東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、最終回になりましたけど、除向東さんを引き続き迎えていますが。
森辺:引き続き、中国市場戦略研究所の除代表をお招きして、引き続き中国ビジネスのお話をしていきたいと思います。除さん、どうぞよろしくお願いいたします。
徐向東(以下、除):よろしくお願いします。
森辺:除さん、最終回になりますけども、リスナーの方も多分もっともっと中国ビジネスのことを知りたいという方がたくさんいらっしゃると思うので、また質問を色々としていきたいと思うのですが。中国ビジネスをしていく上で、人材面って大きな1つのキーだと思うのですよね。駐在員であったり、特に現地のトップが3年、5年周期でコロコロ変わっていると中々中国ビジネスに定着しないというお話を前回したと思うのですが、駐在員の数が多すぎるかなというのが1つ。
除:そうですね。大分引き上げていますよね。だいたい日本人1人を派遣して、その人に給料を払う以外にマンションを変えないといけない、あとしょっちゅう日本に帰ってこなきゃいけないから、これを諸々全部合計して多分1年間で1000万から3000万円です。今円安だから、向こうの元が高くなっていますから、そうすると余計に昔の2000万が今ひょっとしたら4000万近くになってきているかもしれませんので。
森辺:僕らぐらいの規模の会社だとすごくこれ、社長やっていてよく分かるのだけど、中国ビジネスをやっているのに日本人なんて絶対送り込むかと思うのです。なんちゃら手当、なんちゃら手当と色々あるし、僕自身も中国に関わってもう13年か4年ですけど、日本人じゃどうしても超えられない壁があるのですよ、ビジネスをしていて。理屈は分かっているのだけど、これ無理、僕にはできないという壁があって。幸いにも僕には優秀な中国人の部下がいたので、そこを補ってくれるということをできたので。僕は彼女を100%信頼しているしね、そういうあれがよかったんですけど。大手の会社も中国ビジネスだけ引き上げたものの、まだ日本人部長と中国人部長がいたりとか、中国人と日本人と同じ役職なんだけどやたら日本人のほうが、給料が高いとか。中国現地社員だからとか、中国人社員だからとか、中国人社員だということで日本から来ている入社3年目くらいの日本人のほうが暗黙の了解で偉いみたいな。これをやっている限り、本当の意味での中国マーケットでの成功はないんじゃないかなと思っていて。欧米企業に行くとそんなことをやっていないのです。アメリカ人はトップで偉いですよ。彼らは植民地のように新興国の人間を手懐けていきますから、それはそれで確固たる差がしっかり設けられているものの、なんかこう違いをすごく感じるのですけど、その辺ってどうですかね?
除:実は、ビジネスはそんなにうまくいかない最大の理由は人材にあるので。日系の会社は特に上海とか見ていると、ほとんどの会社は人材で失敗している。ほとんどは人材で失敗している。人材で失敗している1つの大きな理由は、やはり日本語に依存をしすぎていますよね。どうしても日本語のできるスタッフがいないと日本人が不安なので、そうなると人を評価する基準というのは、その人は仕事ができるかではなくて、日本語ができるかどうか。はっきり言って仕事ができる日本人が、中国人がそう多くはないです。これは残念ながら、日系企業で働く中国人はほとんど若い。中国は全体的に若いです。日本に比べると。社会経験とか日本と比べると少ないし。だから仕事ができるかどうかも本当に仕事ができるやつがいたら、その人にすごく高い給料を払ってでも社長とは言わなくても結構キーパーソンで、重要なポストを任しても全然OKだと思います。
もう1つ。一般社員を含めて日本企業は失敗しているのですよ。本当に普通の平社員でも、日本企業の人材は間違っているのですね。先ほど言ったように、1つはやはり日本語に依存し過ぎ。日本語が出来ない、100%日本語が出来ない人を使うという意味ではない。日本語のレベルがまちまちなので、日本語を第一評価基準にしませんということは重要。その人がちゃんと仕事をやっているかとか、その人ができる仕事、仕事ができる人は少ないのでみんながそんなことを言うけど、除さん、実は数少ないよと。それも分かる。
今度はその人の性格で採用しようと。素直な人でないと会社は大変です。騙されまくりです。その人に利用されるだけなのですから。だから昔はよく教科書的に僕も日本で人的資源の考えをやっていたのですけど、海外で現地化すると。現地に任せると。実は最近大分わかってきて、そんな簡単なことでもないと。すぐ現地人に任しちゃえばよかったわけではない。やはりこの会社を引っ張っていける、この会社のために一生懸命働く社員がいるかどうか。そういう社員を、そういう人を見つけることも重要。先ほど言った性格は重要。性格というのは、これが会社に来てから直すものではないですよ。これは会社に入る前に、はっきり言って学校に入る前に家の中で家族、親からの教育の問題なので、これはすごく簡単。だからその人を見る目が重要なのですよ。どういう人を選ぶ、ですね。
僕は一概に現地化して日本人が全部帰れということも賛成しない、これは国籍の問題ではない。トップにいる人は、この人は本当に根を下ろして本当に中国で一生懸命やって、この社員たちを引っ張っていって、将来売り上げを大きく作っていって、社員にたくさんボーナスを払える人であるかどうか。これが社員は見ているわけですから。そういう人じゃないと、その人が日本人であれ中国人であれ、絶対ついていかない。そこまで中国人は日本人以上に見ているのです。というのは、中国は競争が激しいので、ダメだったらいつでも会社を変えようかなと思っているから、だからすごく見ているので、ここのリーダーシップをもつ人はとても大事なのです。
森辺:大事ですよね。よく日本の会社の方が中国に限らず、中国人はロイヤリティがないのだよと。会社に対して。そんなの中国人だけの話じゃないですよと。世界中、日本以外どこでもロイヤリティがないですよと。日本では今ロイヤリティなんてないし、ロイヤリティってギブアンドテイクだと思っているのですよね。何かがギブされるからロイヤリティがあって、このロイヤリティは日本で使われている言葉自体が、終身雇用が絶対の時代に生まれているわけじゃないですか。一生保証してくれる。だから会社に対してロイヤリティを持つというのはうちの親父の世代ですよね。絶対に首きらない、終身雇用だと。でもその終身雇用が崩壊して中途半端な実力主義に変わっていって、完全に実力主義に変わる過渡期ですよね、多分僕らが育っている時代って。そうすると、何か良く分からないけどロイヤリティみたいな、会社に忠誠心を誓いますみたいなのが、日本でもないのにそれを異国で求めてはダメですよ、そもそも。
除:多分忠誠心が中国に変えて、中国に行くと中国企業は何だと思う。変な、逆に反発するかもしれませんのでね。ただ、僕は仕事にコミットをするかどうか。実はちゃんと仕事にコミしていれば、その人は相当成長するので。これは先ほどこのシリーズの1番冒頭で申し上げましたけど、会社って3年ではダメなのです。ある程度時間を、経験を積んでおかないと絶対中国ビジネスはできないから。人間もそうですよ。1、2年で会社をすぐコロコロ変えるやつだと、あるいは自分の中に何も残らない人なので、そういう人が世の中にいるのです。ひょっとしたらこれは語弊かもしれませんけど、日本人に比べると中国人のほうが多かったりします。さらに言いますと、案外これが留学にくる中国人のほうが1度日本を経験した中国人のほうが、かえって海外に行ったことがない人と比べるとそういう人が多いのですよ。目先だけ。常に目先だけ。どうやら隣の会社に移るときに、ここより1円でも2円でも高ければ辞めようとするのです。僕らは結構色々な会社を経験して分かるのです。世の中で完璧な会社なんてないから、会社は実は行ってみないと分からないでしょ。行ってみないと給料が高いと言われるけど最近人材仲介の会社も多いから、AからBに、今度Cにとどんどん移っていくのです。だいたい絶対今度の給料より高いと言いますけど、会社に入ってみないと分からない。景気が悪いとどこの会社もむやみにボーナスを出すわけにはいかないから、そんな会社は世の中にはないので、ここは中国人の、今中国人の少なくとも一部日本留学の人も特にそうなのだけど、ここは目先に走りがちなのです。これは日本に比べると中国の社会問題でもある。
そうすると、今度先ほどの話に戻りますけど、人を採用するときに気をつけなきゃいけない。採用をしたら同じ社内で見分けしなければいけない。目先だけを求める人、コロコロ変える人はしょせん落ち着かないから。こういう人はしょせん1、2年で変わるから。こういう人がいるので、これがどうしようもない。問題はそういう人ばかりを抱えているのが、それは人材を採用する社長が間違っている。あなたがちゃんと仕事をできていないと。だからそういう人ばかり採用する。何であなたはいつもそいつに操られているということですよね。もう少しちゃんとした素直な人をとってくれれば、中国にもたくさんちゃんと落ち着いて仕事をする人がいるのです。会社と共に成長するのです。ちゃんとこの会社に、仕事をコミットして一生懸命やっていれば、その人は絶対能力はあがりますから。この能力は誰からも盗まれないので、次のところで。苦労したら今度は自分の会社を作れるかもしれませんから、そういう人であるかどうか。そういう人が見つからない、中国人が全て悪いように言える、中国人はロイヤリティがない、この国はどうしようもない、こう言うのだけど、あなたがちゃんと良い人材を見つける努力をしていなかっただけなんですよ。
だからエピソード的な話なのだけど、話しが脱線するかもしれないけど、僕は日本の会社にうちの社員を、一通り中国人社員を全部ヒアリングしてくれと。人材系のコンサルの会社の仕事もしていたのですけど、ある会社をヒアリングしていながら、途中からだんだん不審に思い始めることがあって。どうして全員上海人ですか?これはヒアリングをしていてものすごくストレスなのですよ。何がストレスかと言いますと、上海人たちはみんな立派なことを言う。うちの社是、社訓はこうだと。なんちゃら「○○」(12'17)とか言うのです。わ、すごいと。ただし、2時間のヒアリングを終わったあとに、ものすごく腹が立つ。なんで腹が立つかというと、僕はレポート書けない。この人たちが言っていることが全部正論。全部正論だけど1つも具体性がない。あなたは自分の仕事、たとえば次回私はこういうような、この商品のために私はこういう、ここの中国のマーケットでたとえば今上海より北京のほうが売れる。実は北京で僕らがこんな風にしていれば、商品はこういう風に売れると。そういうことをしたいと。これを一言でも言ってくれる社員がいたら、私はレポートを書けますので実はこの会社がこういう社員いるのだと。書けますので。全員が正論、全員が一通り、全員と言ったら語弊なのだけど、ほとんどの人が立派なことを言う。ものすごい立派。こっちから最後に終わったあとに頭下げて、あなたの言う通りですと、こうするしかないのです。でも終わったら一言もレポートを書けない。正論すぎて、みんな。これが、頭が上手でしょ。頭が悪くないのだけど、明らかに仕事をしていない。言っていることは立派。でも1つの具体性がない。全員上海人ですよね。上海人が悪いというのではないですが、あか抜けているのです。日本に留学をしたことがあって、日本語ペラペラかもしれません。あか抜けているのです。会社はそういうヤツはいらない。他のところへ行ってくれ。あなたは全然仕事に向いていない。どうしてこういう人ばかり採用するの?と。たとえば人事部長に会ったら人事部長、我々が中国全土から仕事を、質が、人材があればみんなが面接するというけど、これが人事部の人事部長から話を聞くとね。
実際に中にたまたま1人だけ上海人ではなかった人がいたのです。この人は1番立派です、はっきり言って。浙江省の田舎から来る人。この人が一番、僕がヒアリングをした中で1番、この人は1番ちゃんと仕事していると思ったのですね。彼女に、あなたはどうしてこの会社に入ったのですか?と聞いたら、その日上海に来たのです、たまたま。そうしたら面接に来いと言われたら、上海に行ったから面接ができた。もし彼女がその日に上海にいなかったら面接はできなかった。これはハッキリいって、日本人の都合に合わせて人を採用しているのですよ。本当に人を採用したいのならば、向こうの人に合わせなきゃいけないじゃないですか。だからどこまで本腰をいれて、日本人にとしては、日本人の社長とか、人事部長が本当にあなたはこのビジネスで成功したいですか。本当に成功したいならば、絶対この状況はよくないので。
森辺:確かにそうですよね。人事部長もきついでしょうね。日本人の採用が難しいのに、訳分からない中国人の日本語がしゃべれないのにね、中国人の採用をしないといけないというね。そういう難しさもあるので。でも確かにおっしゃっていることはそうですよね。
除:もし、たとえばこの会社の社長はユニクロの柳さんであれば、これは多分妥協しないよね。お前たちは何でこんなレベル?ダメだよ。なんとか今年、全員いったん辞めさせて全員やり直せと。私はあなたの、今年これだけの在庫が出せるかと私は見ているから。というと、今度この人事部長は、多分そうは簡単に、もうどうしようもないから何が何でも自分で中国全土を歩き回ってでも人を取ってくると。やるしかないでしょ。人間ってね、中国人もそうだけど、日本人もそうだけど、苦労しないと結果出せないです。中国に行って結果を出せなかったら会社の商品が悪いではなくて、人間が悪かった。ちゃんと仕事していなかっただけなのです。
森辺:人ですものね。結局。
除:そうです人が全て。苦労しなきゃいけない。思い切り悩まないと。私はものすごい実は、やはり中国で1番悩むのはハッキリ言ってこれは人の問題。日本の商品は良いし、人をどう見るか。それは日本の人を採用してやるのは楽なのですよ。中国人を採用してやると大変だから。だから社長は日本で2倍くらい、3倍くらい苦労しない限りは思い切り悩むのですよね。
森辺:中国ビジネスをやるなら中国語ぐらい喋れというね、日本人が。そうしないと何も始まらないし、さっき除さんが言っていた通訳、日本語が喋れるか喋れないかが日本の採用の基準になっているとかというのが、まさにあったのですけど、社長の通訳というのがいて、女性なのですけど。あと、営業部長とか中国人でいっぱいいるのですけど、社長の秘書のほうが社長のことをよく知ってるし、社長が何考えているか会社の全体が見えているので、営業部長、管理部長が全部中国人なのですけど、その人たちよりも暗黙の了解で権力があるのですよ。色々な情報をもっているから。そんなのは結構色々なところであるじゃないですか。だから、単なるこいつ通訳だぞと。何でこいつに。
除:それが女性が多いし、その人に振り回されている。
森辺:会社を牛耳っているのはそこなの。
除:牛耳っているのです。
森辺:経理から何から、経理生産からいい悪いみたいなのを彼女が判断しているのですよね。この組織おかしいでしょと1回全部解体してリビルドしたことがあったのですけど、そんなようなことが。
除:私も昔ある日本では立派な売り上げの大きい会社、オーナーの会社ですけど、1回頼まれて上海の商売がうまくいかないから全部調べてくれと。そこにちょっと会計士を連れて一緒にいったのですけどね。会計士に最後レポートを作って社長に対してプレゼンをするのだけど、経理レポートは聞きたくないから、除さんたちがやっていた人間の問題。これを全部報告してくれと。同じことなのです。結局女性の秘書がいて、全部その人にうまく騙されているよね。たとえば、売り場に綺麗なタンスを作って鍵をかけていて、タンスだけがすごいお金がかかっていてね、鍵をかけて消費者が商品を手に取ることができないと全く売れないのだけど、そのタンスの値段を1個聞いたらビックリしまして、これは高いだろうと。タンスはその女性の親戚の工場で発注して作っている。そうなのですね。
森辺:そういうのばっかですよね。なるほど。人が非常に重要だということですよね。分かりました、除さん、最後になるのでもしリスナーのみなさんにメッセージがあれば。
除:中国は面白い。だって、それこそもう日本の2倍くらいの化粧品が売れますよね。そういうマーケットだから本当にちゃんとできればやっぱりすごく自分が仕事をしてこれくらい物が売れるという実感がありますので、はっきり言ってやっぱり僕らが日本でも生活していて上海でも生活していて両方行き来しますので、日本のほうが全然安心、安全ですよ、健康的ですよ。となると、こんなに良い技術を持っていたら、それは中国でやってもっとたくさんの人に使ってもらって。中国も環境よくなるし、みんなが良い生活出来るし、それがビジネス以外の達成感でありますよね。そういうことをやって中国人がどんどん、女性も綺麗になって男性も健康的になって日本人に感謝してくれて。日中でどうでも、つまらない問題で喧嘩をせずにみんなで仲良しでやっていて、実は中国はチャンスが大きいので日本はそれでいっぱい稼げると。これがとても良いことですよね。実際対中ビジネスは、今中国は日本最大の貿易相手はここでしょ。だから、こんなに面白いことはないので、現場から逃げ出すなという意味合いです。
森辺:分かりました。ありがとうございます。除さん、また時間空けて遊びにきてください。
除:分かりました。
森辺:ありがとうございました。
東:ありがとうございました。