森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、グランドデザインについてお話をしていきたいなと思います。対象は、いつも通り、消費財メーカーが中心になります。それ以外の製造業の方は、皆さんの事業に置き換えて聞いていただければと思います。
先進グローバル企業、消費財メーカーの世界的にシェアの高いような企業さんと低い企業ね、低い消費財メーカー、もう絶対的な違いって何?って言ったら、やっぱり僕は3つあるんだけども、1つがグランドデザイン。もう1つがリファレンス・バリュー、僕がよく言う基準値というやつですよね。3つ目がスピード&ダイバーシティという、こんなふうな話をよく私は講演でしているんですけど。その中でも一番最初に来るのが、一番最初に来るのが…、本来来なきゃいけないもの、一番シェア拡大とか足元の数字に直結するのはもうリファレンス・バリューなんですよね。基準値。この話はこの話でまた別途やりますけど。うちの仕事もここに関わる仕事がやっぱりもうほとんどなので。でも、今日はね、グランドデザインについてちょっとお話をしていきたいんだけども。
「グランドデザインって何?」って言うと、いわゆる事業構想の話ですよね。シェアを広げて、また先を見据えた、広くて遠くまで見据えた事業構想のお話で、自分たちのアジア新興国事業、どうしていきますかっていう一番最初のね、この全体設計とも言うのかなと思うんですよね。例えばなんですけど、「ベトナム頑張る」みたいなね。「いやいや、その、そもそもその手前になぜベトナムなの?」っていうのがたぶんあって、「ASEANの中でもなぜベトナム? じゃあ、アジア新興国の中でもなぜASEAN?」みたいなところがあって。すごくこの広い視野から、地球全体を見た視野からギュッとベトナム、例えばベトナムね、そういうものがまったくなくて。ひどい会社だと、「たまたま良いパートナーとベトナムで出会って、ベトナム事業から始めました」みたいな。でも、ASEANで言ったら、ベトナムとか、インドネシアとか、フィリピンってね、消費財メーカーにとっては伝統小売が必ず出てくる話だし、近代小売だけで言ったら、タイのほうが圧倒的に近代小売で儲けることができる、売上をつくることができる、利益をつくることができる。にもかかわらず、「なぜベトナムなの?」という、ここ、ここのそもそもの要因が、「いや、非常に良いパートナーがいるので」みたいなね、「えっ、そんなことでベトナムなんですか?」みたいなね、こういうのは結構多いんですよね。事業規模が小さくなればなるほどね、企業規模が小さくなればなるほど、そういう展開をしてしまっている企業というのは非常に多くて。
やっぱりね、常に全体構想を見ていかないといけない。大手でもそうなんですけど、じゃあ、仮にね、ベトナム、大変なベトナムに駐在員を送り込んで、属人的に20年かけてやっとの思いで勝ったんだけども、20年後に気づいたときにはね、ASEANの周り全部固められていたら、結局20年かけて苦労してベトナム獲ったのに、ベトナムもそのうち数の原理で浸食されてしまう、こういう話ですよね。極端な例で言うと、ASEANはもう全域で見ているというね、単体の国で見てないという、先進的なグローバル企業、シェアの高い企業。もっと言うと、ASEANはもちろん重要なんだけど、やっぱり中国とインド、圧倒的な13億、14億の人口を抱えるね、圧倒的な巨大市場負けたら、ASEANでどんなに勝ったって、もう取り戻せないと、これは分かっているので、やっぱり投資配分がしっかり計算されている、こういうことも1つですよね。こういうことを含めて描く構想をグランドデザインというふうに言うんですよね。それがやっぱりできていなくて。本来はグランドデザインを描く部門とかがしっかりあって、そこでしっかり描いた上で、わが社の世界戦略、アジア新興国…、世界戦略はこうだと、その中でもアジア新興国に関してはこうあって、だから、今、向こう何年はこの国なんだとかね、そういう方針があってベトナムをやる。要はベトナムをやっている人が、どういう全体方針の上で、今、自分はベトナムをやっているのかっていうことがね、「いや、自分、ベトナム駐在命令出たんでやってます」みたいなね。
特にわれわれは、目の前のことをおすごくコツコツやっていくことに長けている民族だと思うんですよね。一方で、この全体を見る視点が非常に薄くて。薄くてというのは、少なくて。見てないと言ったほうがいいのかな。個人のレベルで言うと、僕はグランドデザインというのは企業がね、カチッとしたものをつくり上げるような全体構想というふうに定義していますけど、一方で個人が描く、パッとね、瞬間的にイメージ的に頭に描くのってビッグピクチャーと言っていて。やっぱり明らかにわれわれはビッグピクチャーを見るのが下手なんですよね。デカい絵をパッとまず頭に想像して、そこから今いる状況をギュッと絞った上で逆算して、どうやって、じゃあ、そこに到達するのかっていうね。でも、これは結構、訓練なんですよね。指示型でずっと目の前のことだけ、指示されたことだけやっていると、ビッグピクチャー、なかなか見る力なくなっていってしまうけども、でも、やっぱり会社でもそうだと思うんですけど、出世している人ってビッグピクチャーを見れる人だと思うんですよね。目の前のことをやれる能力ももちろん重要なんだけども、ビッグピクチャーを見た上で目の前のことをやっているのか、それともビッグピクチャーなんていう概念まったくなくて、ただひたすら目の前のことをやっているのかと。目の前のことを20年30年やってきたんだけど、パッて気づいたら、「あれ? 違った」みたいなことってやっぱりあるわけで。人も企業も同じですよね。グローバル戦略とか、アジア新興国市場のお話もそうで、やっぱり常にビッグピクチャーを見る、ビッグピクチャーを見た中で、今、何をすべきなのか、今、私はなぜこれをやっているのかということがね、やっぱりしっかりできているというね。これは思考の訓練なので、個人レベルで言ったら思考の訓練なので、やっぱり常にビッグピクチャーを見るという訓練をするべきだし。
企業で言ったら、やっぱりグランドデザインを描いて、もしかするとグランドデザインをしっかり描けていたらね、グランドデザインって僕はね、市場環境と競争環境を常に地球規模で見るということはすごく重要だと思っているんだけども。そうしていくと、もうこの国、この地域ではたぶん0から自分たちでやっていっても無理なので、もう買収しかないよねと。10年後、おそらくこのA社B社のシェアがここまでなっていって、さらにこの超えなきゃいけない壁が高くなるので、やっぱり今、ここの3番手4番手を買収して、この1番手にここまで近づこうとかっていうことをたぶん描いていかないといけない。戦略の質がもう全然変わってきてしまうんですよね。チャネルつくって云々とかっていう話じゃないかもしれない。自力でどうのという話じゃないかもしれない。なので、そういうことも含めて考えていくということがすごく重要になってくるというお話でございます。
もう1回ぐらいね、ちょっとこのグランドデザインの話はするかもしれません、次回。今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。