東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、引き続きインドネシアの話ということでよろしいでしょうか。その前になんか。
森辺:その前にリスナーの皆さんにご案内になるのですが、実は森辺一樹のグローバルマーケティングのFacebookページというのがありまして、ここが今うちの運営している媒体の中では1番早く多分アップルのiTunesのサイトの次に早く収録を配信しているメディアなのですけど、ここは他にはない収録の風景とかあと最近海外収録なんていうのも多いので、そんな海外の写真なんかも非常に積極的にアップをしていますので、ぜひ皆さんチェックをしていただければなという風に思います。
東:ぜひ、1度ごらになってみてください。では、引き続き前回の振り返りからだと思うのですけど、インドネシアの魅力というかわれわれも1つ注目している国の1つになると思うのですが、その辺から振り返っていただいてもよろしいでしょうか?
森辺:まず人口の多さです。2.4億人、2億4,000万人を超える人口の多さが1つありますよと。2050年ベースでは3億を超えると言われている人口の多さ。それからこの間、多分平均年齢が若いというお話をしたと思うのですけど、平均年齢が27歳。日本の44歳に比べると圧倒的に若いですよというのが1つの魅力。一方で政治が変わった転換期と言われているのが2004年で、経済の成長が一気に垂直に上がって行ったのが2005年からなのです。この2005年からがやはり1つ、インドネシアの転換期でありますよというお話と、あと日本企業が1250社ぐらいまで出ていて、1万5000人ぐらいの駐在員というか、法人が現地に住んでいるわけなのですけど、自動車のシェアが圧倒的に高い国。世界では珍しい、日本と言っていいぐらい日本のシェアが高い。
東:日本を除いたらここぐらいですよね。
森辺:そうです。本当に香港のタクシーとか、シンガポールのタクシーとかああいうのはあるかもしれないですけど、ここまで日本車が。だってもうほとんどが出ているではないですか。トヨタ、ダイハツ、三菱、スズキ、ホンダ、日産、日野、イスズという。ほぼ全部ですよね。日産はちょっと日系と捉えるかどうか、別の議論がありますけど、ほとんどですよね。外資で言うと、シェア1%とかに入ってくるのが、韓国のキアとか、あとそれからフォード。あとマツダも1%で出ているので、日系ですけど。そんなところがありますかね。
東:これはやはり日系がこれだけ強いというのは、親日的な感じが強いのですか?インドネシアというのは。
森辺:もともと自動車の生産をするために進出を早くからしていたと。70年代、80年代からしていましたよという背景も当然あるのです。ただ一方で自動車メーカーが各社企業努力をすごくされて、投資もすごくされているというのは当然あるのですけど、親日であるというのは強い影響を受けていますよね。だって、これだけやはり日本車ばかりというのも、親日ではなかったらこうはならないので。台湾とか、台湾、香港、シンガポールに続く、もしくは台湾に匹敵するぐらい親日なのではないかなと思います。BBCがまとめたアンケートがあるのですけど、インドネシアの人たちに日本への親日度をアンケートしたという、そういうデータがあるのですけど、77%の人がポジティブと答えているのです。一方で日本をネガティブと答えた人は5%しかいないのです。グローバルアベレージだとポジティブが58%でネガティブが21%なのです。これ見るだけでも、どれだけインドネシアの人たちが日本に対してポジティブなイメージを持っているか。例えば中国なんかだとポジティブなイメージを持っている人は16%。ネガティブなイメージを持っている人は63%。
東:これで見るとネガティブが1番少ないのが日本ですね。
森辺:そうです。だからものすごく日本に対するイメージは良いと。特に興味のあるものは何?と聞いたりすると、自動車とか家電、それから音楽、映画、アニメ、それからゲーム、ファッションとか食事とか。AKBではなくて。
東:ジャカルタのJKTでしたっけ?
森辺:そういうのもコンサートをやって、熱狂的なインドネシア人ファンとかいますので。
東:アニメもドラえもんとかが放映されていたり。
森辺:そういうのもありますね。あと今ラーメン屋のブームになっていますし、だからものすごくあれですし、あと日本の援助がやはりすごく行き届いていて、例えば中国だと3兆円以上のODAやっているのに、中国人は大学生でも北京大の人も精華大の人もそのODAを実際日本がやってきたということは、知らないではないですか。けど、インドネシアの人たちは日本が無償資金協力、有償資金協力を含めて相当やってきているということをちゃんと認識しているし、すごくそういうのも当然影響していますし、インドネシアの主要援助国の中で日本は圧倒的なのです。だいたいアメリカが8.7%ぐらいだとすると、日本は52%を超えているのです。日本の次に援助しているのはオーストラリア。これが11%ぐらいで、フランスも11%ぐらい。アメリカが8.7%、ドイツがあるのですけど。
東:半分以上は日本の援助。
森辺:援助という圧倒的に支援をしているというあれです。だから、昔からデヴィ夫人を見てもそうですけど、インドネシアと日本というのは関係が深いですからね。
東:援助実績としてはだいたいどれくらいあるのですか?
森辺:有償の資金協力で740億円ぐらいある。
東:すごい額ですね。
森辺:無償資金協力は11億弱ぐらいなのです。で、外務省のデータですけど、それぐらいやっているのです。だから、インドネシアの人たちは日本に感謝をしているし、私自身もインドネシアで反日みたいなのを受けたことが一切ないので、非常に良い国だと思います。
東:前回もちょっと触れたと思うのですけど、2050年のGDPを見るとインドネシアは今からどう変わっているのかというのを具体的にどうなっているのですか?
森辺:今2014年ですけど、13年のGDPは8,670億ドルぐらいなのです。これは他のASEANとかと比べると、例えばタイは4,000億ドルだし、フィリピンは2,720億ドルだし、ベトナムは1,700億ドルだし、マレーシアは3,120億ドルなので、圧倒的にでかい。タイの2倍以上です。それが2050年に1.5兆ドルになるのですけど、その1兆ドルを2050年に超えるだろうと言われている国というのは、ASEANの中で3カ国しかないのです。1つがインドネシアの1.5兆ドルで、もう1つがフィリピンの1.7兆ドル、最後がマレーシアの1.2兆ドルというこの3カ国しかないので、非常に大きな国であるということです。ここに人口と1人当たりというのを掛けていかないといけないですし、割っていったりしないといけないのですけど、人口が今の2.4億から3.1億になりますよという。さっき言ったフィリピンなんかは1.7兆ドルになるというふうに言われていますけど、人口が今1億人を超えたので、これが1.5億人ぐらいになると言われているのです。約半分ぐらいです。マレーシアは今3,000万人弱ぐらいですかね。2050年には4,300万人ぐらいと言われていますから、人口が少ない分それでも1.2兆ドルをマレーシアは出すということはやはり1人当たりGDPが非常に高いということなのです。だから完全に戦略が変わってきますよね。マレーシアを狙って行くということは、今で1万ドルを超えているわけです、1人当たりGDPが。2050年には3万ドル弱ぐらいになるということは、日本が今4万ドルぐらいではないですか。2050年に6万ドルだから、3万ドルというと今の日本のマーケットにいる人たちと同じ購買力がある。そうすると現地適合化の戦略が比較的日本に近しい。一方でインドネシアに関しては、GDPは確かにデカイけど1人当たりで割ると3,500ドル、今現在。50年には5,200ドル。そうするとやはり日本の6分の1、8分の1になるので、現地適合化のレベルはやはりディープにやっていかないといけないし。そうしてみるとフィリピンなんかは1万ドルを超えてくるので、そのレベルの度合いも。
東:違ってくるのですね。
森辺:そうです。4分の1とかになってくるという話になってくるのです。というところから戦略を変えて行かないといけないです。
東:なるほど。その戦略を組み込む上で流通構造みたいなところをやはり知っていかないといけないと思うのですけど、フィリピンの具体的な流通構造自体どうなっているのか。多分まずはFMCGとかで見て行くのが1番早いと思うのですが。
森辺:そうです。コンシューマープロダクツで見ていったときに、流通がヘニア、フィリピンなんかのときに話たけど8割ぐらいは伝統小売の市場なのです。いわゆるパパママショップみたいな市場で、残りの2割ぐらいが近代小売。デパート、ハイパー、スーパー、コンビニみたいな。というのがフィリピンなのです。インドネシアはさらに伝統小売の比率がやはり高くて、まだ85%ぐらいは伝統小売なのです。さらに近代小売が15%で、島がフィリピンよりも複雑ではないですか。フィリピンは縦にギュッと固まって島がバッとあるのでディストリビューションもある意味限定的と言ったら限定的なのです。インドネシアに比べて。
東:島も大きいですものね、1つ1つ。
森辺:インドネシアの場合はいわゆる島が細長いのです、めちゃめちゃブワーッと。ディストリビューションも相当やはりインフラに時間がかかるし、急激に伝統小売の比率が少なくなるということは非常に考えにくい。そうなってくるとやはりフィリピン以上に伝統小売の攻略というのがインドネシアは非常に需要になってくる島だと思います。
東:やはり近代小売というのは比較的ジャワ島のジャカルタに集中しているというようなニュアンスになってくるのですか?
森辺:そうです。大半がそうではないですかね。あと他の島にでも近代小売は増えて行っていますけど、結局はローカルスーパーとかローカルグローサリーが中心になってきてしまうので、インドネシアの主要小売というのはジャカルタ周辺。
東:フィリピンのときは近代小売のことをサリサリみたいな呼び名があったと思うのですけど、インドネシアの場合はどうなってくるのですか?
森辺:伝統小売がサリサリですよね。インドネシアは、伝統小売はワルンと呼ばれる。地元の言葉でワルンと、WARUNGかな。230万店ぐらいあるのです。だからその数もフィリピンより多いですよね。フィリピンは70万店とか100万店とかそんなイメージでしたもんね。だから230万店というのは倍以上あるという形。
東:下手したら3倍以上ある。
森辺:3倍以上あるという。
東:その構造がざっとになると思うのですけど、近代小売と伝統小売があって具体的にどういう構造をしているのかというのは、どんな感じになるのですか?
森辺:日本に発行されている書物は近代小売と伝統小売は2タイプの小売に分けているのですけど、実際に現地に入るとこれは2つではなくて実は3つなのです。1つが近代小売、モダントレード、MTです。もう1つがジェントレード、ジェネラルトレードというのがあって、これは基本的にはローカルスーパーとかローカルグローサリーとか、首都から離れた遠方にある小さなスーパーマーケット、グローサリーという、言ってもジャカルタが首都、ジャカルタにある近代的なスーパーとは呼べないけれども、伝統ではないよねという中間があるのです。もう1つが伝統小売という、この3つに分かれているのです。これはどの国も一緒で、ややこしいので。2つの近代と伝統とかと言いますけど、実際ものを売るために現地に入ると3つに明確に分けてわれわれは物を考えるではないですか。だから3つですよと。その中でも特にこのトラディショナルトレードというのがさっき言った230万店のワルンというのが存在していて、ここの攻略をする必要があって、この3つの流通にそれぞれどういう戦略で退治していきますかという、そういう話だと思います。
東:なるほど。それをもう少し細かく教えていただくと、どんな感じになるのですか?
森辺:細かくというのは構造だよね?
東:そうです。構造です。
森辺:近代小売だと、例えば日本でいうメーカー。国問わずメーカーが直接小売に商品を卸すというパターンと、あとはディストリビューターというところを経由して卸すというパターン。やはり欧米のメジャーは大手の小売に直接卸すのです。利益率が全然良いから。なんですけど、大手の小売とは直接相手をするのは非常に大変で、日系の多くはディストリビューターを使っています。ただ、基本的にP&Gとかユニリーバは直接やるよと。ジェントレードというのはやはりディストリビューターを使っていかないといけなくて、近代小売の大手、首都中心に集まっているような近代小売は直接がベスト。ディストリビューターがベター。けど、ジェントレ、ジェネラルトレードとかトラディショナルトレードとかというのはやはりディストリビューター経由で商品を卸していくのですけど、特にその中でも構造が複雑なのが、さっき言ったワルンです。これはディストリビューターの下に例えばサブディストリビューターがあって、さらにホールセラー。グロシールと言われて、インドネシアは5万店ぐらいあるのですけど、いわゆる230万店のワルンと言ったらまず月の売り上げ数万円とか数千円みたいな小さなストアにいちいち商品を持って行って現金回収したりとか、逆に言うと彼らのところの商品を持って行くというよりかはワルンがグロシールに商品を買いにくるのですけど、仕入れにくる。そういうグロシールみたいなのが5万店いたりするのですけど、そういうところを通じて最終的にはワルンを経由して消費者という、すごく複雑な構造になっていて。5月ぐらいにインドネシアセミナーをやると思うので、そのときに流通構造の図を配布資料で皆さんにお配りしようかなとは思っていますけど。非常に複雑になっています。
東:分かりました。流通構造を教えていただいたところで、そろそろお時間になってくるのでちょっと今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。