森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、B2Bの製造業向けのお話をしていきたいと思います。
前回かな、前回までB2Bの製造業向けの話でアジア新興国市場でなかなかうまくいかない企業の特徴、陥りやすい3つの思考ということでお話をさせていただいて、こういう思考に陥る企業というのはだいたい失敗していますよというお話をしてきたと。思考というか、失敗の法則ですよね、その話をしてきて。大きな1つのメッセージとしては、一方な製品の優位性よりも、相対的な販売チャネルの優位性のほうが圧倒的に重要ですよということをお話してきたと。今日は、じゃあ、逆に成功している先進グローバル企業と言われるような企業がなぜ成功できているのか、彼らの思考ってどうなっているのかということでお話をしていきたいなというふうに思います。
今日はね、たぶん1つぐらいしかお話できない、大きく分けて3つあるんですよね、先進的な、新興国市場で成功をしている先進的なグローバル企業が持っている、非常に重要な思考が3つあって、それが成功に結び付いていると僕はすごく思っています。アジア新興国中で本当に相当な数の先進企業にインタビューをする中で導き出してきたものなので、だいぶ確実性の高い話じゃないかなというふうに僕は思っていますけども。1つはね、スピードが価値に変わる仕組みをすごく理解しているということで、一般的に日本企業ってスピードが遅いとか判断が遅いとか言われるわけですよね。これは海外に行けば行くほどそうで、現場で決められないと。とにかく日本企業というのは、訪問してきて、いろいろ聞いてきて、情報だけ収集してきて、国に帰って、そのあと音沙汰がなくなるという、こういう傾向が非常に多くあって。いくつかの要因がそれにはあるんだけども、その中でやっぱり一番の要因というのが、リスクを嫌がるので、石橋を叩いて叩いて叩きまくっている途中に割れちゃうので、行けなくなっちゃった、みたいなそういう話なんですよね。
一方で、先進グローバル企業というのは、そんなに叩いたって意味がないので、叩くということよりも、進むということのほうが優先されるんですよね。このスピードが価値に変わる。なぜ彼らがそんなに早く判断できて、日本の企業は同じ企業なのに判断が遅いのかということを考えていくと、彼らはスピードが価値に変わる仕組み、早いということがどういう価値が本当にあるのか、物理的にA地点からB地点まで早く行くということの価値はもちろんなんだけども、そういうことではないんですよね、彼らが見ている価値というのは。言ったら、誰よりも早く動くということが、誰よりも早く失敗をすることにつながるわけですよね。当然、未開の新興国市場で誰よりも早く動きますから、当然誰よりも先に失敗をすることになると。誰よりも先に失敗をすると、当然、誰よりも先に学ぶことになるので、社内にノウハウが蓄積されていく。これは、いわゆる情報という意味でのノウハウもそうなんだけども、実際に自分たちがやってみて得た結果という意味での学びが非常に重要で、そういったものが誰よりも早く蓄積されていく。そうすると、当然ながら、誰よりも早く成功するという、このスパイラル、好循環のスパイラルを非常によく理解しているので、とにかくどんどんやっていくと。
一方で、もちろん会社が傾くような大きな失敗はできないので、めちゃめちゃ調査をして、めちゃめちゃ事前に調査をして、インプットを入れて、高度な仮説を立てるということを絶対やっているんですよね。「とにかくやらなきゃ分からないんだから、やってみようよ」とドーンと出ていって、ドテッとこけるようなことはしなくて。何をしたらこけてしまうのかということは、事前に情報収集をしっかりすれば、いわゆる日本企業がアジア新興国市場で失敗するような低次元の失敗はないわけですよね。彼らはもっと高い次元の失敗はあるけども、低次元での失敗はなくて、日本のうまくいかない、新興国市場でうまくいかない企業の失敗って、そんなにレベルの高い失敗はしていないんですよね。低次元の失敗をしていて、なぜそうなるかと言うと、事前の情報収集が足りないから、調査が足りないからと、そこのコストが捻出できないからと、捻出する習慣がないと言ったほうがいいかもしれない。「自分でやれ、考えろ、とにかく行って走りながら」みたいな話で。「行ってみて、走りながらやれ」って、これは非常に聞こえはいいんですけど、シリコンバレーの会社が誰もやったことないことを走りながらやるんだという、そこからもともと来ているのでね。いっぱい失敗事例が転がっているのに、それを見ないで、とにかく走りながらって、それはまた違う話なので、そういうことではない。
そうすると、先進グローバル企業は非常に高い高度な仮説を立てて、それを回していくということをやるので、僕がこのインタビューをしながら思うのは、彼らの仮説値が非常にレベルが高いということと、高い仮説の中でスピーディーに物事を進めて、そこでの失敗が日本みたいに、「あーあー、やっちゃった」という話にならないんですよね。「よし、失敗した、ナイス」ぐらいの話で、「じゃあ、その失敗の要因を分析して次につなげよう」と言って、次にどんどん、どんどん、回っていく循環サイクルが組織の中にちゃんと定着しているというのはね、僕はびっくりしたんですけど、非常に驚いたと。「だから、イノベーションって生まれるんだな」なんていうふうに思いましたけどもね。
次回ね、ちょっとこのイノベーションのこと、ディスラクティブ・イノベーションの話を少ししていきたいなというふうに思いますので、また次回お会いいたしましょう。