森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も、ちょっとここ最近、何回か、リスクについてお話をこの番組でしていると思うんですよね、日本企業とか日本人のリスクに対する考え方とか、捉え方、対処の仕方みたいなところのお話をしてきていて。また今日もね、ちょっとそのリスクのお話で、どうしてもね、このリスクの捉え方というか、考え方みたいなところが日本企業の新興国市場における事業展開に大変大きく関係しているので、また今日もその話をしたいなというふうに思っているんですが。
ちょうどね、私の親戚が毎年アメリカから遊びに来るんですけど、彼はアメリカ人で、僕の妻の妹と結婚をしていて。妻の兄弟はね、みんなアメリカに住んでいて、アメリカ人と結婚しているんですけども。その彼がアメリカでコンサルファームで働いていますと。人材系のコンサルファームで働いていて、やっぱり日本の特定の業界の企業と取り引きがあって。もちろん日本にもね、支社があったりとかっていう会社なんですけど。その中で、いかに日本企業にジャッジをやっぱり早くさせるかみたいなことっていうのは、当然ながらアメリカのそういう企業の中にも…。まあまあ、そもそも日本企業のジャッジが遅いとかね、日本企業が遅いというのはもう周知の事実で、これは別にわれわれだけがそう思っているわけではなくて、アメリカ企業なんかもそう思っているわけですよね。ASEANの企業でもそう思っていますから、世界的にみんなそう思っていますよという状態なんですよね。その中で、彼らも日々そこが苦労すると。僕が彼にね、「なぜそうなんだと思う?」と、「なぜ日本企業は遅いんだと思う?」という話をしたときに、彼らの中では、それがやっぱりカルチャーの違いだっていうふうなところに集約されているわけですよね。カルチャーが違うから、決定に対するプロセスも違うし、リスクに対する許容度も違うし、だから、カルチャーの違いなんだというふうに。でも、じゃあ、カルチャーの違いだって言ってしまったらね、それで終わってしまう話なので、どういうふうに捉えたらいいのかなっていうことを少し考えていて。
僕ね、もちろんカルチャーの違いだし、商習慣の違いだし、いっぱいあるんでしょうけども、「リスクを取る」っていう表現がすごく良くないなと思っていて。これって技術革新、イノベーションを技術革新と訳してしまったのと同じでね、別にイノベーションというのは技術を革新させることだけじゃなくて、シュンペーターが言っているのはね、特に新結合がイノベーションには大切だと、もともとあったものが何か別のものと、新しいものと結合することによって新しい価値を生むとかっていうことが重要なわけですよね。Amazonなんかまさにそうで、ネットという新しいものと本屋というもともとあったものが結びついてオンラインブックストアになって爆発的に伸びていったみたいな話なので。Uberだってそうですよね。配車という事業はそもそもあるわけで、その配車の事業とテクノロジーがくっつくことによって、1台の車も持たずに、1人の運転手も雇用せずにUberという配車サービスが世界中でこれだけ行き渡ったという、まさにイノベーションなわけなので。必ずしも何か日本の1980年代、70年代、80年代、90年代にやってきたハードウエアをね、より良く、より小さく、より安くつくるみたいなことが技術革新=イノベーションではないですよというのと同じでね、リスクを取るというと、あるモノを得たいなら、リスクを受け止めなきゃいけないと。つまりはリスクというのは悪なので、いわゆるノーペイン・ノーゲインと同じように捉えてしまっているんじゃないかなと。ノーペイン・ノーゲインというのは、いわゆる苦労しなければ成長はないよということなわけですよね。だから、ノーペインなので、痛みがなかったらゲインはないよと言っているわけなので、痛いわけですよ。でも、痛いからこそ成長する。これがノーペイン・ノーゲインの話で。
でも、リスクを取るとかって、事業におけるリスクを取るというのは、別に必ずしもペインがあるとは限らないわけで、リスクは取るのではなくて、マネージをするということなんですよね。むしろ、リスクが高くても、そのリスクをうまくマネージできれば、得られる成果は非常に高いわけじゃないですか。これも、投資も一緒ですよね。リスクは高いんだけども、そのリスクをうまくマネージすることができれば、リターンは高いので、ノーペイン・ノーゲインとは違いますよということなんですよね、リスクとゲインの相関関係というのはね。痛みを得ないと成長がないと言っているのではなくて、目の前にある、起こり得るリスクに対してどれだけ準備をして、どれだけ可視化をして、そして、どれだけ…。可視化すればそれをマネージする方法が見えてきますから。だから、結局、情報戦なわけでね。欧米先進グローバル企業が調査や情報にものすごく投資をするというのは、まさにこのリスクをマネージするためにそこに投資をしているということでね。日本企業の新興国市場の展開を見ていても、とにかく調査しなさ過ぎ。本当に知るべきことを知らずに、「製品良いからいきましょう」みたいなね、極端に言うと、そういう傾向がB2CもB2Bも大きく見られるので。なので、結局これってリスクをマネージできてないっていうことなわけですよね。なので、やっぱりそこの解釈がね、イノベーションを誤って解釈をしてしまったというのと同じように、リスクを取るということはノーペイン・ノーゲインじゃないんですよと。別にリスクをドーンと受け止めて、損失を出さなきゃいけないという意味ではなくて、いかにリスクをマネージするかということが重要で。
じゃあ、そのマネージするためには、リスク要因を可視化する、可視化するためには情報収集する、情報収集するためには調査をするということが重要で。欧米先進グローバル企業と日本企業を比べたときにね、やっぱり調査予算をしっかり取って、物事をしっかり調べて。知れたらね、これ、怖いものってなくなるわけですよね。真っ暗闇の海に飛び込むから怖い。下が浅かったら頭を打つし、もしかしたらサメが泳いでいたら食べられるしと。でも、サーチライトでバーッと照らしてしまえば、どれぐらいの推進があるのか、中にサメはいないか、いるのかということが見えるわけだから、これがまさにリスクをマネージするということで、このサーチライトというのはまさに可視化、調査になるわけですよね。だから、そこの違いがたぶんすごくあるんだろうなという結論に、私はあらためて至った次第でございます。そのことを皆さんにお伝えしたくて、今回はそんなお話をさせていただきました。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。