森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、また前回から続いているんだけども、前回、前々回と輸出でやる場合のポイント、どういう部分で多くの企業が失敗をするのか、また、一番重要な軸となる部分でね、間違ってはいけない部分の考え方ってこうですよというお話を2回に分けてやってきたわけですけども、今度はね、現産・現販をしているようなケースのお話をしていきたいなと思います。現地法人があってという状況で、対象は消費財、FMCG、食品・飲料・菓子・日用品のB2Cのプロダクトのメーカーのケースでお話をしていきたいなというふうに思います。
私がこの25年近くの中で受けてくるご相談の多くは、10年やっていますと、15年やっていますと、ただ、なかなかここに来て伸びないんですと。ディストリビューターとの関係は輸出のときからも入れると20年、30年ですみたいなね、そういう企業も結構多くて。やっぱり新興国なので、近代小売の棚取りがとか、何とかが、ということもそうなんだけども、どちらかと言うとやっぱり近代小売は入っていますと、でも、伝統小売がなかなか入りきれてなくて、やってはいるんだけども入っては売れず、入っては売れず、なかなか伝統小売のペネトレーションが上がっていかないみたいな。結構見ていくと、近代小売は問題ないんだけども、伝統小売に問題があるみたいなご相談のケースが多いんだけども、蓋を開いていくと、いや、近代小売にもまだまだ問題がありましたよというケースが結構多くて。これはどういうことかと言うと、入っていると思っていたんだけども、結局ディストリビューターに見せられていたのはしっかり陳列されている小売だけで、実はまだまだ3割4割改善できる近代小売ってありましたよというケースが結構あって。近代小売の改善の余地というのは実は結構あるというケースが多かったですね。
結局、近代小売で圧倒的な知名度、プレゼンスを発揮するから伝統小売で配荷が進むという構造になっているので、やっぱり近代小売は絶対に重要なんですよね。その上で、じゃあ、伝統小売を見ていくときに、やっぱり自分たちの目標とか自分たちが掲げているシェアを獲得するためには、どういう規模のディストリビューターを何社使って、そのディストリビューターの中にはどういう組織、どういう人員がどんな数いて、自分たちの商品を日々どういうふうに販売してくれているのか、セールスしてくれているのかというね、ここをもうガチガチに詰めていくということはすごく重要で。だって、これのアウトプット、アウトカムが、ストアカバレッジが伸びる、そこでのセルアウトが増えるということにつながっているわけですから、基本的にはここの粒度を見ていかないといけなくて。見るとね、いろんなステージの会社がいるんだけども、そもそもストラクチャーがね、チャネルのデザインがもうそもそも違うじゃないですかと、こんな1カ国1ディストリビューター制のこんなあれでどうやってこの売上とかこのシェアをやるんですかと。なぜ現地法人があるのに、近代小売を直販していないんですか、ディストリビューターを使っているんですかとかね。なぜ5万店、10万店の伝統小売、ストアカバレッジを獲らなきゃいけないのに、こんなディストリビューターとしか付き合っていないんですかとか。もっと深くいくと、もっと進んでいる企業はね、じゃあ、ディストリビューターの数合わせは良かったけども、結局、中身が全然駄目じゃないですか。なぜ専属がいないんですかとか。なぜ競合が1日に25件回っているのに、御社は10件なんですかとか。あと、セールスのスキルセットがなぜこんなに違うんですかと、能力が大学生と小学生ぐらい違いますよとか。あと、自社の現地法人がいると自社のセールスの強化というのもすごく重要で。なぜ自社のセールスのレベルがこんなに低いんですかとか。なぜ自社のセールスの動き方がこんな間違った動き方になっているんですかとか。なぜスーパーバイザーと呼ばれる人たちが、これは競合のスーパーバイザーの定義ってここまでやれるスキルセットを持った人ですよ、なぜここまでしかできないんですかとか。そういうことを細かく見ていかないといけなくて。シェア5%、10%、15%やるためには、どんなディストリビューターを、どの地域に何社抱え、そのディストリビューターの中にはこういう組織、人員がいて、それがこういう活動を日々やっていますと、だから10%なんです、15%なんです、ということが明確に可視化できていないので、基準値が持ててないというケースがほとんどなんですよね。競合を100とした場合に自分たちはどれぐらいですかと言ったときにね、いや、競合よりできていないのは分かっている。ただ、それがね、60ぐらいはできていると思います。いやいや、30しかできていませんよ。だって、見てください、このチャネルと。多くの場合は、商品とかプライスとかっていうところはね、結構、目に見えるので頑張れているんですよね。なんだけども、目に見えないチャネル、目に見えにくいチャネル、ここの競争力で負けているから、プロモーションも空回りと。プロダクトとプライスが前輪だとすると、プレイスとプロモーション、チャネルとプロモは後輪ですと。この4つのタイヤが同じ速度で回っていくから前に進む。その速度を速くしていくと速く前に進む。つまりはシェアが上がるということになるわけですよね。なんだけども、このチャネルが圧倒的に弱いというのが日本の消費財メーカーの弱点で。チャネルとチャネルのぶつかり合いを新興国でやっているわけですよね。近代小売でどれだけのプレゼンスを発揮できるか。近代小売とどれだけ直接のコミュニケーションを取れるか。その力をどれだけ伝統小売に反映させられるか。ストアカバレッジをどれだけ伸ばせるか。最低5万、10万、15万の伝統小売をどう攻略できるかということが重要で。シェアの高い企業というのは、今申し上げたことがしっかり成り立っているわけですよね。それをやるためにはチャネルの中身なんですよ。これを自社の型にしていく、これがめちゃめちゃ重要なんですけど、ここの改善。
そのときに、やっぱりね、われわれも小さな会社ですから、ご支援できる数って限られていて、うちぐらいのところだとやっぱり年間25社とか、それぐらいかなと思うんですよね。毎年毎年ね、ご支援する会社は決まっていて、うちはほとんど10年以上お付き合いをしていて、そんなに新規でというのは結構少ないんですけど。そんな中で新たに新規の取り組みをするときに、やっぱり勝たせられないなと感じるところはお断りせざるを得なくて。当然、勝てないところをご支援したって、お客さんもうちも不幸になるだけなので。そうするとまず、モノをまず見ますよね。商品的にこれはどうだろうというところはやっぱり1つあるのかなと。例えば、例えばですけど、わさびでね、わさびで「100億やりたいんです」とかって言われたときにね、「いやー、寿司と刺身にしか使わないわさびをね、どうやって100億やるんだ」と、これは断りますよね。それはわさびを使ったローカル料理を何か開発して、わさびがタバスコのようなものになるみたいなね、何でもかんでもわさびをつけちゃうみたいな、そういうのが描けるのであれば全然いいんですけど、やっぱり和食屋さんがターゲットになるので、われわれを使うよりも、「わさびだったら日系食材専門問屋さんにお願いするのが一番いいでしょう」という話になってくるので。例えばですよ、そういうふうになるし。これは商品的に選定をする。われわれもプレリサーチをするのでね、お引き受けする前にね。これはどれぐらいいけるだろうかということを見越して、これぐらいいけるからわれわれにこれぐらいの費用を払っても、この会社は割に合うよね、ということを計算して引き受ける、引き受けないをやるわけですよね。
そうしたときに、もう1つね、製品以外に判断する軸があって、それはね、組織なんですよね。やっぱりね、ご支援しにくい組織ってやっぱりあって、これは社風なのかな、一緒に働いていて気持ちのいい会社と、気持ちの良くない会社というのはやっぱりあって。(笑)これって人ですよね。うちが今、お取り引きしている会社は本当に人に恵まれていて、なんていい人たちだろうって、感情が動かされるような、すごくいい人たちとお仕事できているので、お互い成果も上がるし、お互い仕事をしていても気持ちいいし。うちもね、未上場企業ですし、上場の予定もないし、うるさい株主もいないしね、やっぱり楽しい人たちと楽しい仕事をしたいという、そこはやっぱりあるのでね、そういうのは感じるかなと。何でもかんでも、「うわー、獲るぞ」という会社じゃ残念ながらなくて。そんなことは感じますかね。そのときに本社と現法との微妙な空気感みたいなね、やっぱり現法はあくまで現地法人なので、本社の言うことを聞かないといけないんだけども、現法の抵抗が強いというケースが結構あって。でもね、これはお手伝いできないんですよね。言ったら、いろんなことをやっていくんだけども、「いや、それもやりました。これもやりました。あれもやりました。でも、駄目だったんです。だから、それをやってもきっと駄目です」みたいな、こういう抵抗なんですよ、総じて言うと。でもね、そんなまったくやったことのない新たな方法がどこかからパッと出てきてね、それをやったら一気に成功するなんていうことはほぼないんですよ、そんなことは。それをやるんだったら相当な経営資源の投下をしないといけないし。むしろ、そんな状態にはいない。それは成熟したステージでやるべき判断なので、ほとんどはやるべきことを正しくやれていないから結果が出ていないということになっているんですよね。これがね、結構、現産・現販のステージにいる企業の大きな闇だと僕は思っていてね。決して現法を否定するつもりではなくてね、現法でも素直にそれをロジカルに考えて進めていけるケースもあれば、そうじゃないケースもあるので。ただ、やっぱり日本の企業は賢いのでね、皆さん優秀、優秀なわけですよ、基本的にね。そうすると、まったくあさっての方向のことをやってきたかと言うと、そうではなくて、正しい方向のことをやってきたんだけども、でも、やりきれていないというね、そこと、あと、正しくやれていないという、単純にそこだけだったというのがね、僕が今までやってきていてすごく思うので。それをもう一度整理して、正しい方法でやっていきましょうと。ただ、すでにそれを試した人はね、やっぱり自分がやってきたことが間違っていたんじゃないかって否定されているようなね、こういう感情になってしまうんですよね。それをそうではないですよというかたちでしっかりやれる社風というか、組織、これはすごく成功しやすいなという気がします、今まで見てきていても。でも、そうではない組織の場合だと、やっぱり第一陣がやってきたことを第二陣が否定して、駐在第二陣がやったことを第三陣が否定して、そしていつしかどこに向かっているのかよく分からない状態になってしまっているけども、「それもやった。これもやった。あれもやった。でも、駄目だったんだ」みたいなところに陥っていると、結構、本当にガラガラポンで人を替えるぐらいの、もしくはかなりハイランキングのオフィサー、つまりは海外担当役員とか社長の号令で一気にやっていくんだという方針を打ち出さないと、結構、社外からこちょこちょいじっても、やっぱり難しいケースがあるので、なかなかそういう案件はタッチしにくいなというのはありましたかね。なので、プロダクト的なものと、それから社風的なもの、これはやっぱり相反するものなんだけども、成功を掴み取る上では、結構、現産・現販のステージにおいては僕は重要な要素だったなというふうに思います。
大幅に時間をオーバーしてしまいました。今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。