東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き山本社長をお迎えしていますけども。最後になりますが、今回はどういうお話を?
森辺:グローバルパートナーズの山本康二社長をお迎えして、今回は前回、前々回、その前と色々なドバイのお話、中小企業の海外展開のお話なんかも色々聞かせいただいたのですが、前回中にドバイという国は日本の中小企業にとって非常に魅力的な市場ですよという話を聞いたと思うんですけどもね。外資の融資政策が進んでいるとか、英語が通じるとか、物をその他新興国のように安くしなくて高い値段でも売れますよというお話を聞いたんですが。基本的に中小企業が海外で物を売るときに、最後セールスをしていく人材というか人のボトルネックに躓く中小企業って一番多いと思うんですよね。その点はどうですか?山本社長はどんな風にお考え?
山本康二(以下、山本):元々戦後からですね、日本が右肩上がりで成長するときに、ほとんどの中小企業の我々のおじいちゃんの世代ですね。街で出稼ぎというか、行商に行ったり、セールス、新規開拓しまくったと思うんですが、もう伸びきった80年代後半ぐらいからは息子さん、大体新規開拓をほぼしていないんですよね。ですから、もう2、30年間新しい出会い、新しい商談というのをしていないのです。それを海外でやれってなると、どこからはじめてよいか分からないという経営者がほとんどなんですね。私どもはそこを、でもやらなかったら始まらないですから、やりましょうということで、営業の考え方とかスキルをあげたりですね、共有をしたり、事例共有をしたりですね、色々なことをしながら人を育てるということをすごく今力を入れてやっているんですね。
森辺:その人というのは海外でセールスが出来る。
山本:森辺さんがもし日本列島に何万人かいたら、そしてドバイで1万人いたらですね、日本の中小企業の製造現場は雇用が増えると思うんですね。税収も増えるし、地域経済、地方も活性化するし、若者は夢が持てて、世界中に自分が作ったものが広まるわけですから、生き甲斐もあると、やりがいもあると。ほとんどの問題を解決しちゃうと思っているんですけど。
ですから人さえ、今までは人がいないから人がいなくても出来るビジネスは何だろう。ではYouTubeだね。もしくはアリババだね、Facebookだねと。もしくはどこかの代行業者にお願いしてと、色々考えていたんですけど。でもそれをフィリピンだとか台湾、韓国、中国、東南アジアの方々、インドの方、アフリカの方、ドバイで出会うとみなさん中小企業なんですよ。別に母国語が英語ではなくてもバンバン営業をやっているんですよね。あれを見て本当にやれるんじゃないかなと思って。うちの社員が仲の良いお客さんもドバイ行きましょうということで、実際この1年ぐらいテストで活動しているんですけど。人の成長がすごく早いです。
森辺:マーケティングとセールスは別個で考えても、セールスというところで考えたときに、僕すごく思うのですけど、グローバルでセールスしていく上で語学力がありゃいいですけど、それが絶対必要かとか、海外の経験がものすごく必要かというと、そりゃあったことに越したことはないと思うのですけど、では無かったら売れないかというと、僕は決してそうではない気がしていて。
山本:当然その契約のときには英語が得意な専門家を同席させたり、貿易の実務がわかる人とか、そういうスペシャリストも必要なんですけど、まずはやはり足で稼いで、すごくお客様と仲良くなって、本音で聞いて、人と人が。
森辺:コミュニケーションをとる。
山本:そうです。仲良くなる、信頼し合うというのはすごくアナログな部分があると思うのです。たとえば人の採用ってあるじゃないですか。今はインターネットで求職者と企業の人事部が出会うわけですね。でも決してネット完結で採用というボタンを押さないですね。結局会ってから決めようと。会ってみて、話してみて期待が出来るか、信用できるか。それは求職側からもホームページに書いてある内容だけ、テキストじゃなくて、実際に経営者、人事の人と会ってみて、先輩社員と会ってみて、この企業に入ろうかどうか。当然日雇いで、工場で段ボール詰めの1日だけのアルバイトであれば、オンラインだけで1回来てってなると思いますけど、長い付き合いをする、要するに何十年そこに勤めようと。もしくは採用しようということになると、そこの最初にフェイスtoフェイス、信頼関係を作る。これ非常に大事になってきますね。
このような、中々言葉で言い表せないんですけど、男女の恋愛でもそうですけど、人と人が会って何か信頼関係とかフィーリングで信用するみたいな部分の要素というのは、決して言語スキルや経験ではないんですね。そこがまず1つ大事かなという風に思うんですけども。
森辺:日本で売れない人は海外に行っても売れるかというと売れないし、日本で売れる人は海外に行っても売れるというイメージですよね。
山本:そう思います。ただ日本の市場は成熟していますし、もう取り合いじゃないですか。海外へ1歩、ドバイへ行くと日本人だけで優位だというか、珍しいので。今ドバイの日本人の多くの人が大手企業駐在員ですね。大手企業の駐在員の人というのは決めちゃいけないのです。勝手に道ばたの人と握手をして契約出来ないんですね。特に大きな製造は製造、販売は販売、そのラインのそこの責任者であったりしますから、全体的なことが分からなかったりするのです。
中小企業の営業マンは価格決定権もあるし、たとえばこのサンプル、無料であげちゃうよとか。もしくは最初天ぷら屋やろうと思ったけど、寿司屋やろうかとか。プラスチックを卸そうと思ったけどアパレルやろうかとか、案外柔軟に意思決定ができる。すなわち海外のビジネスマンから見ると、日本の大手企業のエリートよりも中小企業の経営者なりキーマンの方が、すごくスムーズにビジネスの交渉ができる。
森辺:早い。
山本:そうです。日本人というのは丁寧で悪いものを作んない、サポートも良い、そしてビジネスのスピードが遅いと言われていますね、国際的に。これはなぜかというと、日本の大手企業だけが外に出ているからです。日本の中小企業の親父が海外に行ったらやはり早いんですよ、YES、NOが。ですから、みなさんが耕してくれた日本の良いブランド。悪いところは遅いとかそういう部分ではないですか。中小企業を連れて行ったら、その日に握手したりしますもん。海外より早かったりするんですね。これは面白いなと思って。
森辺:そうすると、今山本さんがドバイでやられているっていうのは、ドバイの営業部隊みたいなのを育成している?
山本:そうですね。私はもうそれ以外出来ないので。ただ営業というとどうしても何か押し売りとかね、悪徳セールスみたいなイメージを持つ方が多いのですが、全然僕は違うのですね。
たとえば、この前ある飲食店のオーナーさんと話して、中々売りが伸びないと。どうやってメニューとか店作りを考えているのだ?と聞いたら、オーナーといわゆる厨房のコックさんの責任者、この2人で決めているというんです。僕は言ったんです。配膳係のオーダーを取るおばちゃんいるでしょ?何で入れないの?と。店の前で呼び込んでいるお兄ちゃんいるでしょ、何で入れないの?と。あいつらは関係ないと言うのです。いわゆるセールスみたいな感じで、出来上がったものを配れば良いのだと。お金取れば良いのだと思っているんですけど、僕は全く違うと。なぜなら注文取ってるおばちゃんは、たとえばこの肉美味しそうだ、ちょっと高いから辞めておこうというのを知っているんです。もしくは、もう少しこれ量を多くしておくれとか、食べ残しがどうだとか。もうお客様の声を聞いている。味がしょっぱいだとか、甘すぎるとか。もしくはメニューにないものもたくさん言うじゃないですか、我々お客さんは。これないの?ないのかと。これ1番知っているのは配膳のおばちゃんなんですね。もしくはお店に入ってくれたお客様というのは、そのお店が少し気に入ったから入ってくれているのであって、9割のお客さんがお店に入ってきやしないわけですね。それを知っているのは店の前で呼び込んでいる人じゃないですか。呼び込んでいる人は、何で他店に行くのか知っているわけですね。こういうセールススタッフというか、エンドユーザーと接する人も含めて物づくりをしてくれれば、もっとよくなると思っているんですよ。
ですから、私はこの仕事を通じて営業マンという人も育てたいし、製造業、物づくり企業における営業というものが持っているアイデア。こういうものも日本の物づくりに反映することで、みんながうまくいってくんじゃないかなと。
森辺:そうすると、私の印象だと山本社長ってのはセールスの神様ではないですけど、最強のセールス部隊の育成に今まで国内で従事されていて、そのノウハウをドバイにそのまま移管してドバイでも売れる最強のセールス部隊を育成していくと、そういうイメージなんですかね?
山本:そうです。ですから、そんな難しいことじゃなくて、買い手の声をちゃんと作り手に届ける。作り手も面白い色々なアイデアを持っているし、今出しているもの以外でこういうものをもっとできるんだよと技術も持っているし、もしくは物をつくる背景とか思いみたいなストーリーを持っているんですよね。こういうものを知らずして、スペックと価格だけで売るセールスマンを僕は育成したくないんです。やはりそういう伝統工芸はまさにそうですけど、そのものの裏には文化なり、生活や習慣、色々な農業の色々な物とか色々な物がつまっているわけですね。そういうものを届けてあげる、それがすごく重要だし。だから生産者、物を作っている人と買ってくれる人の間に立つ営業というものが機能していかないと、結局価格勝負とか、ビックデータ、大きなマスデータを元に中小企業がとんがっていないものを作ったって、大手には負けるわけだし。やっぱミスマッチがたくさん起きている。ですから、営業は、考え方も含めて教えていていくことでモチベーションも上がっていくし、我々の1歩が1歩じゃなくて100歩なのだと。私たちが、時代が、世の中を変えていけるのだと。そういう機運というかムードみたいな、そういうものを今大事にやっているんですね。
森辺:中小企業の海外販路開拓みたいなところのお話なのですけどね。山本社長から見て中小企業さん側の準備というか前提。たとえば中小企業の支援をしていると、「そんな精神だったら海外でやるな」と、「やらないでください」と、そういうのはあると思うんですよ。もちろん一生懸命やっている方もいらっしゃるし、山本さんのところに来られる方で、中小企業は前提としてここまでは準備しておかなきゃいけないし、精神的にこういうマインドで来ないと海外で絶対成功しないですよみたいな、経験則みたいな。
山本:まさに今森辺さんが答えを言ったと思うんですけど、今マインドと言ったではないですか。準備しなきゃいけない商品とか資金とか人材とか、それより1番最初に来るのは経営者自身の本気度、やる気。この不退転の決意がないと無理です。
やっぱり成功している企業、失敗している企業をちゃんと見ていると、共通しているのは経営者が本気であれば、人の問題、お金の問題、物の問題はだいたい解決しているんですよね。時間がないなんてのも解決している。1番悪い例が、海外で英語だと。そうすると「おーい、誰か英語喋れるか?」と言い出すんですね。それで専務が出てきて専務が部長を呼んで、部長が課長を呼んで、最後事務員のお姉さんに「君出来るのか、では今回の商談は頼む」というのです。外国人との商談で会社案内すらまともに出来ない。何の経営の意思決定も出来ない、その人は頑張っていますけど、その人に押し付けたっていいものは作れないわけです。良い結果にはならないですね。
僕はそれをお客様に言うのです。もし国内で商談があったら、国内だと東京や大阪の人と商談をすると。その人に任せますか?と。いや、絶対任せないと。その辺の考え方を、しっかりと中小企業のオーナーさんに話して、成功するか失敗するかは、その中小企業のオーナー自身に問題の9割以上があって、その人が本気でやるんだと。まさに第2、第3の創業じゃないけれども、必ず伸びゆく海外の市場を我が社は取るんだと内外に宣言して、不退転の決意でやると。ただ、博打のように何億何千万も先に先行投資する、もしくは良い研究開発なり良いブランディングなり調査なり、そういうのを取るとかね。先にここに投資をバカバカするんじゃなくて、まず営業してみましょうと。それをお手伝いしますよと。人材を育てていければ、良いコンサルに頼む、良い仲介業者に頼むってなると、成功要因は外部にあるわけです。その人と喧嘩をしたり、その人がもう相手にしてくれなくなると継続しなかったり、再建できないんですけど、自前でグローバルセールスの営業マンを育てて、その人がどんどん部下を育てていければ、今後永遠と何百年、アフリカの人ともヨーロッパの人とも中東の人ともインドの人ともアジアの人とも友人を持っていて、パイプがある。そんな営業部隊を各中小企業が持てれば、それはもう何百年と右肩上がりですよね。
森辺:確かにそうですよね。第二創業と近しいですよね、海外販路開拓というのは。
山本:元来日本の戦後も明治維新のあともグローバル化できたんですよね。よく日本は内向きだということで我々は出来ないと決めつける人がいるんですけど、我々のひいひいじいちゃんもじいちゃんもグローバル化に挑戦をして、たったの30年で列強入りしたり、世界第2位の経済大国、まさにJapan as No.1を作ったわけじゃないですか。これを我々の世代でやらなければ、我々の子供や孫の世代は本当に苦しくなると思うんですね。何ももう今ある問題が解決できない。そうするとちょうど95年から始まったこの低迷が、我々の現役の世代が手を打たずにしていく中でですね、我々が仕事をはじめて辞めた頃に「パパたちのせいで日本は元気なくなった」と。こうは言われたくないです。
森辺:なるほど。ありがとうございます。全く同感でございます。そうしたら4回に渡りお付き合いいただきまして、山本社長どうもありがとうございました。
山本:ありがとうございます。
森辺:これでじゃあ終わりにしたいと思います。
山本:どうもありがとうございました。
東:ありがとうございました。