東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では、森辺さん今回は前回のフィリピンから離れてインドネシアの方にいってみたいと思うのですけど、どうでしょうか。
森辺:いいですよ。
東:結構日系が、日系の車関係も9割以上のシェアを取っていたり、日系が強い市場ではあると思うのですけど、この中で1社ぐらい成功している事例としてあげるとすると、どういったところがあがってくるのでしょうか?
森辺:有名なのだと、自動車95%以上が日本車ですよみたいな話がありましたけど、結構インドネシアはいっぱい企業が出ているのですけど、マンダムなんかは成功企業としては非常に有名です。有名です、あれは。
東:日本だとギャッツビーとか資生堂とかあっちのほうが大きいですけど、インドネシアだとマンダムさんが強いと。マンダムさんはいつ頃からインドネシアに出ているのですか?
森辺:マンダムさんも、最近というかここ何年かですごい、すごいとこう言われているイメージがありますけど、意外に進出は早くて、我々が生まれる前から進出しているのです。確か1969年だったと思いますけど、それぐらいからやはり現地の会社との合弁会社で出ているというのがもともとなのです。工場です、もともと。
東:他にマンダムのインドネシアの歴史という形で時系列に並んでいるので、簡単に紹介していくと、1969年の11月5日に現地ショーンと合弁会社を設立していると。1971年にスーンター工場で化粧品の製造を開始。あとはポマードとチックをインドネシア国内で販売開始していると。1975年にマンダム男性化粧品シリーズ発売。結構早いですよね。1973年に直販部門、今まで多分直販がなくて直販部門を補足していると。1980年にギャッツビー、スポルティング、男性化粧品シリーズを発売。1982年にピクシーブランド販売。1990年に東南アジア各国、日本にも輸出開始。93年にジャカルタ証券取引所に上場。日系で11社目。上場しているのですね。95年にドバイのジェムプラザと取引開始。ここでアフリカ等への再輸出。2001年にPTマンダム・インドネシアTBKに社名変更。チビトンの第一工場稼働と第二工場稼働は2007年です。2007年に年間売り上げ1兆ルピア達成。1兆ルピアというのはいくらぐらいなのでしょう。
森辺:88億ぐらい。
東:2011年に年間売り上げ1兆6,546億ルピアに達成。これで100億超えているという。
森辺:130億ぐらい。
東:130億ぐらいと。ただこれだけ長い年月をかけてやはりやられているということなのですね。
森辺:そうです。だからインドネシアの人にマンダムは知っている?というとインドネシアの会社だろと。日系の謝恩が入っているといっても、日系ということを知らない層もたくさんいるので、それだけやはり認知されている会社です。
東:逆にいい意味で広まっていると。
森辺:ただそれにはやはり40年以上の、45年の歴史がやはりあるというのは1つです。
東:マンダムはこれだけ当然歴史もあるというのは1つあると思うのですけど、森辺さんから見たときにこれだけインドネシアで現地企業と間違われるほど広まっているという理由はどういうところにあると。
森辺:長いというのは1つですけど、やはりディストリビューションチャネルの取り方がMTだけではなくてTTも深く入り込んでいるのです。前回だったかな。フィリピンはTTがサリサリストアというのが70万店あると言いましたけど、インドネシアも同じようにワルンといわれるパパママショプが250万店あるのです。そういうところにもやはり入っているところには入っていたりするのです。それが1つの理由ですし、なぜそこに日系が不得意とする、いわゆるジェントレードとかトラディショントレードに入れているかというところには長い歴史の中で培ったノウハウがあるでしょうし、マネージメントの体勢とかにも大きな影響があるのではないかなと。多分かなり現地化が進んでいると思うのです。マネージメント体制が。
東:日本人だけでやるのではなくて、そのローカルの優秀な人をきちんと登用して。
森辺:そうです。登用してやっている。
東:TTの開拓をやっていたということなのですね。それこそマンダムのターゲットというのは最初からそういった貧困層まではいかないけど、中間層にターゲットを置いて全インドネシアで広めるというような戦略をとっていたという感じなのでしょうか。
森辺:人口がインドネシアは2億何千万ではないですか。そんな中で平均年齢が確かフィリピンの次に若いのです。26、7歳だったか。5、6歳だったかな。そんなわけで、人口ボーナス期が当然長いわけではないですか、人口構成のピラミッドを見ると。綺麗な三角形になっていて、日本は思い切り逆三角形になっていて。そうするといかに若い層への投資が将来キャッシュをうむかということを戦略の中で取り入れているので、今貧困だったとしても将来その人たちの所得があがるということに目をつけて、やはり中間層以下。1番下の貧困層はいかないけど、上位貧困層とか中間層の下側当たりはやはり思い切りターゲットにして上に上がっていっているという、そんなイメージです。
東:このターゲティングというのは結構重要だと思うのですけど、日本企業は上の富裕層から下に降りていくみたいなのが意外と価格面とかいろいろな面で取りがちな戦略だと思うのですけど。
森辺:結局コンシューマープロダクツではないですか。コンシューマープロダクツで、例えば化粧品とか香水とか言ったら別だと思うのですけど、コンシューマープロダクツで、高級路線で売ってももうからないのです。たとえば、たかがヘアージェル。どんなに高級だと言われたって限界の値段はあるではないですか。
東:1万円出して買うかというと買わないですものね。
森辺:買わないです。金箔を入れたらいいのかという話しになってしまうし、だから自分たちの売っている、日本企業にありがちな戦略は日本製だし日本のプレミアムな感じで上の層だけ狙えばいいのだというのですけど、上の層だけねらっていてそこから下に落すという戦略も戦略としては成り立つのです。ただ、やはりコンシューマープロダクツである以上、下の層をどれだけとれるかということと、短期の収益を中間層、富裕層で得るということと、その低所得者へのマーケティングでいかに10年先、20年先の収益をいまから取り組むかというのがすごく重要なポイントになってくるので、それをしっかりやれている企業がマンダムさんです。私はお目にかかったことはないですけど、やはりここの現地で陣頭指揮を取っていた方が非常に優秀だと聞いています。
東:製品開発は当然現地適合化と呼ばれるところも非常に優れているということなのですよね。
森辺:そうです。現地適合化の要素の中にプロダクツ、4Pで言うとプロダクツ、プライスがしっかり現地適合化されているのです。チャネルがくるではないですか、プレイスというやつです。プレイスがチャネルなので、それをしっかりしている。そこまで来ると収益が上がってくるのでプロモーションもちゃんと打てるという、この4Pがきっちり揃っている。
東:4Pを、マンダムの話しから外れるかもしれないですけど、4Pを海外の参入ステージ、ステージによってまた違うと思うのですけど、参入ステージで言うとどれが一番重要なのですか?
森辺:プレイスのP。つまりはチャネルです。
東:最初に、1番最初にやはりプレイスがくる。その次に。
森辺:プレイス、プライス、プロダクト、プロモーションかな。日本だとプロダクト、プライス、プレイス、プロモーションではないですか。
東:最初に物がきますよね。
森辺:プロモーションはチャネルがないのにプロモーションを打ったってしょうがないし、プロモーションもいろいろなプロモーションがあるので。このステージではこういうプロモーション、このステージではこういうプロモーションというのがあるのであれですけど、やはり日本の会社だと製品は日本で売っているままなのです。プライスももう決まっているのです。あと残りのPみたいな。けどプロモーションはいきなりお金をかけられないので、プレイスどうしましょうみたいな。それでは難しいよねというのが非常にあります。
東:やはりプレイスというところの流通網だったり、販売網だったり、ディストリビューターのネットワークというところをきちんと整理する、押さえるというところからはじめないといけないということですね。分かりました。今日はここで切りがいいので、次回また引き続きよろしくお願いします。
森辺:よろしくお願いします。