森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、ベトナム市場の話をしていきたいなというふうに思います。対象はFMCG、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財、FMCG周りのメーカー向けのお話になります。B2Bの製造業の方がいらっしゃったら置き換えて、自分たちの業種に置き換えて聞いていただければなというふうに思います。
ベトナムの市場のお話ということで、ベトナムの話をするのは久々かもしれませんけども、なぜベトナムの話をしようかなと思ったかと言うと、やっぱりここ今年も引き続きベトナムに関するご相談って非常に多くて。ここ5年ぐらいを見ていると、やっぱりタイ+VIPみたいなのが圧倒的にご相談としては多いんですよね。半分ぐらいはやっぱりそこに集中している。消費財メーカーにとってタイの市場も非常に大きいですし、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピン、略してVIPですけど、VIPの市場というのは今後最もポテンシャルの高い。人口が1、3、1と覚えてもらったらいいと思うんですけど、フィリピンが1億強、インドネシアが3億弱、ベトナムが1億弱ということで、1、3、1というふうに覚えてもらったら、そこだけで4億人の人口がいますから、消費財メーカーというのはもう基本的には胃袋の数、いかに若い胃袋をつかむかというのが最大のポイントですから。おじいちゃんおばあちゃんよりも若者のほうがたくさん消費するし、食べるし。なので、いかに人口の多いところに需要があるかということなので、当然VIPという話になってくるんですが、その中でね、中でもベトナムということで今日はちょっとお話をしたいなというふうに思うんですけども…。
厳密にはね、人口、ベトナムは9,750万人ぐらいでございまして。これも10年に1回とかの統計なので、実際にはもうちょっと多いのではないかと、「もう1億人を超えているのではないの?」と言うような人もいますけども、まあまあ1億というふうに考えてもらってよろしいのではないかなというふうに思います。「小売市場の規模がどれぐらいあるの?」と言うと、約々22~23兆円ぐらいですね、22~23兆円ぐらい。日本の小売市場は150兆円ぐらいなので、それに比べるとだいぶ小さな市場にはなってくるんですけど。でも、これはASEAN全体でやっぱり6を見ていく、ASEAN全体でいくと、日本の小売市場規模ともうほぼほぼ変わりませんから、インドネシアが40数兆円ありますし、フィリピンも20数兆円、ベトナムが22~23兆円、タイが17兆円ぐらいあるかな、マレーシアも14兆円ぐらい、シンガポールも6兆…、6.5兆円ぐらいはありますから、全部まとめると130兆円以上ありますから、日本とほぼほぼ変わらない。ASEANを見るときに国ごとのボーダーが、僕はこれ、シンガポールに住んでいた1980年から比べていくと、ものすごいボーダーレス化になっていて。ちょっと発音がおかしかったね。ボーダーレス化になっていて、国ごとの人・モノ・カネ・情報の行き来、それから連携、ASEANという枠組みだけじゃなくて、いろんな連携を考えると、もう本当に東京・大阪・名古屋・福岡・札幌みたいな、こういう感覚でやっぱりASEAN市場を見るべきなので、シンガポールで流行ったものはほかに飛び火するし、タイで流行ったものはほかに飛び火するというね、こういう視点も必要です。一方で、首都だけを見ていくという視点も必要だし、さらに国としてのそれぞれを見ていくみたいな視点も必要なので、日本の感覚とはだいぶちょっと違う。日本は日本、その他は外国みたいな、こういう見方だけだとやっぱりなかなか市場を見間違えるので、そういう視点はしっかり持つ必要があるなというふうに思います。ちょっと話が逸れましたけど、ベトナムね、22~23兆円ぐらい。
消費財メーカーにとってベトナムってポイントは3つあって、1つが南北問題ですよね。これ、南北問題って距離的な問題と政治的な問題と2つあるんですけど、首都はハノイなんですよね。ただ、経済の5割ぐらいはホーチミン、南のホーチミンで、北のハノイから南のホーチミンまで1,600キロぐらいあるんですよね。やっぱり非常に距離があります。日本での高速道路、新幹線が整備された1,600キロと、ベトナムの1,600キロって全然もう意味が違うんですよね。ちょうどこの真ん中にダナンという観光地でも有名ですけど、ダナンの上にフエという都市があって、そこに非常に高い山脈があって、昔からそこの山脈越えが非常に大変で、地理的な観点から北と南が分断しているというね、モノを物流するときにもね、道もね、僕も何回かトラックに乗って行きましたけどもね、決して日本のような道ではないんですよね。なので、距離的な問題、例えば工場がホーチミンにあって、本当にハノイやりますかみたいな問題ね、効率どうですかみたいなことを考えたりすると、これは1つしっかりと考える必要があるという問題と。あと、南北戦争の名残り、まだそんなことあるの?って、僕も最初思いましたけども、やっぱり北に行けば行くほど街並みが全然違う、南はもっと開放的だし、北に行けば行くほど共産国っぽいな、共産チックだなというのはすごく街並みを見ていて感じるので。最近、中国だとなかなか感じなくなりましたけど、2000年前後ぐらいの中国は、北京とか行くと、これが共産国なんだって、僕は初めて北京に行ったときに衝撃を受けたんですよね。北朝鮮みたいなイメージするなと、そんなことを言ったらちょっと語弊があるかもしれないですけど、これが共産国なんだというね、今の北京は全然そんな匂いしませんけどもね、そういうのがまだ残っていて、やっぱり南の市場でもやっぱり政府の要所要所は北の人間がやっていたりするので、南の人間とか南の会社が北で成功するのがなかなか難しいという、こういう問題を秘めていたり。逆に言うと、じゃあ、北の人間が南で成功するのかと言ったら、役所は全部北で牛耳られていますけども、ほとんどね、なんですけど企業がそうかと言うと、必ずしもそうではないので。ディストリビューターなんかも「北のプータイ、南のメサ」なんて、メサとプータイって企業名ですけど、ディストリビューターの、大手のディストリビューターの名前ですけども、そんなふうに言われたりもしているので、基本的に南北問題というのが根強く根付いていますよということと。
あと、セールス機能の問題というのがあって。これはどういう問題かと言うと、ベトナムのディストリビューター、ディストリビューターを使うことになるんですよね。なるんだけども、結局セールス機能を持っていないので、メーカーがセールスをしないといけない。自分たちでセールス部隊を持つ、もしくはディストリビューターにセールスを派遣して、もしくはメーカーの費用負担でセールスを雇わせてセールスをやらないといけないという、こういう問題があるので。「ディストリビューターじゃないじゃん。それ、単なる佐川とヤマトじゃん」みたいなね、ディストリビューターの定義=配達みたいな、デリバリーみたいなね、本来、ディストリビューターの機能というのは、デリバリーとセールスなんだけども、ベトナムだとこのデリバリーがセールスになってしまっているというのがほとんどのディストリビューターなので、ここが非常に日本企業が苦労するポイント。
あと、伝統小売の問題。伝統小売というのは、これは近代小売の数がベトナムは弊社の最新のカウントだと8,200、主要どころは8,200ぐらいなんですよ。主要なウィンマートとかコープマートとか、そういう近代小売の総数が。対して伝統小売は66万店あるので、やっぱり伝統小売を攻略しないとシェアが獲れない。日本の消費財メーカーの多くの悩みは、いかに伝統小売を攻略するか、ここで皆さん課題を抱えているので、ここの問題が1つ非常に大きくありますよということで。この3つの問題をクリアしていかないといけない。
私の話が長いので、もう10分経ってしまったので、今日はこれぐらいにしておきますけども、ちょっと次回ね、この3つの問題をもう少しブレイクダウンをしてお話をしていきたいなというふうに思います。今日はこれぐらいにしたいと思います。また皆さん、次回お会いいたしましょう。