アジア新興国 STPが明確だと戦術も明確になる
番組への質問はこちら » お問い合わせフォーム
新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/4495650238
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は引き続き、マーケティングの基本プロセス、「STP」ですね、「STP」のお話をしていきたいと思います。じゃあ、早速、すみません、スライドをお願いします。前回に引き続き、マーケティングの基本プロセスというフレームワークは、参入戦略を、再参入戦略でも構わないんですが、つくる上で大変重要ですよということで、この前回ね、「R」の話をしましたけど、「R」を最低限やっておけば、こんな失敗するはずじゃなかったというような、比較的初歩的なレベルの失敗はしなくて済みますよという話を前回して、「R」とは何なのかということを説明したと。
今回、実際に「R」が終わって、やっぱりこの市場は儲かりますねと、これぐらい具体的に儲かりますねと、それに対して競合がこれぐらいの競争力で存在していますね、それに対して自社の経営資源を分析して、自社がそこに参入したときにはおそらくこういうことが想定されるでしょう、だから、出ましょうとか、出ないでおきましょうという判断がされるわけですけども。実際に出るという判断がされたあとのことがこの「STP」で。「STP」というのは、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの略で。平たく言うとこの図の赤いところの通り、どのセグメントの誰に売るんですかと。その際の自分の立ち位置ってどういう立ち位置なんですかということが実際なんですよね。これって、セグメンテーションって、どちらかと言うとざっくりどこを狙いますかと。例えば、B2Bなんかだと分かりやすいと思うんですけども、基本的にB2Bって、産業集積地と用途市場、インダストリーで決めていくわけですね。必ずしもアジア新興国市場で、首都のね、人口が多いところがターゲットではないので、その産業がどこに集積されているのか、そういったものをつくっている工場がどこに集積されているのかというのが1つの軸ですよね。さらに言うと、用途市場、例えばモーターをつくっていたとしても、自動車に使われるようなモーターもあれば、もっと小さな機械に使われるモーターもあるし、ボートに使われるモーターもあるし、いろんな別のものに使われるモーターもあるので、用途とかインダストリーによって、用途=インダストリーですけど、違うので、どこの市場、インダストリー、用途を狙いますかということでざっくり分けていく。
ターゲティングというのは、じゃあ、例えばB2Bだったら用途とかインダストリー、もしくは産業集積地のエリアの中でも、どの企業に具体的に売りますかというのがこのターゲティング、「誰に」ですよね。B2Cの場合、B2Cの消費財の場合、セグメント、ざっくり中間層の、例えばこういう年齢層のこういう性別の人とか、このエリアに住んでいる人とか、そういうざっくりとしたセグメントの中から実際のターゲティングをしていく。例えば、フィリピンだったら、ピュアゴールドで日々買い物をする人、SMよりもピュアゴールドで日々買い物をする人とかね。分からないですけど。ベトナムでも、ウィンマートで週に何回以上買い物する人なのか、分からないですけど、伝統小売に行く人なのか、所得がこういう人と。B2Cの場合は、「誰に」ってね、山田さんにとか、なんとかさんにとか…、まあまあ、新興国なので、ハンさんにとか、フンさんにとかね、そういうふうにはならないので、基本的には小売ベースになりますよね。大きくざくっと消費者、中間層、所得はこうだ、こういうライフスタイルの人、こういう思考を持っている人って、もう当然、消費者のインサイトは理解しつつも、じゃあ、その人たちが一番接点を持つ小売ってどこなの?と言って、小売を「誰に」にあてていく。
これってすごく重要で、ちょっと1回次のスライドに行きますけども。このスライドの通りね、「誰に」売るかということは、「誰と」売るかよりもものすごい重要で、今言っているこのターゲット、セグメントとかターゲットというのは、「誰に」売るかの話をしているわけですよね。日本の製造業の場合は、誰と売るかみたいなところにばっかり気がいくわけですよね。とにかく「誰に」売るかはなんとなくぼんやりしたまま、「誰と」売るかということに集中をしがち。だから、ディストリビューター、良いディストリビューター、大手のディストリビューターで、この良いとか、あれも、大手とかね、大手で実績があるところ。大きくて実績があるところは確かに実績があるけど、それは他社との実績であって、これから参入して、大した物量にもならない御社の商品を本当にそれだけ力を入れてやるかって、これはまた別問題だから、そういう軸で大手、実績のあるところ、財閥系みたいな選び方をしているのもまた違う話ですから。「誰に」売るのかということはすごく重要で。B2Bの場合は、さっきターゲットで出した企業に確実に売れるディストリビューターと売らないとまったく意味がないわけですよね。これから、例えばこの10社がターゲットだと言っているのに、5社は持っています。ただ、5社はこれから新規です。この新規がね、すぐに取引が膨らんでいくなんていうのはあり得ないので、何年もかかるわけなので。そうすると、ここじゃないのかなと、10社全部取引として持っているところはどこなのかなと見ていくし。B2Cの場合は、みんな「できる、できる」と言うわけですよね。「長い、強い関係がある」と言うんだけども、その強さがどれぐらい強いのかと。ウィンマートの強い関係ってどれぐらいの強さなの?と。アルファマートの強い関係ってどれぐらい本当に強いの?と、インドネシアのアルファマートと、ベトナムのウィンマートとの関係。例えばSMとの強い関係、フィリピンのSMとの強い関係って具体的にどれぐらい強いの?というところを見ていかないといけないし。例えばVIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンだったら、伝統小売を押さえないといけないのに、近代小売には強いけど、伝統小売には弱かったら全然ダメなので、やっぱり「誰に」売るのかということが明確になればなるほど、「誰と」売るべきなのか、「誰と」売らなきゃいけないのかということが明確になるので、そこは非常に重要なポイントであると。
また、スライドを1つ、すみません、戻ってもらって、この最後のポジショニングのところですけどもね。このポジショニングっていうのは、誰にね、ターゲットに対して自分たちはどういうふうに見られたいの?と、どういうふうに見せていきたいの?と。日本企業の場合は、結構、プレミアム戦略みたいな見せ方にどうしてもなってしまう。品質が良い、でも、値段が高いというような状況になってしまって。これがなかなかね、品質は良いけど値段が高いんだったら、それを理解させるという訴求ね、そのことを理解させる訴求、これはプロモーションにも入るんだけども、こういうところに力を入れないと、今、この品質の良さというのがなかなかB2CもB2Bも見て分からないし、触って分からないし、食べて分からないみたいなところがあるとね、なおさらその訴求ってすごく力を入れなきゃいけなくて。ヨーロッパなんかはね、かつて日本にそれをやられてしまった、いわゆる日本がね、より小さく、より安く、より良くつくったことで、そういうふうになってしまったので、もしくは、いかにコモディティしないかみたいなことを考えていくと、お客さんに目に見えない価値をどうやって浸透させるのかということをすごく努力をしてきたので。特にハイブランドなんかはそうですけど。同じものなんだけども、その違いがね、すごくお客さんの中で「あのブランドじゃなきゃダメ」っていうね、こだわりに変わっていくという、こういうのがポジショニングになっていくわけですけど、消費財とかB2Bの場合はね、そういうハイブランドとは違うポジショニングなんだけども、この会社の商品って、なんか心地が良いよねと、親しみやすいよねっていうものを、例えば食品メーカーなんかも出す必要があったり。B2Bとかだったら、ここはやっぱりしっかり壊れない、品質が良いし、何かあったときにしっかり対応してくれるというのももちろんポジショニングの1つだし。立ち位置は非常に重要になってきますよね。
これを3点セットにして「STP」と言うわけなんだけども、実際に次の「MM」に移行するときに、この「STP」というのはすごく重要で、ターゲットをとにかく明確にする。マーケティングというのは、ターゲットがすべてと言ってもいいぐらいにターゲットって重要で、このターゲットに対して行うあらゆる行為がまさにマーケティングなので、このターゲットがほわっとしたまま戦略、戦術を決めていってもやっぱりなかなか難しくて、ターゲットを具体的にすればするほど戦略というのは明確になっていくというふうに思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。