払って商品をもらうみたいな。
東:イメージとしては、入り口は銀行の窓口の入り口ですと。それがプラスチックのケースではなくて、鉄格子になっていて、中に全然入れないようになっていると。
森辺:サリサリ強盗みたいなのがいるわけです。
東:それはやはり治安が悪いですね。
森辺:治安が悪いです。駄菓子屋なわけなのですけど、お菓子の駄菓子屋ではなくて、そこに生活用品がいっぱいあるわけなのです。結局こういうところで買っているのです。これ非常に面白いのですけど、いわゆる前回お話をしたその近代小売りというのが1つありますねと。もう1つが伝統小売りというのがあったときに、この伝統小売りは、サリサリはフィリピンに70万とも110万とも言われているのです。
東:分からないのですね、数が。
森辺:それぐらいの数があって小さいところから大きいところまであるのです。おばちゃん1人でやっていて、食料品から日用品までいろいろな物を置いてあって、結局前回も前々回も話しましたけど、低所得者層はその日暮らしだと。日当払いですよとお話をしましたけど、職もその日に探していると。中間層であったって、給料日が2回ある、15日と30日に給料日が2回ある。いかに個人のキャッシュフローが悪いかという話しで、このサリサリショップと近代的なスーパーと何が違うの、圧倒的な違いはバラ売りかパッケージ売りかどちらかなのです。結局ホールセールみたいな人たちが中間問屋さんみたいな人たちが、デカイ都心のマーケットとかスーパーとかに行って10個入りの商品を買ってきて、それをサリサリにバラで出していくわけです。サリサリはちょっと高いわけです。一般的なスーパーよりも。たとえば10円のものを11円で売っているわけなのです。その11円の商品を10個の商品に分けて売るので、1消費者からしてみたら割高だけどスーパーで10個買えないからサリサリで1個買うみたいな。タバコも1本売りみたいな。
東:飴とかも?
森辺:飴とかも1個売りという。日本だと我々その20個ぐらい袋に入った飴を買うではないですか。たとえば僕の好きな龍角散ののど飴は1つの袋に生で何十個も入っている。
東:パッケージになっていますよね?
森辺:パッケージに入っています。なんですけど、こっちの飴は全部包んであるのです。1個1個。何でかと言うと、20個入りのパッケージの飴をホールセラーが買ってきたらそれをサリサリではバラ売りをするわけです。だから、ホールセラーがスーパーマーケットにいってその飴を買ってきますと。そのスーパーマーケット行ってもホールセラー用のレジレインというのがあるわけです。大量に買う。その買ってきた飴をサリサリに100円でワンパッケージ買ったら、サリサリはそれを105円とかで買うわけです。そこに自分の利益を乗せて110円で売るのですけど、10個入りの飴を10個に分けて売るから、買う人にとってみたら5%から10%ぐらい高くなっているのだけども1個ずつ買えるという利便性があるわけです。
東:キャッシュフローとさっきからお話されていますけど、イメージとして具体的にどういうことなのか、多分日本にいる方は給料が毎月1回で、それで暮らしているのでキャッシュフローという観点があまりないような気がするのですけど。
森辺:要は日本の場合たとえば新入社員でも月収20万円もらえますと。そうすると家賃に10万円払って、残りの10万円で生活をして。この額がそもそも大きいからシャンプーはボトルで買うではないですか。米も袋で買います。何でもまとめて買ってそれを備蓄しますよね。それだけ、いわゆる生活必需品を1ヶ月分まとめて買うだけのキャッシュフローがあるのです。
東:お金が手元にあると。
森辺:ただ、こっちの人はたとえばその日暮らし。今日の仕事は今日探してやるとか、今日いくら稼げるかわからないという人たちは1ヶ月分の生活必需品を買うなんていうことはないわけです。
東:買えないのですね、そもそも。
森辺:もしくはお金がなかったら毎日頭を洗わない、シャンプーを使わない。3日に1回、5日に1回という話しなので、使いたいときに使いたい分だけを買うというのがすごく重要なわけです。だから、そういう意味ではサリサリストアというのがものすごく広がっていて、こういうところで買い物をしている。要は近くにあって便利だからというのも当然あるのですけど、そもそもいっぱい買えないという、そういう理由があってこのサリサリが70万店とも110万店とも言われているのですけど、存在していると。
東:そういう人たちがスーパーに行っても値段の問題が1番で、まとめて買ってもその日に使わないし、そんなの買っても買える人もいるし買えない人もいるし、みたいな感じなので、サリサリストアが広がっているという感じなのですね。
森辺:そう。特に貧困層の居住区とか行くと、ドアの鍵なんて蹴り破ったらドアが開いてしまうようなところなわけです。そこにお米とかトイレットペーパーとかいろいろな物を置いておいたら盗まれてしまうかもしれないではないですか。そんなのは無理なわけですよね。そういう観点からもやはりその日、その日という。そんなイメージです。
東:貧困層の、貧困層が集中しているようなところに森辺さんと行きましたけど、どういう印象を受けられましたか?
森辺:インドのスラムよりはかなりましというのはありますよね。インドとかブラジルのスラム。ブラジルのスラムとかは身の危険をめちゃめちゃ感じるので、全く別次元ですと。インドのスラムも身の危険は感じるものの、ブラジルに比べたら大分ましだし、一方で汚さがかなり耐えられないぐらいの。
東:匂いもすごいですよね。
森辺:匂いもすごいし、スラムですよね。フィリピンはそれよりはましですけど、一応スラムではないので。貧困層の居住区だったので、ただやはりビックリです。だいたい我々が行ったのが、家賃が2,000ペソとか、1ヶ月の家賃が2,000ペソとかそういうところ。
東:2,000円とか5,000円ぐらいですね。
森辺:6畳一間の2階建てみたいな感じで、電気は電球むき出しだし、昼は窓がほとんどないから家の構造上。
東:結構まっくらでしたよね。
森辺:真っ暗だけど電気はつけないという。テレビはブラウン管テレビがありましたけど、他の家電製はあまりないみたいな。あとプロパンガスですよね。キッチンは。
東:結構玄関先には犬が。
森辺:犬がいるところが多かったですよね。
東:多かったですね。あれは治安の関係なのですかね。
森辺:寝ているときにドア本当に入れるではないですか。蹴り破ったらね。だからワンワンという犬がいるという。あとドッグファイトとか、鶏も全部食べるのかなと思ったらチキンファイトさせるために飼っているとか言って、いうのが多いので、そういうのがありますよね。サリサリの鉄格子を見たら治安がどれだけ悪いのかと、あと配達するトラックあるではないですか。あれによく日本だと広告が書いてあったりしますよね。けどそれを全く消して緑とか黒とか青とかに塗っていて中に何が入っているか分かると襲ってくるという、そういうのもあるのでやはり治安は悪いし、現金輸送車を見たらだいたいその国の治安が分かるのです。日本だと日通とか普通のいわゆるハイエースのバンではないですか。棍棒みたいなのを持っているだけですけど、こっちは思い切りショットガンだし、香港みたいな装甲車みたいな車で現金輸送をしているので、あれを見たらどれだけ治安が悪いかと。香港の場合はもう治安は悪くないけど、昔というのと、あとメインランド中国のあれがあるから未だに流れで装甲車みたいなのが走っていますけど、基本的にはフィリピンもそんな感じです。
東:その人たちはそこでどうやって暮らして、どうやってというかどんな感じで暮らしている印象でしたか?
森辺:働いていないですよね。まずクリスチャンで、子供が出来たら産むではないですか。おろすという選択肢はないので産みますよと。一方で旦那さんどうしているかというと、寝ている。家の中で寝ていたりとか。
東:女性の方が働いているイメージがあって。旦那さんはサリサリストアでも、奥のソファなのか汚いベッドに寝ているみたいな。
森辺:上半身裸かTシャツの腹をだして上までめくって寝ているという、そういうイメージです。あまり働かないですよね。そりゃ低所得になるでしょというのは感じて。一方で職がないというのもやはりあって、結局やることは運転をするとか何かそういうことになってしまう。確か失業率6%ぐらいに収まっていたはずなのですけど、やはりそういうのはありますよね。
東:そうするとやはり一般的なイメージとして、アジアだとやはり女性の方が働いて男性は少し怠けているわけではないけど、女性の方が優秀というか。
森辺:というのはありますよね。僕もこっちのパートナーの会社と社員なんかも女性がやはり多いですよね、ホワイトカラーの女性がすごく自立しているというか。
東:日本だとやはり女性のマネージャーはまだまだ少ないですけど、こっちだと逆に女性の方が、マネージャーが多いのかなというイメージがあるのですけど。
森辺:そうですね。女性の方が、シニアエグジクティブが多いです、結構。よくこっちの企業の社長さんと会うと女性のアシスタントマネージャーみたいなのを連れてくるのです。だから、なんか愛人かなと思うのですけどどう見ても違うだろうと、年齢的にも。女性が多いというのと、あとフィリピンだと家政婦さんいるではないですか。家政婦さんなんかも世界中に飛び散っているわけです。これ全部女性ではないですか。うちの家でお掃除してもらっている家政婦さんもフィリピン人なのですけど、彼女はフィリピン本土に14歳の娘を残して日本に来ているという。ちゃんと身元引受人があって、日本でちゃんと働いているのですけど。女性は海外進出をするわけです、フィリピンの。家政婦市場を見たってそうなのですけど。
東:看護師とかもそうですよね。
森辺:男性は何をやっているかというと、本国で人力車みたいなので寝ているみたいな。そんなイメージを。すみません。フィリピン男性陣には大変申し訳ないのですけど。
東:あくまでも一般的な。
森辺:一般的なイメージがありますよね。
東:なるほど。そうするとある意味女性が家計を支えているという一面もあるのですよね。ちょっと貧困層の話しに戻ると、そういうところで暮らしている人たちがだんだんスピードは遅いか速いかは別にして、中間層になっていくことによって、やはりピラミッド型からひし形になってくるというような。
森辺:そうです。そのスピードはアジアの中でも今最もフィリピンが安定しているし、やはり速い。なので、インドネシアにすごく注目が行っていますけど、フィリピンも忘れてはいけない非常に重要なエリアであるということは1つです。
東:これから海外進出を考える企業、もしくはこれからエリアを広げていきたいという企業の中で、フィリピンは今進出している企業も大分ありますけど、まだまだこれから増えそうな感じを私もここに来て受けるのですけど、そういった消費市場としてフィリピンを見ている会社さんなり、企業担当者に対して、森辺さんなりに最後になにかお伝えすることとか、アドバイスをいただければと思うのですけど。
森辺:消費市場を攻める場合にはやはり近代小売りと伝統小売りのそれぞれの戦略を明確にもたないと欧米がかなり先行して入ってきているので、いわゆる日系は出遅れで出て行くわけです。
東:後発になって。
森辺:後発で。そのときに欧米は大きいところだとこの国と何十年と付き合って、何十年も投資をしているのです。
東:5、60年。
森辺:付き合っている所もやはり、アメリカのメジャーなんかはそうです。そうすると明確にこの国の流通構造と小売り市場を理解して、それを理解すると伝統小売りと近代小売りみたいなのが全く分かれていると。入り口が。けど実は下でつながっていたりするのです。そういうことを理解しながら明確にそれぞれの戦略をもたないと、生半可に出て行って何か上手くいっちゃうようなマーケットではないというのが1つです。
東:生半可に出てはいけないというのは1つだと思うのですけど、市場としての魅力というのはきちんと戦略を立てた上で、戦えるのかこれから当然伸びていく市場だと思うのですけど、市場としての魅力はどう考えていますか?
森辺:十分あると思います。インドネシアと同じくらいは大きな魅力的な市場だと思うので、どこでもそうです。たまたま行ったらやれちゃったなんていうのはないではないですか。アジアだったら。だから市場としては十分面白い市場だし、これからもっともっと日本企業がフィリピン市場をこう取っていく必要があるのではないかという気はします。
東:分かりました。では4回にわたってフィリピン版ということでお送りしてきたのですけど、最後にリスナーの方に一言、フィリピンからをよろしくお願いします。
森辺:海外出張し過ぎて東京が一番いいと思っている森辺でございます。まだまだ帰れませんが早く東京に帰れればなと思っております。また、海外収録はこれからも東と一緒にやってまいりますので、今後とも森辺一樹のグローバルマーケティングをどうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
東:ありがとうございました。