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第502回 【本の解説】Q&A ケース5 伝統小売が近代化するまで待ってから参入するのはダメか その1

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は258ページ、「ケース5 伝統小売が近代化するまで待ってから参入するのはダメなのか」ということについてお話をしていきたいと思います。消費財メーカーにとって、この新興国市場、ASEANであったりグローバルサウスと言われるような国々に展開する際に、伝統小売というのは非常に重要な小売で、切っても切り離せないぐらいに重要な小売です。これらの伝統小売というのは、国の発展に伴って徐々に近代化していくわけなんですよね。なので、この質問というのは、ケース5というのは、「それら伝統小売が近代化してから攻めたのではダメなの?」と、伝統小売を攻めるというのは非常に大変で、日本企業の消費財メーカーの多くはこの伝統小売の攻略に問題を抱えているんですよね。近代小売には何とか商品を入れることはできるし、そこでそれなりにセルアウトさせることもまあまあできると。ただ、一方で伝統小売が難しいので、「全てが近代小売化してから出ちゃダメなの?やるじゃダメなの?」と、こういう質問なんですよね。

結論から先に言うと、それではダメですと。なぜならば、それでは遅過ぎるということと、あと、伝統小売が全て近代化はしないというのが私の見解で。これはどういうことかと言うと、伝統小売が大きな流れとして近代化していくということ、これは間違いないんですよね。ただ、この手の質問をする人というのは、日本の高度成長期のいわゆる伝統小売、駄菓子屋が一気に近代化していった、コンビニ化していったという、こういう背景を見ている、知っているので、ASEANであったり、新興国もそうなるんでしょうと、グローバルサウスの国々もそうなりますよねということを言っているんだと思うんですけど。これは小売単体では近代化って成し得ないんですよね。日本の場合は、小売が近代化するために必要だった基本インフラ、例えば水道・ガス・電気とか、物流網、それこそ荷物を運ぶような高速道路網が北海道から沖縄まで津々浦々急激に近代化できたので、小売もそのインフラに乗っていますから近代化できたということなんですよね。これらのインフラが近代化しないのに、小売だけが単体で近代化するなんていうことはなくて。

そうして見たときに、例えば、じゃあ、ASEANのね、各国VIPの都市計画、インド、各都市の都市計画を見たときに、それだけ早いスピードで高速道路網が整備されるかって、国土交通省の計画を見ると、そんなことはなかったりとか、その他の新興国市場でも、国土交通省の向こう5カ年、10カ年の都市開発計画みたいのを見ていくと、そういう状況にはなっていないんですよね。それがそうなっていないということは、小売が単体で近代化はできないので、そうすると、なかなかそれは難しいよねということになっていくわけなんですよね。まず、それが1つの理由ですと。小売は小売単体では近代化しないですよと。その他のインフラ、特に物流ですよね、システムもそうだし、電気もそうだし、例えば新興国市場、まだ夜は薄暗いですよね。あれはなぜ薄暗いかと言ったら、電力の供給が足りていないんですよね。先進国の夜って明るいじゃないですか。でも、新興国の夜ってすごく薄暗い、首都に行っても薄暗かったりする。これってまだ電気の供給が行き届いていない。そう考えていくと、この基本インフラの近代化と同時に伴って小売が近代化されるので、国家が、国土交通省が発表している都市計画、これをやっぱり見ていくと、近代化がいつぐらいにしそうかということが見えるんですよね。そうすると、向こう数十年、伝統小売が完全に近代小売化するなんていうことは有り得ないので、そうすると、その数十年の間に市場の勝者というのは決まってきちゃうわけですよね。そうすると、この「待ってから参入する」というのでは、なかなか難しい。数十年経って、小売が完全に近代化、仮にされてね、出て行って、「さあ、私たちは日本企業です。近代化されたので出てきました」と言って出て行ったときに、伝統小売のときから慣れ親しんでいる商品を買っている人たちが日本の商品に目を向けるかと言うと、私はそんなことはないだろうなというふうに思うので、「待ってからではダメですよ」というのがまず1つ目の理由です。
2つ目の理由はね、実はこれは伝統小売のデジタル化とか、あとこのコロナ禍の3年間でなぜ伝統小売が生き延びたのか。国によってはね、10万店以上増えている国なんていうのもあるんですよね。その辺についてのお話をしていきたいなというふうに思います。

それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。