森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も前回お話した、弊社の自社セミナーでちょっとお話してなかなか参加者の方に受けがよかった内容を、少しかいつまんでご紹介していきたいなというふうに思っております。
前回、東京アメリカンクラブで3年振りにセミナーを開催しまして、その内容で。この3年間のコロナ禍、パンデミックの最中に、アジア…、アジアというか、ASEANですよね、ASEAN6、特にASEAN6の小売市場と流通環境がどういうふうに変化していったのかみたいな、少しポイントをお話していきたいなというふうに思っています。2年目の後半ぐらいからね、だいぶ小売市場も復活をしてきていて、1つ近代小売の市場で、伝統小売と近代小売とあって、それぞれ違う変化があるので、少しその話からお話をしていくと、まず近代小売のほうですけど、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、いずれの国においても、近代小売に関しては、大型店舗の出店に少しブレーキがかかったというのが大きな特徴なのかなと。今まで大型店舗の出店計画をしていたところが、いわゆるミニマート系の小型店的なものの出店に計画自体を切り替えていっているというケースが非常に増えたと。これはね、大型店はやっぱり人が集まるのでパンデミックに向いていないという中で、3年間、結構消費者も大型店で買い物をするというよりも、近所の小さなところでパッと行ってパッと買い物ができるという、こういうライフスタイルに慣れていったということがあって、大型店舗、あまり大きな店舗をこれから出店していくというよりも、中型店・小型店の出店に各近代小売が計画を切り替えているというのが1つですよね。
もう1つがオンライン、オンラインのいわゆるDXに相当投資をしたという。これは面白いデータがあるんですけど、2019年のパンデミック前って、ベトナムとか、インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシア、タイもね、いずれの国も1桁台なんですよね、Eコマース。ごめんなさい、インドネシアだけ10.1%。ベトナムは4.5%だし、フィリピンは2.7%、シンガポールは9.3%、マレーシアは6.4%、タイは6.2%ということで、こんなような比率だったんですよね、ASEAN6の小売市場に占めるEコマースの割合、いわゆるEC比率というやつですよね。それが2022年にはどうなったかと言うと、ベトナムが4.5%→12.3%、インドネシアが10.1%→31%、フィリピンが2.7%→7.6%、シンガポールが9.3%→16.4%、マレーシアが6.4%→11.7%、タイが6.2%→19.1%ということで3倍ぐらい大きくなっているんですよね、この3年間で。これってすごいことで、ユーロモニターの2027年の予測までを見てみると、一旦成長率は鈍化するものの、基本的には元には戻らないと、引き続きEC化率というのは上がっていくという予測を出していて、僕も同じように、そうなっていくだろうなというふうに思います。なので、このパンデミックでEC化率は劇的に上がった。これは消費者がやっぱりオンラインで頼んでという利便性に気付いて、それに対して小売側、近代小売側も投資を続けていったし。面白かったのがね、いわゆるテック系の企業がここに参入をしていて、小売がテック系の企業と協業を始めているという。パンデミック前から始まっていたんですけど、グラブとかゴジェックという配車サービスが日本のUber Eatsみたいに食事を運ぶということもやるんだけども、ショッピングを代わりにやってそれを運ぶということもやっているということで、DXにだいぶ力を入れて、これからのいわゆるEコマースというのは、今までのそれとは劇的に変わってくるんじゃないかなというふうに思います。ただ、気を付けなきゃいけないのは、3倍に高まったと言っても、これは小売市場に占めるEコマース全体の割合なので、皆さんが例えば食品とか飲料とか日用品だった場合に、それが本当にどこまで、カテゴリーで見たときに本当にそこまで高まっていますかと言うと必ずしもそうではないので、もっと細分化してカテゴリーで見ていく、商品分類で見ていくということは必要ですよねということが1つと。
あともう1つは、やっぱり配達事情。デリバリー事情が非常に、日本のようにヤマトや佐川、郵政なんかが便利にあって、ヤマトのお兄さんなんかも非常に愛想がいいですよね。ああいうような状況があって、置き配しても誰も取らないとかね、そういう状況が当たり前で、宅配ボックスも整備されていて。仮に宅配ボックスがなくてもね、置き配しても誰も取らないと。なんですけど、国よっては置き配した瞬間になくなるみたいなね、そういう国もまだまだ新興国はあるわけなので。あと、いわゆる低所得者層の居住区エリアに行けば、住所そのものが分からないと。この辺まとめてこの住所みたいな、そうなっているケースもあるので、基本的にはデリバリーの事情というのももっともっと改善されていかないと。Eコマースって、オンラインのね、DXだけが進んでも、それに伴ってリアルも進んでいかないとなかなか実現しないので、そこは1つ今後工夫が必要になってくると。ただね、コンビニエンスストアで受け取ったりとか、DX化した伝統小売がそれを受け取ったりとか、いくらでも方法はあるので、確実にEコマースは伸びていくということは1つ言えるんじゃないかなと。この3年間でね、パンデミックで失った3年間でEC化率は劇的に前に進んだと、10年ぐらいたぶんボーンと進んだんじゃないかなというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。