「こつこつ」という価値観では成功しない
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、『製造業のためのアジア新興国販売チャネル戦略』ということでお話をしていきたいと思います。すでに第3章に突入をしていて、この第3章というのは日本企業が変えなければならないマインドセットということでね、少しマインドセットの話をしていると。なぜマインドセットの話をしているかと言うと、そもそもこの本はね、製造業、B2C・B2B問わず製造業向けに書いている本で、思考と行動にフォーカスを当ててね、販売チャネルを紐解いていきたいという、そんな思いがあって。要は、戦略上、販売チャネルが重要だというのは僕の持論だし、わが社の得意とするね、最もポイントとなる部分で。でも、この販売チャネル戦略をつくる上でね、やっぱり戦略というふうに説いたときに、戦略をつくるものというのは、その手前にあるマインドセットがあって、やっぱり日本人が主としている考え方、思考の方法がこういう傾向の戦略をつくり出しやすく、その戦略はアジア新興国市場ではやっぱりこういう結果を生みやすいというね、こういう、僕は1つの大きな法則があると思っていて。大学の研究者ではないので、それを数値的にデータを取って言っているわけではないですけども、少なからず僕が30年、アジア新興国市場を30年以上見てきてね、その中で感じることをこの第3章ではまとめていて。
いくつかの価値観のね、日本の企業の価値観の中で、前回ね、少し話しましたけど、「こつこつ」という価値観、これはちょうど52ページですかね、これがやっぱり日本企業がつくり出す戦略に大きな影を落としているというふうに僕は思っていて。「こつこつ」という価値観は僕もすごく大切にしているって前回も話しましたけども、でも、これってすごく長期的な時間軸の中での価値観であってね、これをマーケティング戦略とか販売チャネル戦略に持ち込んじゃ駄目で、なぜならばマーケティング戦略とか販売チャネル戦略って、なんなら数カ月、1年、3年、5年ぐらいの時間軸の中で考えられること。一方で「こつこつ」というのは、人生とかね、100年とか、企業の50年100年の歴史の中でこつこつ積み上げていくという話で、これをマーケティング戦略に持ち込んで戦略を考えているという企業とか個人というのは少なくなくて。「石の上にも3年」なんていう言葉がありますけど、この言葉もね、僕は好きなんだけども、マーケティングに持ち込んでは絶対駄目だと思っていて。54ページのとこにね、この「石の上にも3年」もね、このプロセスだけ見ていて、結局、我慢強く辛抱することがね、成功を呼ぶということを言いたいんですけど、要は石の上にも3年座っていれば、冷たい石も温まるよと、我慢強く座っていればその石も温まる、我慢強く、時間の経過が成功を呼ぶと言っているわけなんですよね、この言葉って。でも、実際には、じゃあ、それをもっと深く深堀っていくとね、時間の経過が成功を呼んだのではなくて、時間の経過の過程でいわゆる成功するための指標を掴み取ったから成功したんですよね。ただ単に時間が経過したから成功したのではなくて、時間をかけたことによって成功するための指標を掴んだから成功しているだけの話で。これは時間ではないんですよね。「こつこつ」って時間というふうな捉え方をされるんですけど、そうではないですよと。だから、やっぱりこういうことも変えていかないといけないし。
日本はね、効率が悪いとか、生産性が悪いというふうに言われますけど、最小の努力で最大の効果を生むということを良しとしない文化がありますよね。要は、苦労して得られる成功のほうが、苦労しないで得られる成功よりも優れているというね、こういう見方ですよね。感情論的には分かります、分かります。でも、これって、マーケティング戦略的に言うと、最小の投資で最大の効果を上げるので、めちゃめちゃそっちのほうが良いわけですよね。苦労なく成功するほうが絶対に良いわけですよね。だって、最小の経営資源投資で最大の効果を生むわけですから。これは結果指標で見たときにね、絶対こっちを評価しないといけない。ROIが絶対に高いわけですから、そのほうがね。企業の経営というのはROIがどれだけ高いかということですから、そうすると、最小の投資で最大の効果を生むということはすごく重要。なんだけども、やっぱり日本の企業とか社会、文化の中ではね、苦労して頑張っていて成功していると、「あいつは頑張ったね」という話なんだけども、結果が少々悪くても「あいつは頑張った」と。でも、一方で楽して成功してしまうと、「あいつは頑張ってない」とか、結果がちゃんと出てるのに「あいつは頑張ってない」という、こういう評価になりがち。すべてがすべてそうだとは言いませんけど。特に、少し前までは、特にその傾向が強かったので。こういうマインドセットを変えないとね、やっぱりこれはアジア新興国市場のローカルの人たちの評価にも、評価制度のつくり方にも影響を及ぼすし、マーケティングの組み立て方にも影響を及ぼすし、こういうことを全部変えていく。だから、現地化をするということを言うわけですよね。欧米の先進的なグローバル企業は、ある一定のポジション以上は西側の人たちが握るというとまた何かあれですけど。こっちでね、グローバルで握って、ローカルはローカルにある程度任せていくというのはね、そこの価値観を変えることがすごく大変だから現地化をしていくということなんだと僕は思ってるんですけども。でも、やっぱりこういうのは非常に多いと。
もう1つ、今日お話したかったのが、この54ページに書いている、ビッグピクチャーをやっぱり持つということはすごく重要で。なんかね、われわれのマインドセットって、とにかく目の前のことをまずやることが重要なんだと。目の前のことをこつこつやっていれば、きっとその先には良い世界が、すばらしい世界が待っているはずだというね、もはや宗教的な思い込みで、目の前のことをこつこつやる。例えばこれもね、先輩、後輩、部活の文化から来ていると思うんですけど、1年は球拾いみたいなね、意味分からないですよね。1年は雑巾がけからみたいな。空手キッドのミヤギさん、1、2、3、4で、もうこれって言うんだったら、それは分かるんだけども、まったく理解を示さないということではないんだけどもね、1年でも3年よりも優れているケースっていうのはあるわけですよね。そうすると、1年は雑巾がけとか、1年は球拾い、草むしりというのはあまり賢い選択ではなくて、やっぱりそこって合理的に解釈をしていかないといけない。目の前のことをこつこつ、こつこつやるので、ビッグピクチャーが全然持てない。ビッグピクチャーというのはどういうことかと言うと、全体像なんですよね。まず、全体像を見たときに、どうやったらゴールに対して最短で進めるかという、この全体像を見る。いつか、今目の前のことをこつこつやっていれば、いつかゴールにたどり着けるはずだじゃなくて、まず全体像、ビッグピクチャーを見るんで、ゴールを逆算をしていくと、自分の目の前をこれぐらいのスピードで進んでいかないといけないということがよりロジカルに理解できる。さっきの草むしり、球拾い、雑巾がけもそうですよね。3年間の、例えば中学生ライフ、高校生ライフの中で、今いる1年、2年、3年のメンバーを、全体像をまずバッと見たときに、1年でも優れている、3年でも優れていないという、こういうのがあってね、その中でやっぱりやるべきことをそれぞれが決めていく話だと思うので。年齢が低いから雑巾がけとかっていうと、なかなかやっぱり、それは日本の社会ではいいかもしれない、韓国の社会でもいいかもしれない。でも、アジア新興国だとなかなか難しいので、そういうマインドセットがね、戦略が引きずられるんですよね、もともとのその根底にそういう考え方があるので。それを意識的に変えていくということをやっぱりしないといけない。そんないくつかの事例を書いているので、そんなのがこの55ページぐらいまでですかね。
あとね、「戦略的思考なき勝ちは再現性がない」。なぜこういうことを言っているかと言うと、戦略的に物事を組み立てていかないと、仮に勝ったとしても再現性がないんですよね。仮にこつこつやって成功したって言ったって、それは再現性ないですよね。ただ、もう宗教的に目の前のことを信じて、こつこつ、こつこつ、やってきて、たまたま成功しましたという話であってね。でも、ビッグピクチャーをしっかり見れれば、どの部分をどういうふうに進めたからどういうふうに成功したのかっていうことが分かった上での成功なので、次やるときの再現性が得られるという。成功というのは再現性とセットで得ないとあまり意味がなくて、再現性のない成功というのはマーケティング上、活用が難しいですよね。たまたまになってしまうとね。そんなことを書いているというのがこの58ページまでのお話でございます。
では、次回以降ね、59ページ、第3個目、「どう戦うかよりも、どこで戦うか」、これは本当に重要なのでね、次回こんなお話をしていきたいなというふうに思います。皆さん、それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。