第522回 「基準値」を持つことの重要性 その3
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、基準値の重要性についてお話をしていきたいなというふうに思います。前回、前々回ぐらいからこの基準値のシリーズを始めていて、日本企業は基準値を持つということが大変重要ですよと、、多くの企業は自分たちが目標を達成するため、もしくは競合に打ち勝つための基準値を持ち合わせていないまま市場で戦っていますよと。アジア、グローバルサウスを中心とした新興国市場では、やっぱり基準値を持つということは非常に重要で、ここを持たずしてなかなか目標達成とかシェア拡大みたいなことはできませんよというお話をやってきましたと。じゃあ、この基準値を持つ中で競合の可視化をして、競合を可視化することで彼らが、自分たちよりも進んでいる競合がね、シェア20%持っている、売上が自分たちより圧倒的に大きい企業が、それを達成するためにどういう基準値を持って戦っているのかということを可視化しましょうと。自分たちと、今の現状の自分たちと比べることで、自分たちには何が足りていて、何が足りていないのかということを明確にする。こうするとアクションが非常に具体的ですよということで、前回から競合の可視化ということで、可視化をすることで基準値を掴もうという話をしてきていると。
前回使ったスライドですけども、このスライドのように、チャネル・ストラクチャーの可視化と、組織体制の可視化と、マネジメント体制の可視化をしてくださいねということで、今日はこれをちょっと1個1個ブレークダウンをして、解説をしていきたいなというふうに思うので、まずはチャネル・ストラクチャーの可視化ということで、次のスライドをお願いします。チャネル・ストラクチャーの可視化というのは、そもそも自分たち、チャネルのストラクチャーなので構造ですよね、チャネルの構造で負けてしまっている、もっと言うとチャネルのデザインで負けてしまっていて、自分たちがこの目標を達成するためには、もしくは自分たちが競合に勝つためには、一番最初のこのチャネル・ストラクチャーをどうデザインするかということがすごく重要で、自分たちの目標達成、もしくはシェア、競合に勝つためには、近代小売にはこれだけ入らないといけないし、伝統小売にはこれだけ入らないといけない、そこに到達しないといけないわけですよね、チャネルが物理的に。このデザインがないまま、とにかくでかいディストリビューターを1社選んでそこにお任せ、あとは当然届くでしょうみたいな感じで、そこをブラックボックスまではいかなくとも、ぼやっとさせてしまっている。
この図というのは、例えば競合なんかは、これは赤・緑・青と丸い点がありますけども、赤いの大手のディストリビューター、緑が中堅のディストリビューター、小さいのがいわゆるベトナムのこれは状況なので、デリバリーしかやらないディストリビューター。100社ぐらいのディストリビューターを使って20万店の伝統小売をカバーしていると。1社あたりのストアカバレッジは平均すると2,000、これでシェア30%を獲っているとか、こういう状況なんですよ、先進的なグローバル企業って。ベトナムなんかはいわゆるネスレ・リーバ型のマイクロディストリビューションというところが多いので、大手とか中堅とかではなくて、小規模なところをバッと使って、自社の現地法人の営業マンを使ってやるというケースもありますけど、これはちょっとハイブリッドで事例を書いていますけど、まあまあこういうデザインをパッと視覚的に見たらこんな感じで、ベトナムのホーチミンからハノイ、上のハノイまで、全部に分散しているようなね、こういうデザインになるわけなんです。
なんですけど、一方で日本企業の場合はどうなるかと言うと、右の図のように、ホーチミンの1社のディストリビューター、もしくはハノイにもう1社ぐらいで、近代小売中心に1,000社ぐらいしかストアカバレッジがないと。もうシェア1%以下というか、0.1%以下ですよね、そんな状態になってしまっているというケースが少なくないということで。そもそもチャネルのストラクチャーで負けていたら、これはお話にならないですよねと。だから、やっぱり自分たちがこの売上をするためには、20万店ストアカバレッジしないといけない。じゃあ、20万店ストアカバレッジするためにはこれだけのディストリビューターが必要なんですよ、これだけの規模のということを明らかにしないと、永遠にこの1社のディストリビューターに「頑張って、頑張って、頑張って…」と言い続けるわけですよね。「商品が駄目なのかな、ああなのかな、こうなのかな」といろいろやるんですけど、「いやいや、そもそもチャネルのストラクチャーで間違ってしまっているんですよ」というケースが非常に多いというのを私は過去たくさん見てきました。
次のスライドをお願いします。じゃあ、チャネル・ストラクチャーが仮に正しかったとしてね、そのチャネル・ストラクチャーの中で、どういう組織が、どんな活動、マネジメント体制でどんな活動をして、どういうふうに管理されているから成果が出ているのかということもやっぱり可視化していかないといけなくて。統括部長がどういうキャリアの人物でね、ここが非常に優秀で、誰がこれ、トップでやっているんですかと。そのトップの優秀さってどのぐらいなの?ということはしっかり見ていって。だいたいね、エリアマネージャー10名とかいて、キーアカウントとかもいて、その人たちの下に担当のディストリビューターがぶらさがっている組織の体制になっているんですよね。マネジメントを見てみると、スーパーバイザーが自分たちの新規顧客をやるチームと既存顧客をやるチームと分かれていたり、一緒になっていたりとかするんですけど、非常に効率的に出来上がっているというケースが非常に多くて。そういったことを自分たちの今の実態と比べたときにどうなんだということをやっぱりしっかり見ていかないと、ストラクチャーだけでは駄目で、その組織がどういうマネジメントで組織の力を最大限発揮できているのかということもしっかり見ていかないといけないので、この3点セットがあって初めて目標とか、シェアとか、競合とかっていう話になるので、そもそも競争の土台に立てていないというのは日本の大手の消費財メーカーは結構いっぱいあって、そこをやっぱり改善していく。今までどうしてもね、新興国市場というのは大したマーケットとして見ていなかった、日本と欧米の市場がやっぱり中心になってきていたし、そういう意味では力の入りようが弱かったんだけども、これから本当にその市場でしっかりとシェアを上げていくには、このことが大変重要ですよというお話でございました。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。