アジア新興国市場 伝統小売の未来 その2
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、伝統小売の未来ということでお話をしていきたいと思います。じゃあ、早速、スライドをお願いします。このスライドは前回も使ったスライドですけども、このスライドでお話をしていきたいと思います。前回の整理ですけども、伝統小売の未来、存続、DX、ECというふうに3つに分けてお話をして、「存続するの? しないの?」みたいなところの結論から言うと、「存続し続けます」と。なぜならば、もうすでに数が多いですよというのが理由の1つ。例えば、インドネシアの447万店すでに存在していて、毎年、確かこの過去5年、3万店ぐらい減っているんですよね。なんですけども、447万店あったら全部なくなるのに150年かかる、倍のスピードでやっていっても75年、3倍のスピードでやったって40年近くかかるので、もうこれは40年もあるということはなくならないということですよねというのが1つ。この40年、じゃあ、仮に衰退していくということの過程だったとしてもね、次のこのDX、伝統小売のデジタル化が何を意味するのかということなんですけど、この40年の間のデジタルの進化を、皆さん、想像してみてください、40年前のデジタルの進化と今を想像すると、この将来というのはもっと速いスピードでデジタルが進化していく。そうすると、伝統小売はもうすでに始まっていますけど、デジタル化する。これはどういうことかと言うと、顧客がキャッシュレスで商品を買えるということもそうですけども、いわゆるメーカーや中間流通事業者が、すべて伝統小売のおじちゃん、おばちゃん、オーナーさんが携帯で、スマホで注文を出す。伝統小売のおじちゃん、おばちゃんがスマホで販売をするわけですから、QRコードでどの国のどの都市のどの店舗で何がどれだけ売れているかというのはデータとしてまずこれはメーカーも手に入る。中間流通にとってもオーダーがしやすいわけですよね。今までというのは紙伝票でね、現金、汚い現金を受け取って、しかも小口でね、商品をデリバリーしてみたいなことをやっていたわけですよね。それが、すべてキャッシュレスになって、ただ商品を運べばいいだけという話になると、これは全然違う世界が広がってくるわけですよね。それだけいろんなコストを削減できるということは、小売に対してもキャンペーンを打てるわけですよね。小売に対して割引が利くということは、消費者も安く買えるし。逆に、今月はこの商品を売りたいなと思えば、その小売のオーナーの携帯にキャンペーン情報を「今月これを注文してくれたら5%オフですよ、10%オフですよ」と流せるわけなので、いろんなマーケティングがしやすくなる。そんなふうになったときに、伝統小売がなくなる理由なんてどこにもなくて。だって、コンビニよりも便利ですから。コンビニが数百メーターおきにあるとすると、しかも、一応自動ドアの中に入らなきゃいけないということを考えると、伝統小売って家を出てすぐ目の前にあるわけですよね。店に入る必要もない。「あれちょうだい。おばちゃん、あれちょうだい。おじちゃん、あれちょうだい」、指名買いですから、基本的に何でも手に入るということを考えると、基本的にはなくなりませんよというのが前回の話ですよね。
あと、数が多いということもそうですけど、フィリピンみたいに地域社会に伝統小売が親しまれ過ぎていて守られている。行政にも業界にも消費者にも守られている。伝統小売の仕入れ先が近代小売というお話もしましたよね。日本で言うと、駄菓子屋がイオンから商品を仕入れるみたいなね、こういう特殊な流通構造の国もあるわけで、伝統小売というのはなくならないよねということが1つですし。
あと、各国の国土交通省の道路計画みたいなのを見てみると、小売って小売単体で近代化なんか絶対しなくて、物流のインフラとか、ガス・電気・水道、基本インフラ、いろんなインフラが同時並行的に近代化するから小売も初めてその上に乗っかって近代化できるという、こういう構造でね。日本の劇的な小売の近代化ってなんであったかというと、基本的にはこれらインフラが田舎から都心部まで津々浦々、これだけ電車の線路網、それから高速道路網が敷かれていて、渋滞は、日々の生活の中では基本的に渋滞はないと。オンシーズンのときにやっぱり観光地に行くところに渋滞するというだけの国なんてないわけですよ、今の新興国で。新興国の首都に行けば、一日中、朝から晩までずっと渋滞をしていて、みんな夜中にデリバリーしているわけですね、配達業者さんというのは。だから、それぐらい計画としてもまだないので、そういう意味では長く生き残っていきますよと。その間にDXで伝統小売って大きく進化するので、今までになかったようなニューリテールですよね。ものすごい小さな店舗で、小さいスモールビジネスで、それがデジタル化されている。結局、日本は、やっぱり大手がでかいところが本部で全部決めて、フランチャイジーがそれに従って事業をするみたいな、コンビニ業態が非常に国民性にもなじんだかもしれないんですが、アジア新興国市場の人たちって、そんな民度というか、キャラクターではないんですよね、彼らって。もっと自分たちが今日食べたい分だけ売れたらいい、もっと自由にやりたい、自分たちが好きなようにやりたいっていう力が非常に強く働く。われわれは、どちらかと言うと誰かに指示されて、同じように一番良い、効率の良いことをやりたい、指示を受けるほうがいいというふうに思っている人が多いかもしれないですけども、ASEANの人たちは、何かを上から言われて指示を受けてやるぐらいだったら、自分たちで考えて、今日はそんなにたくさんお金が儲からなくてもいいから、今日売れる分だけというね、こういう文化ってやっぱり非常にあるので、この文化をねじ曲げようとしても、僕はなかなか難しいところはあるだろうなと思っているので、伝統小売というのは残り続けるだろうなと。
最後のEコマースなんですけども、Eコマースも、これは当然出てきますので、Eコマースが発展をして、コロナが終わってね、ちょうどちょっとスライドを見てもらおうかな。これは2019年、22年、27年というふうに枠を囲ってありますけど、赤枠、赤枠、青枠ということで、ユーロモニターのデータですけども。例えばベトナムの2019年4.5%から、2022年12.3%に伸びているんですね。これはコロナで3倍ぐらいだいたいどこも伸びていて、Eコマースは必ず来ますと。ただ、じゃあ、全部がオンラインになるかと言うと、そんなことはなくて。オンラインとオフラインが融合した世界、今、喉が渇いた、この喉を潤すためには目の前の伝統小売で水を買うし、でも、家で備蓄するための毎日デイリーで飲むお水は別に24本、30本入りをネットで買うし、みたいな世界観なわけだから、基本的には自分が今置かれている状況によって、オンで買うのか、オフで買うのか、みたいな話だと思うので、基本的にはある程度ECというのは進むものの、じゃあ、すべてが伝統小売が全部ECに置き換わるかと言ったら、そんなのは絶対にあり得なくて。むしろECにあるのは、デリバリー問題というのはライドシェアでほぼ解決ができるということが見通せていると思います。ゴジェックなりグラブなり、ああいうのがバイクで配達をしていくということができるので。ただ、日本みたいに宅配ボックスが設置されているとか、置き配があるとか、そういうことがない。基本的にはこのエリアは全部住所同じですみたいなね、同じ住所のAさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんみたいな、そんな中で配達がなかなか難しいのと、置き配したらすぐに荷物を持っていかれてしまうみたいなね、そういう世界の中でそこをどうやって効率化していくかというほうがたぶん大変なので。そういう部分で、もしかしたら地域の伝統小売とかコンビニが役に立つ。一番近いコンビニで商品を取りに行くとかね、一番近い伝統小売で商品を預かるとか。伝統小売は店先が狭いから、さすがにやっぱり商品の預かりって限界があると思うんですけど、逆に言うと、コンビニの今後、業態というのは、もしかすると、伝統小売への商品の供給網としてとか、あと、こういった宅配の受け取り間口としてみたいなところに事業のモデルが変わっていくかもしれないですし、これから本当に小売市場、ASEANの小売市場というのは大きく変わっていくと思うので、なかなかね、単純に伝統小売がなくなるということはないというふうに僕は思っています。
最後、もう1回ちょっともとのスライドに戻っていただいて、伝統小売の未来、なくなりませんよと。なくなる前にDXでさらに便利になっていきます。Eコマースも伸びていくけども、やっぱり伝統小売というのはこれからもっともっと姿を変えて、新しい姿の小売、伝統小売、こんなものになっていくんじゃないかなというふうに思います。皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。