森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、フィリピンの小売市場、今日で最後にできたらいいなというふうに思います。
今日はね、伝統小売についてちょっとお話をして…。前回は近代小売をやったんですよね。3大小売の話をして、財閥系のお話とかをしたので、ちょっとコンビニの話を先にしましょうかね。コンビニはね、店舗数の数の順位で言うと、一番大きいのがセブンイレブンで3,250店舗あります。一番大きいと言っても3,250店舗なので、やっぱりね、これは何を表しているかと言うと、どれだけ伝統小売の影響が強いかということなんですよね。それが非常にありますよと。次がアルファマート、インドネシアのアルファマートがもうすでに進出をしてきていて、1,200店舗ぐらいありますよという。3番手がミニストップで456店舗。あとね、シェルとかのガソリンスタンドの併設でトリートというところと、シェルセレクトというところが、それぞれ2,435店舗と1,073店舗あるんだけども、まあまあまあ、ガソリンスタンドにコンビニがくっついているというね。日本だとなかなかないんですけど。日本もやればいいのになと思うんだけど、場所がないんでしょうかね。アメリカと一緒で結構ガソリンスタンド併設系は多いですね。あと、ドラッグストアでね、マーキュリードラッグという最大手のところがあって1,200店舗あるんですけど、このうちのかなりの比率が半分コンビニになっていて、ドラッグストアの処方箋のところの窓口と、それ以外のところがコンビニになっているというね、こういう感じになっています。ただ、数が少ないですよね。それはやっぱり80万店、まだ市場の73%が金額ベースで伝統小売なので、この80万店の伝統小売の影響が非常に僕は強いと思っていて。
伝統小売もね、このコロナで、特にフィリピンというのはコロナがあってもなくてもそうなんだけども、行政、業界、消費者から守られているんですよね。どういうことかと言うと、例えばね、今回のコロナ禍のパンデミックの3年間でね、地域政府であったり、国、行政は、伝統小売、小規模事業者に対してね、非常に低金利のローンを優遇政策をやったんですよね。それはサリサリのオーナーが高利貸しにお金を借りて雪だるま式に膨れ上がって首が回らなくならないように、しっかりと手厚い資金援助をしていて、フィルスターというオンラインメディア、フィリピンのオンラインメディアの情報によるとね、このコロナ禍で16万店伝統小売が増えたと言うんですよね。そうすると、80万店もともとあって、16万店増えたら96万店になっていると、100万店近く伝統小売が増えているという情報もあるので、非常に行政、国からの支援があったというのは事実としてありましたよと。
一方で、もともと業界からも非常に支援をされていて。どういうことかと言うと、例えばサリサリのオーナーがね、伝統小売のオーナーが商品を仕入れているのはどこ?と言ったら、ピュアゴールドだったりするんですよね。ピュアゴールドって近代小売ですよね。近代小売の例えば大きな店舗に行くと、20キャッシャーレーンがあったうちの10レーンはサリサリのオーナー向けのキャッシャーになっていて、ピュアゴールドの中に行くと、アリンプリンプログラムというのをやっていて、サリサリのオーナーのための売れ筋商品だけを置いてある棚であったりとか、サリサリのオーナー向けの各種サービスが用意されていたりとか、特別な割引があったりとか、そういう手厚い支援をやっているんですよね。日本で言ったら駄菓子屋がイオンから商品を仕入れるみたいな話でね、そんな構造がフィリピンでは普通に成り立っていて。いわゆるピュアゴールドで10個入り20個入りを買ってきて、それをばらしてサリサリで売ると。消費者もそれを求めていて、実際にはピュアゴールドで買ったほうが安い、サリサリで買ったほうが10%15%高いんですよね。なんだけども、今欲しい分だけが買えるというのがサリサリの最大のメリットなので、そういう意味では、たくさん買ってストックしておくなんていう、そんなキャッシュフローの悪いことはしたくないんですよね。まだフィリピンは給料日が2日ある、月に2回あるという会社だってたくさんあるわけで。その中でこのサリサリ、伝統小売というのは非常に優遇されていて、業界からも守られていて、消費者にも求められている。
よく、近代小売が、コンビニが伝統小売を食っていくなんていう議論がずっとされてきたんだけども、僕はそうではないということをずっと5年以上前から言い続けていて。確かに数は減るんだと思うんですけどもね、やっぱり日本の中央集権型のコンビニエンスストアみたいな事業モデルよりも、ASEANの人たち、特にフィリピンみたいなね、そんな上からギャーギャー言われて同じものを売るよりも、自分の好き勝手でやりたいんだと、別にそんなにたくさん儲けなくていい、その日暮らしでいい、今日食べる分だけでいい、けど、多少自分の自由度がある中でやっていきたいよねと。何時から何時まで店を開けなきゃいけないとかね、そういうのはもう、やりたい人はやったらいいけど、やりたくない人だっているわけですよ。コンビニの場合は、でも、もめていたんですよね、どこかでね。なので、ああいうものよりも、分散型で、ある程度の決め事で、あとは自由にやらせるという、こういう風土がね、ASEANはやっぱりそういうノリなんですよね。だから、そう考えると伝統小売というのは非常に重要だし。数は減ると思いますよ、フィリピンなんかは増えるかもしれないですけど。ただね、デジタル化によって伝統小売がこれからデジタル武装し始めるので、デジタル化によってもうし始めているんですけど、デジタル化によってコンビニよりもさらに便利な存在になったときにね、彼らって淘汰されないんだろうなと。これはリープフロッグ現象みたいなものだと思っていて。基本的には先進国では伝統的なものは近代小売に取って代わったというのが、これはずっと流れだったんだけども、でも、その小売の近代化の過程でインターネットってなかったんですよね、デジタルというものがなかったと。でも、今、フィリピンとかASEANで起きているのは、伝統小売が淘汰される前にデジタルが入ってきた、インターネットが入ってきたという、こういう世の中ではね、絶対に僕は伝統小売は消えないと思うので、伝統小売なくして勝利はなしということは消費財メーカーの皆さんには断言できると思いますので、皆さんもぜひこの伝統小売を攻略するための販売チャネルの構築に力を注いでください。
今日はこれぐらいにしたいと思います。それではまた、皆さん、次回お会いいたしましょう。