東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森部一樹です。
東:では森辺さん、今日はどんな話をしていきましょうか。
森辺:今日はチャネルの話をしていけたらと思います。
東:どこの国の。
森辺:最近話題になっているフィリピンなんかがいいのではないかなと思うのですけど。
東:では、フィリピンの概要だけ先にお話いただきたいと思います。
森辺:フィリピンはチャネルを作っていくうえで皆さんが気になるのが、1つ、1人当たりのGDPがどれくらいの国なのかということなのですけど、だいたいフィリピン全体で見ると1人当たりGDPは2,000ドルぐらいなのです。マニラ首都圏だけで見たときに一気にその金額は上がっていくのですけど、8,000ドルぐらいになるのです。
東:4倍ぐらいになるのですね。
森辺:4倍ぐらいになると。マーケットとしては最近どうしても日本企業はインドネシアによりがちなのですけど、実は2050年度ベースで見たときに、東南アジアの中で最も成長すると言われている国でございまして、GDPしかりですけど、1人当たりGDPもそうだし、経済規模が1番大きくなるアジアの国ですよと言われていたりします。あと今、東南アジアでマーケットとして見られる国はインドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、それからベトナム、シンガポールというふうにASEAN6があった場合にフィリピンがその中でも1番平均年齢が若いという人口構造的な大きなメリットがあるというのが1つです。ちょうど去年の12月ぐらいに1億人を人口が超えているのもフィリピンですよという、そんな国の概要でございます。
東:分かりました。そこで1つ分かりやすい例としてチャネル構築で成功している企業をあげるとどういった企業があがってくるのですか?
森辺:例えばネスレさんなんかは非常に古くからうまくやっているところです。P&Gもそうですし、コカ・コーラもそうですし、ユニリーバなんかもそうです。
東:分かりました。ネスレさんというのはだいたいどのくらいになるのですか?フィリピンに進出して。
森辺:100年になるのではないですかね。アニバーサリーをやっていると思うので、100年。創業100年か。103年ぐらいです。103年ぐらいやっている。
東:すごいですね。
森辺:だからこのクラスのいわゆるグローバル企業はその国にディストリビューターとか今でいうモダントレードといわれる小売が存在する前からその国で販路をつくっているので、出遅れているとかそういうレベルではないのです。かなり先行しているという、そういう会社です。
東:1世紀を過ごしているということですもんね。
森辺:そうです。
東:そうするとネスレなんかからみると、ネスレがディストリビューターを育てたとかそういった感覚になるのですか?
森辺:結局ディストリビューターがいないわけですから、自分たちでディストリビューションしているわけです。当時MTが存在していないのでマーケット全てがTT、トラディショントレードなわけで。そうすると彼らが自前で、トラディショナルトレードで商品を認知させて消費させるという活動を自前でやってきている歴史があるのです。その100何年の長い歴史の中で、小売市場が成長してそこに大型のグローサリーが出来たり、スーパーマーケットが出来たり、今のいわゆるMTの大きな市場が広がってきているので、それまでの観点というのは彼らがディストリビューター、今でもやっていますけど彼らがディストリビューションしていたわけです。今は自前のディストリビューションと当然ディストリビューター両方を使って活動しているという、そういうイメージなので、今あるディストリビューターというのは彼らが作ってきている。もっと言うと、例えばフィリピンは他の国に比べて小売の利益率が低いのです。いわゆる、小売のマージン構造が低い。それもやはりこういうネスレとかP&Gとかコカ・コーラとかが、ユニリーバもそうですけどそういう市場にしてきたという歴史があって、いわゆるメーカーがしっかり儲かる。だから非常に強い。特殊な国であるというのは1つです。
東:どちらかというとメーカー側が市場を育ててきたというような感覚値があるのですかね。
森辺:ちなみに、例えばネスレはどれくらいの重要度になっているか分からないですけど、コカ・コーラとか他の会社だと世界の中でフィリピンという市場がトップテンに入ってくるような重要市場として捉えていたりするのです。それだけやはり欧米化も進んでいるから、アメリカのいわゆる消費材メーカーさんにしてみるとフィリピンというのは重要な市場だとしているのです。
東:例えばネスレさんのチャネルとか、物流の構造というのは欧米メーカーだとどこも似ているのかもしれないですけど、具体的に言うとどうなっているのですか?
森辺:基本的には工場があるではないですか。フィリピン国内で製造している場合もあれば、隣国で製造している場合もあるので、それをいったん販社がインポーターになって輸入するのです、フィリピンに。必ず今言っているようなネスレもそうですけど、アジアもちゃんとある。この販社が独自でMTに関しては直接取引するのです。いわゆるジェネラルトレードとかトラディショントレードと言われるジェントレードというのはキャッシャーが2個以下ぐらいの小さなグローサリーとか、スーパーを言うのですけど、TTというのはサリサリストアとかです。いわゆるパパママショップです。こういうところに流通させるのがディストリビューターを使うということをやっている。コンビニなんかもディストリビューターを使っているケースもあれば、配送だけいわゆる物流会社さんに委託している場合もあったりするのです。数が非常に多いではないですか。多少ロットで店舗が大きい、コンビニエンスストアなんかはCVSです。
東:そうすると、簡単に流通形態を整理していただくと、売り先といのを大きく分けると。
森辺:MTとTTです。MTというのはいわゆるモダントレードなので、スーパーとかハイパーとかコンビニとかドラッグストアとか、そういうところ。TTというのは基本的にサリサリストアなのですけど、このMTとTTの間にGTというのがあって、これはどちらかというとサリサリよりは大きいけどスーパーにはかなわないキャッシャーが1個とかしか付いていないような、2個とかしか付いていないようなグローサリーストアとかのことをさしています。
東:GTというのは何の略?
森辺:ジェネラルトレード。
東:大きくわけるとMTとGTとTTという、3つの形態があると。
森辺:ただ業界ではTTがもうGTに含まれているという認識をしたりするので、MTとGTと言うのですけど、日本だとレトロがMTとTTという言葉を使っているので、きっぱりMT、TTとなっていますけど、例えばレジキャッシャーが1個あるグローサリーはトラディショナルトレードではないので、けど近代すぎてもいないので間のGTと。
東:GTというカテゴリーが。
森辺:私はよんでいます。
東:存在するということなのですね。これが一般的にネスレなんかでいうとどういった直販と大きくわけるとディストリビューターを使うという形態に別れると思うのですけど、どういった形でネスレは内訳をしているのでしょう。
森辺:一般的なマーケットの構成としては、MTは商品によっても違うのですけど、一般的にはまだ2割ぐらいなのです。多くても2割、3割。残りがGTとかTTになるのです。この2割とか3割のモダントレード、MTに関してはいわゆるスーパーとかハイパーなので、大量に消費するわけではないですか。ですから、そこに関しては確実に直販をするのです、こういうグローバル企業は。ネスレに限らず。GTとTTに関しては自社でやるところと、それからディストリビューターを使うところと2つに分かれる。GTとかの中でもキーアカウントと彼らが呼んでいるようなアカウントがあるのです。地元では有名みたいな。そういうところは自社の人間でやって、そうではないところをディストリビューターに任せたりというのが多いです。特にネスレさんは食品ではないですか。そうすると、網の目が細かいわけです。サリサリストアはまさに大きなマーケットになるので、その目の細かさを全部自社で満たすということよりも、ディストリビューターを使った方が、圧倒的に効率が良いので活用しているという感じ。僕もネスレのディストリビューターを何社も会っていますけど、もうすごいです。年商80億ぐらいなのですけど、オンリーネスレなのです。ネスレの商品しか取り扱っていないという。
東:だけど80億までいってしまったと。
森辺:ネスレに育てられて、ネスレと共に成長してきたというようなディストリビューターがあって。当然ネスレと競合になるような商品は絶対取り扱わないし、資本構成はどうなのかと見てみると、ネスレもそこは賢くて資本なんて1個も入れていないのです。子会社化はしていないというそんなイメージです。
東:そうすると、ネスレというのは具体的にどうやってフィリピンだったらフィリピンで、ディストリビューターだったり、販売網というのを築いているのですかね?
森辺:基本的に100何年という歴史があるわけではないですか。だから日本企業のメジャー級の会社でも結局ディストリビューターを見つけてハイ丸投げみたいなところが一般的なわけです。それを、ディストリビューターを育成して彼らが売れるようにしてあげるという発想を持っている会社はまだまだ少ないのです。けどネスレなんかは、いかにディストリビューターが儲かるようになれるかということをやはりすごく考えられていて、フィリピンなんかだとBOWという取り組み、プログラムなのですけど、ビジネスオンウィールズという、略してBOWプログラムと言っています。何をしているかというと、ネスレの販売をするビジネスオーナーみたいな人たちを集っているのです。要は、サリサリストアとか言ったら、20m置きにサリサリストアがあるような、いわゆる低所得者層が住むようなエリアとかたくさんあるわけです。あと離島とか。ネスレがスクーターバイクの隣にサイドカーみたいなのをくっつけて、ネスレと書いていて、その中にいっぱいインスタントコーヒーが入っているわけです。袋詰めの。それをビジネスオーナーが自分たちで売っていくと。今までフィリピンとか行くと分かるのですけど、いわゆる三輪バイクみたいなので客待ちしているフィリピン人の男性が昼間寝ているわけです。客もいないし暇みたいな。1日の稼ぎが100ペソとか200ペソとか。100ペソを2.3倍してもらったら今の通貨、230円とかなのです。1日の売り上げがそんなんだという中で、彼らがこういうBOWみたいな仕組みを使って、より豊かな生活になっていくという。それでネスカフェも売れるみたいな、こんな取り組みをやっているというのが1つのいわゆるサリサリ攻略のプログラムだったりするのです。
東:ヤクルトのヤクルトレディーと似ているということですね。
森辺:まさにそんな。これもまたコーヒーとか飲料系の食品系ではないですか。だから出来る技で、これをスキンケア用品でやってうまくいくかというとそうではないし、では味の素でやってみてどうかというとそうではないし。味の素は1回キッチンに入って使われる物ではないですか。それが使われて何かの食べるものになって出てくるのですけど、彼らが売っているものはそのまま食べられるものなので、こういうプログラムというかマーケティング戦略が非常に有効であるということです。フィリピンに限らず、です。インドネシアでもいろいろなところでやっていますから、同じようなことを。
東:BOWというのが、だけでやっているわけではないということですね。
森辺:そうです。もちろんディストリビューターを通じたGT、グローサリーへの通常の販売活動もやっているし、ネスレ本体によるモダントレード、MTチャネルへの通常の商売もやっているし、さらにその細かいサリサリ。サリサリだってディストリビューター経由でやっている企業もあれば、BOWみたいな仕組みの場合もあるし、いろいろな試作を展開しているというイメージです。
東:そこがチャネルに合わせてネスレもきちんとそういった対策ではないですけど、政策をきちんと取っているということですね。
森辺:そうです。競合だって当然いまして、インドネシアですごく強いコピコという同じような、ネスカフェみたいなのを作っている会社もあれば、いろいろな会社がいるのです。マレーシアの会社とか、タイの会社とか。だからそういう会社もいるので、シェアNo.1に甘んじない彼らのマーケティング戦略というのがすごいなと。100何年の歴史の中でノウハウがちゃんと会社に蓄積されていて、時代時代に合わせていろいろなマーケティング試作をくり出しているというのは1つです。
東:ネスレなんかでいうと、どこのサリサリにいっても、どこのMTと言われるスーパーだとかハイパーにいっても、基本的には置いてない所はない。
森辺:絶対置いてあります。ネスカフェに置いていないサリサリがあったら教えてほしいというぐらいに置いてあります。
東:なるほど。今日はお時間が来たのでここまでにして、また引き続き次回もネスレについてお聞きしたいと思いますので、森辺さん、今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。