森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、ディストリビューターとの契約条件のポイントについてお話をしたいと思います。FMCG、食品・飲料・菓子・日用品が対象ですし、それだけじゃなくてB2Bの製造業もね、今日の話は対象かなというふうに思うんですが…。
いろんな日本の製造業さんの海外のアジア新興国市場のディストリビューターとのディストリビューション契約を私はレビューすることがあって、過去たぶん何百という契約書のレビューをしてまいりました。その中で非常に強く感じるのは、日本のディストリビューション契約は、守りは完璧なんだけども、攻めが弱いという、そういう傾向が非常に強くて。たぶんこれって、契約書そのものは法務部がつくっているわけですよね。法務部の最大のポイントというか、仕事は、いかにリスクを排除するかということの視点でしか契約書をつくってないわけですよね。一方で、じゃあ、その契約書を必要としている事業部門、これはもちろん守りの部分もそうなんだけども、攻めの部分を持ち合わせていて、どうやって数字を上げていくかということを考えながら、契約書にそれを盛り込んでいかないといけないと。ただ、「うちのディストリビューション契約は長年これで決まっているので」みたいなね、「なんとかこれでお願いできませんか。大きく書き換えをするとなると、またややこしい話になります」みたいなかたちで、結構そのひな形を通してしまっているというケースがあって。たぶん、「契約書を考えるのは自分たちの仕事じゃない」って、事業部の現場も思っているんだと思うんですよね。なので、結構、守り中心の契約書が結ばれていて。守り中心ってどういうことかって言うと、例えば契約期間が1年間の自動更新になっているとかね、あと、コミットメントがまったく設けられていないとか、もしくは緩やかなコミットメントでも構わないと思うんですけども、独占・非独占がうまく使えていないとか、だいたいこの3つが結構重要になるんですけど。
まず、単年度契約の良し悪しなんですけどね、これはこちら側というか、法務部側から、守り側から考えたときに、「単年度契約って何かあっても1年で切れるのでいいよね」と、「でも、自動更新ぐらいにはしておこうか、2カ月前ノーティスで」みたいな。何かあっても最悪1年で切れるというのは確かにメリットですと。ただ、物事にはアップサイドとダウンサイドがあって、確かにいいんだけども、一方で、じゃあ、その1年契約で結ぼうと言われているディストリビューターの立場に立ったときにね、1年で、2カ月前ノーティスなので、正味10カ月で、もしかしたら一緒にやらないという判断をされる可能性があると。そんな状況でね、ディストリビューターの多くは華僑ですと。華僑の一族企業のワンマン社長がね、何かダイナミックな投資をやる腹決めができるかっていうと、僕はね、なかなか難しいと思います。日本人の感覚だとね、1回契約したら、1年契約でも、「まあまあ一緒に頑張ってやっていきましょうよ、一応、かたちとしては1年更新だけども」と思っているのかもしれないけどもね。でも、やっぱりそれは日本の外に一歩出たら、契約書に書いてあることがすべてだし、それ以上でもそれ以下でもないので、1年契約と言われたら、そして2カ月前ノーティスだったら10カ月の中ででき得ることに対するやっぱり投資しかしてこないんですよね。これって非常にもったいないので。先進グローバル企業の契約書なんかを見ているとね、結構、2年契約、3年契約になっているんですよね。2年とか結構多いですよ。やっぱり何かやるのに2年ぐらいかかりますよね。2年契約をしっかりするということと。
あと、需要予測をメーカー側がしっかり立てて、それをディストリビューターとしっかり議論した上で「最低これはできるよね」と、「最大でもここぐらいだね」と、「まあまあ頑張ればこの辺いけるよね」みたいな、数値的な合意をやっぱり契約前にしっかり取っているんですよね。その「最低ここはできるよね」というところをコミットメントの条件として設けて、それができなかったらペナルティだということはしないけども、2年契約を単年契約に切り替えますと、切り替える権利がこちらにあるとかね、3年契約をしているけども、初年度これぐらいのコミット、次年度これぐらいのコミット、3年度これぐらいのコミット。だって、これは両社でマーケットをしっかり見て、これぐらいはできるねとお互い協議をして決めた数字なんだから約束してくださいねということで、それをちゃんと契約書に盛り込んで、それが達成できなければ、契約解除とは言わないけども、もしかすると他のディストリビューターに切り替える可能性もあるので単年度で終了する可能性もあるという含みを持たせる。こうすると、結局、頑張れば継続できるので、向こうも投資するわけですよね。単年度でやるよりもよっぽどやる気が出るし、あと、契約前に両社でしっかり市場を可視化して、どれぐらいの想定なのかという、その想定数値を緻密に出すので、自分たちとしても神頼みにならないと。マーケティングってもう、確率論をどれだけ上げられるかという話なので、それをしっかり両社でやる。意識もその時点で変わるんですよね。
契約を締結したあとにそういうことをやるのではなくて、基本的には前にやるべきことを結構あとにやってしまっているという日本のメーカーは多くて。契約締結前にやると。こういうことをやっていると、細かいことをやるのなら嫌だと言って途中で離脱するディストリビューターも結構いるんですよ。そんなところはラッキーと、契約締結前にそれが分かって良かったぐらいの話だと思うので、そこまでやっぱり真剣にね、この事業を一緒にやっていくんだと、自分たちの将来の飯のタネにするんだと、ディストリビューターの社長オーナー自体が腹決めしなかったら、やっぱりなかなか新しい商品をディストリビュートするなんていうのは難しいので、そういうことをしっかりやっていかないといけない。
なので、単年度の契約とか、独占…、独占の話もそうですよね。独占・非独占。これも独占をあたえたらいいんですよ。基本的にできもしないエリアとかね、できもしない顧客に独占を与える必要はなくて、自分たちができ得るエリア、これはもう合理的にでき得るエリア。だって、自分たちがハノイの、例えばベトナムでね、ハノイに何の営業マンもいないのに、できないんだから、そんなところの独占を与える必要はなくて、ホーチミンに強いんだったら、ホーチミンをまずやってくれと。ホーチミン全部じゃなくても、1区に強いんだったら、1区をまずやってくれとかね、5区をやってくれとか、そういう話ですよね。一方で、顧客もね、今、取り引きがないお客さんと取り引きが始まるのっていつの話よと、来月は始まらないし、今年始められるかどうか分からないわけなので。今、お取り引きのあるお客さん、そこに対して独占を与えるとか、他の商品でね。なので、闇雲に与えるのではないけども、僕は独占はバンバン与えたらいいと思う。結構、別に事実上独占でやると、こことしばらくやっていくんだけど、何かあったら困るから非独占にしておくみたいなね、こんな意味のないことはやらないほうがいい。こんな意味のないことをやりつつ、相手のやる気をそいでしまうので、独占、普通に渡したらいい。ただ、渡す箇所は彼らの得意な領域・エリアに限定するということと、やっぱりさっき言った、最低のコミットメントの数字ができなかったら独占とか継続契約が2年3年というのは単年に切り替える権利をこちら側が持ちますと。独占を非独占に切り替える権利をこちら側が持ちますと。だから、独占に切り替えますというのではなくてね、単年に切り替えますというのではなくて、切り替える権利をこっちが持っていると。こういう契約にするだけで全然ディストリビューターのやる気というのは変わるし。
でね、ディストリビューターもね、相手を見ていますから、もう舐められたら終わりなんですよね。ディストリビューターを発掘選定して、そこから契約交渉に行く中でね、どういうプロセスを通じて、この企業は、このメーカーは契約をし得るのだろうかっていうことを向こうは測ってますから。彼らの過去に取り扱っている商品とか、現在取り扱っているブランドを見てもらったら、欧米の先進グローバル企業、いろいろいますよね、そういう、ディストリビューターによってね。そうすると、彼らの基準値ぐらいのレベルで、やっぱり契約交渉しなかったらね、「ああ、人のいい日本企業来た。これはもうペロペロだ」って舐められて、なんかイニシアティブ取られて始まってしまうみたいな、そんなことにもなるので。やっぱりちゃんとそこを測っていくということは重要ですし、自社でそれが難しければ、われわれのような専門家をつけてやるということも1つ大切なことかなというふうに思います。
最後、宣伝みたいになってしまいましたけども、今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。