東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、徐向東さんをお迎えして第2回目になりますけど、今回は。
森辺:引き続き中国市場戦略研究所の徐向東代表に来ていただいております。除さん、よろしくお願い致します。
徐向東(以下、除):よろしくお願いします。
森辺:除さん、前回中国ビジネスどうですか?と。政治がうにうにしている中どんな状況でしょうかというお話をさせていただいたのですけど、引き続きそんなところのお話をしていければなと思っているのですが、前回除さんの会社の中国法人のほうが非常に大きくて、中国の現地の法人からお仕事をいただいていると。そんな中で多くの企業がチャイナプラスワンとか中国からのシフトみたいな流れがある中、やっぱりやれている会社というのはそんなことは全然気にせず中国のビジネスをひたすら継続、成長させていくような、そんな動きをとられている状況なんですかね。
除:そうです。実はこれは昨日私の大学の後輩が東京に来まして、その人は上海で某日系の化粧品の会社の社長をやっているのですよね。昔日本で有名だった化粧品なのですが、今実は上海では20億ぐらい売れていて、けど日本国内は10億しかないのです。完全に逆転しているのです。
森辺:それは昔からあるような老舗系の化粧品というよりかは、ベンチャー的な化粧品会社なのですかね?
除:わりと一時日本で有名だった中堅企業です。銀座辺りの有名なブランドですけど。最近日本では見かけなくなってしまったのだけど。実は話を聞くととても面白いのですけど、中国は例のCFDA。これは化粧品が全部向こうで販売すると国の許可を取らなきゃいけない。あれは完全に国家権力ですから、サンプルが古くて日本に最新のものが中々中国では売れない。9年ぐらい前のバージョンなんです。なのに、中国での売り上げが日本の2倍ぐらいありますよね。お店を構えていなくて、完全に実はカタログ販売です。だから、僕らが普段気付かないだけなんで、実は中国ではそれなりに売れている会社は結構いるんですよね。
森辺:なるほど。日本の倍あったらもう中国企業ですよね。
除:そうですよね。ただ、そうはなっていないところがまた日本の会社のジレンマで。もう1歩踏み込んでできないという会社がまだまだ多いです。
森辺:しっかりやれている、戦略があるような会社さんの現地の駐在員の方は、全然そんなことは気にしていなくて。
除:向こうに駐在している日本人は全然。それは同じ昨日会った自分の後輩なんですけど、彼の元上司とか日本のそうそうたる、会社の名前を言えばみなさん分かるような立派な大企業なんだけど、もう日本人社長とか現地で取材をしていたら数年経ったら日本に引き上げなさいと言うから、みなさん引き上げを拒否して中国でそのまま残って会社をやっている日本人、これも結構いるのです。やはり現場にいる日本人はこんなに大きいマーケット、こんなにチャンスがいっぱいあるのに何で本社がもう1歩踏み込んでやらないのだろうと、そういうのあるよね。現地に住んでいる人は肌感覚で分かっているから、それが中々本社を説得できない。そういった意味で僕は常々言っていますけど、社長自身が中国に行ってみないと分からないじゃないかと。その辺はやはりオーナーだから、ユニクロだとか、いずれ多分、今は中国の売り上げはまだ日本の大きな割合を占めていませんけども、いずれ彼らの狙いは将来中国が倍ぐらいあってもおかしくないと、こういうことを考えて今やっていますから。急速に中国で拡大していますよね。
森辺:私のお客さんでも上海に出たんだけども、ダメだと、撤退だとかおっしゃっているお客さんがいらっしゃるのですけど、中国はとてつもなく大きいじゃないですか。結局僕は、上海は上海国、北京は北京国、重慶は重慶国みたいに思っていて。
除:そうです。その通りです。
森辺:上海を撤退するのはOKだと。なんだけど、撤退するからじゃあいきなりASEAN行くはゼロからまた。
除:全然間違っている。
森辺:ノウハウを収集しないといけないので、であれば10年を費やしているのです、中国で。この上海で培ったノウハウは売り上げにはまだ貢献していないのかもしれないけど、何かしらのノウハウは残っているわけじゃないですか。であれば、都市を変えてもう1回今まで闇雲にやってきた中国ビジネスをもう少し戦略的にやっていったほうが良いんじゃないかという話をしているのですけど、何かその辺って
除:結局中国は有共同体です。1つの国ではない、今おっしゃった通り。全然地域が違っていたり。僕らは実は他の日本の会社を中々取れない。たとえば自分の競合だとか、あるいは中国人に商売を任せているのだけれども実はどういったところでどれぐらいの売り上げがあるのかとか、それを全部一通り調べると。こういうのを調べるとすごい面白いですよ。全然最初の自分の予想とは違う。たとえば上海が1番売れるだろうと思ったら全然違うのです。北のほうで上海の倍ぐらい売り上げがあったりして。そういうのはほとんどの人がたとえば中国は危ないからこれから東南アジアに行こうぜみたいな、そういうことを言う人こそ中国でしっかり足を踏み込んでちゃんとやっていないから、ちょっとだけやってうまくいかないからすぐ辞めちゃおうかなと。
だいたい我々もそうだけど、実は日本にきてこれで20年になりますけど、最初の4、5年は何もかも分からない。僕はよく言うのだけど、日本の街を歩きながら日本人はどんなところに住んでいるのだろうと今日もそうだけどちょっと除き見をしてみたりとか、そういうのって1年、2年だけでは分からない。
森辺:生活をしてみないと。
除:生活者感覚、消費者感覚ね。これで2、3年はうまくいかないのはとても当たり前なのですよ。自分の会社を作って、組織を作って、人を採用して、それは最初はだいたい失敗するのですよ。ただ、3年ぐらいやってだんだん感覚がついてきて、だんだん商売出来るようになるのですよね。これが重要なのです。この期間がとても大事なので、みなさん2、3年やって早く成果を出したいから焦りすぎていて。それが中国は、要は日本と僕はいつも空間の感覚、時間の感覚はまるきり違う。昨日も、また昨日の後輩の話になっちゃう、彼と話をしていて、やっぱり中国企業のボスの、中国で急成長した、たとえば今肌着の分野でも、化粧品の分野でもほとんど今日本より倍くらいの会社とかマーケット自体倍になってきたんですね。中国人の社長の考え方は日本人と違うのです、全然。彼らはもっと先を見ていますので、小さなことですぐ慌てたりはしないということなのです。だからそこは重要なのです。
つまりおっしゃる通り、上海がダメでもひょっとしたら内陸はうまくいくかもしれませんし、そんなのやってみないと分からない。最初は2、3年ぐらい失敗すると。日本企業は何で失敗したかというと、1つは、要は投資の、お金の使い方も違ったのです。社内でたとえば1億とか大きい額を中国が引っ張ってきて、中国でやろうと。この中国は最初の13年間で方向が間違ってしまってドカと使って全部お金がなくなってしまうから、そうすると中国は出来なくなってしまうので、これが間違っているのです。お金の使い方が間違いなければ、大きな売り上げはなくても大きな損はしないのに、少し人間って、最初は学費を払うから少しは間違ったりはするのだけど、そこからすぐ学習をして試行錯誤をしながら正しい方向が見えてくるでしょう。これをじっくりやる日本の会社が少ない。
森辺:今だから、調子が良い会社なんて過去を見てみると、やはり10年とか15年とか投資をずっと辛抱強くし続けているじゃないですか。その投資が巨額な投資かというと、その会社の売り上げ規模を考えたら結構日本での投資を考えると比較的大きなマーケットに対する投資としてはリーズナブルな投資で、そこがやっぱり確かにそうですよね。3年で中国ビジネスがうまくいくのだったら誰でもやっていますもんね。
除:そうです。誰でもうまくいくから。
森辺:この間ほら、除さんと一緒に大石先生に。
除:明治大学のね。
森辺:ハウス食品さんの話なんかもやっぱすごく投資を長いことやって、辛抱強くやってドーンといっていますから、やはりああいう風にやっていかないといけないというのは1つなのですよね。
除:あとはやっぱりハウスもそうですけど、現地の日本人のリーダーですよね。ときにはそれが中国リーダーであってもかまいませんけど、この人がただ単なるサラリーマン社長で責任取らないままでやるのはいけないので、何が何でも、たとえば今年はこれくらいの目標を達成しようと。ちゃんと目標をたてて社を引っ張って少しずつ成果を出していくということが必要なのです。ハウスはまさにそうです。カレーのルーなんて中国人は今まで食べる習慣は全くなかったから、こんなのゼロからスタートするわけですからね。これがよくも20億ぐらい、40億ぐらいの売り上げが作れるから、他の会社ができないことなので無いんじゃないかなと思って。
森辺:わずか10年ぐらいですもんね。と言ってももっと早くから採算でていますもんね。
除:基本的には調べてみれば分かりますけど、ユニチャームさん、ダイキンさん、今おっしゃられたハウスもそうですけど。基本的には今、要は中国で成功した会社ってね、中国人に売れている会社なのです。
森辺:やはり中国人に消費材であればもちろん中国人に売っていかないといけないし、B to Bも日系企業だけを相手にしているところから、いかに外資、中国企業ですよね。中国の会社に売っていけるかということを考えていかないといけないし。
除:我々ダイキンでよくダイキン空調機が中国で売れていると言いますけど、実はダイキンで科学原料をこれが中国で売れているのです。塗料とかね。これは完全にB to Bで中国の会社、ときには中国の内陸部も特に今内陸部が多いから、国家の建設プロジェクト、北京のオリンピックのスタジウムでも上海万博の会場でもほとんどそういった仕事をとれていますので。
森辺:あと日系企業を見ていると、成功している企業の現地の総経理、日本人のケースが大半でしょうけど、日本人の駐在年数がやっぱものすごく長くて、3年で新しい総経理という会社はまずダメですよね。結局3年間で培ったノウハウがまたゼロ、リセットされてっていうことなので。やっぱり私の知っている企業も10年とか15年とかずっと中国にいてっていう、そんな会社がやはり伸びてるなというのはすごく感じます。
除:そういった意味でやはり中国は時間軸と空間軸は日本と違うので、もっと大きなスパンで見ておかないと。日本が成熟してきて本当にお店の中にいきますと、化粧品なんか3ヶ月でコロコロ変わっていますので、そういったマーケットなんですよね。中国はもうちょっと根気強く1年、2年長い目で見て、本当に10年ぐらいの計画をたてながらやっていかないといけないので。
森辺:思い出すんですけどね、2000年代前半とか1990年代後半ぐらいって、中国はもっと黒とかグレーみたいな人の服の色もそうだし、もう少しドヨーンとした感じで、生産拠点と、世界の工場みたいな。しかも。
除:つい最近までそうだったような気がする。
森辺:それがね、この10年ぐらいでいっきに変わってしまって。当時我々日本人は中国の製品を安かろう、悪かろうってバカにしたわけです。日本の技術を超えられるわけないと。そうしたら家電白物をとられて、黒物ものもとられて、何もかも中国製みたいになってきているではないですか。色々な細かいことで技術の差というのは当然あるのでしょうけど、これだけマーケットの生産機能というものが拡大するというのは、僕はすごくビックリだし、もっと言うと、あの黒とか灰色の服しか着ていなくて、自転車に乗っていたのですよね、皆んなね。それがあれだけ高級車に乗り回して、今空港のデューティーフリー行っても、中国人の女性がグッチのバック3つみたいな。日本人は財布かキーホルダーみたいな、そんな格差がものすごい出ているではないですか。銀座も大分中国人で潤っていますけども、こんな時代がくるんだなというのは、あの当時に比べると想像もできなくて。すごく変わった。次の10年、20年もっと僕は変わると思うんですよ。だってまだまだ内陸には貧しい人たちが。
除:いっぱいいるのです。
森辺:一旗あげてやろうと思っている山っ気のある人たちがたくさんいるわけじゃないですか。
除:北京、上海は1人当たりのGDPが1万ドルを超えてしまっています。でも内陸はまだ3000ドルです。アフリカのレベルですから。
森辺:だからここで本当に中国ビジネスを緩めるなんていうことを日本企業は、僕はするべきではなくて、もっと投資をしていく。日中関係のどうのこうのはあまりそこが関係するようなビジネスの企業に成長させてからそこ心配しようという。そんなことをすごく思うのですよね。
除:要は、中国は豊かになってきたのですけど、ただ実は平均値で言いますとこれが1973年辺りの日本ですよ。今年は中国の海外の旅行者が1億人を超えちゃうんですよね。要は海外旅行の大きな時代がやってきて、1億人の中国人が世界中で旅行をするのです。この勢いが非常に1973年、4年あたりの東京に近いですよね。ただ要は、中国は非常に格差の大きい国なので、金持ちははんぱではないぐらいいますし、内陸にはまだまだ貧しい人がいると。ただ、国全体から考えますとまだまだ日本に比べると所得水準が低い。特に僕らから見ると1つはインフラが100%出来ていない。地下鉄なんて上海で13本ですよね。他の地域よりも地下鉄を作り始めたばかりの頃ですよね。ですから、そういった意味で成長というのが、成長率がもう2桁はないのだけど、7、8ぐらいは続くだろうと。どんなに悲観的に考えても5、6%は絶対続きますから、これからの10年間ですよね。だから、そういった意味で考えると1973年だから、30年ぐらい前、40年ぐらい前の日本のレベルですよね。
森辺:今のASEANだって5、6%ですからね。
除:そうです。そこから考えますと非常にチャンスが大きい。もう1つは豊かになってくる中国は日本にとって考えるとチャンスです。脅威として捉えるのではなくて、チャンスとして捉えるべき。1つはたとえば、確かにテレビとか冷蔵庫。中国では日本のものを買わなくなってしまうかもしれないですけど、1番大事なのは安全、安心、健康なんですよ。これが日本が中国に比べるとものすごい良い技術を持っていますので、これだけでこれから10年間ぐらい中国でやっていけると思います。
森辺:そうですよね。冷蔵庫でなくても、炊飯器は。
除:炊飯器こそ美味しく炊けるからこれも安心、安全、健康ですよね。空気清浄機なんて中国ではまだ1%です、普及率が。今日も電話かかってきて、空気清浄機を中国で売りたいから相談したいといってきた会社がいますのでね。全然チャンスは大きいですよ。
森辺:なるほど。分かりました。除さん、今日も時間がきてしまいましたので、また引き続きどうぞよろしくお願い致します。
除:分かりました。