森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、強固な販売チャネルの構築方法その5ですかね、ということでお話をしていきたいなと思います。
その1~その4まで、強固な販売チャネルをつくるには3つのことが重要ですよと。1つが発掘選定で、もう1つが契約交渉で、そして最後に管理育成ですというお話をまずさせてもらっていて。一番最初の発掘選定の重要性みたいなところの話を、その1~その4でずっとお話をしてきたわけですよね。絶対評価と相対評価の違いであったり、スキルセットとマインドセットを見ていきましょうねと、最終的にはこうですよというお話。そして、ASEANなんかは特にね、新興国も徐々に、ASEANなんかは完全にですけど、ディストリビューターの椅子取り合戦というのが始まってしまっていますよと。そして、このディストリビューターの選定で成功の5割ぐらいがほぼほぼ決まってしまうんですよと。恐ろしいですよね。半分ぐらいはもうここで決まってしまいますと。場合によっては6割ぐらい決まってしまうと言ってもいいかもしれないということでお話をさせてもらったのがその1~その4ですよと。
そして今回、この契約交渉のお話をしたいなというふうに思うんですが、5割6割ぐらいが選定で決まるとすると、7割8割…、8割までは確実にこの契約交渉で決まるというふうに思っています。それでこの契約交渉の話をしたいなと。契約交渉って何なのかということなんですけど、まず定義のところで日本の消費財メーカーでなくても別にいいんですけども、日本企業とディストリビューター、日本企業にとっての契約交渉と、先進的なグローバル企業、欧米の先進的なグローバル企業の契約交渉って全然定義が違っていて、どちらかと言うと日本企業の契約交渉というのは、交渉はないんですよね、基本的には契約で、いわゆる日本の法務は非常に優秀ですから、いろんなリスクヘッジがガーッとされた契約書というのが1つあって、基本的には性善説で進むので、それがただ締結されて、とにかく一緒に頑張りましょうねという意味合いが多い。なので、どちらかと言うと、儀式であるというのが契約。一方で欧米の企業というか、世界標準は、何をしていくか、どうやっていくか、その条件を決めましょうねというのが契約なので、基本的に儀式ではないんですよね。調印式をセレモニーでやるとかっていうのはあったとしても、契約書そのものはセレモニーではないです、儀式ではないです。ただ、多くの日本企業の契約書、私は何千通も契約書を見てきましたけども、ほとんどがやっぱり儀式、形式的な話。形式を決めていくための契約なので、基本、守りはガチガチ、攻めはなしということで書かれたものが多くて。契約書の守りはしっかりしているんだけど、攻めがないと。一方でシェアが高い企業というか、先進的なグローバル企業は、守りもさることながら攻めもすごいという、そこがすごく重要で。
契約締結って、契約締結そのものの価値よりも、契約締結に向けたプロセスのほうが僕は圧倒的に価値があると思っていて、発掘選定である程度ディストリビューターを絞り込むわけですよね。ショートリストまで絞り込むと、3社から5社ぐらいに絞り込まれた、ここに対してどこと契約をしようかということで契約交渉を始めるわけですよ。なので、ここと結ぶことが前提で契約交渉するのではなくて、どこと結ぶのかまだ分からない状態で契約交渉をしていく。その契約交渉の内容次第では、契約しないという選択肢だって出てくるわけなんですよね。そのときに、やっぱり契約締結後の契約条件をどうするかということもそうなんですけど、契約締結後の戦略のすり合わせをどれだけ締結前までにやれるかということはすごく重要で、KPIの設定とか、何をKPIに設定して、それをどう管理していくのと。もっと言うと、どういう組織をあてがってくれるのと、われわれの商品を取り扱うのにね。その人たちが日々どういう活動をしてくれるんですかという具体的なところまで、結局、組織が何をやるかが数字をつくるわけなので、そこの話を一切せずにただ契約、売ります、頑張りますみたいな話だと、うまくいかなかったときに巻き返しが大変なんですよね。逆に言うと、契約交渉の締結までのプロセスで、そこをゴリゴリやっていくと、5社あったら3社は逃げていくんですよ。3社ぐらい逃げていくと。そこまでゴリゴリやりたくないと。もしくは、あれ?会話の段階では非常に合っていると思っていたんだけど、具体的な話をしていくと、ちょっと自分たちの考えていることと相手の考えていることは違うよねということに気付けるんですよね。これがすごく重要で。
1回契約してしまったら、契約解消するのにね、5年はかかるんですよ、日本企業は。だって、1年目やってみて、あまり成果は出ないんだけど取りあえず1年目だから、もう1年様子を見ようよと2年目に入っていくと。2年目やると、さすがに2年やったらどんな人がどうやったってちょっとは成果が出るので、ちょっと成果が出たじゃないと、石の上にも3年という言葉もあるし、もう1年見てみましょうと、3年は確実に時間が過ぎると。そこからいよいよ雲行きが怪しいなとようやく初めて気付くんだけども、このタイミングでいろいろあがく。でも、トライをしないと、いきなりこれで解約はないから、一応いろんなトライをしてみようと試行錯誤するんですよね、4年目ぐらいで。なんだけども、やっぱりいまいち成果が出ないと。5年目ぐらいにやっぱりこれはちょっと難しいのかなと思ったタイミングで担当者が変わるとかね、駐在員が帰任すると。新しい担当者が付くんだけども、新しい担当者は前の前任から引き継がれていて、ディストリビューターを変えなきゃ駄目だよというふうに聞いているのかもしれないけども。聞いているんでしょうね、もちろん聞いているんだけども、いきなり着任して早々ディストリビューターをバッサリいける担当なんていないですし、また上司もなかなかそこのディストリビューターを変えるという判断をしたがらない。ということになると、成果が出ないんだけども、だらだら続くというケースをたくさん見てきているし、今でもそのだらだら状態が続いている大手のメーカーはたくさんあるので、基本的に契約交渉まででどれだけ詰め切れるかということが本当に重要で。そのときのトーンって、あとあと影響するんですよね。契約交渉までゆるゆるやっているのに、いきなり契約したらゴリゴリやられても向こうも困るので、やっぱりこの契約交渉まででどれだけ詰め切れるかということが非常に重要です。
というところで、もっと話したいんだけど、もう7分43秒しゃべってしまっているので、一旦今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回以降ね、お話をしていきたいと思います。皆さん、どうもありがとうございます。また次回お会いいたしましょう。