森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、タイの小売市場についてお話をしていこうと思います。対象はFMCG、Fast Moving Consumer Goods、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカーが中心になります。B2Bの製造業の方がいらっしゃったら、自分たちの事業に置き換えて聞いていただければなというふうに思います。ちょっとね、小売市場なので、あまりB2Bは関係ないかもしれませんけども、まあまあ、B2BもいろんなB2Bがありますから、自分たちの事業に置き換えて聞いていただければなというふうに思います。
タイの小売市場なんですけど、ちょっとマクロデータ、市場規模からちょっとざっと見ていくと、このシリーズはVIPをずっと今までやってきて、ベトナム、インドネシア、フィリピンをやってきて、今日はタイということですけども。やっぱりこのタイ+VIPが、今、非常に注目度としても大きいし、皆さん課題を感じられているし、逆に言うと、市場としてのポテンシャルも高いので、成果が早く出るという、特にタイはそんな市場だと思うんですけど。タイの小売市場規模って、だいたい今、18兆円ぐらいですかね。18兆円ぐらいなので、ASEAN全体で130数兆円ありますから、日本の小売市場規模がおおよそ150兆円なので、もうASEAN6で言うとほぼほぼ変わりませんよと。それぞれの国で見ると、インドネシアがやっぱり45兆近くあるし、フィリピンも23兆、タイも18兆ぐらいありますと。ベトナムが23兆なので、順番、大きい順に言うと、インドネシアの45兆、フィリピンの23兆、これは、単位は円ですね。ベトナムの23兆で、次がタイの17兆で、マレーシアの14兆で、最後、シンガポールの6兆円という、こういう順番になっていて、全部合わせて130兆円ぐらいということです。これはASEAN全体で見たときに、日本が150兆円で、ASEAN全体で130兆円なので、あまり変わってこない。今のASEANの成長スピード等を考えると、もう抜かれるのはまもなくですということで、日本の消費財メーカーは今こぞってASEANということで、ここ10年ぐらい非常に、特にここ5年は非常に速いスピードで進んでいますねと。正直、FMCG周りの企業とか、特に食品なんていうと、胃袋の数、いかに若い胃袋をつかむかということが大変事業としては重要で。歳を取ってくると1日3食食べませんとか、食べても量が少ないですとか。一方で若い胃袋というのは1日3食じゃ足りない、4食5食食べますよと。そんな中で平均年齢がまだ20代とか30代前半みたいなのがASEANなので。これはASEANもそれぞれの国単位というか、都市単位でみなきゃいけない視点を持ちつつも、これは1つの経済圏としてしっかり見ていかないといけなくて。なぜならば、日本の小売市場が150兆円というように、ASEANも130兆円あって、これはインドネシアとかフィリピンとかベトナムとかタイとかマレーシアとかシンガポールって、日本で言うところの東京、名古屋、大阪、福岡、札幌みたいなね、こういう感覚で見ていく。それぞれの国の連携が、私が住んでいた1980年代とか90年代に比べたら圧倒的に近づいてしまっていて、タイで流行ったものがベトナムに波及するとかマレーシアに波及する、マレーシアで流行ったものが逆にタイに波及するみたいな、そういう相乗効果って非常に大きいので、そんな視点でまず見る必要がありますねと。
そもそも経済成長が、この30年とか、どういうふうに変わっていっているのかというお話をすると、1990年代にだいたいタイのGDPって853ドルだったんですね、億ドル、USドルですね。853億ドルだったのが、今、5,362億ドルありますから、6倍以上増えているんですよね。1人あたりのGDPを見ても、1990年と2022年、ちょっと古いですけども、当時、平均で1人あたりのGDP、1,500ドルぐらいだったんですよね。厳密に言うと、1,509ドル。これも平均なので。当時の平均って、地方とバンコクと変わるんだけども、今ほど格差は出ていない。今はものすごい格差が出てますけどもね。だから、平均で見ることが市場攻略上はあまり意味がないんだけども、少し今お話しているのは、タイそのものがどれぐらい経済規模が上がったのかという観点では別に平均で見てもよろしいと思うので、平均のお話をしていますが、2022年は7,651ドルですね、1人あたりのGDPが。だから、これも5倍6倍大きくなっていますよという、そんな市場なわけですよね。
じゃあ、今、小売ってどういうかたちで形成されているのかと言うと、いわゆる近代小売と伝統小売が、食品とか日用品のカテゴリーで言うと50%~60%…、これも商品によって本当に比率が全然異なるので、一般的に食品・日用品のカテゴリーで言うと、50%、55%ぐらいがやっぱり近代小売、これは金額ベースでですね。一方で、まだやっぱり4割以上は伝統小売を通じて商品というのは流通していて、その伝統小売の数が45万店ぐらいありますというのが今のタイの市場。
近代小売の総数を見ても、2万店、主要どころで2万店ないですから、1万8,000店とか、それぐらいなんですよ。やっぱり近代小売で一番注目しなきゃいけないのは、何よりもセブンイレブン。世界で2番目にセブンイレブンの数が多いのがタイです。1万4,000店舗ぐらいあると。これはなぜこういうことが起きているかと言うと、タイの小売市場というのは、いわゆる財閥系2強でできている。CPグループ、チャラン・ポカパンか、CPですね、CPオールか、セントラルということで。例えばコンビニで一番大きいのは圧倒的にセブンイレブンですよね。あと、ロータスとか、もともとテスコと言ってましたけども、ブランド名ロータスに統一されているので、ロータスとか、あと、CPグループで言うと、業務用スーパーのマクロ、これなんかは非常に大きいと。伝統小売への波及はマクロ経由であったりしますから、そうですと。一方でセントラル系は、ビッグCとか、トップスとか、そんなところがありますねと。あと、イオンも頑張っていますよという、ファミリーマートとローソンもありますけど、やっぱりセブンイレブンが圧倒的過ぎてしまって、ちょっとだいぶ店舗数も桁の差がありますと。セブンイレブンが1万4,000店舗ぐらいあるのに対して、ファミリーマートって1,000店舗なかったと思うんですよね。ローソンなんて200店舗ない、150店舗…、160店舗ぐらいだったと思いますから、だいぶ差がありますねという、そんな市場を形成されています。
こんなタイの市場なんですけど、基本的に、やっぱりこれだけ近代小売が半分以上、金額ベースで半分以上を超えてくると、現地法人を設立しても、近代小売だけやっていても、基本的には赤字にはならない。現地法人の経費、つまりは出血分は十分、ある程度配荷が進めば賄える市場であるというのがタイの特徴ですよね。例えばベトナムなんかだと、近代小売だけをやっていたら絶対現法を持ってしまったら儲かりませんから、基本的には駄目ですねと。なので、タイの消費者の所得や趣向も非常に高まっているので、僕が本当にシンガポールに住んでいたときのタイというとね、本当にちょっと構えながら行くような国だったので、観光地でしたよね、あんまりタイのバンコクというとね、ジャングルの中にビルが建っているみたいなね、そういう感じの時代でしたけど、今は近代都市になっているので、ハワイよりも手軽に行けるハワイなんて言ってタイが流行っていたりしますから、まあまあ、タイという市場はそういう特性があると。
次回、このタイを攻略する上で非常に重要な戦略軸が3つあって、キーサクセスファクターと言ったほうがいいかな、キーとなる、主要成功要因ですよね、サクセスファクター、この3つについてお話をしていきたいなというふうに思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。