森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。前回ね、調査をしてくださいということで、調査、調査、調査ということで、調査をケチっている会社は絶対にアジア新興国市場で成功しないと。僕、もうこれは本当に自信を持って言えますけど、今まで25年近くこの商売をしてきてね、シェアの高い会社というのは、情報を収集する、調査をやるということが組織の中で自然の行為として成り立っていて、情報の重要性をしっかり理解していて、その重要性をうまく活用して、高度な仮説を立てるからアクションを取ったときに誤差が少なく、そのままどんどんスピーディに前に進んでいくと。一方で、やっぱりいつまで経っても状況が変わらない、シェアが上がらない会社というのは本当に調査費用をケチる。情報ないのに何で戦うんですかっていう話でね、まったくの新しい新市場に行くわけですよね。日本での知名度、信頼、ネットワーク、資産、あらゆるものが、経営資源が使えない市場で勝負をするのに、やっぱり高度な仮説を立てていかないと、すごく初歩的なミスで、こんな過ちだったら出る前から分かっていたじゃないですかと、現地法人を設立する前に工場を設立する前になぜですかというようなことが非常に多くて、これってもう完全に調査不足なんですよね。この番組でも、マーケティングの基本プロセスの解説を散々してきていますけど、Rの部分でまさにそれが未然に防げるわけですけども。
今日は、「じゃあ、どんな調査をやればいいの?」ということなんですが、基本的には、僕は市場環境と競争環境をしっかり見ていく、その中で客観的に分析をする、どうすればいいのか、どう参入すればいいのか、もしくはすでに参入している企業の場合だと、どう今の戦略を再構築、再参入していけばいいのかということを客観的に分析してもらう、これがすごく重要で。市場環境に関してはね、市場環境ってどういう項目ですかって、今、皆さん、ネットを叩いてもらって、ChatGPTにでも聞いてもらったら、バーッと出てくるので、いわゆるマクロ環境なんですよね。これは法律もそうだし、経済指標もそうだし、ここに消費者なんかも入れてしまっていいと思うんですよね、文化・習慣、あらゆる情報で。こういうものって多くが公開されているデータで、ある程度公開されているので、デスクリサーチで基本的には収集が可能。これらをデスクリサーチで収集をするということは、ほぼ費用の負担がないので、自社でできると思います。市場環境に関してはね。もちろん、リーガル面では少し具体的なことは、先生を活用するとかね、そういうシーンはあっても、基本的には市場環境というのは自前でできると。
一方で、やっぱり日本企業の情報収集で不得意なのが、不得意なのがっていうのが、あまりやれていないのが競争環境で、競合の競争力を数値で把握するということをしっかりやらないといけない。自分たちが100だった場合、これは別に競合を100としてもいいんですけど、100とした場合に、自分たちの競争力が80なの?70なの?50なの?30なの?というところを明確に把握しないと、戦略なんて立たないわけですよね。それが70か、50か、30かで戦略って大きく変わってくるわけなので。そこを見ずに、「いや、自分たちは独自の商品で、品質高いジャパンプレミアムなので関係ないです」みたいな感じで、とにかくプレミアムジャパンで出て行くわけですよね。それで、出て行ったはいいものの、「あれれれ? かつてのようにプレミアムジャパンのプレゼンスが通用しないぞ」ということに気付き、そこからどんどんスローダウンしていくという。こんな失敗事例はもうごまんと転がっていて、多くの企業がそうなっているわけですよね。であれば、具体的に主要競合がどんな戦略でどういうふうに出ていて、特に4Pで考えていくとね、プロダクトとプライスとプロモーションみたいなところは置いておい…、置いておいてはいけないんだけど、仮に置いておいたとしてもね、チャネル、プレイスの販売チャネルが著しく日本企業は劣っていて。結局、プロダクトとプライスが前輪駆動で、プレイスとプロモーションが後輪駆動だとすると、これって前輪・後輪が、4つが最適化されて初めて商品ってまっすぐ前に売れていくわけですよね。そこか1つのタイヤだけ、プロダクトだけが品質いいのでと言ってグワーッと高速に回転していたら、これは左回転してしまうわけですよね。そうではなくて、バランスが重要であるという。こういうバランスが競合はどういうふうに保たれているのかということをしっかり見ていかないといけないし、そういうことがやっぱりだいぶ疎かになってしまっていて。じゃあ、こんなに儲かる市場であるという市場環境が分かって、競争環境がこうであるということが分かったときに、そこに自分たちが出た際にね、どんなことが起こり得るんだろうというのが分析ですよね、客観的な分析。情報はファクトを集めることがすごく重要で、真実がどこにあるのかということに常にフォーカスのポイントを置く必要があると。一方で、じゃあ、その情報をもとに分析をするときには客観性というのがめちゃめちゃ重要で、こういう方向に導きたいというね、バイアスがどうしても自分たちで分析するとかかってしまうんですよね。「いやいや、こうだということは分かっているんだけども、こっちだよね」というね、方向性がずれてくるというね。そういうことも考えると、やっぱり専門家に客観的に分析をしてもらうということはすごく重要だし、分析というのは客観性がないと何の意味もないですよというのが1つ大きくありますと。
B2B、B2C。B2Cはね、消費者の調査というのが出てきますけど、でも、消費者の調査は、結構、日本でも慣れているのでよくやるんですけど、消費者を見るということはもちろん重要なんだけども、やっぱり真実って消費者の口からは絶対に出てこないので、その消費者を見ることで自分からインサイトをひっぱり出してくると、その仮説の確証を取っていくということをやっていく行為なので、消費者が真実を知っているとかね、流通が真実を知っているなんていうことはね、B2Cの世界ではまずないので。われわれも消費者調査やりますけど、それはあくまで彼らの潜在的な意識の中に眠っているものを僕は見たいので消費者調査をやるというだけで。「おそらくここなんじゃないかな」ということが分かったときに、その裏をしっかり調査で取っていくというね、そんなことをやるわけですよね。
調査はね、調査設計がすべてなので、今、自分たちがどういう課題に直面していて、その課題をクリアするためにはどんな調査をやっていくべきなのかというね、こういったことがしっかりとやっぱり提案できるコンサルタント、マーケター。別に私のことを言っているわけではないですよ。セールストークじゃないですからね、このエピソード。本当に調査をしてほしいという気持ちで言っていますので、くれぐれも誤解のないように。なので、そういう方をしっかりと見つけてやっていく。何でもかんでもお金をかければいいという話でもないので、やっぱり最低限のコストで、うまく少しずつやっていくということも重要になりますというお話でございます。
なので、調査の重要性について、これぐらいにしておきたいと思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。