森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺一樹です。今日も、FMCG、食品・飲料・菓子・日用品等を中心としたB2Cの製造業向けのお話です。対象はアジア新興国全般ということになります。
今日のお話なんですが、消費財メーカーのグローバル展開、海外展開って2つのパターンが大きく考えられて、1つが新規で行くケースですよね。まだまったく何もやっていないところに新規で展開をする、進出をする。この多くはいきなり進出をするというよりかはまず輸出で始めてというケースが多いのかなというふうに思います。弊社の場合は3割ぐらいがたぶんそういうケースかなと思います。一方で、すでに出ていますと。すでに出ているんだけども、なかなかうまくいかない課題がたくさんありますと。今の状態を打破をしていきたいというのが2つ目のケースですね。これがうちの場合だとご相談の割合としては7割ぐらいかなというふうに思います。企業はね、もう全部、輸出でやっていますという企業もまあまあいるんだけども、輸出ってやっぱりある程度天井があるので、1カ国あたり消費財メーカーでおよそ20億ぐらいが天井かなと思うんですよね、例えばASEANとかだとね。そうすると、やっぱり現産・現販とか、ASEAN地域の生産拠点をここに持って、ここからASEAN全体を見ていくとかっていうことに切り替わっていくので、輸出型から現産・現販型、現地生産・現地販売型に切り替わっていくわけですよね。ただ、はっきりね、輸出です、今、輸出のステージです、現産・現販のステージですって企業によって分かれているかというと、国によってまちまちで、この国は現産・現販だけど、この国はまだ輸出でやっていますみたいな、こういうハイブリッドでやっている企業がほとんどかなというふうに思っています。その中で、それぞれにおいて、どういう課題があって、どういうことをするとやっぱり失敗をするケースが多くて、逆にどうすれば成功の確率が上がるのか、みたいな話をちょっとしていきたいと思うんですが、たぶん今回のエピソードで終わらないので、何回かに分けてお話をしていければなというふうに思います。私も今、何か見てお話をしているというよりかは、自分の頭を整理しながらお話をするので、すみません、ちょっとまとまりのない話をしてしまったら申し訳ないのですが、ちゃんとスッキリ話せるように努めたいと思います。
まず、輸出型。輸出型で展開をするという場合は、基本的なフィジビリティスタディにおいてね、まず基本的なところから言うと、外資規制をクリアしていないとそもそも輸出入が困難だったりとか、FDAの認可を取らないと食品なんかは輸出ができなかったりとか、そういういわゆる規制法規みたいな部分はちょっと置いておいたとしてね、マーケットだけを見ていったときに、マーケティングの観点でマーケットだけを見ていったときに、まず、どの国からやるかというのがすごく僕は重要で。いわゆるこれって戦う場所なんですよね。どこで戦いますかっていうことがすごく重要で、なぜならば国よって難易度が全然違うから。それは商品もそうだし、自社の投下できる経営資源とかっていうことも関連してくるんだけど。まず、マーケット、これは基本的にやりやすい国・やりにくい国っていうのはもう可視化されていて。例えばなんですけどね、極論なんだけども、「ベトナムで成功もしていないのになぜカンボジアをやるの?」とか、「なぜミャンマーに行くの?」とか、「タイでまだやれていないのに、先にベトナムに行きますか?」とか、ベトナムに生産工場があればいいですけども、マーケットだけを純粋に見たときに、どこが一番儲かりそうかということを判断していく国選びがやっぱりすごく重要で。企業の中にはね、「いや、ベトナムはちょっとたまたまいいパートナーと出会えたので、ベトナムから始めました」って言うんだけども、これって誰と組むかということが、どこで戦うかよりも優先されてしまっていて、これって万に一つ組んだ相手が良ければ成功するかもしれないけど、原理原則から言ったら、やっぱりどこで戦うかのほうが圧倒的に重要度が高いので。全部を「いっせいいのせ」でやれるんだったらね、それだけの経営資源を投下できるんだったら、それでいいと思うんですけど。でも、輸出って、やっぱりある程度経営資源を絞ってやらないと、それなりに大変だ。輸出なのでね、あくまでキャッシュ・イン・ファーストでモノがあとに出るので資金リスクはないわけですよね。ただ、じゃあ、昔みたいにね、よく分からない、どこでどう売られているかよく分からない、誰が買ってどう持っているかもよく分からない、自分たちの商品がどの港からどういう中間流通業者を通じて、2次店3次店を通じて、どの小売に、どういうふうに並べられて、誰が買って、それをどう思ってリピートしているのか。価格の統制が取れているのか、取れていないのか、価格でブランディングが変わってきてしまうわけですよね。どう陳列されているのか。そういうことを一切無視した輸出って、並行輸入と変わらないので、それだったら国内の問屋さんにお願いして平行輸入しておけば?という話になってしまうと思うんですよね。なので、お願いせずとも自然に平行輸入させておけば?という話になってしまうので。やっぱり輸出でやる場合でも、われわれが提唱している、輸出型のチャネルビジネス、しっかりチャネルを理解して、どういう中間流通を通じて、どういう小売に、どう並べられて、誰がそれを手に取って、買ってどう思っているのか、価格の適正はどうなんだということを全部メーカー側が把握した上で商売をする、そういうことがやっぱりすごく重要になってくるので。どこから始めるかというのがやっぱり非常に重要なので、地図を広げたときにね、その優先順位をまず決めるということがすごく重要ですよね。
国が決まったら、多くの場合、輸出はね、もう首都狙いなんですよね。例えばタイからというのではなくて、バンコクをやると。マレーシアをやるのではなくて、クアラルンプールとジョホールをやる。ベトナムをやるのではなくて、ホーチミンとハノイをやるんだと、やってもダナンまでだ。ということなので、基本的には首都を狙っていく。じゃあ、もう一階層ブレークダウンしていったときにね、例えばフィリピンを選んだと。フィリピンもまずはメトロマニラをやるんですと。じゃあ、メトロマニラの次の階層って何かと言ったら、基本的に伝統小売を輸出でやるというのは先に考える必要はないので、まずは近代小売ですよね。近代小売を考えたときに、じゃあ、どこの近代小売からやりますかと、ここが結構、重要で。日系の小売とかね、日系の息のかかった小売とかをやる、そこだけやるみたいな話だと、どう計算してもコンテナで商品出ないですよね。パレット何個か流しましたみたいな、年間売れたのこれぐらいですみたいな、それってそもそも自社でやることですか、その量だったら並行輸入で流れておけばいいじゃないみたいな、やらなくてもいいんじゃないですかというような物量しか流れないケースというのがやっぱり多いので。そこの計算を先にせずに、なんかやってみたっていう中途半端な状態が結構多くて、「なんか、売上が何千万ぐらいあるんです」みたいな、「何千万、フィリピンで売り上がっていて、ちょっとどうするんですか」みたいなね、そういう状況に、やっぱりグローバルバージンで輸出ビジネスを先に、輸出をやるとね、最初はそういうところに行き着いているというケースって結構多くて、それで弊社にご相談に来るというケースが多くて。
やっぱり日販・週販どれだけ売れないと自分たちが想定している売上、利益にならないのかということをしっかり考える必要があるし、日系の小売ね、いや、それはイオンやドンキで確実に売っていくということは非常に重要だし。もっと小さいところがあるわけですよ、日系のドラッグストアとかね。そこで並んで、週販1個どころか、月に何個しか出ませんみたいな状態のことをやって何になるんですかということになってしまうので、やっぱり自分たちが狙うべきローカルの小売はどこなの? 例えばフィリピンで言ったらね、新しいマーケットのものだし、日本の定価よりもやっぱり輸出でやっているので高くなりますと。そうすると、新しいものを積極的に取り入れる小売ってどこかなと、マーケットがこれから欲していくようなもの、もしくは消費者に新しい価値を提供できる近代小売ってどこかなって考えていったときに、まず、フィリピンの場合は、大手3大小売が牛耳っているわけですよね、市場をね、SMとピュアゴールドとロビンソンズと。そう考えたときに、まずピュアゴールドじゃないよねと。ピュアゴールドはもっと人々の生活者、中間層以下の人たちの生活にもう少し寄り添った、どちらかと言うと、新しいものを積極的に取り入れるのは、ピュアゴールドというよりかは、ロビンソンズというよりかは、SMじゃないかなと。SMの中でもこの店舗形態の、この地域の、この店舗とこの店舗とこの店舗とかね、それぐらいで特定していく。あと、店舗数は少ないけど、やっぱりランドマークじゃないかなと。ランドマークでしっかり配荷するということは非常に重要だよねと。例えばですよ、そういうことを可視化をしていくと、どこで自分たちは売らないといけないのか。じゃあ、その店舗数と棚の場所、SKU数でだいたいの日販・週販というのは想定できているので、そうすると、週販どれぐらい売れるかなというのはだいたい推計ができると。そこに対してやっぱり導入期はこういうBTLを展開して、こういうことをやろうと。そうすると、これぐらいは維持できるので棚落ちは防げるなとか。そこまでいったら今度少し店舗をこういうふうに増やしていこうと、段階的に計画を立てていかないといけないんですよね。そのボタンを1個1個押していくと。ただ、なんかよく分からないんだけど、置いてくれるところから置き始めました。うまくいくといいなって希望的観測でやり始めた。でも、途中でやっぱり「なかなかうまくいかないんですよね」って、それはうまくいかないよねということになってしまうので。全部が逆算で計画立ててやっていくということがね、すごく重要になって、輸出の場合は結構そういうケースが多い。
ちょっとだいぶ話が長くなってしまったので、今日はこれぐらいにしておきます。またちょっと次回続きをお話できたらなというふうに思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。