森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も寒いですね。年末年始、「あれ?あったかいじゃん」とかって思っていたんですけどね、急にだんだん寒くなりましたね。やっぱり1月2月とかが一番寒いんですかね、日本はね。3月もまだ寒いですもんね。寒いなということをひしひしと感じている今日この頃でございます。すみません。余計な前置きで30秒経ってしまいました。今日も引き続き、B2Bの製造業向けのお話をしたいと思います。対象はアジア新興国市場です。
前回ね、スピードが価値に変わる仕組みを先進的なグローバル企業って非常によく理解していますよと、高度な仮説を持った上で、いかにスピードで回すかと、誰よりも早く動いて、誰よりも早く失敗して、誰よりも早く学んで、誰よりも早く成功するんだという、このサイクルがしっかり組織に根付いているよというお話をしたと思うんですけども。その中でね、そういうことをするからイノベーションが生まれるんだなというところで時間が来てしまって、今日はそのイノベーションの話なんだけども。あらゆるものって、欧米で発明されてきたという歴史があるわけですよね。われわれが今、乗っているもの、使っているもの、見ているもの、あらゆるものって、もともとは欧米で発明されて、それを日本企業がより良く、より安く、より小さくつくったことで「Japan as No.1」と言われた時代があって。そうこうしているうちに2014年~2015年ぐらいから中国がガーッと台頭してきて、いつの間にか中国のほうが、より良く、より小さく、より安くというのが今、現代だと思うんですけども。
その中で、アメリカという国は常にディスラプティブ・イノベーションを起こしてきたなというふうに感じるわけなんですけど。このディスラプティブ・イノベーションって何かと言うと、アメリカの経営学者で実業家のクレイトン・クリステンセン先生が提唱した言葉なんですけど、日本だとね、米倉誠一郎先生が破壊的イノベーション、ディスラプティブ・イノベーションに関しては第一人者だと思うので、いろんな本が出ていますけど、そういうものを生んでいく。これはどういうことかと言うと、今までこうだと思っていた常識をまったく覆してしまうようなイノベーションなんですよね。日本でイノベーションと言うと、技術革新って最初に訳しちゃったので、技術をとにかく革新させること、進歩させること、これがイノベーションだったし、かつて70年代80年代90年代というのは、そのイノベーションが十分イノベーションだったんですよね。例えば、ブラウン管のテレビが薄型になったとか、ウォークマン、カセットテープがCDになったとか、MDになったとか、これでそもそもイノベーションだったんだけども。そこにインターネットが入ってきてデジタルの時代になってきたときに、そんなものではもう全然ディスラプティブ・イノベーションとは呼べなくて、いわゆる技術革新的なイノベーションというのはイノベーションではなくなってしまって、それこそ最近、日本でも法改正で議論が話題になっていますけど、Uberのようなね、ライドシェアとか、いわゆる既存のサービスに新しい何かを新結合させることで、結合させることでまったく違う価値を生んでいくみたいなね、こういうものがイノベーションになってくるんだけども。アメリカってこういうところからディスラプティブ・イノベーションを生んでいくんだななんていうふうにはすごく感じる、日々欧米の先進的なグローバル企業を見ていると、そんなことを感じますと。
一方で、今、日本企業というのは、イノベーションのジレンマと言われる、これもクリステンセン先生が提唱した言葉ですけども、意味としては、ある技術にもとづいた製品やサービスで成功すれば成功するほどその技術にこだわるので、イノベーションに立ち遅れ、衰退してしまうこと、日本のB2Bの製造業の多くはね、このB2Bだけではなくて、B2Cも含めてこのイノベーションのジレンマに陥っていて、特にB2Bなんかはそうなんですけど。本当に素材とか唯一無二の圧倒的な技術力を持ったところは突き抜けていますけど、そうでないところって、ほとんど中国とかアジアの企業でも同じようなもの、そこそこ良いものをつくり始めてくると、結局このイノベーションのジレンマに陥ってしまっているので、技術力競争をし始めるわけですよね。いやいや、もうちょっと、1ミリ薄いとか、もう目に見ては、肉眼では分からないような違いを追い求めていて、仕様書に出てくるような、消費者とかユーザーはね、B2Bなので、消費者ではなくて、ユーザーとかはまったく見ないような違いに競争の中心を持っていってしまうんだけども。そんなことではないよねと。イノベーションって、そもそもシュンペーターが言った言葉ですけど、5分類あって、新しい製品の創出、これが1つ目。2つ目が新しい方法の導入、方法でもこれはイノベーションなんですよね。あとは新しい市場の開拓、これはマーケット、ニューマーケットを開拓することもイノベーションだし。新しい資源の獲得、ニュー・ソース・オブ・サプライ、これもイノベーションの1つだし。あと、新しい組織の実現、これはニュー・オーガニゼーション、これもイノベーションなわけですよね。こういうものがやっぱり足りない、どうしてももともと欧米がつくったものを、より良く、より安く、より小さくすることで今の日本の地位を築いてきたので、そこでまたイノベーション=技術革新というふうに訳しているので、そこにどうしてもこだわってしまう。でも、そうではないんだと、今の技術を何かと組み合わせることで新しい価値を生んでいくみたいなことって、やっぱり先進グローバル企業のスピードが価値に変わる仕組み、これも高度な仮説を立てるんだけども、未開の地に早く入っていくわけですよね。早く入って、早く転んで、早く失敗して、早く学ぶという、これが成功に通ずるということなので、このイノベーションのジレンマに陥ってもう30年ですけど、ここをたぶん変えていかないとなかなか難しいんだろうなということをね、言葉では分かっているんだけども、実際に先進グローバル企業の人たちにインタビューをしているとね、それを実感することが非常に多くあって、ちょっと皆さんにどこまで伝えられたか分からないですけど、そんなふうに思っています。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。