東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、前回に引き続きアメリカ出張の手ごたえとやらを、ぜひ皆さんにお聞かせいただきたいんですけど、どうですか。
森辺:いろいろイベントがあって、パーティーがあったんですね、60~70人ぐらいのパーティーがあって、ほとんどアメリカ人と。そんな中で、アメリカ人が作った食事と、一般的なパーティって呼ばれる食事と、日本人が作った食事が並んだときにね、日本人が作ったハンバーグとか和風ハンバーグとかね、あと春巻きとか、ちょっとしたロールもの、お寿司系の。そういうものはね、すぐなくなっちゃったんですね。和風の鶏の唐揚みたいな。
東:日本で普通に出されるような料理という、鶏の唐揚とかハンバーグとか。
森辺:そういうものがすぐになくなってしまって。僕は14歳の時から大学入るまでアメリカンスクールだったんですけど、その時に思ってたのが、僕の味覚のセンサーが10あるとしたら、アメリカ人の味覚のセンサーは5ぐらいだろうなっていう、そういう印象があったんですよ。
東:それを置き換えれば、日本人の舌のセンサーってのが10個あったとしたら、アメリカ人の舌のセンサーってその半分の5個くらいしかないんじゃないのって思ってたってことですね。
森辺:そうすると、僕がうまい、珍味って感じるものを彼らはそう感じないわけですよね。ハンバーガーとかピザとかね、なんかそういう感じ。すごく、これだけ違うんだなと。これは幼少時に慣れ親しんだものを好むという次元ではなくて、舌の機能としての機能性が違うんだという理解だったんですよ。けど今回思ったのがね、アメリカ人の舌のセンサーが7か8ぐらいに増えてるんですよね。それはすごく実感をして。
東:それはどういうところで実感を
森辺:いわゆるパーティーで日本食がすぐなくなってしまって、食べてるのはアメリカ人とかね。
東:昔だったら、アメリカ人が好むそういったアメリカ食と、日本料理が並んでたら、昔のアメリカ人だったらどんな感じ、
森辺:なにこれっていう感じですよね。また、アメリカ人にもいろいろいるんでね、その一概に言えないけども。一般的には、うわなにこれ、気持ちわるっていう。まだいますよ、いっぱい、そういうのは。真ん中の方行けばね。なんですけど、カリフォルニアだったってのもあるんですけど、でも明らかに変わってきていて。もう一つ、日本料理屋さんというか、アメリカ人が経営してる日本料理屋みたいなのもあるんですけどね、普通にうまいんですよ。シェフは日本人なんでしょうけど。ちょっとフュージョン料理っていうんですかね、だからアメリカ人テイストに変わってるんですけど、創作料理系。けどこれ普通においしいじゃんっていうね。
東:どういうものが出てくるんですかね。
森辺:なんて言うんだろう。お寿司なんだけど、いわゆる10年くらい前に言われてた、日本人が「うえー」っていうカリフォルニアロールじゃなくて、もっと近代化された、先進的なカリフォルニアロールで、柚子胡椒使ってたりだとか、鶏の竜田揚げみたいなのでも、ちょっと洋風な感じになってたりだとか、
東:ひとひねりあるんですね。
森辺:そう、それがすごくおいしかったんですよね。だからセンサーが増えてるんだなーってのは感じたんですよね。
東:そうするとその、センサーが増えてることがたとえば日本企業の、特に食品メーカーになると思うんですけど、そういう嗜好が変わってきてるってことはチャンスなのか、そうじゃないのかってのはどうなんですかね。
森辺:僕はね、大きいチャンスだと思っていて。結局、日本の食品メーカーさんって、めちゃめちゃドメスティックじゃないですか。アメリカどうせだめだからアジアみたいなね。そういう発想の会社さんってものすごいたくさんいて。アメリカには競合がたくさんいるし、あんな先進的な国難しいだろうなと。だからアジアだって言ってて。そういう会社ってアジアでもダメなんですよね。アメリカとアジアを相対比較した上でどっちかって決めていかないといけないし、本当にアメリカはだめなのかなっていう仮説の検証もせずにアジアっていう。しかもアジアでも、なんか知らないけどタイとかね。なんかインドネシア騒いでるからインドネシアみたいな。そうじゃないよねっていうのが、すごく僕は重要なことだなと思ったんですよね。
東:そうすると、今アジアやってるけども、もう一度アメリカを検討しなおしても
森辺:それだけの可能性のあるでかい市場なわけですよ。まだ人口伸びてるわけですよ。いろんな評論家がね、タイとインドネシアとフィリピンとベトナムはね、所得や人口の比較をするけど、そこへ米国を一切入れないじゃないですか。けど米国って経済規模で言ったら日本の倍以上はあってね、超大国じゃないですか。その米国の市場をはなからやらないっていうのは、もしくはやっても日系マーケットだけっていうのはね、非常にもったいない気がしていて。アメリカ人もいろんなアメリカ人がいるから、層というかセグメンテーション、ターゲティングが非常に重要になりますけど、やっぱり日本企業にとって可能性のある場所じゃないかなっていう思いは非常に強く持ってますよね。
東:そうすると、そうは言ってもこれから、アメリカ何にも行ってないし、これからどう取り組めばいいんだろうみたいな。そりゃそうだよねって同感得られたとして、森辺さんだったら具体的に、アジアをやりつつアメリカをやるのか、もう一回仕切りなおすのか、具体的に市場規模とかその状態にもよるんでしょうけど。アメリカ市場をやるときに、大きいからどこから手を付けていいかわからないとか、相手にしてくれるかどうかとかっていうようないろんな疑問がみなさんにあると思うんですけど。まずこれをやったらどうだろうみたいな、っていうのはありますかね。
森辺:市場環境の可視化ですよね、本当にこの市場が儲かるのか儲からないのかっていうところの可視化をしないといけなくて、市場環境と競争環境の可視化、この2つをまず僕はやる。結局アジアもそうなんですけど、タイなのかインドネシアなのかベトナムなのかフィリピンなのかって決めるときに、この4つの国の市場環境と競争環境を可視化しないと、出るも出ないも判断できないじゃないですか。市場環境っていうのは、ほんとに儲かる市場かどうかってのを判断するものですよね。競争環境の可視化ってのは、儲かる市場でも敵が多かったら、そこで流される血が増えるわけですよね。そのための対策を考えないといけないわけで。だからこの2つって切っても切れない関係なんですよね。この2つを同時並行でまずはやっていくってことが一番最初にやるべきことだと思いますけどね。
東:それをやるにあたって、こういう順序で、こんな形で、まずはやってみたいっていう人もいると思うんで、こういったとこを見たらいいよってところは具体的に、1点でも2点でもあげていただくと、聞いてる方が行動できると思うんですけれど。
森辺:たとえば、市場環境でいうと、今は食品とか日用品の業界で話をしてますけど、結局間口の数じゃないですか。どれだけその国に間口があって、その間口からしか商品って買われないわけですよね。消費者の数を見るっていう、非常にマクロな話もそうなんですけど、ちょっとミクロに落として、一体どれぐらいの間口があるのと。
たとえばベトナムの近代小売りの間口って、どんなに大きく見たって2000間口ぐらいしかないわけですよ。それに伝統小売の間口が50万店ぐらいあって。近代でいくら100%のシェア取ったって、伝統で取れなかったら市場シェアなんて取れないし儲からないってのがベトナムの市場なんですけどね。そうなってくると、アメリカ全土でやる必要ないんで、たとえばロサンゼルスだけでもどれぐらいの間口が一体あるのっていうことを、僕だったら一番最初に調べる。その間口に何個、一日で売れるかが、一日の売り上げじゃないですか。間口が10万あるんだったら、その10万間口で平均2個売れるんだったら、20万個が1日の売り上げですよね。そうすると推定市場規模、推定の自分たちの売り上げの規模みたいなのが出てくるんで、それをアジアと比較していくってことをやらないと。
どうせ海外展開って苦労するわけですよ。おんなじ苦労をするのに、効果がでかいほうがいいのか、少ないほうがいいのかって、絶対効果がでかいほうがいいに決まってるじゃないですか。なので、BRICsもそうなんですけどね、日本企業ってBRICsもちょっと避け気味じゃないですか。手の出しやすいASEAN+台湾韓国香港みたいなね。そうじゃないよねっていうのは強く申し上げたいなと。
東:そうするとちょっと話を戻して、ロサンゼルスでたとえば間口を算出するには、具体的にどうやったら。
森辺:近代小売りを全部リストアップして、そこの店舗数を数えたら、もうそれが間口数ですよね。そうするとロサンゼルスっていってもでかいですから、そのロサンゼルスの間口が地区別にどれぐらいあるのかっていうのが出てくると。
東:それが今、たとえば自社がやっている東南アジアと比べて、どっちの間口と単価が安いのか高いのかっていうのが比較できれば、どっちをやった方がいいんじゃないかっていうのが判断できる。
森辺:その次にやるべきことが、当然そんな魅力的な市場には自分たちの競争相手がいると。たとえばガムを売るっていうんだったら、ガムの競争相手がどことどことどこで、彼らのマーケットシェアっていうのはどうなのかっていうのを見ていくと、自分たちがどれぐらい頑張らないといけないのかっていうのは見えてくるわけですよね。でもね、食品と日用品に関しては入ってないなんてことはないんですよ、絶対に。飴が売ってない国なんてないし、シャンプー売ってない国なんてないし。どうせ競争相手と戦っていくわけですから。だから次のステップはそうなりますよね。
東:わかりました。じゃあ最後に森辺さんが今回アメリカ出張で感じたことをちょっとまとめていただくと、どんな感じになるんでしょうか。
森辺:とにかくでかいですよ、アメリカ。ほんとにASEANだけでいいのかってのは僕、真剣に考えております。今現状SPIDERとしても10%ぐらい欧米市場やってますが、やっぱりASEANは引き続き強化していくというか、アジアですよね。国で言ったらインドネシア、フィリピン、それからベトナム、中国、インドとタイ。ここは引き続き強化をしていくけども、僕は北米市場もちょっと力を入れてやっていきたいなという風に思っています。また皆さんにご報告できるような検証がありましたら、弊社の自社セミナーなんかで発表させていただければなと思いますんで、来ていただければと思います。
東:わかりました。じゃあ森辺さん今回ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。