東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、今回もご質問をいただいているのでそれに答えていきたいと思うのですけど、よろしいですか?
森辺:はい。
東:今回メールが少し長いのですけど、読ませていただきます。「こんにちは、はじめまして。日本でシステムエンジニアをしている40代になったばかりの会社員で、Oと申します」、Oさんとします。「東さんのリスナーに立った気の利いた質問や森辺さんの面白くて分かりやすい説明、何より毎回冒頭に流れる女性ナレーターが伝える熱いメッセージが大好きで、いつも番組の配信を心待ちにしているリスナーの1人です。」
森辺:ありがとうございます。
東:ありがとうございます。「そこで、森辺さんへ質問です。我が社でも来年から新規事業を立ち上げるため、私を含めて技術肌の4名のチームでビジネスプランの書き方から取り組み出したのですが、マーケティングをどうすればいいのか皆が戸惑っているようです。私は」Oさんですね。「Oさんはこの番組を最初から聞いているので、マーケティングといっても最初から難しく考えず、まずシンプルに調べだせばいいと皆に話して進めていこうと考えています。とにかく皆の足を角張るのは嫌なので、知識は必要になった時点で勉強し、後付けで構わないと。しかし私もマーケティングの素人です。番組の中で世界と日本の違いは折に触れて耳にしているのですが、まず日本でのマーケティングの仕方について全般的なアドバイスをいただけないでしょうか。日本国もアジア諸国にすぎないので、番組の趣旨から外れていないと思うのですが。甘えてお願いさせていただければ、事業計画の書き方のコツについてもお考えがあればお聞かせ願いたいものです。私見ではプランよりマーケティングありきのような気がします。」というようなご質問を、結構丁寧にいただいているのですけど、今回はアジアというよりは、まずは日本でのマーケティングをどうしたらいいのですかね?というようなお話なのですけど。
森辺:マーケティングって、営業をなくすことじゃはないですか。日本だとどうしてもマーケティングよりも営業重視というか、そういう市場になっていると思うのですけど、基本的に多分商売は何をいくらで誰にどう売るのかということだけだと思うのです。私はそれだけをいつも考えていて、あと何をいくらで誰にどう売るかという。ここが、奥が深いわけなのです。頭がちぎれるぐらい考えていかないと結局それが全てになってくるので、日本でのマーケティングはそこの追求になってくると思うのです。何をいくらで誰にどう売るかを考えようと思うと、ターゲティングとかセグネテーションとかをやる必要が出てきて、さらにそれをやろうと思うとマクロ分析、ミクロ分析、スロット分析みたいなことをやっていかないといけないと。だから結局全て、以前この番組のはじめのほうですかね。お話ししたようにRSTPMMみたいなところを本当に徹底的に追求していく。ここにつきるのかなと。Oさんのおっしゃっている通り足を止める必要は全くないので、走りながら学んでいくというか、RSTPMMの考え方自体は1日で学べる話なので、それを深く追求していくのにすごく時間がかかることだと思うので、走りながらだと思うのです。
東:具体的にこれは何から、Oさんの場合、多分本業があって新規を日本で立ち上げたいということだと思うのですけど、しかも技術肌のどちらかというと営業というよりは技術職の人が4名集まってチームを組んでいるみたいな感じだと思うのですが、どこから手をつけたらいいのでしょうね。
森辺:新規事業というふうに記載があるので、まず既存の事業。ここから完全に切り離して僕だったら考える。どうしてもそこを、会社の中の新規事業なので本来の既存事業でやってきている商習慣というか、感覚、常識全てを多分持ち込むのは普通の流れだと思うのです。気付かないうちに持ち込んでしまうという。なので、いったんそこをリセットするのに多分僕は相当大変な思いをされるのではないかなと思うのですが、いったんそこはリセットしてゼロベースで考えていくということをやらないといけなくて、今これから売ろうとしているサービスなのかコンテンツなのか製品なのか分かりませんけど、結局それをいくらで誰にどう売るのかということを考えていくことがマーケティングなので、そこから始めようと思います。
東:具体的にリセットをするのであれば、具体的にどういった手順で何をやっていけばいいのか。多分マーケティングが素人でと書いてあるので、多分そこがピンと来ないと思うのですけど、どうですか?
森辺:どういうお立場で今いるのかにもよると思うのですけど、基本的に新規事業なわけではないですか。新しい価値を提供していくわけではないですか。今まで売っている商品とかサービスは、今までの長い歴史の中で築きあげてきたいろいろなものがあるから売れているわけなのです。それと同じように売ろうと思っても当然新しいサービスや新しい価値なので、新しいバリューを今まで提供しているバリューと同じようには絶対に売れないので、そこにのせない。要は新しく生もうとしているバリューを、今の既存の、たとえばチャネルだったらチャネルにのせようとか、今の既存の価格帯に合わせて金額を決めていこうとか、そういう話になりがちだと思う、仕切値はこうしようとか。でもそれを1回ゼロベースで全部考えていくという、参考にするというのは当然良いのかもしれないですけど、むしろ新しい事業の競合になるところを参考値にするほうが今までの自分たちの事業を参考値にするよりも、よっぽど早いというか理にかなっていると思うので、そういうことを切り離せということなのです。私の意味合いは。結局企業の中である程度のサイズになってきている大企業の中で立ち上げる新規事業はことごとく失敗するではないですか。それはしょうがないと言えばしょうがないのです。要は命をかけている人は中にいるのかもしれないですけど、命のかけ方がポンと独立してもうやる、明日から食い扶持を稼ぐという人に比べたらお給料は出るわけではないですか。だから、全然違うと思うのでそれはしょうがないのかもしれないですけど、基本的にはそういう部分を除けばやはり今までの常識を持ち込んでしまうから新規事業は立ち上がらないと僕は思っているので、そういうことなのではないかなと思うのです。
東:全く1から立ち上げようとすると、結構リソース的なものとか、費用的なものとかというのがまた問題になってくると思うのですけど、その辺はどう。多分大きな会社ではないような気がするのです。そこら辺というのは、4人でまず始められるとしたら具体的にどんな話し合いからまずしていけばいいのかなというのが。
森辺:国内で?
東:国内です。ここのOさんの場合は。
森辺:国内も海外も基本一緒なので、マーケティングでやることは。海外だからああやれ、こうやれと小手先の部分があるけど、基本的な根底部分というのは全く変わらないので同じなのです。とにかく1点にフォーカスをしていかないとリソースが当然足りないわけで、経営資源が限られているわけですから、1点にフォーカスをしていくというものだと思うのです。そのフォーカスをしていくように事業計画を作っていかないといけないし、マーケティングもそういうふうに考えていかないといけないと思うので、何でもかんでもできますマーケティングではなくて、フォーカスをしていく組み立て方をしていく必要があると思います。
東:フォーカスをしていく上で、多分森辺さんが言われた全く切り離した上で、今、本業での強みがあるではないですか。多分本業での強みと全く違うところに強みを見つけるという、新規事業だと2つのパターンがあるのかなという感じがするのですけど、結構見ていると全く本業と関係ないところでやっている新規事業は意外と失敗しがちなのかという感じがするのですけど、その辺はどう?
森辺:そうだと思います。本業に関連した新規事業というのは、本業のリソースをそのまま使えるわけではないですか。チャネルにしろ、何にしろ。ですから本業で培ってきたところに乗りやすいとうか乗せやすい。けど畑違いだとそれが乗りにくいので、失敗する可能性が高いというのはまさにそうです。
東:この間、『カンブリア宮殿』とかでたまたま自分あまりテレビを見ないのですけど見ていたら、グンゼを取り上げていて、グンゼはわれわれのイメージだと下着しかないけれども、今はここにペットボトルがありますけど、ペットボトルノフィルムとかもグンゼがやっているのです。そういったいったん関係ないけれども、そのグンゼの繊維関係のこういったフィルムに強みを活かせるというのは、われわれから見ると全く関係ないけど、内部から見るとそれがつながっているというのが何となく日本企業にとっては理想的なのかなという感じがして。アメリカとかヨーロッパとは全く違う事業をドーンと立ち上げて上手くいく例が結構多いと思うのですけど、日本企業はそういったところがあまり上手くないというか。
森辺:アメリカの場合だとそこの社長、外から連れてきていますでしょ。だから当然だと思うのですけど、これ海外展開もそうではないですか。中から駐在員を飛ばして、その人がずっと取り仕切っていくという。欧米の場合は中から駐在員を飛ばすけど、そこからやることは現地の人材を選択して対応して教育して、アメリカでは戻りますから、国に。なので、ここの違いです。どっちがRYが高いかという。瞬時に計算ができているから当然後者を選ぶという話しだと思うのですけど、難しい質問ですけどあとどんな表現をしたら伝わるかな。
東:後者の場合、社内でやはり多分社内のプロジェクトとして4名が集まってということなので、いったん社内の、今までの常識からいったん離れて考えてみるということ。
森辺:マーケティングの本はいっぱいあるのですけど、そんなの読んだって暇なときに電車で読んだら良いのではないかと僕は思っているのです。事業計画の書き方とか別に事業計画の書き方1、2、3と出ているではないですか。だから、見世物として作る書き方を、目次を見るという。目次を見るというか項目です。それぐらいの認識で読んだらよくて、やはり突き詰めるのは何をいくらで誰にどう売るのかというのが、なんだったらいくらだったら、誰にだったら、どうやったら売れるのということを考えていくということが僕はマーケティングだと思うのです。それは商品によって様々なので、戦略も結局結果論ではないですか。これが正しい、あれが正しいというのは全て結果論なので、当然正しい確率の高いところをどれだけ選んでいくかだと思うので、今言った何だったら、いくらだったら、誰にだったら、どうやったらということを全部突き詰めていくとそれがマーケティング戦略に変わるという、それを事業計画に落すことになるので、ひたすらそこを頭がちぎれるぐらい考えることだと思うのです。考えるときに初めていろいろなことを調べるわけではないですか。調べるとインプットが入ってきて、インプットが頭の中で化学反応を起きてアウトプットになってくるので、インプットがなければアウトプットは出ないわけです。いくらいいインプットをいっぱい入れたって、頭の中で化学反応を起こせなかったら良いアウトプットなんて出ないわけではないですか。だから、何て言うのだろう。そこが全てだと思うのです。
東:分かりました。今回はここまでにさせていただいて、次回から少し具体的な話をしていきたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。