【本の解説】ベトナム市場 南北問題とディストリビューターの機能
新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/449565019X
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『ASEAN6における販売チャネル戦略』、私が去年、同文舘出版から出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。今日は88ページの南北どちらを先に攻略するかを考えるということで、ベトナムのいわゆる南北問題の話なんですが。これ、ベトナムって北のハノイからホーチミンまで1,600kmぐらいあるんですよね、真ん中にダナンがあって。市場をね、消費財の市場をざっと分けると、南部のホーチミンで5割、ハノイで3割、ダナンで1割、その他で1割という、こういう市場構成になっていて、この1,600kmのいわゆる物理的な距離と、縦長のね。あと、ダナンの上のフエのちょっとこの上のところに高い山脈があるんですよね。昔からこの山脈を超えるのが大変で、南北の、隔たりって言うと語弊がありますけど、距離的な問題と、この高い山を越えなきゃいけないということで、北に行く、南に行くということがすごく制限されてきているんですよね、地理的な、物理的な話で。そういう問題と。あと、もともと南北戦争があって、ベトナムは、皆さんご存じだと思いますけど、北が勝っているわけですよね。そうすると、やっぱり南の企業が北で成功するのは大変だし、どちらかと言うと、まだ北の企業が南で成功するほうが大変であると。町を見てもらったら分かると思うんだけど、ハノイとホーチミン、全然、町の印象が変わるし、ホーチミン出身の人とハノイ出身の人、これまたキャラクターが大きく変わるので、結構この南北問題がまだまだ根強く残っていますよということで。
経営資源をどこに投下する、集中させますかということが、結構、戦略上すごく重要で、日本企業の消費財メーカーの場合、そんなに大量に経営資源ドーンといきなり最初から投下ができる企業というのは少なくて、どちらかと言うと、やっぱり実績をつくって徐々に広げていくというほうがなんとなく日本企業の戦略文化には合っていると思いますので、これをどうするかということがすごく重要で。消費財メーカーの場合、一般的にはやっぱり南なのかなというふうに思います。それに応じてディストリビューターなんかも、やっぱり南のディストリビューターを北で使ってもまったく役に立たないので、いかに北は北、南は南で分けていくかということはすごく重要で。この南北問題というのはなかなか根強いですよという。政治的な、歴史的な背景もそうなんだけども、地理的な背景もあるので、自分たちのセールスエリアをしっかりと分けるということをやっていく必要がありますねと。
あと、90ページのところに、ディストリビューターにセールス機能がないことを理解するというのがあるんですけど、ベトナムの、これは特徴、面白い特徴なんですけど、ディストリビューターの定義って何ですか、機能って何ですかって言うと、われわれ日本人からすると、基本的にはセールスとデリバリーなわけですよね。場合によってはマーチャンダイジングということなわけですけども。ディストリビューターにセールスの機能があるところが非常に限られている。例えば大手で有名なところ、10社ぐらいしかないんですよね。本当にちゃんとセールスの部隊を持っているようなところが。大手だと南のメサ…、「北のプータイ、南のメサ」なんていうふうに言われるんですけど、メサ者とプータイ者というのが非常にセールス機能を持った大きなディストリビューターですけど。やっぱりそういうところは当然大きなプレイヤーと大きなプロモーション予算を使いながら、大きな事業をやっているので、なかなかこれから参入をするような企業が、仮にお付き合いできたとしても、本当に合うのかなって言うとね、なかなかついていくのがしんどいということもあるので、基本的にはそうではないディストリビューターを使うケースというのはあるし。ネスレリーバモデルって、私は呼んでいますけども、いわゆる100、150、200のディストリビューターを地域別にたくさん使って、マイクロディストリビューションしていくというほうが、基本的にはベトナムの市場には合っているケースが多くて。これらのディストリビューターは非常に小規模なディストリビューター、ほんとに地域のデリバリーがやっぱり専門で、セールスをこちらで出さないといけない。そのディストリビューターに採用させて、人件費をこちらで持つというパターンもあるんですけど、基本的にはセールスがないですよという特徴をしっかり理解をしないといけない。セールス、ストック、デリバリーみたいなところが主要なディストリビューターの業務だとすると、セールスがない、じゃあ、ストックしてデリバリーするだけみたいな、それってヤマトさんじゃん、佐川さんじゃんという話なんですけど、それをベトナムではディストリビューターというふうに呼びますので、そんなふうにちょっと考えていかないと駄目ですよ。あくまでセールスはこっちですよと。そもそも日本企業、ベトナムにも限らずなんだけど、マーケティングとかセールスの業務をディストリビューターに丸投げする傾向が非常に強いので、いかに自分たちでやるかということはすごく重要で。ベトナムでディストリビューターを使うって伝統小売なのでね、伝統小売に対してディストリビューターを100社使ってマイクロディストリビューションして、一方でベトナムの近代小売とは直取をするということをね、現地法人があるんだったらやるべきだと思うので、チャネルのストラクチャーのあるべき姿みたいなものをね、ちゃんと適正な姿を考えてチャネルをつくるということは重要になってきますよというようなことを書いています。
次回からね、91ページ、主要小売プレイヤーのお話をしていきたいなというふうに思います。それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。