森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も前回の引き続きで、FMCGが対象です。食品・飲料・菓子・日用品等のFast Moving Consumer Goods、ならびに文具・化粧品ぐらいまで入れていいと思います。対象地域はASEANで。今日の話はね、前回、前々回からの引き続きで、日本マーケティング協会で私が毎年呼ばれて講演をしに行くんですけど、その講演に参加されている各製造業の皆さんの意識が非常に高いので、そこで出てくる質問がすごく素晴らしいと。それをまったくそのままというわけにはいかないので、少しあれしながら、ちょっとここで今日、皆さんにもシェアをしようということで、今日で最後ですかね、3番目。
「日本のプレゼンスについてね、消費財の領域で、ASEANで、どうですか」という、こういう類の質問だったわけですけど。皆さんご存知の通り、明らかに日本のプレゼンスってやっぱり…。ご存じない人も多いのかな、若い人たちは。80年代のASEANを僕は見ているので、80年代90年代のASEAN、あのタイミングのプレゼンスに比べると、やっぱりだいぶ低下しているというのが1つですよね。中国や台湾や韓国やASEANの企業でもつくれるようになっているので、消費財に関してもね。だから、これはだいぶ落ちているというのが1つあると。
重要なのって、やっぱり日本だから高いよっていうのはもう通用しないんですよね。消費財のパッケージが日本語で、日本風でというね、日本風でというか、日本語が書いてあって、日本のね、made in Japanだろうが、made by Japanese companyだろうが、どちらでもいいんですけど、結局、台湾や韓国…、韓国はやらないかな、台湾の企業とか中国の企業でもね、ちょっとこう、韓国の企業でも一部いるかな、パッケージに日本語を載せてみたりとか、中国の企業でも、今はハングルをパッケージに載せてみるとなんとなく韓国風、なんとなく日本語風、すごくローカルの人から見たら、その日本語が正しいか正しくないか、違和感があるか、違和感がないかなんて関係ないですよね。なので、そういうパッケージ。だって、日本だってそうじゃないですか。日本のコンビニに行って、お菓子を手に取ってみたら英語がいっぱい書いてあるじゃないですか。あれも別にアメリカ人から見たら、なんかアメリカっぽい風にしているのかなって最初は思ったはずだと思うんですよね。今ではそうはないのかもしれない、普通のことなのかもしれないけども。でも、それと一緒で、外国企業が日本語のパッケージで商品を売るというのは別に悪いことではないし、日本の人気が上がればそうなってくる。そうすると、それを買う人にとって、どちらが本物かというのはね、やっぱりたくさんシェアを持っているほうが本物なんですよね。またね、これがハイラグジュアリーブランドであれば、どちらが本物か論みたいなところは本当に本物を追求していく動きというのが出るんだけども、たかがと言ったらあれですけども、消費財においてね、そんな追及はなされないので。そうすると、やっぱりシェアが高いほうが本物。なんなら原材料を見たときに、日本のものよりも、例えば他国のもののほうがね、添加物が少ないとか、より良い原材料を使っているというケースも出てきているんですよね。そうすると、われわれは、われわれが本物だと思っていたものも、そうじゃないみたいなことなので、やっぱり僕はね、日本だから高いというのはもう通用しないですよと。この日本=高品質とかいうことなんだと思うんだけど、プレミアムみたいなね、こういうもの以外の優位性をどうやって見出せるかっていうことを本当に真剣に考えていく必要があって。
製品もね、例えばそれこそ日本が得意としている機能性食品とか、これも1つの機能じゃないですか。その機能がどれだけ体験できるか、感覚値として体感できるかっていうとね、日本だったらね、なんとなく、「うーん、健康になった気がする」で消費者は買ってくれますけど、アジア、ASEANの人たちはそうはいかないので。でも、機能性食品って、もし何か機能がついているんだとするとね、大きな付加価値が、そういったものとか、あと、それこそマーケティングに力を入れる、こういうところに優位性を見出していかないと、なかなかやっぱり難しいですよね。この機能性もね、間違えちゃいけないんですけど、本当にね、日本の機能性食品も、ラボではデータとしてはこういう良い数字が出たんだけど、実際のわれわれの実生活ではいろんなバイアスがかかるわけじゃないですか。だから、そういったものを加味したときに本当にそういう効果があるのかって言うと、ちょっとそれがなかなか体感できないというね、こういうものをシビアなASEANの人たちがどう捉えるかっていうのはね、やっぱりしっかりと調べないといけないというのは1つあると思うんですよね。だから、でも、当面はね、通用すると思うんですよね、僕ね、「日本だから高い」が通用してた時代のように、「機能性だから高い」は、ある一定の層には当面はたぶん通用すると思うんですけど、そんなに長くは続かないかもしれない。なぜならば、その機能というものが明確に実感することができないから。
だとすると、やっぱり消費財はマーケティングがすごく重要になってくる。マーケティングと言ってもね、プロモーション合戦を欧米メジャーとやれと言っているのではなくて、販売チャネルのチューニングをするだけで十分シェアを奪えるんですよね。われわれはシェアを追うほうなので、欧米のメジャーのシェアの高い企業のほうが僕は毎日震えていると思っていてね、なぜならばシェアというのは他人から5%奪うから自分のシェアが5%上がる。もうすでにシェアの高い企業というのは、シェアを奪われる一方なわけですよね。2割3割持っているところから3%5%獲っていくという。このチューニングって、チャネルをチューニングすればすぐに5%のシェアなんか獲れるんですよね。それにまだ気づいていないシェアの低い企業ってたくさんいるので。逆に言うと、シェアの高い企業は、気づかれたら怖いって怯えているんじゃないかなって、そんな気もしているのでね。ちょっと話が逸れましたけど、「日本だから高い」みたいなものはもはや通用しないので、この日本=高品質みたいなこと、プレミアムみたいなことがほとんどなので、こういった優位性以外の優位性を自分たちの戦略の中に見出せた企業はすごく強いと思うんですよね。「いや、私たちの商品はいいんです、いいんです、いいんです、いいんです…」ということではなくて、「いや、私たちはチャネルが圧倒的に強いですから」みたいなね、別の優位性を見出す日本のメーカーってそうそうないので。今、日本のメーカーで一部、一握りのね、ほんの一握りのFMCGのメーカーがASEANでシェアが高いのはみんな日本という優位性以外の優位性を持っていて、「じゃあ、その優位性は何か」って言うと、「販売チャネルである」ということは言えると思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。