森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、強固な販売チャネルの構築方法(契約交渉)ということでお話をしていきたいなというふうに思います。
このシリーズ、ずっと続いていますけどもね、強固な販売チャネルをつくるには3つのことが必要ですよと。1つが発掘選定、ディストリビューターの発掘選定、そしてもう1つがディストリビューターとの契約交渉、そして最後がディストリビューターの管理育成ですよと。その中でその5からかな、その5、その6と契約交渉について話をしてきて、今日はその7になりますけども、この契約交渉の最後のところのテクニカルなね、契約書のテクニカルな話をしていきたいなというふうに思うんですが。
契約書ってね、僕もいろんな企業の何千通ってレビューをしてきましたけどもね、攻めの側面と守りの側面というのがあるんですよね、見ていくと。これ、弁護士がやるリーガルチェックというのは、もちろん法的に問題がないかというようなチェックをするんですけども、やっぱりビジネスDDじゃないですけど、ビジネス的にどうなのかという、僕は観点でしか契約書は見れないので、弁護士免許も持ってないし、弁護士でもないので、リーガルチェックはできないんだけど、ビジネスの観点でどうなのかと、こういう契約書を結んだときにどういう結果になるのかということは散々ケーススタディを見てきているので、私なりの掴みというのはあって。日本の企業、メーカーのディストリビューション契約というのはやっぱり攻めの側面と守りの側面の2つあるんだけど、守りの側面が完璧なんだけど、攻めの側面がほとんどないというケースが非常に多くて。例えばなんですけど、独占か非独占かみたいな話で、多くのメーカーは1カ国1ディストリビューターみたいな感じで、結局このディストリビューターに独占的にしばらく任せることが決まっているんだけども、なぜか、何かあったら困るから一応非独占契約でお願いしますみたいな。契約も複数年でしばらくこことやっていくと決まっているのに、何かあったら困るから単年度契約にしましょうと。つまりは守りは完璧なんだけども、その分攻めの部分でものすごく大きな損失を被っているんですよね。これはメーカーからしてみたらね、それは何かあったら困るよ、非独占のほうがいいよねと。単年度のほうがいいよねと。ただ、何かあったらと、起こる確率って、じゃあ、何%なんですかと。もう、ほぼ起こりえない、0.0001%の確率のために非独占契約とか単年度契約をすることによって、どういう攻めの部分で被害があるのか、損失が生まれているのかということをまったく考えてなくて。よっしゃ、よっしゃと、何かあったら困るから非独占でできたと、単年度でできたという、ここに評価軸がいってしまっているんだけども、これは相手の立場になって考えてみたら非常にシンプルですよね、ディストリビューター側の立場。日本企業同士だったら、まあまあ、相手さん、メーカーさんは大企業だしと、まあまあ一応ずっとやるということは分かっているし、悪いようにはされないよねと。ただ、形式的に非独占で単年度と、もうこれは決まりだからと、決まっていることだからみたいな話はよくあるわけですよね。この「決まっていることだから」っていまいちよく分からないですけど、日本だとこの「決まっていることだから」ということで、過去何十年前からずっと決まっている、そのままのことをずっとやっていくという。
ただ、これは海外のディストリビューター、特に新興国の、ASEANに限らず新興国のディストリビューターからしたらね、結局、契約書に書いてあることが全てなので、非独占契約で、なおかつ単年度の契約しかくれないメーカーに、じゃあ、どこまで自分たちのファミリーの資産を突っ込むかと、経営資源を突っ込むかと、それはやっぱりどこかでブレーキがかかるわけですよ。彼らはほとんど、ディストリビューターというのは華僑のファミリー企業で、いわゆる自分たちのファミリーの繁栄こそが彼らの最大の目的ですから、そのファミリーのお金を使うわけですよね、将来の投資のために。そうなったときに、結局、担当がころころ替わるし、いわゆるトップ同士のつながりもファミリー企業とサラリーマン役員ですから、そんなに強固なものにはなっていかない、あまりべたべたもしないと。そんな中で契約書というものが彼らにとっては一番重要なものであって、そこが非独占で単年度で、僕が華僑だったらそんなにダイナミックな投資はやっぱりやらないですよね。
だから、僕は独占契約にすべきだし、複数年度契約をするべきだと思っています。僕が関わるディールは全部そうしてきていると。ただし、コミットメントを絶対つけると。独占を与えるのにコミットメントなしなんていうのはあり得ないので、分かりましたと、5年間の複数年契約をしましょうと。5年間、あなたたち、自分たちの経営資源を投下してくださいと。自分たちで契約を立ててください、もしくは一緒に立てていきましょうと。その代わり、初年度いくら、次年度いくら、3年度いくら達成していってくださいと。4年、5年に関してはもう少し先で決めましょうと。最低発注量みたいなコミットメントをしっかり決める。そうでなかったら、独占も複数年もあげませんよと。これは結局、単年単年で見ていって、1年目のコミットメントが達成されなかったら単年に戻せる、非独占に戻せるという条項をつけておけばいいだけなので、これは単年で非独占でやっているのと同じことなんですよ。ただ、コミットを取れるというね、非常に有利な話で。どうやってここに契約交渉の流れの中でね、もっていくかということのほうがすごく重要でね。これを最初から言うのではなくて、それを最終的に、彼らが独占が欲しい、複数年契約したいと思わせて、最後そこに落とし込んでいくということがすごく重要なので。それをやらないので、やっぱり攻めになっていなくて、ただある契約書のひな形をぺろっと出して、これでお願いしますみたいなね、こんなもったいない話はなくて。契約書なんてもうあとのあとで、そこに到達するまでのプロセスで、どれだけ彼らを盛り上げられるか、熱量を沸騰させられるかという、そして最後に契約書という話なので。そうすると、熱量が高まらないところはどこかに消えていくし、カンカンに高まったところと一番いい条件で契約をして、そのあと一気にその熱量がアクションに変わると、アウトカムに変わるという流れになるので、そこをやっぱりしっかりとうまく活用する、しっかりと活用するというか、うまく活用するということが必要かなというふうに思います。
強固な販売チャネルの構築方法(契約交渉)に関してはここまでとして、また次回以降ね、管理育成をやっていきたいなというふうに思います。皆さん、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。