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ポッドキャスト:森辺一樹のグローバル・マーケティング

【特別対談】グローバル・マーケティングの権威 大石 芳裕 名誉教授と語る – 販売チャネルは生き物であるからこそ、常に現場を”診る”ことが重要

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この放送の要点

  • 現場は「見る」ではなく、医師が診断するように「診る」もの。
  • 基準を組織的に整備してこそ診る目が育つ。回るだけでは本質はつかめない。
  • 営業は熱意の仕事だが、チャネルは物を流すパイプをどう作るかという構造の問題。
  • 伝統小売が8〜9割の市場では、棚をどれだけ取るかが競争の源泉になる。

明治大学・大石芳裕名誉教授との特別対談の最終回です。マーケティング、とりわけ販売チャネルは生き物であり、現場は「見る」のではなく医師が診断するように「診る」ことが求められます。伝統小売が8割を占めるアジア新興国市場では先進国で確立した手法は通用せず、チャネルをどう押さえるかが競争の源泉になります。

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDER INITIATIVEの森辺です。今日、最終回です。明治大学名誉教授 大石芳裕先生をゲストにお迎えして最終回の放送になります。
先生、どうぞよろしくお願いいたします。

大石芳裕先生(以下、大石):よろしくお願いします。

森辺:今日で4回目ですけども、先生といろんなお話をさせていただいて、今日、最後の集大成として、ちょっと3回の話を振り返って、先生、どんなふうにお感じになられているかなというふうに思いまして。

大石:まず、全体的にマーケティング、特にチャネルの問題は生き物だから常に変化しつつあるということで、そこで第3回のときに現場を“診る“ということの大切さをお互い強調したんですけども。ただ、僕が感じるのは、ものを見るときに、漢字で言うと、見学するの”見る“と、観客のいわゆる映画なんかを観る”観る“と、それからお医者さんが人の体を診る、診断するの”診る“があるような気がします。特にこういう現場を診るという、調査をするなり、それは診断をしなきゃいけない。そうすると、診断する側、診る側のやっぱりレベルが一定程度ないと、同じように現場をうろうろしたって見えないものがあるんですよね。

森辺:そうですね。

大石:だから、本当はそこに戦略というか、「ここをチェックするんだよ」というような基準がやっぱりちゃんとあって、「最低ここを見ていきましょうね」という話をやっていると、この経験でだんだん、だんだん、診る目ができてくるんだと思うんですよ。こういうこともやっぱり組織的につくっていかないと、現場を回っているだけでは分からないということが起こってくる、そういう気がしますね。

森辺:その通りですね。僕、日系の消費財メーカーさんでもね、例えば、この今、アジア新興国市場って、自分たちの販売チャネルの再構築の時期に本当に今もうラストチャンスなんじゃないかなと思っていて、4Pの中でプロダクトとかプライス、こういったものの改善も当然あるんだけども、チャネルを改善しないとプロモーションを打っても砂漠に水を撒くような話なので、チャネルが著しく遅れていて、極端な話を言うと、1カ国1代理店制度を理由なく続けている現状みたいなね、こういう状態になっていて、いやいや、二次店がたくさんあるんですと。でも、二次店の情報までつかめていなかったりとか。見えていないものが多過ぎて、今までいろんな現法、本社から依頼を受けることが多いんですけど、現法がわれわれ以上によく知っていたということに出会ったことがただの1度もないんですよね。結局、調査をして、それをご提示したときに、「あっ。これだったんだ、もやもやしていたのは」と。要は現法で日々活動していますからなんとなくは分かっているんですけど、それがクリアになるというんですかね、そういう調査はやっぱりすごく僕は重要で、そこからもう1回再構築していく、組み立てていくというプロセスが本当に日本企業は必要なんじゃないかなという。

大石:そういう点では、やっぱりマーケティングは科学とアートの、サイエンスとアートの混合物質だと言うけども、サイエンス部分が出てきて、やっぱりきちんとしたエビデンスの積み重ね、だからさっき言ったように、“診る”ときの基準があって、これにちゃんとチェックをしていくようなものがあって、このエビデンスをもって、じゃあ、この何か手を打たなくちゃと。やっぱり本質が分からないと、打つ手が分からない。いろんな打つ手はやるけども結果的にうまくいかないというのは、本質をちゃんと掴んでいないから、違ったところに力を注ぐことになっているという。

森辺:そうですね。極地の価値は得られるんだけど、優秀なのでね、日本企業は、全体で負けるみたいな、そういうのがやっぱり多くて。僕、なんか新興国市場の攻め方の時代って本当に変わってきたと思っていて、昔は、「いや、店に入っていないんだから行けよ」と、「店に行って押し込んでこい」というのである程度乗り切れた時代が、ちょっと前まで僕はあった気がするんですよね。でも、今ってそもそも店に入れるんだけども、入らないから入ってないわけじゃないですか。

大石:うん。

森辺:そうすると、それを遡って分解していくと、そもそも今組んでいる組織の在り方が間違っていたりとか。あと、組織の動かし方、マネジメントの仕組みがちょっとそもそも間違っている。もっと言うと、チャネルのストラクチャー全体が競合に比べたら、かなり劣っている、競争力で劣っているみたいな、ここから根本的に変えていかないと、「行けよ」で行っても押し込まないというか、もう良いディストリビューターにお願いして売れてしまう、シェアが伸びてしまう時代ではなくなってきてしまっているという、そんなふうな確信が。

大石:そうですね。これは従来から言われていることだけど、やはり先進国でやってきた、例えばマーケティングなり、チャネル戦略とかね、ある程度確立したようなところでやってきた経験が、やっぱり途上国の場合、まだTraditional Tradeが8割とか9割の国がまだたくさんあるわけですよね。そういうところでは全く違った考え方が必要で。これがさらにぐにゃぐにゃ、ぐにゃぐにゃ、動いているわけですから、なかなかそこの対応は難しいということはあるんですけども、やっぱりこれに対応しなければ途上国では勝てないという、そこはもう、答えはもうはっきりしているという。

森辺:そうですよね。複雑化してきているので、てこの効かせ方というか、知恵の働かせ方みたいのを少し考えて戦略を組まないといけない。そもそも日系企業は経営資源が足りないじゃないですか、競合の大手に比べたらね。なので、よりてこを効かせないと、たぶん勝てないので。

大石:そうですね。

森辺:そうなってくると、どこに勝ち筋があるんだろうみたいなことをしっかりと考えて進めないと、ただ「行け」っていうのだと、なかなか現場はやっぱり苦しいんじゃないかなっていう。

大石:それは違うと思いますよ。やっぱり営業とチャネルの基本的な違いは、営業はやっぱり人が頑張ってやる部分があるから、根性も必要だし、熱意も必要だ。でも、チャネルというのはやっぱりパイプですから、どうつくるかというね、ものを流すパイプをどうつくるかという戦略なんですね、構造なんですよね。

森辺:パズルみたいなものですよね。

大石:うんうん。だから、ここをやっぱりつくった上で営業さんが頑張るわけで、そのきちんとしたパイプづくりなりを考えないで、営業に「頑張れ、頑張れ」と言うのは、まさに人海戦術で昔やったやり方だろうという。

森辺:営業に頑張れか、ディストリビューターに頑張れと。

大石:はい。

森辺:でも、そうすると、第2回のこのエピソードで一緒にお話した、第2回で話したように、ディストリビューターにはディストリビューターの都合があるので、売りやすいものを売りやすいところに売るだけになってしまうということなので、やっぱり物事をしっかり可視化して自分と競合との差異を明確にして、そこからもう1度今のチャネルを生かしながら、どう再構築できるかにより早く着手できた企業だけが僕は生き残っていくんだろうなという気がしていて。

大石:そうですね。これは初回にも言ったように、途上国の企業が力をつけてきているから、製品の品質とかは非常に上がっているわけですよね。そうすると、何で差別化するかと。もちろんそれは広告も必要だろうし、ブランドも必要だしというのはあるんだけど、結局チャネルをどう押さえていくかで、棚にどれだけものが並ぶのかというのが大きなプロモーションにもなるし、決定的に重要になる。特にまだTTが8割9割のところの場合は、そこがもう競争の源になってきていると。

森辺:そうですよね。

大石:そういう段階に来ているんだと思いますね。

森辺:だから、勝ち負けがはっきりするというか、先生が前回でしたかね、大王製紙がインドネシア撤退したという話をしましたけど、撤退をした企業さんの事例を調べていくというようなことも結構ケーススタディとしてわれわれはやるんですけど、本当にこの負けはしょうがないねと、僅差のところまでいい勝負して負けたんだというよりかは、いや、そもそもこの問題にぶち当たるのは出る前から分かっていたはずだと、なのになぜ見切り発車して出ていって、結局だらだらとこんなに時間をかけて、増資増資を繰り返して、そのお金を全部溶かしきって撤退したんだという事例が本当に多いんですよ。それをね、2回3回繰り返すみたいな。3度目の正直って言うんだけども、それも正直になっていないという、それは3度目も同じ、気合いと根性で行くみたいなね。いや、そうじゃなくて、競争力を可視化して組み立てましょうと。組み立てたって難しいんだからというね、そこは本当に、こんなことをはっきり言ったら嫌われちゃうかもしれないですけども…。

大石:やっぱり過去の失敗のちゃんと総括をやって、今はまた時代が変わっていろいろ違うわけだからね。でも、総括をして反省の上に新しい戦略を考えなきゃいけない。このやっぱり、失敗は人間、企業、必ずするわけですよ。だから、再チャレンジするということは悪いことではないと思うんですがね。

森辺:そうですね。

大石:それをまた気合いと根性だけでやり抜くことは、もう今は無理だと思いますね。

森辺:そうですよね。いや、もうね、現場が本当にみんな困っている声はたくさん僕のところに届くので、現場の味方ということで、すみません、いろいろ生意気を申し上げましたが、これぐらいにしたいと思います。
先生、4回にわたって本当にありがとうございました。

大石:どうもありがとうございました。

森辺:また機会がありましたら、ちょっと時間を置いてまたぜひ、先生、お時間許す限り。

大石:そうですね。

森辺:よろしくお願いいたします。

大石:リスナーの皆さんも、ぜひ頑張ってください。絶対に今から国際化、グローバル化は必要なので、皆さんに頑張ってもらわなければいけないと思います。またよろしくお願いします。

森辺:皆さん、ありがとうございました。

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