森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、ディストリビューターとの契約についてお話をしていきたいなというふうに思います。アジア新興国市場におけるお話です。対象は製造業、B2C、B2B、問いません。
今日のお話はね、ディストリビューターとの契約、これが独占契約でやるのか、どうなのかみたいなね、そういう問題、課題を抱えている企業さんは結構いらっしゃって、「できれば独占契約をあげたくない、何かあったら困るので」ということなんだけども。でも、ディストリビューターも100%最初は「独占契約をくれ」から始まるので、「駄目です」で、ちゃんと社内の規定がもうガチガチの大企業は結構、「いや、独占は駄目、もう、うちのひな形はこれだから」ってなっていてね、いろんな各国で結んでいるので、「これをベースにお願いします」というので、そこから動かないというケースと、あと、大企業でも各国でひな形がカチッとしていない、まだカチカチになっていないようなところは、独占契約でふわっと結んでしまっているという、そういうケースもありますと。ただし、更新が1年とか2年の自動更新になっていると。だいたい1年の自動更新になっているケースが多いですかね、私が今まで見てきたのは。こういう仕事をしていますから、何百という契約書をレビューしてきていて、ちょっと数えたことはないので何百なのか、もしかしたら千を超えているかもしれませんけど。相当数レビューをしてきていますと。その中で、やっぱり1年契約の更新というのが非常に多いと。独占は、その会社の社風と言うと語弊がありますけども、結構もう海外のディストリビューターとの契約書のひな形はこれということでね、かなりカチッとしてしまっている会社は、もうそこから動かないので、これで結べないのだったら選択肢から外れるみたいなね、そういう会社もやっぱりあるので、そうか、もしくは取りあえず1年更新だし、独占してしまいましょうということで独占契約を結んでいるというケースがあって。
でも、この独占って、結局、ディストリビューターの得意な領域、つまりは地域とか顧客とか、B2Bだったらインダストリー、B2Cだったら小売みたいな地域とかね、こういうところで独占を結ぶというのはいいと思うんですよね。なんだけども、国全体で独占を結ぶって、都市部、地方部、それからB2Bだったらインダストリーもそうだし、得意不得意というのがあるわけですよね。それが不得意なんだけど、なんとか頑張ってやれますとか、二次店使って頑張りますみたいなね、これがやれてしまうレベルにあるんだったら別にそこにまるっと独占を与えて管理するのは1社で済むみたいなね、これはいいですと。ただ、自分たちが独占を与えている領域に対して、自分たちのディストリビューターがどれぐらい本当にリーチできているのか、実力値があるのかというところをちゃんと見極めた上で独占を与えているのかどうかって言うと、やっぱりなかなかそうなっていないと。ただ、ディストリビューターが独占と言ってくるから与えました、更新1年だしみたいなね。
これってやっぱり独占契約って武器なので、これはうまく使うということは、僕は重要だなというふうに思っていて、まずディストリビューターがどう逆立ちしたって獲れないような地域とかインダストリーに関しては、これはあなたたち不得意だから要らないよねということで、まず独占を排除しておかないと、そこの地域に関してはやっぱりなんとなくぼんやりしてしまうわけですよね。いや、本来、このディストリビューターでは独占をあげようが何をしようがもう届いていない、リーチできていない地域、リーチできていない顧客なんだから、ここに関しては別のディストリビューターで攻め入らないと、やっぱりなかなか進まないということを最初にしっかり可視化する、把握するということはすごく重要で。だから、本当に得意な領域に対してまず独占を与えるということが1つ非常に重要なポイントであるということと。
あと、独占を与えるからには、最低コミットメントをしっかりもらう。年間、初年度いくら買いますか、次年度いくら買いますか、3年度いくら買いますか。初年度だけでもいいと思います。もしくは契約更新をね、1年2年3年とかで、例えば2年更新、3年更新でやるんだったら1、2、3年の最低コミットメントみたいなものはやっぱりもらわないと、これは独占を与える意味というのがなかなかなくて。だって、独占なんですよ。だから、1年目は猶予したとしても、2年目3年目とかはやっぱり最低限のコミットメントはもらう。これは目標とは違うので、目標というのは両社で協力して目指しましょうねというところで。この目標でなくてもいい。実際には非常に低い数字でいいと思うんですよ。でも、「これだけの買い取りは約束しますよ」と、「これだけは絶対に買います」というところのボトムの数字は、やっぱり引っ張り出してこないと、ディストリビューターの本気度だってそこで測れるわけですよね。だから、そこでしっかりやっぱりそこを獲っていくということと。
僕はね、3年5年ぐらいの契約をね、5年と言ったらちょっと長いかもしれないですけど、3年ぐらいの契約をね、僕はね、したらいいと思うんですよね。単年度更新って、1年でできることなんて限られているし、ディストリビューター側からしたら、契約書に書いてあることがすべてなので、取りあえず1年結んでくれたらね、日本人の感覚だと性善説で進むので、これは別に問題なければこのまま自動更新されてみたいな感覚でいるわけなので、かたち上1年契約だけども、まあ問題が起きない限りずっとこれは契約されるというふうな感覚で進むわけですけども、アジア新興国市場のディストリビューターは、「いや、1年で切られるかもしれない」というのはもちろん当然頭にあるわけで。だとすると、「3年間このエリアに関しては独占を与えます。その代わり1年目2年目3年目のこのコミットメントください」ということでやればいいと。
仮に、その最低コミットメントが達成できないとかね、何かあれがあった場合には、3年間の独占契約を単年度の非独占契約に切り替える権利がメーカー側にあるという条項を別に付ければ、これは何らリスクではないんですよね。3年5年で結んだとしたって何らリスクではない。さっき、5年って長いかなって言いましたけど、別に5年でもね、最低コミットメント、買い取りの設定の数値が得られるんだったら、それで満足できるんだったら、そこを設定しておいて、それが達成できなかったら単年度に切り替えればいいわけですから。切り替えるか切り替えないかはメーカー側が決められるということにしておけばね、仮に「やっぱり駄目だな、ここ」ってなったときに、単年度に切り替えてしまって、契約解消して別のディストリビューターに変えるということもできるので。そうすると、メーカー側のリスクは最小限に抑えられる上、ディストリビューター側のモチベーションとか、経営資源の投下量というのはやっぱり変わってくるわけですよね。オーナー社長にしてみたら、5年で契約を結べた。しかも独占だと。私たちはやっぱりちょっと頑張らないといけないかもしれないけど、最低これぐらい買えば、このメーカーとしっかり取り組んでいける。じゃあ、経営資源を投下しようみたいな話になるわけなので。オーナー社長、華僑のオーナー社長との心理戦のやり取り、そこをやっぱり契約締結前までにしっかりやっておくということはすごく重要で。そうするとね、契約締結前にある程度戦略が明確になってくるんですよね。結局、契約したのに、あれだけいい話、契約前までいろいろ話して、ご飯食べて乾杯とやったのに、契約して始まったらなんか売れないじゃんと。なんかいろいろ理由をつけてくると。なんか結局駄目だったみたいなね、そんなことって結構多くて、だから、海外のディストリビューター、100%言っていることを信用するなんていうことはナンセンスで、基本的には契約締結前に、どれだけ契約でき決めたことが確実に履行されるかということを見抜いていく、そのための時間なので、こういうやり取りを喧々諤々やるということは、契約締結後の本当の意味でのスタートにおいても大変重要ですよというお話でございました。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また皆さん、次回お会いいたしましょう。