森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。前回に引き続き、B2Bの製造業向けのお話を今日もしていきたいなというふうに思います。
前回ね、多くのB2Bの製造業、失敗してしまう製造業がプロダクト依存型の傾向が非常に強いですよというお話をしました。品質にあまりにもこだわるがゆえ、なかなか市場でマーケットシェアが獲れていないという。もうこの品質、品質ってプロダクト依存型、良いモノをつくるということは製造業にとっては非常に重要なんだけども、この「良い」ものの定義が=品質になっていて、この品質の差が中国やアジアの企業と比べたときになかなか見えにくいものになっているにもかかわらず、この品質競争をすると、この見えないのに少しでも品質を良くするというところの戦いからなかなか抜けきれない、もしくは品質を下げられないとかね、機能を下げられないみたいな、そういう、プロダクトに依存をしてしまっている傾向が強いと。一方的な品質の優位性、製品の優位性よりも、相対的な販売チャネルの優位性のほうが圧倒的に売上に直結するし、シェアに直結するというのが新興国市場で、それがなかなかでききれてない。
4Pで考えていくときに、プロダクトが良いので、プライスもプレイスもプロモーションもあまり力が入らないというケースが多いんですよね。フィリップ・コトラーであろうが、誰であろうが、マーケティングの権威と言われている人たちが言っているのは、いかにターゲットに対して適切な4Pを当て込むかということが、モノを売ること、シェアを上げること、売上を上げること、利益を上げることにつながるというふうに言っていて、4Pというのは常にバランスを取りながら最適化していかないといけないと。にもかかわらず、あまりにもプロダクト依存なので、プロダクトが良ければ、あとの3つはいいじゃんとまでは言わないんだけど、結果としてそうなってしまっている。プロダクトが良いという、このプロダクトの良いも品質が良いという意味での良いで、品質が良いとか良くないとかって、品質が良いのはそれは良いに決まっているんですよ。ただ、それって品質の悪かった時代に品質の良いものを出したら、それが世の中に認められたという、それは80年代90年代の話で。多くのものが発明から相当な時間を経過した今ね、この良い品質というところが、非常に違いを出しにくい、差別化しにくい、優位性にならない。なぜならば、品質が良いのは当たり前だから。今ね、中国ですら品質が良いわけですよね。20年前に安かろう、悪かろうって揶揄されていたのが、中国ですら品質が良いと。むしろ中国のほうが品質が良いということになってしまった昨今においてはね、この品質が良いなんていうことはもう優位性にならない。だから、いわゆるモノの品質面の優位性は一旦どこかに置いたときにどういう優位性が、製造業、皆さんの会社の戦略に残るのかと。どういう優位性がそれ以外にあるの?品質以外のところで見い出せるんですかというところを考えていく。もしそれが見出せたら、そもそも品質が良いんだから勝利には近付けるはずなんですよね。品質が良いから価格が高くてもいいでしょうと。僕は別に価格を安くしろとは思わないし、1円でも高く売ったらいいと思うんですよね。ただ、許容できる価格というのがやっぱりすごく重要で、顧客、ユーザーが許容できないと駄目だし。あと、売り方に関してだって、いわゆる売り方を間違えているというケースってないと思うんですよね、基本的にB2Bで。ただ、あるのは、販売チャネルがあまりにも競合と比べたときに弱過ぎる。理由なき1カ国1ディストリビューター制をずっと敷いていて、結局クライアントにリーチしていないじゃんと、引き合いの情報が全然つかめてないじゃんと、顧客と比べたとき、競合と比べたときに圧倒的に引き合いの初期段階に入れている確率が少な過ぎるとかね、これってもうチャネルを通じた情報の収集の問題だったりとか、直販の企業だったら、そもそも向こうはセールスは1,000人いるのに、こっちは100人しかいないじゃんとか、数の原理でもう負けていますよねとかね。あと、数はそんなに変わらないんだけど、動き方が全然違うとか。もちろんB2Bだから、プロモーションしなくていいなんていうのは大きな誤解で、B2Bでもプロモーションをやらないといけないし。会社のブランディングとかポジショニングっていうのはイメージとしてつくられていくので、いかにそのものを買おうと思ったときに、自分の会社が顧客の頭の中にイメージされるかということはめちゃめちゃ重要で。これをマーケティング用語ではエボークドセットと言うんですけど、このエボークドセットに入っているかいないか、B2Cなんかももう完全にこれは重要なんですよね、指名買いとかっていうのがあるので。でも、B2Bだってそうですよね。見積りを取ろうと思ったときに、この会社とこの会社とこの会社かなっていうところのエボークドセットに入ってなかったら、そもそも見積り依頼が来ないから、提案させてもらえないよという話になってしまうので、非常に重要。
言ったら4Pという観点よりも、4Cという観点で考えないといけない。4Pがね、製造業側から見た、自分たち側から見た視点、例えばどういうプロダクトを、どういう金額で、どういうプレイスで、どういうプロモーションでと。一方で4Cというのは顧客側の観点なので、1つ目のプロダクトというのはカスタマーバリューに変わるんですよね、顧客価値、顧客が求めている商品って何なんですかと。プライスはコストに変わる。顧客から見たらコストですよね、顧客の費用。顧客が許容できる費用っていくらなの?と。プレイスというのは、顧客にとってのコンビニエンス、利便性ですよね。顧客が買いやすい方法ってどういう方法なの?と。プロモーションというのはコミュニケーション、顧客とのコミュニケーション。顧客が選びたくなるような仕掛けって本当にやれていますかと。この4Cをターゲットにぶつけていくということをやるんだけども。多くの日本企業のプロダクト依存型になってしまっている会社は、もう決まった4Pがあって、4Pというか、プロダクトの品質が良いからいいよねと、あとの3つのCは置いてきぼりになっている4Pがあって。もうこれが決まった4Pで、この決まった4Pに当てはまる顧客、ターゲットはどこ?と言って、ターゲットがあとにきてしまっているんですよね。でも、それは順番が逆で、ターゲットは常にファーストで、そのターゲットに対して4Pとか、むしろ4Cを当てていくということをやっていかないといけない。これが全然逆になってしまっているので。
僕が1つ、B2Bの製造業に対してメッセージを伝えたいと考えたときにあるのは、やっぱり製品の優位性を一旦横に置く、特にこの製品の優位性というのは品質の優位性、これを一旦忘れたときにどんな優位性がこのB2Bの皆さんの製造業の会社の中にあるのかと。これが見出せたら勝ち筋は全然つくれる、見つけられると思う、製品が良いのでね。この製品の優位性だけで戦おうとしている企業はみんな失敗していて。新興国市場で僕が20年やってきた中で、1つ絶対的な自信を持って言えるのは、一方的な製品の優位性よりも、相対的な販売チャネルの優位性のほうが圧倒的に重要だし、売上やシェアに直結しているということかなというふうに思います。
皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。