東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続き、ベトナムのホーチミンからお送りしているんですけど。ベトナムの市場がMT、GT、TTがあって、MTが少ないのでGTとTTで間口を広げなきゃいけない、特にベトナムはASEANの中でもそういう市場ですよっていうのが皆さんにもお分かりいただいたと思うんですけど、じゃあ具体的にGTとかTTの間口を広げるのを自分たちでやっていくのか、どうするのかというところで悩んでいる日本企業さんとかいると思うんですけど。前回もあげていただいた、例えばネスレさんとかがどうやってて、日本企業はどうやってやればうまくいくのか比較をしていただくと分かりやすいと思うんですけど、その辺を教えていただいてもよろしいでしょうか。
森辺:前回に引き続き、これはあくまで食品日用品業界に限っての話ですよ、というのを前置きしておくと、これらの業種は間口を取らないと勝てないよと。間口っていうのはいわゆる商品を置いてもらう店舗の数ですよね。ベトナムはMTが少ないから、MTだけやってても間口が稼げないよ、そうするとGT、TTやらなきゃいけない。じゃあそれをどうやってやるんだという話なんですけど、結局GTとかTTってTTが一番大変なんですよね。GTから僕だったらやる。で、GTを狙っていく時に、GTをディストリビューター化してTTを狙うっていうことをやってるネスレさんとかの例も非常に参考にはなるので、どっちかっていうと、日本の企業の場合、まず根本的な戦略の見直しをしっかりしないといけなくて。導入期、成長期、成熟期、衰退期ってあった時に、導入期は売上数字ではなくて間口数をいかに3年で増やすかということにフォーカスしないといけないんですよね。この間口数が増えないと、1店舗あたりの売上ってほぼ平均決まってくるわけじゃないですか。で、いざプロモーションうっても間口が少なければ跳ね返ってくる効果って少ないんですよね。
でも横の間口が広ければ、プロモーションにお金を1億円、2億円、3億円かけても跳ね返りの効果が高いですよね。そうすると、最初に我慢して間口を増やすっていうことをまずやらないといけない。MTは日本の食品消費財メーカーの現地方針の販売会社の部隊で直接やらないといけない。ここにディストリビューター介在している先進グローバル企業なんてない。
どこでディストリビューター使うかというと、GTとTTの間口を広げる地道な活動で使うんですよね。そうはいってもディストリビューターもプロモーションをしろとか、もっとそこにお金をかけてくれるのかとか、いろんなこと言ってくるわけですよ。で、その中でどれだけ5年後の世界観を共有してやり切らせるかという話になってくるんですけど。インセンティブ出しながら。だからGT、TT共にディストリビューターを使っていく。で、どちらかっていうと、日本の場合、現地法人立てて、そこに駐在員送り込んで、気合と根性で何とかしろと。本社に戦略がないから。当然、駐在員が来たら近代からまずやろうとなって、近代を3年くらいやるんだけど、それじゃ全然利益が出なくて、どうなっているんだと日本の本社が文句を言うと。こんなに一生懸命やってるのに、と現地法人は言う、みたいな。ここをまず変えていくことからやっていかないと、なかなか難しい。MTなんて当たり前で、こんなのどうでもいいんですよね。いかにGT、TTで間口を取るかということをやっていかないといけない。
東:まず最初の戦略の時点で、MTだけやるっていうのを変えないといけないということですかね。
森辺:例えば、導入期の戦略は何ですかと聞いた時に、とにかく間口を増やすことです、と即答できる日本の食品消費財メーカーはないですよね。何を言うかというと、MTは全部入ったんです、これからはGT、TTなんです、という話で。
東:成功しているところは、ヤクルトさんなんかはどこ行っても入ってますもんね。
森辺:間口を導入期に取るっていう戦略になってないんですよね。だからやっぱりそこはすごく重要で、よく製品現地適合化とか言うじゃないですか。これっていかにGT、TTに置かれるように製品を適合するかっていう話の議論で、MTなんて一緒なんだよね。そこじゃないんですよね。で、参入戦略立てる時に、日本企業はまずMTから取ろうということで出ちゃうんですよ。でも間口を取っとけば、5万間口まで増やしますというところを立ててから出ないと、MT取ってから次の活動を考えるのは遅すぎちゃって、何でかというとMTだけじゃ利益出ないので、考えてる間にどんどん出血してるわけじゃないですか。そこが非常に苦しいところですよね。
東:例えば、GTとかTTを取りに行く場合に、ディストリビューターを使うということをおっしゃってたんですけど、それは具体的にどうやってGTとかTTを取る戦略を立てればいいのか、どうやってディストリビューターを選んだらいいのかという疑問が湧いてくるかもしれないですけど、その辺はどうですか。
森辺:その辺はなかなか番組で語るのは難しいので、うちのセミナーとかに来てもらえると、いろんなピクチャーを見せながら説明できるんですけどね。基本的に、ディストリビューターってMTに強いディストリビューターとGT、TTに強いディストリビューターにスパッと分かれるんですよ。フードに強いディストリビューター、ノーフードに強いディストリビューター。そしたら、日本の企業さんってこのディストリビューター大きいけど完全にMTに強いディストリビューターだよね。なんでこんなとこ使ってるのと。そういうところは当然GT、TTなんてやったこともなければ、やりたくもない。そんなところとGT、TTやったって全く入らないわけですよ。そうすると、自分たちがフードなんだったらいかにフードの強いディストリビューターで尚且つGT、TTに強いディストリビューターと組まないとそこはいかないしね。
じゃあ強いからといってディストリビューターに丸投げするわけですよ、日本の会社はね。でも丸投げしてうまくいく例なんてなくて、P&Gもネスレもユニリーバもディストリビューターに5年先の間口目標を決めて、それが達成されたらどれだけあなたたちが儲かるかということをしっかり理解させたうえで、その目標に向かってひたすら間口を増やしていくと。で、途中途中でしっかりインセンティブを出していく。で、過去に間口を広げてきてるんですよ。
だからマネージメントテクニックなんですよね、ディストリビューターの。当然日本人がそんなことをいつまでもやってたらだめなんで、手っ取り早いのは欧米の先進グローバル企業は人を引き抜いてくるってことをやるんですよね。それをやるんだけど、ピカピカのGT、TT開拓屋みたいな人たちを日本から来た駐在員がマネージメントできなければその時点で終わっちゃうし、非常に難しい問題なんですよね。全く今まで日本のどぶ板営業で近代小売り開拓してきましたって人が来られてね、現地の事情もよくわからない中、GT、TTを開拓する、現地人のマネージャーをマネージメントしきれるかっていうとそこにも問題があるので。
東:そもそもスキルが違う。
森辺:スキルセットが全く違うんですよね。だからすごく難しい問題で、日本企業でもうまく行ってる会社は、10年とか駐在員がそこの国にいるんですよ。だからその国ではうまく行ってる。でもこれはすごく属人的なやり方で、10年駐在員がいない国ではどうだっていうと成功してないんですよ。A国では成功している、なぜなら10年選手がいるから、だけどB国では成功してない。これもまた属人的で、先進グローバル企業はそんなことやってない。ここもまたひとつ大きい問題なんですけどね。
東:そこを解決していかないとなかなか複数国でグローバルで成功はないっていうことですね。アジアでは特に。
森辺:日本では日本の食品日用品メーカーさんが大きい顔を出来てますけどね。これから少子高齢化になっていった時に、食品が高齢者の胃袋に入る量なんて必然的に少ないわけじゃないですか。日用品を使う回数も少ないわけですよね。そうすると完全なる少子高齢化の煽りを直撃する業種なんですよ。一方で、世界の食品日用品メーカーを見てみると、世界の市場のトップテンは全部欧米企業なんですよね。そこを今からやり直すって言うのは本当に覚悟決めて、間口を増やす。P&Gの商品が日本の商品より長けているのかっていったらそんなことない。ユニリーバ、ネスレの商品が日本の商品よりいいのかっていったらそんなことない。日本の商品の方がよっぽどいいよって僕は思ってるんですよ。じゃあ何が違うのっていったら、もう間口を取るっていう本社の確固たる戦略と、それを粛々と実行する現地法人、ここが完全に違いますよね。このビジネスは間口勝負だということをよく分かってる。そこが非常に大きいところじゃないかなと思いますけどね。
東:わかりました。じゃあ、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい。ありがとうございました。