森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、タイ小売市場におけるキーサクセスファクターのお話をしていきたいと思います。対象は、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカー、FMCGおよびその周辺の消費財メーカーが対象になります。B2Bの製造業の方は、ちょっとすみません、話が遠いかもしれませんけど、皆さんの事業に置き換えて何かヒントをつかんでもらえたらなというふうに思います。
タイ小売市場におけるキーサクセスファクターということで、前回ね、CPオール一点集中してくださいと、セブンイレブンが世界で2番目に多い国、1万4,000店ありますよと。スーパーもCPオールが持っているロータス、そして、業務用スーパーのマクロもありますと。もうタイの小売市場というのは2強です。CPか、セントラルか。CPのほうが、消費財メーカーは、非常に大きいので、まずはCPからやるということで一点集中ですと。CPでうまくいけば、他の小売との商談が、導入費の交渉なんかも非常に楽になるので、まずはCPとどうやって小さく生んで大きく成功させるかということを考えてくださいという話を前回やって。これは伝統小売への波及効果も非常に多くありますよと。伝統小売のオーナーは「セブンで売っていますか」と必ず聞いてきます。「ロータスで売っていますか」と必ず聞いてきます。そういう意味でもセブンイレブン(CPオール)一点集中しましょうというのが前回のお話。
今日は2つ目のキーサクセスファクターですけども、これは小売との直接交渉です。言ったら小売とメーカーが直接交渉してくださいと。輸出であろうが、現産現販であろうが、小売と直接交渉です。日本の消費財メーカーで、輸出だろうが、現産現販だろうが、うまくいっていない会社、弊社にご相談に来られる会社のほとんどが、「小売との商談をディストリビューター任せでやってきています」という会社がほとんどで。結局、メーカーの真意としていることが伝わっているのか伝わっていないのか分からない、伝わっているんだけども、熱量がどこまで本当に伝えられているのかが分からない、そういう課題が結構多くて。小売のバイヤーと会いたいと言っても会わせてもらえなかったりとか、例えばディストリビューターの中にも、プリンシパル担当と小売担当って分かれているんですよね。例えば、プリンシパルってメーカーですね、メーカーの窓口になっている人と、小売側の窓口になっている人がいて、結局、メーカーの窓口の人が小売に交渉しに行くわけではないんですよね。そのメーカーの窓口になっている人が小売の窓口になっている人と話をして、それがようやく小売に伝わるという、少なくとも3レイヤーみたいになっていて。もちろんその間にもいろいろレイヤーがあるわけでね。そんな中でしっかり熱量が決まらないし。じゃあ、プリンシパル担当の人は、メーカー担当の人はメーカーが一番大切ですと。ただ、一方で、じゃあ、小売担当の人は誰が大事ですかと言ったら、もう絶対的に何が何でも小売なんですよ。前回お話したように、財閥系2強が強いと、CPとセントラルが強い、そんなところに意見を言うなんて、問屋さんがそんなディストリビューターでそんなCPに何かモノ申すなんて、もう絶対無理なので。私は何回もそんなシーンに出くわしているんですよ。いわゆる小売に「こういう方向で話をしていきましょうね」と、うちのクライアントの戦略の方向性を言っているんだけど、小売が「いや、Bで行きたいな」と言ったら、「そうですよね」みたいな、「えーっ。その手のひらの返し方する?」みたいなね、「いや、そうじゃないでしょう。結局、Bを選んでも、最終的にはAのほうが小売もメーカーも問屋もみんな幸せになるんだから、そこを説明していくのがわれわれの仕事でしょう?」という話を散々しているんだけどもね。でも、それはしょうがないと思います。ディストリビューターにとっては、そことしっかりと取り引きできなかったら商売なくなってしまうし。あと、この小売担当の、ディストリビューターの小売担当の人というのは、ほかのブランドもいっぱい抱えているから、優先順位があって。メーカー担当の人は自分の担当しているメーカーが一番の優先順位ですよね。でも、一方で小売担当の人は、一番小売で売れているブランドが一番重要なんですよ。そうすると、あまりシェアが高くない日本のブランドなんていうのはやっぱりディストリビューターの小売担当からしたら力が入らないですよね、当然。だって、欧米系のほうがプロモーション予算も出す、今現状でも売れている、たくさん売れるからマージンもいっぱい入るということで、どう考えたって合理的にそっちのほうが優先されてしまうわけですよ。そうすると、やっぱり小売と直接商談をするということをやらないといけない。弊社のクライアントは、消費財メーカーさんは、われわれはもう全部CPと直接われわれが交渉をして、その場をつくって、そこにメーカーさんをお連れして、契約締結に持っていくやり方を取っています。結局、タイって、小売の交渉力があまりにも強いから、ディストリビューターにお願いしても、メーカー側の真意とかがしっかりと伝わらない上に、ご用聞きになっているんですよね、ディストリビューターが。そうすると、小売とやっぱりどれだけコミュニケーションを取るかで、メーカーにとっても小売とのコミュニケーションのリレーションシップの関係値ってすごく重要で、ここがあるから商売が持続的に継続的に続いていく話なのでね。
逆に言うと、小売がしっかり興味を持ってもらえば、ここで言うとセブン一択集中しろと言っているわけですから、セブンに興味を持ってもらえれば、ファーストセレクションを通過して興味を持ってもらえれば、逆に言うと小売側からディストリビューターの紹介を受けて、そこを活用すると中間流通マージンを抑えられたりするわけですよね。でも、ディストリビューターに別にセールスなんて期待しないし、新商品のねじ込み、SKUのねじ込み、そんなことそもそも期待するのが間違っていて、ディストリビューターには代金回収とデリバリーだけをやってもらう。本当の商談というのはやっぱりメーカー自身が小売と直接やるということが非常に僕は重要だと思います、タイは。なので、ディストリビューター主導をやめるということと、マーケティング戦略の自社主導の体制をつくると。自分たちで直接やっているのにうまくいってないなんていう企業を僕は見たことないですし、弊社にご相談に来る日本の消費財メーカーのほぼすべてはディストリビューター主導でセールスマーケティングをやっていますという企業。逆に言うと、われわれの調査対象になる欧米系の先進的なグローバル企業は、1社の例外もなく自社主導で小売と商談しています。ディストリビューター主導でセールスをやるなんていうのはほぼないと。超高級品、高級輸入食材みたいなのはありますけども、基本的にはそうですよということで、小売と直接商談するということが2つ目のキーサクセスファクターでございます。
これは消費財も、食品なんかは業務用市場あると思いますけども、業務用市場なんかも特に対象となる企業と直接商談をメーカーがやるということが大変重要になるので、やっぱりディストリビューション・チャネルは重要ですけど、これは伝統小売に対して重要な話であって、ディストリビューション・チャネルというのは。近代小売は基本的には直販というのが僕の考え方で。ただ、便宜上ディストリビューターを使うということはありますけど、相談そのものとか、コミュニケーションとか関係性、リレーションシップをつくるというのはメーカーが直にやる必要があるというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。