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新興国市場とイノベーション その1

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、新興国事業、アジアに限らず新興国全体の事業と企業のイノベーションがどういうふうに関係しているかということについてちょっとお話をしていきたいなというふうに思っています。

いろんな先進グローバル企業を分析していると、やっぱりマーケットシェアの高い企業というのは、必ず新興国市場の参入において、結果としてね、振り返ってみるとそこには大きなイノベーションがあったっていう事例が結構多くて、その事例を振り返りながら、日本の製造業が今後新興国市場でどういうふうにシェアを伸ばしていけるのか、みたいなことを皆さんと一緒に考えていけたらなというふうに思っています。

まず最初に「イノベーションって何なんですか」というイノベーションの定義から整理をしていきたいなといふうに思うんですが、イノベーションって、1911年だったかな、1911年にシュンペーターが提唱した言葉なんですよね、イノベーション。だいぶ前ですよね。ここ数十年でできた言葉かな、なんていうふうに思っている方も多いんじゃないかなというふうに思いますけども、実はもうこのイノベーションという言葉自体は1911年に生まれた言葉であるということでございます。このイノベーションが日本ではどういうふうに訳されるかって言うと、おそらく多くの場合は技術革新というふうに訳されているんじゃないかなというふうに思うんですね。イノベーション=技術革新。この技術革新という言葉は、その名の通り、技術が革新する、技術が目に見えて良いものに進化していくという、革新していくという、そういう意味ですよね。これってもともと1956年に経済白書でイノベーションという言葉が紹介された際に技術革新というふうに訳したんですよね。これは別に間違ってなくて、当時はまさに技術革新というものが日本の経済発展にとって必須のものでしたし、イノベーション=技術革新でよかったんですよね。分かりやすく言うと、例えば白黒のテレビがカラーテレビになる、これはまさにイノベーションですよね、技術革新。もしくは、ブラウン管のテレビが液晶の薄い薄型になると、これも技術革新だし。それから、音楽をね、こんな大きな、昔、コンポというね、ステレオコンポで聴いていたものがウォークマンのようなね、小さな持ち歩ける、音楽を持ち歩く形態になる、これも技術革新だし。車の燃費とか安全性、それから走行性、こういうのも全部技術革新ですよね。いかに欧米が発明したものをより良く、より安く、より小さくしていくっていうことこそが、まさに技術革新だったわけですよね。

ただ、ここからちょっとスライドを見ていきたいなというふうに思うんですが、シュンペーターは、別にイノベーションは技術革新だけでは、スライドをお願いします、ないというふうに言っていて。イノベーション=、この図の通り、新結合なんですよね。イノベーションは経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なるやり方で結合することを定義していると。例えばイノベーションの5分類と言うとね、新しい生産物の創造「ニュープロダクツ」、それから、新しい生産方法の導入「ニュープロセス」、新しい市場の開拓「ニューマーケット」、新しい資源の獲得「ニューソースオブサプライ」、5番、新しい組織の実現「ニューオーガニゼーション」という、イノベーションというのは必ずしも技術革新だけではないですよと。例えばね、振り返ってみるとね、イノベーション、Uberなんてまさにイノベーションで、Uberって日本だとUber Eatsが有名なのでデリバリーサービスというふうに思っているかもしれないですけど、フードデリバリーのサービスだと思っている方が多いかもしれないですけど、海外によく行かれる方は非常に便利ですよね。Uber、同じようなサービスでアジアだとゴジェックとかね、インドネシアの。あと、その他のASEAN地域だとグラブなんていうのがありますけども。基本的にはUberとかグラブとかゴジェックっていうのは、1人の運転手も雇用せずに、1台の自動車も保有せずに、世界最大のタクシー会社になった、配車サービスを提供しているということなわけですよね。これはまさにイノベーションで。今までの常識で言うと、配車業をやるということは、車をまず会社として購入して、何台も資産として保有しないといけないし、運転手を雇用するということをしないといけないと。でも、このUberとかグラブとかゴジェックっていうのは、1人の運転手も採用しないし、1台の車も持たない。要は、車をすでに持っている一般の方が空いた時間で配車サービスを提供してお金を得るというね、こういう新しい発想ですよね。まったくこう、テクノロジーでこれを実現しているわけですから、「今、暇な人?」「はーい」「じゃあ、配車します」ってね、まさにイノベーションですよね。Amazonだって、これもイノベーション。もうだいぶね、Amazonもあれになっちゃいましたけど、例えば今まで本は本屋で買うものということだったわけですけども、本をオンラインで買う。思い出してほしいんですけど、20年30年前にそんなことあり得ないってみんな思ったわけですよね。本だけじゃなくて、アパレルをね、服をネットで買うなんて、サイズどうするの?試着しないの?みたいな、そういう話だったわけですけども。基本的には今、Eコマースはこれだけ発展していて、世の中が劇的に変わっている。これはまさに新結合ですよね。インターネットと本屋さんをくっつけた新結合だし、さっきのUberとかグラブとかゴジェックなんていうのは、新しいこれもプロダクツでもあるし、新しいニュープロセス、生産方式ではないですけど、サービスの提供方法でもあるので、まさに新結合なわけですよね。

次のスライドをお願いしたいんですけれども、これらのことをディスラプティブ・イノベーション、破壊的イノベーション、一橋大学の米倉誠一郎先生が破壊的イノベーションの本を何冊も出していますから、それを読んでもらうとより深い話が聞けると思いますけども。クリステンセン先生が提唱しているディスラプティブ・イノベーション、すでに確立された技術やビジネスモデルによって形成されている既存市場や業界構造を劇的に変えてしまうイノベーションのこと。こんなことがアメリカではたくさん起こってきたわけですよね。Japan as No.1と言われて、もともとアメリカが発明したものを、アメリカ企業が発明したものを、日本がより良く、より小さく、より安くつくってしまったおかげで、アメリカの多くの製造業は日本に市場を奪われてしまったと。その中で古い産業が衰退したんだけども、新しい産業が出てきて、それがまさにディスラプティブ・イノベーション、今で言うね、いわゆるテクノロジー系企業とかネット系企業になるわけですけども。このディスラプティブ・イノベーションというのがすごく重要で、なかなかね、日本だとディスラプティブ・イノベーターと呼ばれる企業というのは非常に少ない、80年代の大企業が今もなお大企業みたいな構造がありますけど。アメリカは80年代の大企業の半分は消えてなくなり、新しく、80年代には存在しなかった企業が今の半分の大企業を占めているというね、これがイノベーションの循環サイクルで、これがやっぱりアメリカの強さだなとつくづく思うわけですけども、ディスラプティブ・イノベーション。

最後のスライドをお願いします。これはザ・イノベーターズ・ジレンマ、イノベーションのジレンマですよね。これもクリステンセン先生が1997年に提唱して。まさに日本のことを見て言っているんだと思うんですけどもね。ある技術にもとづいた製品やサービスで成功すればするほどその技術にこだわるのでイノベーションに立ち遅れて衰退してしまうと。例えば液晶のシャープなんかそうですよね。液晶にこだわり続けて、世界の亀山モデルとかってね、テレビにステッカー貼ってましたけど、一時期ね。なんでこんなにダサいステッカー、テレビに貼るんだろうと思って、世界の亀山って何自分で言っちゃってんだろうって僕は当時思ってましたけども。ああいうこともそうだし、日本の白物黒物家電メーカーなんかはまさにこのイノベーションのジレンマに陥ってしまったと。こんな産業はいっぱい日本には、製造業の世界ではたくさんあって、このイノベーションのジレンマに陥っているというのが今現在ですと。

すみません。話が長くて、イノベーションの定義の整理で終わってしまいましたけども、何をお話したいかと言うと、先進グローバル企業が新興国市場で大きなマーケットシェアを獲っている背景には必ずイノベーションがあって、その事例の紹介をしていきたかったんですけど。今回、第1回目はこのイノベーションの定義の整理で終わってしまいましたけどもね。次回以降、各先進グローバル企業のね、B2CもB2Bも含めて、どんなイノベーションがそこにはあるのかということをご紹介していきたいなというふうに思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。